課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 当社を取り巻く事業環境と対処すべき課題

 社会のIT化・デジタル化による変化が、ビジネスやライフスタイルにも影響を及ぼし、そのスピードは新型コロナウィルスの感染拡大により一層加速しております。日常のあらゆるデータがデジタル技術で利活用され、様々な企業が生き残るために異業種と連携し、企業は産業構造の変革に合わせたビジネスモデルの変化を求められております。

 

 国内のITサービス市場は、さらなるクラウド化の進行、デジタル化やDXの加速等により、企業のIT戦略、IT投資に質的変化が生じ、ビジネスとITとの関係が一層密接になっております。また、Withコロナ時代における感染防止と経済活動を両立した、いわゆるニューノーマルな日常を実現する上で、デジタル技術の有効活用が重要なファクターになってきております。

 

 一方で、ITサービスに求められる人材像は「課題解決型」から「価値創造型」へと変化し、顧客企業も含めたIT人材の獲得競争が激化すると考えております。顧客企業においてもDXの加速に伴い、業界を越えた共通サービス、融合サービスの提供が拡大していく中で、顧客企業自身が内製化へシフトする傾向が予測されます。

 

 このような大きな変化や不確実性を伴う環境の中、企業が持続的な成長を果たしていくためには、より長期的な視点から社会の本質的な変化を捉え、企業を取り巻く様々な社会課題に対し、事業を通じた解決と新たな価値創出に取り組む必要があります。したがって、当社グループが掲げる「夢ある未来を、共に創る」の経営理念に立ち返り、「サステナビリティ経営」を実践していく上で、優先的に取り組む領域を決めて共有するために「マテリアリティ(重要課題)」を策定し、当該方向性を踏まえた2030年の目指す姿としてのグランドデザイン、実現のステップとしての中期経営計画を2020年4月に発表いたしました。

 

<マテリアリティ>

当社グループの事業と当社グループならではの強み、社会に対して果たすべき役割から、「社会課題解決を通じた持続的な事業成長」を意味する3つのマテリアリティ(豊かな未来社会の創造、安心・安全な社会の提供、いきいきと活躍できる社会の実現)と、「持続的な成長を支える基盤」の4つのマテリアリティ(地球環境への貢献、多様なプロフェッショナルの活躍、健全なバリューチェーンの確立、透明性の高いガバナンスの実践)を策定しています。

 

<グランドデザイン2030>

経営理念とマテリアリティを当社グループの存在意義と定義した上で、社会と共に持続的発展を目指し、「2030年 共創ITカンパニー」を実現いたします。
 コア事業であるITサービスによって顧客企業や社会への価値提供を拡大するとともに、自らも主体的に価値創出に取り組み、顧客企業や社会と共に成長してまいります。また、2030年 売上高1兆円に挑戦いたします。
 

 

(2) 中期経営計画の進捗

 「2030年 共創ITカンパニー」の実現に向けて、最初のステップとして、3つの基本戦略(事業革新、DX事業化、人財投資)と3つの経営基盤強化(グループ総合力強化、人を活かす経営の推進、共創の企業文化づくり)により、グローバルベースでの事業拡大を目指してまいります。
 また、投資領域においては、将来の成長に繋げるべく3年間合計1,000億円レベルでの積極的な投資姿勢を継続いたします。
 持続的な事業拡大と、さらなる大きな成長に向けた挑戦を通じ、企業価値の向上を目指すという観点から、売上高5,000億円以上、営業利益率 10.0%~12.0%、ROE  15.0%以上(※中期経営計画期間中のROIC維持目標レベル:10.0%~12.0%)を経営指標とします。
 

(ⅰ) 事業革新

当社グループの持続的成長に向けた、コア事業の継続的な高度化・拡大が必要であることに加えて、「2025年の崖」で示された企業のシステム課題として挙げられる、レガシーシステム問題やシステムの個別最適化によるデータ連携・利活用の停滞、IT技術者不足等に対して、ITサービスを提供する企業グループとして、その解決を強力に支援してまいります。当社グループでは、コア事業を以下2つの視点で革新し、業務プロセスと顧客接点を強化することで、そのニーズに応え、競争優位性を確立してまいります。

① 「ものづくり革新」

自社開発のものづくり革新プラットフォーム「S-Cred+(Smart Co-work on Relationship , Engineering and Design Plus)」を核として、サービスの生産性・品質・柔軟性の向上に取り組み、ビジネス変化への対応スピードの向上やサービスモデルの多様化、SOE・SORシステムの最適化を推進しております。

② 「分室革新」 ※分室:顧客先の常駐拠点

「現場重視」を掲げる当社グループの大きな特徴でもあり、強みである「分室」のビジネスを、「常駐型」から、顧客企業のビジネス・IT戦略を支える「価値共創型」に転換してまいります。
 顧客企業には、戦略・ニーズを深耕する「サービスマネージャ」と、ビジネスの変化に迅速かつ最適なサービスを提供する「高度技術者」の配置を進め、顧客接点を強化、また、分室と当社拠点との連携を強化しながら、顧客企業との共創ステージへの進化の実現に取り組んでおります。

 

(ⅱ) DX事業化

昨今のデジタル技術の革新を受け、顧客企業においては、これを活用した事業競争力の強化や、事業モデル変革を企図した攻めのIT投資需要が拡大し、さらには、業界の壁を越えた企業間共創によって、従来の枠組みにとらわれず、新たな事業やサービスを生み出そうとする動きが活発化しております。このような市場変化を当社グループのさらなる成長への機会と捉え、コア事業の強みを活かしつつも、自らが主体となり、「共創」により、社会への新たな価値の創出を実現する事業に挑戦しております。
 DX事業化の実現に向けてのアプローチとして、「顧客との共創」「業界をターゲットとした異業種共創」「住友商事㈱等とのグローバル共創」の3つに着目して取り組んでおり、現時点では「モビリティ」「金融サービスプラットフォーム」「ヘルスケア」「カスタマーエクスペリエンス」の4領域を重点領域として、各領域における社会課題に対して、新たな価値を生み出す事業創出に取り組んでおります。

 

 

<モビリティ>

当社は、日系自動車メーカー、サプライヤにおける車載システム開発での豊富な開発実績を有しており、開発の品質や効率を高めるモデルベース開発(MBD)にいち早く着手したこともあり、年々事業を拡大しております。また、車載ソフトウェアの標準アーキテクチャ規格である「AUTOSAR(オートザー)」に準拠する、リアルタイムOS搭載の国産BSW「QINeS BSW(クインズ ビーエスダブリュー)」を独自開発し、2015年10月から製品販売及び構築支援サービスの提供を実施しております。こうした車載システム開発・検証で培った知見・実績とコネクティッド/テレマティクス事業におけるサービスを融合し、MaaS領域でのDX事業の展開に取り組んでおります。

 

<金融サービスプラットフォーム>

一般消費者の資産形成・運用をサポートする専門的な資産運用アドバイスに対する需要の高まりを受け、今後中長期的に増加が見込まれるIFA(独立系金融アドバイザー)事業者や、生命保険会社、保険代理店、地域銀行等の参入が見込まれる金融商品・サービス仲介事業者に対し、どの金融機関にも依存しない中立的な事業支援プラットフォームを構築・運営することを目指し、日本版TAMP(Turnkey Asset Management Platform)事業に取り組んでおります。2021年8月に事業を開始し、まずはIFA事業者へのアドバイザリーソリューションの提供を進めております。
 また、社会福祉や老後資金への関心が高まる中、企業の「従業員に対する資産形成支援等、自ら豊かな人生を送ることにつながる福利厚生制度を提供したい」というニーズと、従業員の「精緻な収支シミュレーションをベースに老後を含めたライフプランをデザインしたい」というニーズの双方に応えるため、2022年4月より職域向け資産形成プラットフォームサービス「資産形成ラウンジ エフクリ」の提供を開始しております。

 

<ヘルスケア>

医療従事者の働き方改革・地域医療の効率化のために、医療現場をDX化する取り組み「Dr2GO」(ドクターツーゴー)プロジェクトを進めております。医療従事者の働き方改革については、チーム医療におけるコミュニケーションの効率化を実現する仕組みとして「Dr2GO」のコミュニケーション機能を開発し、2020年に提供開始しております。地域医療連携の課題である「高度医療を担う病院への患者集中」を解決するため、地域内の複数病院に「Dr2GO」の地域医療連携機能を導入し、地域医療DX化に向けた取り組みを行っております。

 

<カスタマーエクスペリエンス>

集客・接客・販売といった顧客接点において、コンサルティング、システム、運用支援、アウトソーシング等をワンストップで提供し、DX時代に求められる顧客接点の高度化に特化したサービス「altcircle(オルトサークル)」を2020年12月より提供しております。2021年5月に、㈱マイクロアドと業務提携に関する基本契約を締結し、データ分析技術を活用したオムニチャネル時代のDX支援事業を共同で推進しております。2021年9月には、SNS、WEBサイト等のデジタル接点における自動応答と有人対応をシームレスに連携することにより、ユーザーの課題をスムーズに解決する新AIチャットボット「PrimeAgent(プライムエージェント)」の提供を開始いたしました。最高の顧客体験を実現するための最適なサービスをスピーディーに提供することにより、デジタルシフト、顧客ビジネスの拡大に寄与いたします。

 

(ⅲ)人財投資

当社グループの最大の財産かつ、成長の原動力は「人/社員」であります。人材の高度化・多様化・拡充の観点で、社員への投資を積極的に行い、事業成長を加速してまいります。なお、国内の人材拡充においては、地方拠点での採用をより積極的に拡大し、雇用創出や、UIターン促進、IT人材育成等により、地方創生にも力を注いでまいります。

 

 

<経営基盤強化>

3つの基本戦略を推進する経営基盤の強化として、「グループ総合力強化」、「人を活かす経営の推進」、「共創の企業文化づくり」の3つに取り組んでおります。
 取り組みの一つとして、グループ再編による新たなマーケットの開拓を目的とし、2021年10月1日付で、当社の完全子会社である㈱MinoriソリューションズがWinテクノロジ㈱と㈱CSIソリューションズを吸収合併し、SCSK Minoriソリューションズ㈱として新たに発足しております。また、同日付で㈱Minoriソリューションズの九州地域向け事業をSCSK九州㈱に移管しております。当社グループの対象顧客層として、拡大余地のある中堅企業においては、デジタル化、働き方改革、危機管理等のIT活用の本格化、加えてWith/Afterコロナに伴うビジネスモデル変革を目的としたIT投資需要の拡大が見込まれます。当該市場に対し当社グループは、蓄積した各種資産・多様なリソースや知見を元に、事業拡大の対象分野として本格的に取り組み、日本経済の持続的成長に不可欠な同市場の健全な発展に貢献してまいります。
 また、当社グループのさらなる事業拡大、沖縄県での雇用及び共創機会の創出に向けて、2021年10月26日付で沖縄県浦添市にて「SCSKグループ沖縄センター」を開所いたしました。「SCSKグループ沖縄センター」は、最新設備による安心・安全で働きやすい職場環境を実現しており、業界に先駆けて働き方改革に取り組んでいる当社は、「社員一人ひとりが身も心も健康で、やりがいをもって最高のパフォーマンスを発揮してこそ、お客様の喜びと感動につながる最高のサービスが提供できる」との健康経営の理念のもと、沖縄県においてもこの取り組みを実践し、さらなる雇用の創出に貢献してまいります。
 

 

 

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