(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当期のわが国経済は、米中貿易摩擦や欧州の政治情勢など海外の不安定な動きに注意を要しましたが、雇用・所得環境の改善が続く中で各種政策の効果もあり、景気は緩やかな回復基調で推移いたしました。
住宅業界においては、貸家の相続税対策需要が減少したものの、住宅ローン金利が引き続き低水準にあったことなどから、平成30年度の新設住宅着工戸数は前期比0.7%増の95万戸となりました。
こうした中、当社グループは中期経営計画「First Step For NEXT50」(平成29年度~平成31年度)の2年目において、「介護離職ゼロ」、「子育て離職ゼロ」の社会の実現を目指して「まちなかソリューション」を提案し、展開いたしました。当期は、政府のコンパクトシティ誘導政策が進む中、「まちなか」の狭小敷地や防火地域に対応した商品開発を進め、戸建住宅や賃貸住宅の競争力強化に努めました。また、非住宅の大規模リフォーム・リノベーション分野への更なる進出を図るため、大末建設株式会社(大阪府大阪市)に出資し、持分法適用関連会社といたしました。さらに、中期経営計画の重点施策の一つである海外事業においては豪州及び米国の住宅建設会社に出資し、両国への進出を果たしました。このほか、空き家問題の解消に向けてグループ内の連携を密にした取組みを推進いたしました。
その結果、上期相次ぎ発生した自然災害の影響があったものの、マンション分譲等戸建住宅以外の事業が好調に推移したことにより、当期の売上高は3,993億円(前期比2.8%増)、経常利益は91億円(前期比18.8%増)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は53億円(前期比9.9%増)となりました。
当期における事業別の概況は、次のとおりであります。
戸建住宅事業
注文住宅においては、センチュリーモノコック構法 *1 の3階建て木質系工業化住宅「CENTURY Primore3(センチュリー プリモア)」や、耐震木造住宅「MJ Wood(エムジェイ ウッド)」では「MJ FRAME LC(エムジェイ フレーム エルシー)」を発売し、都市部の多様なニーズに応えて競争力強化を図りました。また、近年増加傾向にある平屋住宅への対応として、地域限定で販売していた木質系工業化住宅「MISAWA ONE(ミサワ ワン)」にセンチュリーモノコック構法を採用した平屋タイプのGFシリーズをラインアップし、全国展開いたしました。同構法による住宅の受注は好調で、戸建住宅の受注拡大に寄与いたしました。このほか共働き世帯への様々な提案を盛り込んだ木質系工業化住宅「SMART STYLE H (スマート スタイル エイチ)新・スキップ蔵」を発売しております。なお、「CENTURY Primore3(センチュリー プリモア)」は2018年度グッドデザイン賞を受賞し、当社は住宅業界唯一の29年連続での受賞となりました。
分譲住宅においては、新しい販売戦略としてミサワライフデザインシステム *2 のノンリコオプション *3 を推進し、「ヒルズガーデン湘南羽鳥」(神奈川県藤沢市)など同オプション対象分譲地の販売に注力いたしました。また、提携法人との共同開発分譲を全国で展開するとともに、コンセプトを明確にした分譲で差別化を図り、資産価値の高いまちづくりを推進いたしました。
*1 南極昭和基地の居住棟にも用いられている120mm厚の木質パネルを使用し、接合部を強化した高耐力仕様を標準採用した構法で、住
宅の断熱性と開放性の両立を実現しています。
*2 住宅ローンの残債がある時の自宅の活用を「貸せる」「売れる」「住み継ぐ」「返せる」という4つの選択肢で提案する当社独自
の仕組み
*3 一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)の「かeせるオプション」を活用し、住宅のノンリコース化(償還・償還請求を行わな
いこと)を実現する仕組み
資産活用事業
賃貸住宅においても「まちなか」に対応する商品開発に取り組み、ZEH *1 に対応し大収納空間「蔵」の付いた木質系賃貸住宅「Belle Lead SkipHigh(ベルリード スキップハイ)」を発売いたしました。同商品では、当社が独自に開発した建物の被災度判定計「GAINET(ガイネット)」や宅配ボックスなどを標準仕様として周辺物件との差別化を図りました。
また、都市部を中心に店舗や賃貸住宅を併用した中層耐火建物も積極的に展開いたしました。
さらに、法人の遊休地等を活用した資産活用の提案を推進し、社宅や社員寮、医療・介護施設や企業内保育施設などの受注拡大に努めました。障がい者グループホームを核としてその家族などが住まう新しいコミュニティ「cha-cha town(チャチャ タウン)」(千葉県富津市)はグッドデザイン賞を受賞いたしました。また、都市型コンパクト保育園「ナーサリールーム ベリーベアー宮崎台 *2 」(神奈川県川崎市)ほか、2件の子育て支援施設でキッズデザイン賞を受賞しております。
*1 年間の一次エネルギー消費量が正味でゼロとなる住宅「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略
*2 株式会社ネス・コーポレーションとの共同受賞
リフォーム事業
従来の戸建住宅中心のリフォームから、非住宅やマンション等の大規模リフォーム・リノベーション分野への強化を図るため、昨年10月に、リフォーム事業のブランド名として使用してきた「ミサワホームイング」を「ミサワリフォーム」へと変更いたしました。
マンション建設を中心に幅広い実績を持つ大末建設株式会社に出資し、持分法適用関連会社とすることでリフォーム・リノベーションに加え、リファイニング建築 *1 への取組みも強化しております。なお、同社との協業第一弾のリファイニング建築「ASPRIME(アスプライム) 千代田富士見 *2 」(東京都千代田区)は、グッドデザイン賞を受賞いたしました。
また、首都圏のリフォーム会社であるミサワリフォーム株式会社は都心部の顧客獲得に向けて東京都の新宿、駒込、池袋に営業所を、神奈川県横浜市にはショールームを開設いたしました。東京都港区青山に開設したリフォームコンサルティングサロン「ミサワリフォームAOYAMA SALON」ではVR(仮想現実)技術を活用した提案のほか、高級家具・住宅設備メーカーとの連携による満足度の高いリフォーム提案に取り組みました。
このほか、将来の介護に備えるための「そなえるリフォーム」も積極的に展開いたしました。
*1 青木茂氏が提唱する建築定義で、一般的なリフォームやリノベーションとは異なり、内外装や設備類、間取りなどの変更のみならず
建物自体の耐震性や耐用年数を大幅に向上させて長寿命化を図る手法
太平洋セメント株式会社、株式会社青木茂建築工房の登録商標
*2 受賞主体はミサワホーム株式会社及び株式会社青木茂建築工房
まちづくり事業
新たな収益源の確保を目指し、行政や民間企業への法人営業を強化して医療・介護・子育て支援を中心とした複合開発やコンパクトシティ型不動産開発への取組みを推進いたしました。
昨年4月には、政府や自治体が推進するスマートウェルネス構想を受けて、医療・介護・保育など複数の機能を持つ商業施設「ASMACI(アスマチ)浦安」(千葉県浦安市)を開業いたしました。また、隣接地にはASMACI浦安の利便性を享受できるアクティブシニア *1 向け分譲マンション「(仮称)ミサワホーム浦安シニアマンション」を着工いたしました。さらに、同施設から1km圏内に医療と介護の複合施設「(仮称)ASMACI浦安富岡」を建設しております。このほか、静岡県三島市においては、当社を代表企業とする「ASMACI三島プロジェクト共同企業体 *2 」が三島市等と事業協力協定を締結し、6年後の竣工を目指しております。
マンション分野では、地方都市での販売に注力し、地域ニーズに対応した事業の展開を図りました。当期は、新たに仙台や静岡、長野でマンション開発を進め、販売を開始しております。また、都心部においても千代田区飯田橋にタワーマンションを着工いたしました。こうした取組みの拡大により分譲マンションの販売戸数は増加し、まちづくり事業全体の売上を大きく伸ばしました。
*1 自立して生活ができるなど様々な活動に意欲的な高齢者を当社が独自に定義したもの
*2 構成企業は、当社のほか、株式会社ミサワホーム静岡、東レ建設株式会社、野村不動産株式会社、三菱地所レジデンス株式会社及び
株式会社アール・アイ・エーの6社
その他の事業
[海外事業]
昨年11月、豪州クイーンズランド州の住宅建設会社Homecorp Constructions Pty Ltd(ホームコープ コンストラクションズ)へ出資し、注文住宅及び分譲住宅の企画・設計を中心とした豪州における住宅事業の展開を本格化いたしました。また、本年1月には、米国テキサス州において、不動産用地の取得から分譲住宅の建設、販売まで幅広く手掛ける住宅建設会社Impression Homes LLC(インプレッション ホーム)へ出資し、米国での住宅事業にも進出いたしました。
なお、その他事業として、他には介護施設の運営や戸建住宅以外の外構工事、物流事業や当社グループ以外への材料販売など幅広く展開し、当期は売上高を伸長いたしました。
環境・社会貢献活動
当社は、社会を取り巻く様々な課題の中で当社グループが重点的に取り組むべき項目を「CSR重要課題」として設定し、SDGs *1 の17の目標との関連性についても整理してCSRレポートにおいて報告いたしました。当期も、持続可能な社会の実現に向けて責任ある事業活動を推進いたしました。
当社グループは、長年森林保全活動に取り組んでおりますが、東北ミサワホーム株式会社は「MISAWAオーナーの森 宮城」(宮城県宮城郡)における森林整備活動や地元貢献の取組みが高く評価され、宮城県より功労者表彰を受賞いたしました。環境活動の新しい取組みとしては、昨年7月に社員他総勢82名による千葉県勝浦市の海岸清掃も実施いたしました。
また、当社及び当社グループ6社は、国土交通省が実施するサステナブル建築物等先導事業(省CO 2 先導型)の「LCCM住宅 *2 部門」に応募し、採択されました。
さらに、全社的な資源循環の仕組みの構築とともに、工場・施工現場のゼロエミッション化やリサイクル素材「M-Wood2」の開発等、持続可能な社会への貢献につながる総合的な住まいづくりの取組みが評価され、「エコマークアワード2018」(主催:公益財団法人日本環境協会)において住宅業界で初めて優秀賞を受賞いたしました。
*1 Sustainable Development Goalsの略
*2 Life Cycle Carbon Minus(ライフサイクルカーボンマイナス)の略で、建設から居住、解体までの住宅のライフサイクル全体を通
してCO2排出量収支をマイナスにする住宅のこと
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動及び投資活動により201億円の支出、財務活動により100億58百万円の収入となり、当連結会計年度末残高は486億58百万円(前連結会計年度末に比べ101億32百万円の減少)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況及び連結ベースの財務数値により計算したキャッシュ・フロー指標は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の収入は、15億43百万円(前連結会計年度比111億18百万円の減少)となりました。これは主に営業貸付金及びたな卸資産の増加によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の支出は、216億44百万円(前連結会計年度比87億37百万円の増加)となりました。これは主に固定資産の取得、海外子会社への出資等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の収入は、100億58百万円(前連結会計年度比53億98百万円の増加)となりました。これは主に借入金の実行等の収入によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める住宅事業では、「生産」を定義することが困難(請負工事及び不動産売買)であるため、生産実績は記載しておりません。
b.受注状況
当社グループの事業は、住宅事業及びこれらに付随する事業がほとんどを占めており、実質的に単一セグメントであるため区分表示は行っておりません。
当連結会計年度における住宅事業の受注状況は、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高 (百万円) |
前年同期比(%) |
住宅事業 |
421,346 |
107.7 |
205,232 |
112.0 |
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当社グループの事業は、住宅事業及びこれらに付随する事業がほとんどを占めており、実質的に単一セグメントであるため区分表示は行っておりません。
当連結会計年度における住宅事業の販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
住宅事業 |
399,347 |
102.8 |
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたり採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しているとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
当連結会計年度末の資産につきましては、たな卸資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ277億31百万円増加し、2,821億41百万円となりました。負債につきましては、支払手形及び買掛金、借入金の増加等により前連結会計年度末に比べ213億38百万円増加し、2,185億67百万円となりました。純資産につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により前連結会計年度末に比べ63億92百万円増加し、635億74百万円となりました。
2)経営成績
売上高・営業利益につきましては、戸建住宅事業は減少したものの、分譲マンションを中心としたまちづくり事業の増加により、売上高は3,993億47百万円と前連結会計年度に比べ107億95百万円の増加、営業利益は前連結会計年度に比べ9 億23百万円増加し、84億8百万円となりました。
経常利益につきましては、持分法による投資利益の増加により91億14百万円と前連結会計年度に比べ14億41百万円の増加となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、法人税等税金費用が増加したものの前連結会計年度に比べ4億80百万円増加し、53億9百万円となりました。
3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c.資本の財源及び資金の流動性
資金需要
当社グループの資金需要は、主に大きく分けて戸建住宅事業等により構成される運転資金と、まちづくり事業等から構成される設備投資資金であります。
運転資金の主なものは、戸建分譲用地等の販売用不動産購入、住宅製造の材料・施工費および販売費・一般管理費等の営業費用であります。
設備投資資金の主なものは、新規事業の積極的投資としての開発、医療・介護・子育て支援を中心とした複合開発、コンパクトシティ型不動産開発および本社・販売子会社の事務所の改修等であります。
財務政策
当社グループは上記資金需要に対し、主に内部資金の活用、金融機関からの借入等による資金調達を行っております。
また、当連結会計年度末の有利子負債残高は1,054億12百万円であり、資金調達コストの低減に努める一方、平成29年度よりスタートさせた中期経営計画「First Step For NEXT50」の基本方針に基づき持続的成長企業を目指すべく積極的投資を継続して行うため、今後も一定水準まで増加予定であります。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題 (2) 経営指標・ 経営戦略等 」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における売上高は3,993億47百万円、営業利益は84億8百万円、経常利益は91億14百万円、自己資本比率は21.1%、ROE(自己資本利益率)は9.3%でした。引き続きこれらの指標について、改善できるよう努めてまいります。
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