課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループにおける経営方針、経営環境および対処すべき課題等は以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

当連結会計年度における世界情勢は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響を受け、各国において経済見通しの大幅な下方修正が続いている状況です。我が国経済においても同様に、新型コロナウイルス感染症の影響による貿易、人的交流、インバウンド需要や国内サービス消費の激減、また国内企業の設備投資控えなど、深刻な影響が出ています。また、IMF(国際通貨基金)は2020年度の新興国の成長率について再度の下方修正を行うなど、世界経済の成長見通しにおいても依然として不透明な状況が続いております。

国内では、新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から消費活動の一部抑制、設備投資等の調整が継続しております。また、「東京2020オリンピック・パラリンピック」の開催延期等により今後の国内経済においても不透明感は依然として続くものと思われます。

建設コンサルタント業界では自然災害リスクに備え、国土強靭化の推進や社会資本老朽化に対する適切な維持管理、長寿命化、更新への危急的な対応が求められています。また、急速に高度化するICTによる社会インフラ分野での事業構造の進化、AIや自動運転技術に裏打ちされるモビリティサービスの高度化、急速に進む少子高齢化への備えや実効性のある地域創生への対応、さらには、現在大きな変革期にある国内エネルギーの需要、供給政策への対応など、これまでにないスピードで発展する社会への貢献、コミットが求められております。これらは、いずれも我が国の発展に向けた根幹部分であり、その実現のために建設コンサルタントが果たすべき役割は、ますます大きくなっております。

このような状況の中、国の2020年度当初予算が3月に成立し、厳しい財政状況下においても、公共事業関係費は前年同水準の約6兆円が確保されるとともに、「防災・減災、国土強靭化のための3ヵ年緊急対策」として2020年度は7,900億円が計上されております。今後の国内設備投資や海外インフラ設備投資の落ち込みによる影響など不透明な材料はあるものの、現在のところ国内公共事業を取り巻く環境はおおむね堅調に推移しております。

当社グループは、総合建設コンサルタントとして基幹事業である構造事業と道路事業を強みとしており、国内および海外においてコンサルタント事業、サービスプロバイダ事業及びプロダクツ事業において事業展開を行っております。また顧客基盤につきましては国土交通省、各自治体、民間企業等を有しております。

 

(1) 経営の基本方針

当社グループでは、経営理念である「社員の創造性と相互の信頼を育み、美しく、快適な地球環境づくりに邁進する世界の技術と頭脳の会社を創造する。」の具現化として、「人・夢・技術」を掲げております。
 株主様・顧客・社員を含めた国民(社会)である「人」に幸福を提供するため、そして、「人」が満足出来る「夢」を叶えるため、高度な専門・マネジメント等の「技術」を日々向上し成長を続けていくことを基本方針としております。

 

(2) 目標とする経営指標

 当社グループは、2021年9月期における業績目標を、売上高325億円、営業利益24億40百万円、経常利益24億60百万円、親会社株主に帰属する当期純利益14億70百万円としております。

 

(3) 経営戦略

 当社グループは、企業価値・株主共同の利益の確保・向上に資するため、2019年8月に、2030年をマイルストーンとした長期的なビジョンとその実現に向けた戦略をとりまとめた「長期経営ビジョン2030」を策定しております。さらに、この「長期経営ビジョン2030」の実現に向けての第一歩として、2019年10月に公表しました中期経営計画「持続成長プラン2019」を策定し、長大グループのさらなる成長に向けた基盤づくりを行う重要なステージと位置づけ、より具体的な目標及び施策をとりまとめております。

 

「持続成長プラン2019」

 

 数値目標                                  

 

売上高(百万円)

営業利益(百万円)

従業員数(人)

連結

35,700

3,000

約1,750

個別

20,000

1,700

約 900

 

 

目標達成に向けた施策

 「持続成長プラン2019」では、『基幹事業の強化と新たな成長の基盤づくり』を基本方針としております。引き続き要請の多い国土強靭化やインフラ維持管理等のニーズに対応した基幹事業の強化・拡大を図るとともに、新領域における事業開発や海外事業の強化、人材の確保及び育成への投資を重点的に行ってまいります。計画期間中は以下の6つの方針に基づき事業を推進してまいります。

 

 

方針1 基幹事業の強化と拡大

 構造、道路、交通ITS、環境、地盤など、基幹となるコンサルティング事業における国土強靭化や維持管理分野の受注拡大、また、未開拓の省庁、自治体、民間企業等からの受注拡大を図ってまいります。特に、自治体の未開拓エリアについては、技術部門と営業部門の連携、また、基礎地盤コンサルタンツ等のグループ会社との連携を強化することで、受注の拡大を図ってまいります。

 

方針2 新領域の事業基盤の整備

 再生可能エネルギー分野では、技術部門と営業部門が連携した公共及び民間市場の開拓により、コンサルティング事業およびサービスプロバイダ事業の今後の成長のための基盤を整備してまいります。また、PPP/PFI分野では、アドバイザリー業務(コンサルティング事業)に加えて、事業参画案件の拡大や長大主導による「地域創生型収益事業」の開発など、将来の基幹事業となるサービスプロバイダ事業の基盤を整備してまいります。さらに、エコプロダクツを始めとするプロダクツ事業についても、新たな製品開発や販路の開拓による事業基盤を整備してまいります。

 

方針3 海外事業の強化と地域の重点化

 海外における構造、鉄道、地盤、再生可能エネルギー等のコンサルティング事業の人員体制の強化により、受注の増加と安定を図ってまいります。特に、鉄道事業を中心にM&Aやキャリア採用等を推進し、元請けでの受注獲得を目指してまいります。また、東南アジアを「重点地域」として常駐社員を配置する「攻めの営業」へと転換してまいります。

 

方針4 イノベーションとIT化の推進

 長期経営ビジョンのマイルストーンである2030年に向けたさらなる成長や持続可能な社会形成に寄与するため、新たなインフラ技術の開発、新分野への進出や新ビジネスの創出など、様々な角度からのイノベーションを推進してまいります。また、既存のインフラ技術サービスや社内プロセスのIT化推進により、生産性の飛躍的な向上を図ってまいります。

 

方針5 働き方改革とダイバーシティの推進

 働き方改革をさらに推し進めることで、女性、シニア、外国人など、多様な人材が働きやすい環境を創出し、人材のダイバーシティを推進してまいります。

 

方針6 成長基盤となる人材の育成と組織づくり

 プロフェッショナル人材が成長の源泉であることから、新卒・キャリア採用やM&A等による人材獲得、技術士等の資格取得の支援を強化してまいります。また、組織をスリム化・フラット化することで、プロフェッショナル人材がよりパフォーマンスを発揮しやすい組織づくりを行ってまいります。

 

  以上の方針に基づき事業を着実に推進することで、当社の持つ経営資源を有効に活用するとともに、様々なステークホルダーとの良好な関係を維持・発展させ、当社および当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の向上に資することができると考えております。

 

(4) 当面の対処すべき課題の内容等

 建設コンサルタントを取巻く経営や事業の環境変化は大きく、早期の対応が課題となっております。大きな環境変化とは、①情報通信技術(以下ICT)の進展とインフラ技術への活用推進、②頻発する大規模災害、③再生可能エネルギー分野の拡大、④地域創生と増大する民間の役割、⑤多様化する海外事業とそのリスク管理、⑥より一層の働き方改革の推進、⑦持続可能なグローバル社会形成への貢献、⑧新型コロナウイルス感染症拡大に対する対応であります。今後、当社グループは、他社に先んじて上記環境変化に対処してまいります。

 

①ICTの進展とインフラ技術への活用の推進

 建設産業は、質の高いインフラの整備とサービスを実現するために最先端のICTを活用した建設生産システムの導入・普及が課題となっております。当社グループも、建設コンサルタントとして様々な関連技術の開発・導入に注力しており、オンデマンド交通支援システムによる過疎地へのモビリティ支援事業(コンビニクルの全国自治体展開)や橋梁点検ロボットの開発、特許取得、導入等を実現してまいりました。今後は、インフラ整備、維持管理を3次元モデルで設計、監理する新たな建設生産システムとしてのi-Constructionの実現に向けた産官学連携、オンデマンド交通支援技術を応用した自動運転の実現に向けた各種実証実験、これらモビリティも含めた将来のまちづくり事業や市場展開などを積極的に進めてまいります。

 また、それらの実現に向けては、ICT技術の高度化やイノベーションの強力な推進などが求められますが、第53期より推進している事業戦略推進センターを中心とする新事業開発、技術開発への投資強化、M&Aによる体制強化などの取り組みをさらに強化してまいります。

 

②頻発する大規模災害へのグループとしての対応

 東日本大震災以降、地震や台風、豪雨等による自然災害が頻発しております。当社グループは、地域で発生する災害に対応して、ONE長大グループとして対応するため『長大グループ災害対応マニュアル』を作成し、迅速な災害対応が可能な体制づくりに努めています。2020年の7月豪雨においても、現地の被害状況を迅速に調査・把握し、復旧支援活動を行ってきました。今後も自然災害発生に対して、当社グループ企業間の連携のもと、社会貢献の一環としてグループ独自に対応を行い、行政支援や被災地支援に貢献してまいります。

 

 

③再生可能エネルギー分野の拡大

 地球規模での再生可能エネルギーの導入が求められる中、国内では第5次エネルギー基本計画が策定され、2030年に向け再生可能エネルギーの主力電源化が明言されております。特に洋上風力発電については、2030年までに原子力発電10基分に相当する10GWの容量を確保することが計画されています。当社グループは、これまで以上に国内外における再生可能エネルギー事業に積極的に参画し、再生可能エネルギー政策の実現に貢献してまいります。既に、海外では、フィリピン国ミンダナオ島における小水力発電事業の共用開始、国内では山梨県南部町におけるバイオマス発電事業、青森県における風力発電事業、地熱エネルギー開発事業、また洋上風力発電における地質調査に積極的に取り組んでおります。今後は、より一層再生可能エネルギー事業の取組みを拡大してまいります。

 

④地域創生と増大する民間の役割

 インフラの整備・維持管理・運営に民間が大きく関与するPPP/PFI事業は、我が国のインフラ整備・運営手法として期待されており、新たなインフラビジネスとして成長を続けております。現在、地域創生に向け、公共施設のPFI手法による運営が活発化しており、特に近年では空港や道路事業を対象としたコンセッション事業(事業運営権譲渡による事業運営)が注目を浴びております。その中で、当社は、各種公共施設等におけるPFI手法のアドバイザリー業務ならびに運営業務について業界でもトップクラスの経験と実績を有しているとともに、前述の再生可能エネルギー事業との複合展開や、地域創生に向けた事業創出型PPP/PFI事業に大きな可能性を見込んでおり、当社グループの更なる展開が期待されております。

 

⑤多様化する海外事業とそのリスク管理

 現在、アジア地域を主な市場とする海外事業は、これまでの橋梁設計、監理事業に鉄道関連事業を加えた二本を基幹事業とし、港湾などの埋立て、地盤改良事業、また小水力発電事業や関連する地域開発事業など、多様な展開を進めております。その一方で、今回の新型コロナウイルスの感染拡大はもちろん、近年の中国経済の減速やテロ等による事業中断などのリスクにもさらされております。これに対し当社グループにおきましては、安全管理面として、関連情報を迅速に入手し共有するなどグループ子会社等に対する安全対策の強化を図っております。また、事業執行面では、情報の共有や人材の有効活用など、組織を超えてとるべきアクションを迅速に実践する仕組みを構築し、今後の更なる企業ガバナンスの強化を図り、効率的な海外展開を進めてまいります。

 

⑥より一層の働き方改革の推進

 近年、我が国の産業界全体において、長時間労働やダイバーシティへの対応が課題となっております。当社グループにおきましても、妊娠や子育てに直面している社員、要介護家族を抱える社員、外国人社員、障がいを抱える社員等、多様な社員が働いております。当社グループは、ワークライフバランスの実現とダイバーシティの受入れが企業の成長要件と考えており、福利厚生の充実とともに多様な働き方を選択できる制度を整えてまいりました。第50期を働き方改革元年と位置付け、それまで過去3年に亘って検討した諸施策を実行へと移してまいりました。特に女性活躍促進やシニア社員の活性化に向けて力を入れております。第51期からは、長大全女性社員が『7Cプロジェクトメンバー』となり、7つの輝きを持ちながら活躍する風土や仕組みを構築する取り組みを続けております。また、シニア技術者がそれまでに培った経験と技術を永く活かせる仕組みもつくり実践しております。さらには、子育てをしながら働く社員に対する支援や待機児童の解消に向けた取組みとして、当社が代表となり三社共同運営の「かけはし保育園」を設立し運営しております。このように当社グループは、働き方改革を通じ、当社グループの課題解決だけではなく、社会全体への貢献を目指してまいります。

 

⑦持続可能なグローバル社会形成への貢献

 昨今、SDGsに代表される持続可能な社会形成の重要性が増しており、企業にも貢献が求められております。長大は創業以来50年、長大グループの行ってきた事業活動そのものがSDGsと言っても過言ではありません。長大グループは、国内事業はもとより海外事業においても、より社会性の高い事業、例えば前述のフィリピン国ミンダナオ島における地域経済開発プロジェクトの経験と実績を活かしながら、多様なフィールドで展開してまいります。

 これらを通じ、SDGsの先駆者として、国内外の自然環境と調和した社会基盤整備のための様々なサービス、当社グループ内におけるダイバーシティや脱炭素型経営の推進など、インフラサービスと企業活動の両面で、持続可能なグローバル社会形成への取組みに貢献してまいります。

 

⑧新型コロナウイルス感染症拡大に対する対応

 新型コロナウイルスの感染拡大により、一部の海外業務に進捗の遅れや渡航制限等による業務環境の変化が発生しています。また、国内においても新型コロナウイルスの感染拡大下に対応した業務遂行体制への移行が求められています。当社グループでは、テレワークや時差出勤を活用した働き方への転換を図るとともに、感染拡大時には、本社災害対策センター(茨城県つくば市)への機能移転を図ることで事業活動の継続を図ることのできる体制を構築しています。

 現段階の業績への影響におきましては、国内における公共事業を中心とする基幹事業では影響は軽微です。海外事業においては、業務完了の遅延による翌期への繰越等の影響が発生している状況であります。また、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等は不確実性が高い事象でありますが、感染の最新の状況を踏まえ、取締役会、経営会議等における意思決定、業績予想等の策定を行っております

 引き続き、上記の取組みを継続・推進することで、事業活動や収益性の維持を図ってまいります。

 

 

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得