業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善が続くなかで個人消費への本格的な波及までには及ばない状況であるものの、一定の水準を維持する企業収益を背景に、総じて良好に推移しました。

堅調なインバウンド需要や、ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックといった世界的スポーツイベントを契機とする関心の高まりも、当社グループにとって追い風となりました。

先行きについては、米国を絡めた近隣諸国との関係性、中東地域を巡る情勢や、世界規模で影響を及ぼしている新型コロナウイルス感染症の収束の行方が注視されます。

このような状況のもと、当社グループは、2016年2月から2021年1月までを対象期間とする中期経営計画「新機軸」に掲げた経営目標の達成に向け、総力を挙げて以下のアクションプランに取り組みました。

「東京ドームシティ(以下、「TDC」といいます。)に、将来にわたり持続的に価値をもたらすための環境整備」につきましては、東京ドームでは、選手のプレーをサポートすべく、天然芝に近いクッション性と耐久性・復元力を兼ね備えた最新の人工芝へ張り替えを行いました。

球場内の観戦環境の整備としましては、パーティースイート、バックスクリーンクラブに続く新たな観戦エリアとして、左中間フェンスにパーティールーム「NZK(エヌ・ズィー・ケー)」を2室新設しました。グループでお食事を楽しむだけでなく、フェンス開口部からは球場の空気や打球音を直接感じることができ、これまでにない臨場感を体験していただくことができます。

場内の飲食及び物販店舗につきましても前期に引き続きリニューアルを実施しました。メインとなる1階コンコースに、バラエティ豊かな11店舗の飲食委託店舗、及びウォークイン型店舗を含む5区画の雑貨店舗を新装し、当該フロア店舗のイベント当たりの売上は大幅に伸長することとなり、場内店舗全体での増収に寄与しました。

球場外周部においても、プロ野球をはじめとする様々なイベント開催時の演出やイベント情報など、来場された方々の様々なニーズへの対応として、360°の円柱型LEDボードを設置しました。スタジアムのICT化の推進は、ライブ・エンタテインメントの魅力の引き上げに繋がるものと考えております。

一方、持続的社会の実現に貢献する活動にも取り組み、場内販売においてストロー及び移動販売以外のドリンクのふたの提供を中止し、プラスチックゴミの削減に努めております。

オフト後楽園場外馬券場エリアの再開発については、昨年3月にキャビンスタイルホテル「ファーストキャビン」と、テイクアウト専門店を含む6つの飲食テナントを配した、お子様から大人まで楽しめるくつろぎの空間「Hi!EVERYVALLEY」をオープンさせました。10~20代の女性を中心に幅広く支持されており、収益への貢献のみならず、TDC全体の魅力向上にも繋がっております。

東京ドームシティ アトラクションズでは、ジオポリス地下1階に、屋内ファミリーコースター「バックダーン」と3Dシューティング「ガンガンバトラーズ」の、2つの新しいアトラクションを導入しました。荒天時にご来場されたお客様にもご利用いただけるため、お客様の満足度向上にも貢献しております。

「熱海後楽園ホテルのリニューアル」につきましては、熱海地区の観光需要が引き続き好調に推移するなか、昨年3月に複合型リゾート「ATAMI BAY RESORT KORAKUEN」をオープンさせ、宿泊利用をはじめ、「オーシャンスパ Fuua」での日帰り利用など、これまでにない様々なニーズにお応えする複合型リゾートとして生まれ変わりました。開業にあたっては、新たな宿泊施設に加え温浴施設の認知度の向上を図るため、宣伝・販促活動を強化するなど、個人の宿泊需要ならびに日帰り需要の取り込みを図りました。

「TDC内外における新規事業の追求及び新規顧客の獲得」につきましては、この1月の開催で12回目を迎えた自主イベント「ふるさと祭り東京2020」は、全国からたくさんのお客様が来場し大盛況となり、インバウンドのお客様を通じて日本の伝統芸能や美味しい食文化を広く世界に発信することができました。

 

また、当イベントで培った企画・運営ノウハウを活かし、国内・海外でのイベント展開を行っており、昨年5月にはアジア有数のリゾート地であるシンガポールのセントーサ島にて、主要コンテンツである「食」と「祭り」のイベントに参画し好評を博しました。国内においても宮城県仙台市、香川県高松市、静岡県静岡市の3都市で開催し、たくさんのお客様にご来場いただきました。

新規事業の追求としましては、来場者が年間4,000万人にものぼるTDCの動員力を活かすべく資本業務提携を進めました。株式会社アドインテとの提携においては、同社の開発する「AIBeacon(エーアイビーコン)」を活用し、スマートフォンを軸とした行動データのAI解析から、データの可視化や活用を支援するDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を共同で開発・提供し、将来にわたり持続的に価値をもたらすため来場者の体験向上と外部連携によるビジネス化を目指していきます。

Kotozna株式会社との提携においては、同社が開発した多言語翻訳ツールの「Kotozna chat(コトツナチャット)」を活用し、イベントやエンタテインメントにおけるインバウンド市場にて、言葉の壁を超えた感動の共有を目指し、協業による新規事業の可能性を模索しております。

「TDC外の既存事業の事業性の維持と向上」につきましては、流通事業では、化粧品市場の好況を背景に、売れ筋商品の把握と品揃えの充実を図ることで、前期に続き売上を伸ばしており、特に関西エリアが好調で、多くの利用者の支持を獲得しております。現在の好況の流れを受けて、更なる収益性向上を図るため、駅ビルを中心とした好立地・好条件の区画への出店を戦略的に実施し、成果を上げております。

「グローバル化・ユニバーサル化を視野に入れた環境整備」につきましては、増加する訪日外国人への対応として、アジア及び米国に向けてWEBメディアを中心に、WEB・SNS広告、日本紹介サイトによるTDCの認知度の向上に加えて、アジア全域に亘るWEBチケット販売の拡大、東京訪問予定者へのターゲティング広告によるデジタルクーポンサイトへの誘引により、訪日外国人の集客強化を図って参りました。

東京ドームホテルにおいては、世界柔道選手権やラグビーワールドカップの開催に伴うスポーツ団体の受注への取り組みや、海外旅行代理店への働きかけの強化により、外国人宿泊者は増加しました。

受入態勢の整備としましては、TDC構内において、東京都より東京観光案内窓口として承認された訪日外国人向けインフォメーションの新設、48カ国語に対応する双方向翻訳機器の導入など、外国人来場者が快適にお楽しみいただける環境を継続的に整備しております。

東京オリンピック・パラリンピックを見据えて普及が進むキャッシュレス対応につきましては、TDC構内における共通の決済環境を整備し、クレジットカード・電子マネー・QRコードに関して9つの決済ブランドに統一しました。これにより訪日外国人を含めた利用者の利便性の向上に加えて、決済業務の省力化などにも取り組んでおります。

「いつも安全・安心な環境を保ち続けること」につきましては、地震や火災など災害への対応力を高めるため、東京ドームをはじめとする各施設での防災訓練に取り組みました。特に東京ドームでは、プロ野球開催日毎の訓練に加え、コンサート主催者との合同訓練や、ふるさと祭り東京での出展者と連動した訓練を実施するなど、大規模集客施設におけるイベント開催時の対応力強化を図りました。

警備体制の面では、昨年11月に、警視庁富坂警察署と「東京ドームシティにおけるテロ警戒強化に関する協定」を締結し、TDCにおけるテロ発生の未然防止や発生時の被害拡大防止、さらに国内警備情勢に関する意識の向上や自主警備体制の強化などについて同警察署との連携を強化しました。加えて、皇室関連行事及びローマ教皇来日における警備協力も行い、これらの一連の取り組みに対して、所轄官庁より「警視総監賞」を受賞するなど、当社の安全に関する取り組みは高い評価を受けております。

「人的資源の獲得・育成」につきましては、専門職社員制度により、専門知識と経験を備えた人材の正社員登用が進み、加えてグループ全体での教育研修や人材交流を実施することで職場の活性化と運営力の強化を図っております。

一方、法改正を踏まえた労務管理、多様かつ柔軟な働き方の支援制度や業務の効率化を推進し、アルバイトを含めて採用力と定着率を高めており、合わせて障がい者の雇用機会創出・拡大を目的とする特例子会社の設立を決定しました。

また、日払いを中心とした労働者派遣事業を展開しているパーソナルエージェントホールディングス株式会社との資本業務提携を実施し、様々に変化している労働者の働き方や環境へ対応するための取り組みを予定しております。

 

「グループ経営体制の再構築」につきましては、かねてより当社グループにおいて基幹システム開発やネットワークのメンテナンスなどの重要な役割を担っていた株式会社ソフトレックへ出資することにより、IT人材の確保を図りました。加えて、当該事業の多角化の可能性や当社グループ傘下とすることで業績の改善が見込まれることから完全子会社化し、同社を株式会社東京ドームITソリューションズと改称しました。

経営陣のインセンティブ付けとなる報酬体系の見直しも図り、経営陣の報酬は、昨年5月より株式報酬を導入し、中長期的な企業価値向上を目指す報酬体系となっております。また、次期中期経営計画の策定にあたり、業績連動型賞与の業績指標の見直しにも取り組んで参ります。

 

当連結会計年度においては、台風等の自然災害による影響はありましたが、東京ドームにおける野球関連イベントの開催日数の増加や、東京ドーム内の飲食店舗の販売好調、及び昨年3月に複合型リゾート「ATAMI BAY RESORT KORAKUEN」を開業したこと等により、売上高は915億5千7百万円(前年同期比5.2%増)、営業利益は117億2千8百万円(前年同期比2.2%増)、経常利益は106億6千9百万円(前年同期比2.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては80億2百万円(前年同期比14.9%増)となりました。

次に事業の種類別セグメント(セグメント間の内部売上高または振替高を含む)の概況をご報告申し上げます。

なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。

 

<東京ドームシティ>

(東京ドーム)

東京ドームは、読売巨人軍のリーグ優勝によりクライマックスシリーズ及び日本シリーズが合わせて6試合、また日本代表チームの優勝で幕を閉じたプレミア12が6試合開催され、大きな賑わいを見せました。またMLB開幕戦関連やプロ野球公式戦の売上が好調だったこと等により、増収となりました。

 

(東京ドームシティ アトラクションズ)

東京ドームシティ アトラクションズは、シアターGロッソにおいて「ミュージカル 忍たま乱太郎」が開催されたことや、園内ゲームコーナーの売上が好調だったこと等により、増収となりました。

 

(東京ドームホテル)

東京ドームホテルは、客室稼働率は若干低下したものの、客室単価が大きく上昇したことによる客室収入の増加、及びレストラン店舗の復調により、増収となりました。

 

(ラクーア)

ラクーアは、スパの入館者数の増加、及び入館料収入やスパ内の飲食店における売上が増加したこと等により、増収となりました。

 

(黄色いビル)

黄色いビルは、「ラウンジセブン」の通年稼働や、昨年3月に新規開業した「ファーストキャビン 東京ドームシティ」や「Hi!EVERYVALLEY」の効果もあり、増収となりました。

 

以上の結果、東京ドームシティ事業全体での売上高は696億7千7百万円(前年同期比3.0%増)、営業利益は160億5千2百万円(前年同期比2.5%増)となりました。

 

 

<流通>

既存店の好調に加え、ショップイン神戸ハーバーランドumie店やショップイングランデュオ蒲田店の開業により、増収となりました。

以上の結果、売上高は86億3千2百万円(前年同期比6.9%増)、営業利益は8千7百万円(前年同期比359.5%増)となりました。

 

<不動産>

テナントの稼働が堅調に推移したこと、及び管理費用の減少により、好調に推移しました。

以上の結果、売上高は16億1千8百万円(前年同期比2.1%増)、営業利益は6億2百万円(前年同期比19.5%増)となりました。

 

 

<熱海>

熱海後楽園ホテルは、「ATAMI BAY RESORT KORAKUEN」としてリニューアルオープンしたことにより、増収となりましたが、開業に伴う諸経費の増加により、損失増となりました。

以上の結果、売上高は41億5千8百万円(前年同期比75.0%増)、営業損失は8億8千6百万円(前年同期比3億1千6百万円の損失増)となりました。

 

<競輪>

松戸競輪場は、開催日数の減少はあったものの、日本選手権(GI)を含む本場開催の好調により、増収となりました。

以上の結果、売上高は21億9百万円(前年同期比1.6%増)、営業利益は2億1千6百万円(前年同期比102.9%増)となりました。

 

<その他>

指定管理事業において、休館施設の再稼働や運営受託施設が増加したこと等により、増収となりましたが、業務委託費等の諸経費の増加により、減益となりました。

以上の結果、売上高は60億1千5百万円(前年同期比1.4%増)、営業損失は3千2百万円(前年同期比4千5百万円の減益)となりました。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

該当事項ありません。

② 受注実績

該当事項ありません。

③ 販売の状況

当連結会計年度における販売の状況をセグメントごとに示すと次の通りであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

東京ドームシティ

69,129

+3.0

流通

8,632

+6.9

不動産

1,613

+2.1

熱海

4,142

+74.8

競輪

2,109

+1.6

その他

5,930

+1.4

合計

91,557

+5.2

 

 (注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

      2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 財政状態

<資産>

資産合計は、3,043億5千万円(前年同期比52億6千9百万円増)となり、連結ROAにつきましては、3.5%(前年同期比0.1%増)となりました。

流動資産については、運転資金調達を実施したことにより、現金及び預金が増加しました。その結果、流動資産合計は、257億5千8百万円(前年同期比76億9千8百万円増)となりました。

固定資産については、「ATAMI BAY RESORT KORAKUEN」の開業に伴い、建設仮勘定が建物等の固定資産に振り替わっております。また、有形固定資産の減価償却が進んだ結果、固定資産合計は、2,768億3千2百万円(前年同期比22億7千3百万円減)となりました。

 

<負債>

負債合計は、1,957億9千7百万円(前年同期比12億1千2百万円減)となりました。有利子負債の圧縮が順調に進み、有利子負債(長期・短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債の合計)は、1,331億1千9百万円(前年同期比12億5千8百万円減)となりました。

<純資産>

純資産合計は、1,085億5千3百万円(前年同期比64億8千2百万円増)となり、連結ROEにつきましては、7.6%(前年同期比0.9%増)となりました。

株主資本については、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加しました。その結果、株主資本合計は435億3千8百万円(前年同期比65億2千7百万円増)となりました。

その他の包括利益累計額については、松戸公産㈱の実効税率の増加に伴い土地再評価差額金の額に変動がありました。その結果、その他の包括利益累計額は、650億1千5百万円(前年同期比4千5百万円減)となりました。

 

なお、中期経営計画「新機軸」に掲げております目標とする経営指標につきましては、連結有利子負債の削減目標においては、既に達成しており、順調な削減状況と安定した収益力を背景に、格付け機関による発行体格付も引き上げられております。連結ROEにつきましても4期連続で目標値を達成しております。連結ROAにつきましては、目標値には満たないものの順調に推移しており、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の課題に取り組み、目標とする経営指標の達成を目指します。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、以下の要因により、前連結会計年度に比べ71億9千4百万円68.1%)減少し、177億6千1百万円となりました。

 

項目

前連結会計年度

当連結会計年度

比較増減
(百万円)

自 2018年2月1日
至 2019年1月31日
(百万円)

自 2019年2月1日
至 2020年1月31日
(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

16,845

19,827

2,982

投資活動によるキャッシュ・フロー

△11,311

△8,085

3,225

財務活動によるキャッシュ・フロー

△12,563

△4,547

8,015

現金及び現金同等物の増減額

△7,029

7,194

14,223

現金及び現金同等物の期首残高

17,595

10,566

△7,029

現金及び現金同等物の期末残高

10,566

17,761

7,194

 

 

営業活動によるキャッシュ・フローは、198億2千7百万円の収入となり、前年同期比で29億8千2百万円の増収となりました。これは、東京ドームにおいて野球関連イベントの日数の増加や、それに伴う売上好調等によるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、80億8千5百万円の支出となり、前年同期比で32億2千5百万円の支出減となりました。これは前期において「ATAMI BAY RESORT KORAKUEN」開業に伴う設備投資が大きく増加したためであります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、45億4千7百万円の支出となり、前年同期比で80億1千5百万円の支出減となりました。運転資金調達を行った影響はありますが、有利子負債の削減は順調に進んでおります。

 

資本の財源及び資金の流動性は、次の通りであります。

当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金及び設備投資資金であります。

当社グループは事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針とし、自己資金のほか、必要に応じて金融機関からの借入れ及び社債の発行により資金調達を行っております。

なお、重要な資本的支出の予定につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。

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