当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
日本経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が段階的に緩和され、消費や設備投資等が回復基調に転じましたが、世界的な物価高騰やウクライナ危機に伴う景気の下押しリスクが懸念され、先行き不透明感が払拭されない状況が続きました。
建設業界においては、堅調な公共投資に加え、コロナ後を見据えた民間設備投資の伸長により、建設投資全体として前年度を上回る水準で推移しました。
こうした状況のもと、当社グループの経営成績は次のとおりとなりました。
受注高は、土木事業及び建築事業が大型工事を中心とした受注競争の激化や発注時期の繰下げ等により減少したことに加え、開発事業が前連結会計年度に大型の不動産販売物件を受注したこと等に伴い減少したことから、前連結会計年度比3.7%減の1兆5,897億円となりました。
売上高は、建築事業で前連結会計年度末繰越工事高が増加したことに加え、新型コロナウイルス感染症の影響が緩和された海外工事が順調に進捗したこと等に伴い増加したことから、前連結会計年度比4.3%増の1兆5,432億円となりました。
営業利益は、建築事業で厳しい競争環境下で受注した大型工事が進捗し、売上総利益の押し下げ要因となったことに加え、一部大型工事の収支改善が進まなかったこと等に伴う利益率低下により、売上総利益が減益となったことから、前連結会計年度比26.4%減の960億円となりました。経常利益は、営業外損益が受取利息の増加等に伴い好転したものの、営業利益の減少により、同24.0%減の1,032億円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に投資有価証券評価損を計上したこと等に伴う特別損益の好転により、同22.8%減の714億円となりました。なお、ROE(自己資本当期純利益率)は、前連結会計年度比3.2%低下の8.4%となりました。
経営成績に重要な影響を与える主な要因としては、建設市場を取り巻く業況の推移並びに建設コストの変動等がもたらす経営環境の変化があります。
当連結会計年度における経営環境は、政府の国土強靭化対策や老朽化インフラの維持・更新需要が底堅く推移し、首都圏の大型再開発事業等の下支えを受けた民間建設投資もコロナ禍前の水準に持ち直す一方、受注競争の激化や資材価格の急騰に伴う建設コストの上昇により、総じて厳しい状況が継続しました。今後についても当連結会計年度並みの建設需要が見込まれるものの、都市部の大規模案件を中心とした価格競争やウクライナ危機に起因する原料・エネルギー価格の高騰に迅速に対応する必要があると考えております。
なお、中長期的な外部環境及び対処すべき課題については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題」に記載のとおりです。
報告セグメント等の経営成績並びに経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容を示すと次のとおりであります(報告セグメント等の業績につきましては、セグメント間の内部取引を含めて記載しております。)。
売上高は、当社において工程の最盛期を迎える工事が減少したこと及び連結子会社において前連結会計年度末繰越工事高が減少したこと等により、前連結会計年度比2.1%減の4,414億円となりました。営業利益は、減収に加え、一部大型工事の収支改善が進まなかったこと等に伴う利益率低下により完成工事総利益が減少したことから、同14.6%減の479億円となりました。
売上高は、前連結会計年度末繰越工事高が増加したことに加え、新型コロナウイルス感染症の影響が緩和された海外工事が順調に進捗したこと等により、前連結会計年度比4.3%増の1兆17億円となりました。営業利益は、厳しい競争環境下で受注した大型工事が進捗し、完成工事総利益の押し下げ要因となったことに加え、一部大型工事の収支改善が進まなかったこと等に伴う利益率低下により完成工事総利益が減少したことから、同47.0%減の338億円となりました。
不動産業界におきましては、ビル賃貸市場では、オフィス集約等により、都心部を中心に空室率が上昇し、賃料は下落する傾向にあるものの、分譲マンション市場は、高い住宅需要と低金利の継続等により、堅調に推移しました。
当社グループにおきましては、売上高は、当社における大型不動産の売却等により、前連結会計年度比4.4%増の1,387億円となりました。営業利益は、連結子会社における不動産販売事業の利益率好転等により開発事業総利益が増加したことから同37.6%増の133億円となりました。
売上高は、前連結会計年度比3.8%増の143億円、営業利益は同30.0%増の14億円となりました。
完成工事未収入金の増加等により、資産合計は前連結会計年度末比4.6%・855億円増の1兆9,562億円となりました。
工事未払金の増加等により、負債合計は前連結会計年度末比5.6%・571億円増の1兆833億円となりました。
自己株式を取得したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により、前連結会計年度末比3.4%・284億円増の8,728億円となりました。また、自己資本比率は前連結会計年度末比0.5%低下の44.4%となりました。
税金等調整前当期純利益を1,035億円獲得したこと等により、当連結会計年度収支は805億円の収入超となりました。(前連結会計年度は674億円の収入超)
前連結会計年度との比較では、仕入債務の増加等により工事関係収支が好転したこと等により130億円の好転となりました。
投資有価証券の取得等により、当連結会計年度収支は376億円の支出超となりました。(前連結会計年度は186億円の支出超)
前連結会計年度との比較では、投資有価証券の取得に係る支出の増加等により189億円の悪化となりました。
配当金の支払、自己株式の取得等により、当連結会計年度収支は418億円の支出超となりました。(前連結会計年度は373億円の支出超)
前連結会計年度との比較では、資金調達額の減少等により45億円の悪化となりました。
以上により、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は4,967億円(前連結会計年度末比24億円増)となり、また、資金調達に係る有利子負債の残高は2,243億円(同53億円増)となりました。なお、当連結会計年度末の資金調達に係る有利子負債の残高のうちノンリコース債務は1億円であります。
資本の財源及び資金の流動性については、中長期的に目指す姿[TAISEI VISION 2030]及び中期経営計画(2021-2023)に基づき、新たに生み出すキャッシュとこれまで蓄積してきた手元資金を主な原資として、株主還元や環境関連投資、DX投資などへ適切に資金を配分してまいります。
なお、中期経営計画(2021-2023)においては、M&Aを実行する場合を除き、実質無借金の維持を経営数値目標としております。
(4)生産、受注及び販売の状況
(単位:百万円)
(単位:百万円)
(注) 1 受注実績、売上実績においては、セグメント間の取引を相殺消去しております。
2 当社グループでは、生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。
(参考) 提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
(注) 1 前期以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更のあるものについては、当期受注高にその
増減額を含めております。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれております。また、前期以
前に外貨建で受注したもので、当期中の為替相場の変動により請負金額に変更のあるものについても同様
に処理しております。
2 次期繰越高の施工高は、支出金により手持高の施工高を推定したものであります。
3 当期施工高は(当期売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致します。
4 前期の土木事業及び建築事業の期中受注高のうち海外工事の割合は各々7.0%、1.8%、当期の土木事業
及び建築事業の期中受注高のうち海外工事の割合は各々4.6%、3.2%であります。
② 受注工事高の受注方法別比率
建設事業の受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) 百分比は請負金額比であります。
(注) 1 第161期に完成した工事のうち主なものは、次のとおりであります。
2 第162期に完成した工事のうち主なものは、次のとおりであります。
3 第161期及び第162期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
④ 手持工事高(2022年3月31日)
(注) 手持工事のうち主なものは、次のとおりであります。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがあります。
なお、重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
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