課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針・経営戦略等

 当社グループは、国内航空輸送網の拠点である羽田空港における旅客ターミナル等を建設、管理・運営する企業として、公共性と企業性の調和を経営の基本理念としております。

 この基本理念の下、今後とも、旅客ターミナルにおける絶対安全の確立、お客様本位の旅客ターミナル運営、安定的かつ効率的な旅客ターミナル運営に努めることにより確実に社会的責任を果たしてまいります。

 また、グループ全体の継続的な企業価値の向上を図るため、戦略的かつ適切な投資の実行及び投資管理によるさらなる旅客ターミナルの利便性、快適性及び機能性の向上や顧客ニーズの高度化・多様化に的確に対応するとともに、航空会社、空港利用者、取引先、株主等関係者への適切な還元を心がけることを経営の基本方針としております。

 経営戦略では、サステナビリティを戦略推進の中核と位置づけ、「サステナビリティ基本方針」のもと、持続可能な社会の実現及び持続的な当社グループの成長を追求します。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、ROA(EBITDA)、営業利益率に加え、安定性指標である自己資本比率を重要な経営指標と位置付けておりますが、新型コロナウイルス感染症の影響により、事業環境が著しく変化していることから、2021年度については目標数値を設定せず、収束の兆しや旅客数の回復動向等を見極めながら、今後の指標や目標数値の再検討を進めてまいりました。

 今般、当社グループは、2022年度から2025年度に係る中期経営計画を策定し、本年5月に公表いたしました。その中で、2025年度には旅客数が新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前の計画水準まで回復することを前提として、以下の目標指標を定めております。

[連結当期純利益]

 旅客数がコロナ前水準に回復すると見込む2025年度において、2021年3月の増資による希薄化を考慮し、1株当たり利益で、前中計の2020年度目標を上回る収益力を確保する。

[コスト削減のリバウンド抑制]

 コロナ禍におけるターミナル運営の抜本的な見直し等によりコストのリバウンドを抑制し、効率性・生産性向上の目標として、前中計の2020年度営業利益目標250億円の1割相当をコスト削減により創出する。

[ROA(EBITDA)]

 旅客ターミナルや駐車場を保有し、施設整備をしながら事業展開する特性を踏まえ、引き続きSKYTRAX TOP10空港の最新の平均値を参考値としつつ、前中計を上回ることを設定。

[自己資本比率]

 前中計において「2021年度以降に40%以上の回復を目指す」としていた。コロナ禍の事業環境で自己資本比率は低下しているが、引き続き、格付(A+)の維持と財務基盤の早期安定化を図ることとして、40%以上の回復を目指す。

[配当性向]

 株主に対する利益還元を重要課題と位置付け、大規模投資等を考慮し内部留保を確保すると同時に安定した配当を継続することを基本方針として、自己資本の蓄積と経営成績に基づく株主還元を重視する観点から「配当性向」を指標とし、早期に復配し配当性向は30%以上の水準を目指す。

[SKYTRAX World's Best Airports]

 2017年以降維持しているWorld's Best Airports TOP3を維持するとともに、より一層の高品質・高効率なオペレーションを目指す。

 

 各種指標の目標値は以下のとおりです。

分類

指標

2025年度目標値

収益性(総合)

連結当期純利益

160億円以上

収益性

コスト削減策

25億円
(前中計の営業利益目標250億円の10%相当)

効率性

ROA(EBITDA)

12%以上

安定性

自己資本比率

40%台への回復を目指す

株主還元

配当性向

30%以上

空港評価

SKYTRAX評価順位

World's Best Airports TOP3

(3) 経営環境・対処すべき課題等

 当社グループはこれまでに、長期ビジョンである「To Be a World Best Airport」に基づき、中期経営計画(2016年度から2020年度)を策定し各施策を実行してまいりました。この間、羽田空港におきましては、首都圏空港の機能強化として国際線の発着枠が約1.4倍に拡大され、当社グループにおきましても、東京国際空港ターミナル株式会社を連結子会社化して緊密に連携をとりながら、発着枠拡大に対応する施設整備を実施いたしました。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受けて航空需要は著しく減退し、計画の前提となる事業環境が大きく変化いたしました。その中で、ターミナル運営においては「絶対安全の確立」のもと、コロナ禍における安全・安心な旅の提供のために、積極的な感染防止策を進めてまいりました。また以前より、羽田空港の利便性向上や労働人口減少などの社会課題への対応に向けて、先端技術の実証実験と活用を行ってまいりましたが、感染拡大以降は非対面・非接触サービスの拡充も踏まえて取り組みを推進しております。事業運営においては、早期の収支改善に向けて収益の多元化やコスト削減に取り組み、ターミナル整備資金の確保と財務基盤の強化を目的として、公募増資等による資金調達を行いました。

 以上の状況を踏まえて、当社グループは新中期経営計画『To Be a World Best Airport 2025~人にも環境にもやさしい先進的空港2030に向けて~』を策定いたしました。訪日外客数6000万人の政府目標やCO2の削減目標等が掲げられる2030年と、旅客数がコロナ前水準に回復すると予測される2025年をマイルストーンとして設定し、2030年に目指す姿からバックキャストした、2025年までの計画としております。計画最終年度の2025年には、コロナ前の当社計画水準を超える収益拡大を目標とします。

 当面は引き続きコロナ禍における航空需要減少への対応が課題となりますが、計画期間中には、コロナ禍を受けた生活様式の変容、DXの進展、サステナビリティへの意識のさらなる高まりといった社会環境変化が予想されます。このような中、当社グループは日本を代表する空港として世界から評価される存在となるべく、サステナビリティを戦略推進の中核とし、空港事業の成長、再成長土台の確立、収益基盤の拡大、経営基盤の強化に取り組んでまいります。

 戦略推進の中核であるサステナビリティにつきましては、代表取締役社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会及び専任組織として社長直轄のサステナビリティ推進室を新設し、新たに策定したサステナビリティ基本方針に基づき、脱炭素をはじめとする各課題に対し全社横断的に取り組んでまいります。地球規模での環境対策や社会問題への対応が求められている中、基本理念である公共性と企業性の調和に基づいた持続的な成長に向け、空港ターミナルと関連施設における環境対策の強化や、働き方改革の推進、株主・投資家との対話機会の拡大によるさらなるガバナンスの強化等に取り組んでおり、今後、マテリアリティ分析を踏まえたサステナビリティ中期計画の策定や、TCFD提言に基づく情報開示等を推進してまいります。

 ターミナル運営においては、高品質と利益向上の両立を果たすべく、オペレーションを見直し、維持管理コストの削減や賃料等の増収を図りながら、2030年の訪日外客数増加に向け空港インフラとしての機能強化を推進します。その一環として、将来の航空需要の拡大への対応や旅客利便性のさらなる向上を見据え、第1ターミナル北サテライト新設、第2ターミナル本館-サテライト接続工事に向けた準備を進めております。

 営業面では、商品構成やサービス、オペレーション、原価率等の見直しを行いつつ、デジタルマーケティングの活用により消費動向の変容した顧客ニーズを発掘し、ショールーム型店舗展開、免税店へのトップブランド導入やオリジナル商品展開等の施策を通じて収益拡大を図ります。

 また、旅客に依存しない収益の強化に向け、EC事業等により販路拡大を進めてまいります。

 さらに、羽田の価値・ネットワークや空港運営ノウハウの活用に加え、現時点で保有していない経営資源の獲得を通じて、収益向上、新しい事業創造を目指します。

 これらの施策を支える経営基盤として、お客さま本位のターミナル運営を目指してマーケティングを強化し、DX戦略の明確化、戦略に合わせたグループ体制の構築、人財の多様性確保、財務体質の早期健全化等に取り組み、最高のおもてなしを提供すべく戦略に活かしてまいります。

 今後も当社グループは、空港法に基づく羽田空港の旅客ターミナルを建設、管理・運営する空港機能施設事業者としての責務を果たすべく、国土交通省や航空会社をはじめとする関係者と連携しながら、グループ一丸となって利便性、快適性及び機能性の向上を目指し、顧客第一主義と絶対安全の確立に努め、絶え間ない羽田空港の価値創造と航空輸送の発展に貢献することにより、企業価値の向上を図ってまいります。

 

 

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