当連結会計年度における当社及び連結子会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社及び連結子会社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものです。
①事業全体の状況
当連結会計年度(令和3年1月1日~令和3年12月31日)における日本経済の景況感は、製造業を中心に回復が続きました。一方で、半導体や部品不足により生産縮小を余儀なくされ、未だ挽回生産には至っていない自動車での悪化が製造業全体の景況感回復を足踏みさせました。
今後の新型コロナウイルス感染症の状況、半導体や部品不足の影響など不透明な要因が多く、先行きの見方は慎重となっているものの、設備投資については「コロナ後」を見据えた投資などにより増加傾向で、更なる回復が期待されます。
このような環境下で当社及び連結子会社は、モノづくり現場で必要とされる少量多品種の商品ニーズに的確にお応えするため、物流施設、物流機器、デジタルへの積極的な設備投資を継続しました。
当社は「がんばれ!!日本のモノづくり」を企業メッセージに掲げ、プロツールの供給を通じて、お客様にとって最高の利便性を提供することが、結果として社会貢献につながると考え、トラスコの事業活動が社会価値と企業価値の両方を生み出すものとする「TSV活動(TRUSCO Shared Value)」に取り組んでいます。取扱アイテムの拡大とともに、在庫アイテム数を約50万アイテムまで拡充し、配送網を再整備することで、戦略的に即納体制を強化しました。また、ユーザー様直送サービスをはじめ、サプライチェーン全体の業務効率化を図り、エネルギーや梱包資材などの資源消費の削減に努めました。更に、AIや最新ロボットを駆使し、業界「最速」「最短」「最良」の納品を実現するための、新流通プラットフォームの創造に向けて、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学との産学連携、GROUND株式会社及び株式会社シナモンと資本業務提携による取組みをスタートさせました。加えて、令和3年7月にUXプラットフォーム開発室、商品DBプラットフォーム開発室、ロジプラットフォーム開発室 兼 P愛知準備室を新設し、投資総額200~250億円を想定しているプラネット愛知(令和6年稼働予定)に向けて、3者との連携を強化しました。
また、令和3年3月に、経営ビジョンの策定や、DX戦略・体制の整備などを既に行い、DX推進の準備が整っている事業者を経済産業省が認定する「DX認定取得事業者」に認定され、令和3年6月には経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」において、「DX銘柄2021」に選定されました。当社は令和2年に「DXグランプリ2020」を受賞し、2年連続で「DX銘柄」に選定されております。
その結果、当連結会計年度における売上高は2,293億42百万円(前年同期比7.5%増)となりました。
また、マスクなどの新型コロナウイルス感染症関連需要が、高水準なものの一服したことにより、利益率の高い商品の売上高に占める割合が減少し、売上総利益率は21.0%(前年同期比0.5ポイント減)となり、売上総利益は482億75百万円(前年同期比5.2%増)となりました。
販売費及び一般管理費は、売上の拡大に伴う出荷量増による運賃及び荷造費の増加、令和2年に建替えを行ったプラネット南関東の建物・物流機器にかかる減価償却費の増加などにより、その合計額は353億83百万円(前年同期比1.4%増)となりました。
以上の結果により、 営業利益は128億91百万円 ( 前年同期比17.0%増 )、 経常利益は135億72百万円 ( 前年同期比17.4%増 )、土地の売却による特別利益が34億66百万円計上され、親会社株主に帰属する当期純利益は116億3百万円(前年同期比44.9%増)となりました。
②セグメントごとの経営成績
1)ファクトリールート(製造業、建設関連業等向け卸売)
ファクトリールートにおいては、全国に27か所ある物流センター及び全国に29か所ある在庫保有支店が、市場のニーズに即した在庫拡充を進め、受注頻度の高い商品の在庫量を増やすことで得意先様の利便性向上に努めました。また、AI見積「即答名人」[見積自動化システム]、「売れ筋商品の自動在庫化」など、見積回答スピードの向上や在庫欠品の低減による受発注業務の効率化により、お客様への利便性向上を図りました。更に、「T-Rate(トレイト)」や、TRUSCO いつでもつながる「フェイスフォン」などのコミュニケーションツールの利用を促進し、新たな営業スタイルの定着につなげました。加えて、ユーザー様の工場に、置き薬ならぬ置き工具「MROストッカー」を設置することで、工場内でいつでも商品の調達が可能となる新たなサービスの導入や、ユーザー様直送を強化するなど、専門性の高い営業活動を行いました。生産工場の稼働や設備投資の回復により、稼働に係る作業用品やハンドツール、設備投資に係る物流保管用品などの売上高が増加しました。
その結果、 売上高は1,646億5百万円 ( 前年同期比5.0%増 )、 経常利益は92億39百万円 ( 前年同期比17.5%増 )となりました。
eビジネスルートにおいては、約276万アイテムに及ぶ商品データベースと得意先様のシステムの連携を強化しました。また、得意先様がユーザー様から受注した商品の当日出荷が可能となるよう、対象商品のアイテム数を増加させ、各社のご要望にお応えできる梱包形態に対応し、独自の物流サービスを強化しました。更に、新型コロナウイルス感染症対策で非接触、非対面型受注による通販ニーズが増加し、4か所の物流センターに6ライン導入したI-Pack®(アイパック)[高速自動梱包出荷ライン]を活用した、ユーザー様直送サービスも売上高増加に寄与しました。加えて、ネット通販企業様などとの取引の増加や仕入先様の取扱商品の多角化を鑑み、当社の更なる成長の機会とするべく、まずは既存の仕入先様の商品群の中で“PRO TOOL” [間接資材]以外の商品も取り扱いを開始しました。
その結果、 売上高は446億68百万円 ( 前年同期比16.3%増 )、 経常利益は34億7百万円 ( 前年同期比8.6%増 )となりました。
ホームセンタールートにおいては、建築現場などで働くユーザー様をターゲットとしたプロショップなど、各得意先様に対し売場の改善提案を強化しました。また、機能性が高くオリジナリティを追求した当社プライベート・ブランド商品、得意先様のストアブランド商品などを提案し、収益性の改善につなげました。更に、各ホームセンター企業がEC事業の強化に動いていることから、当社の約50万アイテムに及ぶ在庫と物流設備を活用したサービスを積極的に提案しました。店舗への来客数や売上高が前年を下回るホームセンター企業もある中で、当社は主力得意先様の帳合獲得により、墜落・落下防止用品、安全靴・作業靴等の受注が増え、売上高増加に寄与しました。
その結果、 売上高は183億73百万円 ( 前年同期比8.1%増 )、 経常利益は4億55百万円 ( 前年同期比56.9%増 )となりました。
海外ルートにおいては、連結子会社であるTRUSCO NAKAYAMA CORPORATION(THAILAND)LIMITED 及びPT.TRUSCO NAKAYAMA INDONESIAの業績と海外部の諸外国向け販売を含めています。連結子会社では、新型コロナウイルス感染症の影響により、タイ・インドネシアともに社会活動が制限される中で、EC企業への商品データ提供を加速化するなど、既存得意先様との取引を強化しました。また、EC企業やホームセンター企業を含む現地の新規得意先様との取引も拡大しました。
その結果、売上高は16億94百万円(前年同期比37.9%増)、経常損失は32百万円(前年同期は2億10百万円の経常損失)となりました。
③仕入及び販売の実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は仕入価格によっています。
2 上記金額には、消費税等は含まれていません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 上記金額には、消費税等は含まれていません。
④目標とする経営指標の達成状況
目標とする経営指標及び当連結会計年度の実績、翌連結会計年度以降の目標数値については「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(2)目標とする経営指標」に記載のとおりです。
(2) 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ 142億18百万円増加 の 2,230億72百万円 ( 前連結会計年度末比6.8%増 )となりました。その主な内訳は、現金及び預金が90億85百万円増加、売掛金が32億57百万円増加、商品が10億85百万円増加、令和6年に大阪本社の移転を予定している本町セントラルビルの取得などにより、土地が53億27百万円増加、GROUND株式会社、株式会社シナモンとの資本業務提携に基づく株式引受などにより、投資有価証券が11億16百万円増加し、機械装置及び運搬具が11億9百万円減少、建設仮勘定が27億81百万円減少、ソフトウエアが16億68百万円減少したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ 45億8百万円増加 の 804億2百万円 ( 前連結会計年度末比5.9%増 )となりました。その主な要因は、買掛金が 9億10百万円増加 、未払金が 3億74百万円増加 、未払法人税等が 11億90百万円増加 したことによるものです。
(純資産)
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ 97億9百万円増加 の 1,426億69百万円 ( 前連結会計年度末比7.3%増 )となりました。その主な要因は、利益剰余金が親会社株主に帰属する当期純利益 116億3百万円 の計上により増加し、配当金22億42百万円の支払などにより減少したことによるものです。自己資本比率は前連結会計年度末の 63.7% から 64.0% となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
①当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、159億26百万円の収入超過(前連結会計年度は150億68百万円の収入超過)となりました。その主な要因は、税金等調整前当期純利益169億88百万円、減価償却費69億57百万円、未払消費税等の増加20億71百万円の収入に対し、売上債権の増加35億40百万円、法人税等の支払額33億92百万円、有形固定資産売却益34億66百万円、たな卸資産の増加10億36百万円の支出によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、 45億96百万円の支出超過(前連結会計年度は87億43百万円の支出超過)となりました。その主な要因は、土地の譲渡など、有形固定資産の売却による収入49億46百万円に対し、プラネット愛知の物流センター用地や本町セントラルビルの取得にかかる支払など、有形固定資産の取得による支出78億75百万円によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、 22億43百万円の支出超過(前連結会計年度は77億22百万円の収入超過)となりました。その主な要因は、配当金の支払22億41百万円によるものです。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ91億5百万円増加し、414億49百万円(前連結会計年度末は323億44百万円)となりました。
②当社及び連結子会社の資本の財源及び資金の流動性について
当社及び連結子会社は、事業活動のための適切な流動性の確保と健全な財政状態の維持のため、営業キャッシュフローの創出に努めています。
当社及び連結子会社の主な資金需要は、商品の仕入れ、販売費及び一般管理費等の営業費用等の運転資金、並びに物流設備や情報システム等への設備投資資金です。これらの資金需要につきましては、基本的に営業キャッシュフロー及び自己資金を主な源泉と考えています。ただし、当社及び連結子会社の成長スピードを加速させるための設備投資を中心とした戦略的な資金につきましては、必要に応じて金融機関からの借入により調達することとしています。なお、安定的かつ効率的な資金調達に備えるため、複数の取引金融機関と当座貸越契約を締結しております(極度総額500億円、当連結会計年度利用残高170億円)。
この方針に従い、当連結会計年度における運転資金、設備投資資金につきましては、自己資金並びに金融機関からの借入金を充当しております。今後も資本と負債のバランスに配慮しながら、必要な資金を調達してまいります。
現預金につきましては、流動性確保のため、月商の1か月分を目途に保有する方針としておりますが、前連結会計年度においては、新型コロナウイルス流行による経済危機発生の可能性を踏まえ、金融機関から総額100億円を長期借入により調達してプールしており、資金の流動性を一層高めております。
また、財務の健全性等について、客観的な視点で認識することを主たる目的に、毎期、格付投資情報センター(R&I)から発行体格付を取得しており、本報告書提出時点においては「A」(シングルA)となっております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社及び連結子会社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち特に重要なものは以下の通りです。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大により、以下の見積りに重要な影響を与える事象は発生しておりません。
しかしながら、今後の事業に与える影響につきましては、継続的に注視していく必要があるものと考えております。
①固定資産の減損損失
当社及び連結子会社は、「2 事業等のリスク」に記載のとおり、令和3年12月期連結貸借対照表において、有形固定資産を中心として、固定資産の総額は1,070億66百万円を計上しており、総資産に対する比率は48.0%となります。事業用資産は、管理会計上の事業所ごと、賃貸用資産及び遊休資産は物件ごとにグルーピングしております。
経営環境の悪化や時価の著しい下落等が生じ、回収可能価額が帳簿価額を下回る状況となった場合には、減損損失が発生し、当社及び連結子会社の業績に重要な影響を与える可能性があります。
②たな卸資産の評価
当社及び連結子会社は、「2 事業等のリスク」に記載のとおり、令和3年12月期連結貸借対照表において、たな卸資産426億27百万円を計上しており、総資産に対する比率は19.1%となります。一定の保有期間が経過した滞留在庫について、商品の性質に応じた評価減率を設定し、評価を行っています。滞留在庫の定義や評価減割合が年度末時点のたな卸資産の収益性を適切に反映しているか否かに関して、商品等の過去の販売実績が将来の期間においても継続すると仮定して商品等の将来の販売可能性を見積もっています。
将来における景気等の市場経済を取り巻くさまざまな外部要因や著しい技術改革等によって、商品等の販売実績が当初の想定を大きく下回った場合には、たな卸資産の評価額が変動し、当社及び連結子会社の業績に重要な影響を与える可能性があります。
③繰延税金資産の評価
将来の課税所得を見積り、回収可能性がある将来減算一時差異についてのみ、繰延税金資産として資産計上を行い、回収不能なものについては評価性引当額を計上しています。経営環境等の変化により、課税所得の見積りの変更が必要となった場合には、繰延税金資産の計上額が変動し、当社及び連結子会社の業績に重要な影響を与える可能性があります。
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