課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、資源事業を社業の柱とし、社会のニーズに応じた良質な資源の安定供給を図ることにより、発展・拡大してまいりました。今後とも、資源の開発・安定供給に努めてまいります。

機械・環境事業につきましては、社会のニーズに応じた良質な商品を提供するとともに、事業フィールドの拡大を図ってまいります。さらに、不動産事業や再生可能エネルギー事業につきましても、総合資源会社としてグループの総合力を発揮し、持続的成長を実現することにより、株主、取引先及び地域社会に貢献してまいります。

 

(2) 第2次中期経営計画の進捗について

当社グループは、2021年度から2023年度の3ヶ年を対象とした第2次中期経営計画を策定し、2021年5月に公表しております。本計画期間は鳥形山鉱業所(石灰石)の第3立坑建設工事、八戸鉱山(石灰石)の新規鉱区開発、チリ共和国アルケロス銅鉱山開発といった将来の成長を見据えた大型投資の本格的実行期間となり、このような積極投資に耐えうる収益の確保と財務の健全性を維持しながら、国内外の需要動向、特に石灰石の主要納品先である鉄鋼メーカーの構造改革などに対応していくことを重要課題としております。

本計画におきましては、長期ビジョン「資源の開発・安定供給を通じて社会に貢献するとともに、総合資源会社としてグループの総合力を発揮し、持続的成長を実現する」のもと、基本方針として「大型投資を着実に実行し、持続的成長へ向けた資源の獲得を目指す」・「国内外の需要動向に対応した経営資源の配分を行う」を掲げ、これらを実行に移すとともに、事業活動とSDGsへの取り組みの両立を図ることを目指しております。

 

本計画期間における当期進捗の概要は以下のとおりであります。

① 大型投資の進捗

鳥形山鉱業所第3立坑は2023年度中の本格運用を目指し順調に建設中であります。八戸鉱山新鉱区開発は2021年度に一部出鉱を開始しておりますが、開発工事が全て完了し本格操業となるのは次期中期経営計画期間を予定しております。アルケロス銅鉱山は環境許認可手続きの進捗などの未確定要素により開発決定には至っておりませんが、2024年度中の操業開始を目指しております。

 

② 各セグメントの進捗

イ.資源事業(鉱石部門)

安定供給体制の再構築につきましては、2021年1月の鳥形山鉱業所の長距離ベルトコンベア火災事故を受け、監視体制の強化や設備の耐熱化を図るとともに、改めて操業上のリスクや出荷停止時における臨海鉱業所のバックアップ体制の再評価、見直しを行っております。

輸出拡大につきましては、現向先での拡販及び安定供給体制の強みを生かした複数年契約の締結を推進し、自社海外拠点や外部企業による情報を統合、分析のうえ海外石灰石需要の掘り起こしを行い、新規取引先の獲得を目指しております。

その他、鉱物資源の価値向上につきましては、取引先の理解を得ながら進めており、また、AI・ITの導入についても、プラントの安定操業や品質確保を目的とした点検、監視業務の高度化を図るべく導入試験を重ねております。

 

ロ.資源事業(金属部門)

鉱山事業と製錬事業の取扱い数量をバランスさせ、外部要因に左右されない収益構造を確立すべく既存銅鉱山の鉱量増大及び新規銅鉱山の開発を目指し、チリ共和国を中心に調査を実施しております。製錬事業におけるコスト低減を最優先課題とした業績改善につきましては、製錬会社の出資各社と協調しながら着実に進めております。2021年度後半より電力単価、資材調達価格の高騰など厳しい事業環境が続いておりますが、今後とも製錬所の安定操業と適正な設備投資水準などを検討してまいります。

ハ.機械・環境事業

次世代型水処理剤の開発と新規需要開拓につきましては、2020年度に試験販売を開始し新規取引先を開拓中であります。また、台湾・東南アジア圏での市場開拓につきましても現在、生産拠点の検討を行っております。

集じん機の海外展開につきましては、当社からエレメントを供給し現地合弁会社で完成品を制作のうえトンネル工事用にレンタルするなど、市場開拓に取り組んでおります。また、エレメント製造の価格競争力強化を目的として、自動化や新しい焼結方法の研究などを進めております。

 

③ 財務指標

中長期目標としてROA(総資本営業利益率)7%以上、自己資本比率60%以上を目指しております。本中期経営計画期間は一時的に償却費が増大することや、投資活動に伴い借入金など他人資本の増大が見込まれることから、本中期経営計画最終年度である2023年度の目標をROA4%以上、自己資本比率57.5%以上としております。

2021年度は大幅増益によりROA8.1%、自己資本比率60.7%の実績となっております。

 

④ 利益計画

2021年度の連結営業利益は157億円となり、計画に対し63億円の大幅増益となりました。主な増益要因は資源事業(金属部門)におきまして、銅価上昇や円安進行により海外銅鉱山の収益が大幅に改善したことなどで46億円の増益、また、国内外の調査活動がコロナ禍により次年度以降に繰延べられたことも増益要因となっております。

 

(3) TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った情報開示

当社グループは、経営理念である「日鉄鉱業グループは、豊かな未来社会づくりに貢献するとともに、社員一人一人が生き生きと誇りを持って働ける企業を目指します」のもと、環境・社会課題への取り組みを明確にし、持続的な事業活動と中長期的な企業価値向上を図ることを目的として「サステナビリティ基本方針」を制定のうえ、マテリアリティ(重要課題)を特定しておりますが、その1つに「気候変動への対応」を掲げております。

今後、CO 排出量の削減等に取り組みながら、気候変動が事業に与える影響につきまして、シナリオ分析等を推進しTCFDの提言に基づく開示内容の拡充に努めてまいります。

①  ガバナンス

SDGsやカーボンニュートラルなど、気候変動や社会課題に対する取り組みをさらに強化し、持続可能な社会の実現と持続的な企業価値向上を図るため、2022年4月にサステナビリティ委員会を設置しております。

サステナビリティ委員会では、気候変動をはじめとしたサステナビリティに関する方針や目標及び実行計画の策定、目標に対する推進管理や評価、個別施策の審議を行い、定期的に取締役会に報告や提言を行っております。

<サステナビリティ委員会体系図>


 

② 戦略

気候変動が当社グループの各事業に与える影響につきまして、気温上昇を抑えるために必要な経済施策、また、その温度上昇時に想定される環境被害などを示した気候関連シナリオである2℃以下及び4℃シナリオを想定し、網羅的に「リスク」と「機会」を抽出しております。気候変動がもたらすリスクは、低(脱)炭素社会へ移行することに伴うリスクである「移行リスク」と気候変動による災害等により顕在化するリスクである「物理的リスク」に分類され、さらに物理的リスクは集中豪雨や洪水などの一過性の気候現象によって惹起される急性的リスクと、海面上昇や熱波などの長期的な影響が持続する慢性的リスクに分類されております。今後は更にシナリオ分析を進め事業に対する影響を把握し、戦略を策定してまいります。

<抽出したリスクと機会>


 

③ リスク管理

当社グループでは、サステナビリティ委員会を2022年4月に設置し、気候変動に関する問題について対応しております。サステナビリティ委員会では気候関連のリスクと機会を抽出、特定し、その後の対応状況のモニタリングを通じて、評価と再検討を行ってまいります。また、カーボンニュートラルに関する取り組みにつきましてもCO排出削減計画を検討し、実行状況の管理と必要な対応を行ってまいります。重要なリスクにつきましては定期的に取締役会に報告を行ってまいります。

 

④ 指標と目標

当社グループは、気候変動に対する取り組みとして、設備の効率化・省エネ化等による燃料や電気使用量の削減、自家消費用の再生可能エネルギー発電設備の導入や再エネ電力への切り替えなどの対応を段階的に実行に移すことでCO排出量の削減に努めてまいります。具体的な目標として、日本国内におけるグループ会社の直接排出量(Scope1)と他社から購入する電気等のエネルギー使用に伴う間接排出量(Scope2)を合わせた国内CO総排出量のうち、化石燃料や電気の消費に伴うエネルギー起源のCO排出量について、2030年度までに日本政府のCO排出区分別の目標※1である2013年度比38%以上の削減※2を目指してまいります。なお、生石灰製造に伴い発生するプロセス由来の非エネルギー起源CO(約100千t-CO)につきましては、今後の技術動向を注視し、CCUS(Carbon dioxide Capture,Utilization and Storage)等の新技術が社会実装可能となった際には導入を推進することで、より一層のCO排出削減に取り組んでまいります。

また、長期目標として2050年度における当社グループの非エネルギー起源COも含めた直接、間接排出量(Scope1+Scope2)につきまして、新技術の導入やカーボンオフセット等の対策も取り入れ、カーボンニュートラルの実現を目指してまいります。


※1  2030 年度までの日本政府のCO 排出区分別の目標

地球温暖化対策計画における「地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画」( 2021 10 22 日閣議決定)において示されたCO 排出区分ごとの削減率

※2 2013年度比38%以上の削減

※1の排出区分のうち「産業部門」である工場、事業所で消費する燃料や電力由来のCOの削減率

 

 

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