当社グループは、社内規程として「リスク管理規程」を制定し、リスク発生前の未然防止とリスク発生後の事後対応をリスク管理の両軸として定め、事業の円滑な運用に資するためにリスク管理体制を構築し、社長をその最高責任者とすることを規定しております。未然防止活動については、運営機関としての「リスク管理統括責任者」・「所轄責任者」を、審議・評価機関としての「リスク管理委員会」を設置して、年次のリスク管理計画と実行を基本とした管理活動を実施しております。また、事後対応活動については、軽微な事案は状況と規模に応じて「リスク管理統括責任者」又は「所轄責任者」が指揮し、重要性の高い広範な事案は、最高責任者が「対策本部」の設置の可否判断を含めて、その運営を指揮いたします。未然防止活動におけるリスクの評価に関しては、リスクの影響度と発生頻度を勘案した「リスクの重要度」を判定しており、発生頻度の高いものについては、リスク低減や回避等を主眼とした防止活動重視の管理を、影響度の高いリスクについては緊急時対応マニュアルの整備等の対応重視の管理を行っております。
当社グループの保有リスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある主な事項には以下のものを想定しております。従って、これらは全てのリスクを網羅したものではありません。また、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)商品市況リスク
当社グループは、多種多様な用途及び種類の商品を取扱っておりますが、これらの商品の多くは商品相場の変動の影響を受けます。現時点では、会社の価値や業績に重要な影響を及ぼす相場の大きな変動はありませんが、原料となる鉱石や中間体の相場や原油価格の変動に大きく影響を受ける化学品を主力商材としているため、その変動規模によっては企業業績及び財務状況に大きな影響を与えることが予想されます。
特に、当連結会計年度以降、コロナ禍の影響が引き続く中で、資源保有国の価格政策やウクライナ情勢の緊迫化による資源価格の高騰が顕著かつ継続化しており、当社グループの2023年3月期以降の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループといたしましては、取扱商品の多様化や販売・調達のグローバル化を通じてその影響を分散化し、リスクの低減に努めております。
(2)法的規制リスク
当社グループは、多種多様な用途及び種類の商品を取扱っており、関連する法令・規制は多岐に亘るため、法令遵守を逸脱するリスクを常に内包しており、その顕在化の場合には将来の当社グループの業績及び財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。なお、商社である当社が特に遵守すべき法令として、化学品専門商社としての「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)、貿易商社としての「外国為替及び外国貿易法」(外為法)、輸入商社としての「製造物責任法」(PL法)等が挙げられます。これらの法令について重大な法令遵守違反が発生した場合には、業績及び財務状況への影響以前に、当社の築き上げてきた化学品専門貿易商社としての信頼や企業価値を毀損するものと考えております。
当社グループといたしましては、「安全保障輸出管理規程」や「輸入化学物質管理マニュアル」等の規程の整備や社内の教育制度の充実、社外のコンサルティング等を活用したセミナー受講等、コンプライアンス遵守の意識と技法の育成と継承に注力し、リスクの回避と低減に努めております。
(3)海外事業リスク
当社グループは、米国、豪州、中国、東南アジア、中近東等に海外拠点を置いておりますが、各国の政治、経済の動向に加え、海外の法的規制や制度変更等に起因する予測不能な事態の発生が、将来の当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当連結会計年度においては、当社グループの業績に顕著な影響を及ぼした具体的カントリーリスクはありませんでした。
しかし、2023年3月期においては、ウクライナ情勢の緊迫化や中国のコロナ政策による影響が、景気やサプライチェーン等に影響を与えることが危惧されます。ウクライナ危機については当社グループへの直接的な影響は軽微であると推測されますが、中国のロックダウンとその後の動向については、当社における商材の重要な調達国として中国が挙げられることや上海の連結子会社の事業活動に影響を与えていること等のリスク要因を抱えており、当社グループの2023年3月期以降の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社グループといたしましては、商材調達ルートの分散化や多重化を邁進すること、迅速な情報収集と対応策の検討を心懸けることにより、海外事業リスクの低減と回避に努めてまいります。
(4)親子上場に関するリスク
堺化学工業株式会社は当社議決権の約64%を所有する第1位の株主であり、当社の親会社に該当いたします。当社は堺化学工業株式会社製品の仕入・購入及び原材料の納入・販売を行っており、営業取引上で重要な関係を有していることから、堺化学工業株式会社の営業政策や当社との関係性の変化によって、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、「親子上場企業」に該当することから、親会社の利益追求により当社の少数株主利益を害される利益相反のリスクも包含しております。利益相反リスクが発生した場合には上場企業としての信頼を喪失し、企業価値の毀損に繋がると考えております。
これらのリスクに対応するため、当社グループといたしましては、同社との営業取引価格や取引条件が公正妥当であることの検証やその取引が当社の利益を侵害していないかについての検証と取締役会の審議、社外役員を含めた当社の取締役会・監査役会を中心とした当社独自の意思決定と監査を行うことにより、リスクの回避と低減に努めております。
(5)事業投資リスク
当社グループは、新規事業の開発・開拓に向けて、海外事業への進出やM&A等の検討を続けておりますが、投資対象企業の財政状態や経営成績の動向によっては、将来の当社グループの業績及び財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。現在、商材調達ルートの新規開拓のために新たな海外出資を検討しており、当該投資はリスクを内包いたします。このような新規事業投資にあたっては、チャンスとリスクの適正評価や厳密なデューデリジェンス等を実施し、事業投資リスクの低減に努めてまいります。
(6)為替変動リスク
当社グループは、営業上の外貨建取引や海外連結子会社の存在に伴う外貨建の債権債務を有しており、為替変動、特に当社の外貨建取引で支配的なUSDの為替レートの影響を受けます。事業年度中の貿易取引については、実需原則に従った為替予約を概ね付しており、債権債務の決済差によるリスクの低減に努めておりますが、海外子会社への外貨建長期貸付金等の長期予約の付されていない債権については年度末為替評価の影響を受けます。外貨建債権債務の貸借対照表上のバランスは債権が債務を概ね上回るため、年度末為替レートが円高に振れた場合には、2022年3月期段階で1USDに対し1円の円高で概ね10百万円弱の年度末為替差損が発生いたします。
当連結会計年度後半には大幅な円安が進行しましたため、当社グループは営業外収益として多額の為替差益を計上いたしましたが、一方では資源価格の高騰と相俟って調達価格の大幅な上昇を招いております。米国の金融事情や昨今の世界情勢から惹起される不安定な為替相場が以降も継続した場合には、当社グループの2023年3月期以降の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループといたしましては、外貨建債権債務のバランス化とその影響による金融コスト増加等の影響を検証しながら、リスクの低減に努めております。
(7)情報管理リスク
当社グループは、事業上の機密情報や事業上入手した顧客情報等を保有しており、不正アクセス等のサイバー攻撃や突発的なシステム障害等により、重要データの破壊、改竄、情報漏洩、甚大なシステム停止等を引き起こす可能性があります。また、取引先等との情報伝達手段がグローバル化の影響もあって電子メールに集中する傾向にあり、通信の機密性がITセキュリティに依存している現状をリスクとして認識しております。これらのリスクが顕在化した場合は、取引先等と締結している秘密保持契約違反や内部統制上の情報保存管理体制の欠陥、「個人情報の保護に関する法律」の法令違反等の様々なコンプライアンスの欠如として、当社の企業信頼性を大きく毀損するものと考えております。
当社グループは、「情報セキュリティ基本方針」及び「情報セキュリティ管理規程」等を制定しており、これらの情報の取扱いに関する管理を更に強化するとともに、情報システムのウイルス感染やサイバー攻撃によるシステム障害、社外への情報漏洩等の突発的事態に対する対策を図り、情報管理リスクの低減に努めてまいります。
(8)自然災害等リスク
想定外の大地震や台風被害等の自然災害、感染症の蔓延等により、当社の施設や従業員等への直接被害に加えて、ステークホルダーや社会への影響によるサプライチェーンの崩壊等の事象が発生した場合には、当社グループの業績や財政状態などに大きな影響を及ぼす可能性があります。
2022年3月期後半には新型コロナウイルス感染症による経済の停滞や景気への影響は緩和しましたが、中国におけるロックダウン等の局所的脅威は未だに継続しており、当社グループにおいても、(3)海外事業リスクでも記載のとおり当社グループの2023年3月期以降の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、「緊急時対応マニュアル」を制定し、「災害時行動基準」及び「海外危機発生時行動基準」等において、自然災害や海外でのテロとの遭遇、感染症被害等の事態別の緊急時対応のルールを定めており、従業員や関係者の安全確保と連絡網の確保・対応処理の明確化等のクライシスマネジメントは制度化しておりますが、事業継続計画(BCP)策定には未だ至っていないため、リスク管理上の大きな課題として認識し同計画の早期の策定と整備を進めてまいります。
(9)取引先信用リスク
当社グループは、国内外の取引先に対し様々な形で信用供与を行っており、取引先の経営状況の悪化等による信用リスクを有しております。貸借対照表上に記載されている「受取手形及び売掛金」・「電子記録債権」等がそのリスクに晒されている代表的な資産であり、その顕在化の場合には将来の当社グループの業績及び財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社では、債権発生元である取引先に対する与信管理及び債権保全管理等を徹底しており、与信の承認にあたっては、その信用供与レベルに応じての多段階の認証システム、複数の信用調査会社を通じての情報の入手活動、ファクタリングや取引信用保険を利用した債権保全等の措置を講じて当該リスクの低減に努めております。
2022年3月期においては、取引先との契約管理や与信手続きを監督する審査管理課を創設するとともに、与信管理規程の改訂準備を進めてまいりました。
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