当社グループの事業に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績及び財政状態、並びに社会的信用に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、リスクが発生する可能性を認識し、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの事業は国内建設事業の占める割合が高く、国内建設市場の急激な縮小や競争環境の激化が生じた場合には、建設事業の受注高・売上高・売上総利益が減少するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、リニューアル分野やエンジニアリング事業、開発事業に注力するとともに、M&Aの活用による事業領域の拡大に向けた取り組みを実施しております。また、脱炭素などの環境・社会課題の解決に貢献する技術開発の推進、DXによる生産システムの変革など、サステナビリティを踏まえた経営基盤の整備を進めております。
原材料の価格が高騰した際、請負代金に反映することが困難な場合には、工事収支が悪化するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、資材価格動向のモニタリングや予測及び予測精度向上に向けた取り組みを継続するとともに、集約購買・国際調達等による原価低減に努めております。
営業上の必要性から、市場価格に基づいて評価される不動産・有価証券等の資産(リスク資産)を保有しているため、時価の下落により、資産が毀損するリスクがあります。
このリスクに対応するため、リスク資産の総量規制枠を設定し、経済合理性の観点から保有資産の見直しを定期的に実施することによりリスクの低減を図っております。
年金資産の時価の下落及び運用利回り・割引率等の退職給付債務算定に用いる前提に変更があった場合には、退職給付費用が増加するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、確定拠出年金制度を一部採用することによりリスクの低減を図っております。
金利水準が急激に上昇した場合には、資金調達コストが増加するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、金利関連のデリバティブ等の金融商品を利用するとともに、年度ごとに資金の調達額や調達手段を見直すことによりリスクの低減を図っております。
当社グループは、PFI事業・レジャー事業を始めとした土木事業・建築事業・開発事業に付帯関連する事業を営んでおります。これらの事業の多くは、事業期間が長期にわたるため、事業環境が大きく変化した場合には、事業収支が悪化するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、事業環境の変化に即した事業計画の見直しによりリスクの低減を図っております。
土木事業・建築事業の遂行は、建設業法・建築基準法・労働安全衛生法・公共工事入札契約適正化法・独占禁止法等による法的規制を受けております。
万一、これらの法律に対する違反が発生した場合には、速やかな情報収集と正確な状況把握に努め、適宜弁護士等の専門家の助言・指導等を仰ぎながら、適正に対応するとともに、再発防止策を策定し、周知・徹底いたします。また、実行者を懲戒処分規定に基づいて厳正に処分することとしております。
なお、当社グループにとって特に影響が大きいリスクは以下のとおりです。
当社グループが、建設業法等に違反し、監督官庁による処分や指導を受けた場合には、営業活動が制限されるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、建設業法をはじめとした各種関連法令の事前確認を徹底するとともに、役職員及び専門工事業者に対して法令遵守の啓発活動及び遵守状況のモニタリングを実施しております。
当社グループは、「グループ行動指針」をはじめとするコンプライアンスに関する諸規程を整備し、その遵守を徹底しておりますが、担当者の錯誤等により独占禁止法に違反し、当社グループ又は役職員が刑事罰・行政処分を受けた場合には、営業活動が制限されるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、入札業務の適正確認手続きに関する社内規程や内部通報制度等を整備し、違反行為の抑止に努めております。
当社グループが知的財産権を有する施工技術や建物・設備に関する商品・サービス等が、他者に侵害された場合には、受注機会の逸失・訴訟コスト発生等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、専門部署間において特許関連情報を適時共有するとともに、社内研修の実施や知的財産関連情報の定期的な発信等の啓発活動を行っており、保有財産の保全監視に努めております。
なお、当社グループの権利が侵害された場合には、侵害者に対する警告を行い、必要に応じて法的措置を講じます。
また、当社グループによる他者の知的財産権侵害が危惧される場合には、専門部署にて調査・判定を行う体制を整備しております。
当社グループは、財務報告の適正性を確保するために内部統制体制を整備しておりますが、担当者の錯誤等により、財務報告が適正に行われなかった場合には、上場廃止・青色申告取消し等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、規定・マニュアル等の整備、会計処理がマニュアルに則って適正に行われているかのモニタリング、正確な財務報告等に関する啓発教育を実施し、内部統制の実効性確保に努めております。
なお、不適切な財務報告が発生した場合には、速やかな情報収集と正確な状況把握に努めるとともに、不適切な財務報告事例等について管理部門をはじめ関連する部門に水平展開し、適正な財務報告の重要性を周知いたします。また、実行者を懲戒処分規定に基づいて厳正に処分することとしております。
建設作業所等において反社会的勢力からの接触を受け、錯誤等により何らかの取引を行ってしまった場合には、社会的信用の失墜と営業活動が制限されるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、反社会的勢力への対応マニュアルの整備や全役職員へのメール発信等により、反社会的勢力への対応方針を全役職員へ周知・啓発しております。
なお、反社会的勢力から不当要求を受けた場合には、速やかに警察等の外部機関に通報し、組織的に対応いたします。また、契約後に相手方が反社会的勢力であることが判明した場合には、必要に応じて警察と協議のうえ、速やかに契約を解除することとしております。
当社グループは、品質管理・施工技術に関する業務標準や業務フローを定め、品質マネジメントシステムを運用しておりますが、ルールの不徹底や技術者・作業員の錯誤等により、施工不良が発生し、適正な品質を確保できなかった場合には、手直し工事に伴う追加コストや損害賠償金の負担等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、設計部門・施工部門・監理部門等を横断する管理体制を構築し、品質マネジメントシステムを確実に運用するとともに、品質に関するパトロール、過去の不具合事例の周知等を行い、役職員及び専門工事業者の品質管理力の強化を図っております。
当社グループは、設計管理要領・品質マニュアル等を策定し、設計関連のチェック体制を構築しておりますが、担当者の錯誤等により、設計不良が発生し、顧客の要求水準を充足できなかった場合には、設計や施工の手直しに伴う追加コストや損害賠償金の負担等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、QMS(クオリティーマネジメントシステム)等の制定によって設計業務を体系化し、設計業務プロセスの監視を行っております。
建設事業では、事前の施工計画等の検討に基づき、適正工期による契約に努め、施工中は確実な工程管理を実施しておりますが、事故・トラブル及び労務不足や資機材調達遅延等により、建物等の引き渡しが遅延した場合には、工事促進に伴う追加コストや遅延損害金の負担等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、組織的管理体制を構築し、労務状況の早期把握や関係本部のパトロールによる工程進捗状況の把握を徹底し、確実な工程管理に努めております。
当社グループの建設作業所において人身や施工物等に関わる重大な事故が発生した場合には、被災者への補償や追加工事費用発生等による工事収支の悪化、指名停止等による営業活動の制限等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、労働安全衛生マネジメントシステムに基づいた安全衛生管理体制を推進するとともに、役職員及び専門工事業者に対する安全衛生教育・指導等を実施することにより事故災害発生防止を図っております。
(10) 情報漏洩・システムトラブルリスク
役職員のパソコン・スマートデバイス等の紛失・盗難、操作上の錯誤等の内部要因及びコンピュータウイルス感染やサイバーテロ等の外部要因により、当社グループ及び顧客の個人情報等の流出やシステムダウンが発生した場合には、事後対応に要するコストの発生や損害賠償金の負担、業務の遅延・停滞等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、役職員及び専門工事業者に対して情報管理規程体系に基づく取扱ルール・ガイドライン・マニュアル等の遵守を徹底させるとともに、ウイルス対策ソフトの常時更新や信頼性の高いハードの導入、データバックアップ体制の整備を行っております。また、組織内CSIRT(Computer Security Incident Response Team:「シーサート」)を設置し、被害予防を図っております。
なお、情報漏洩・システムトラブルリスクが発生した場合には、情報を一元化して正確な状況把握に努め、適切に対応します。また、重大な電子情報セキュリティインシデント発生時には、組織内CSIRTにより被害最小化と迅速な復旧を図ります。
大規模災害が発生した場合には、本社・支店の機能が麻痺し、事業継続が困難となるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、BCP(事業継続計画)を策定しております。例えば、震度6弱以上の地震が発生した場合には、BCPを自動発動し、速やかに対策本部を立ち上げて、被災情報の収集や被災物件の復旧活動等を行うこととしております。
また、本社・支店の非常用電源や通信手段の確保、業界団体や専門工事業者等との連携体制の構築、大規模災害訓練の定期的実施等によりリスクの低減に努めております。
当社グループにおいて、従業員の労働環境・労働条件に関する事業主の義務を十分に果たすことができない場合には、法違反の責任追及・損害賠償請求が発生するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、勤怠管理や健康管理を適正に行うための体制を整備しております。また、過重労働防止のため、要員配置や業務内容・配分の見直し等の措置を講じるとともに、休暇取得の促進等を通じて総労働時間の適正化を図っております。
当社グループの建設作業所等において環境関連法規に違反した場合には、刑事罰・行政処分・損害賠償請求等を受けるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、EMS(環境マネジメントシステム)を制定・運用するとともに、環境パトロールによりその遵守状況をチェックしております。
異常気象やそれに起因する自然災害等が頻発かつ甚大化している中、企業には事業を通じて気候変動問題に対応することが求められており、その対応が不十分な場合には、企業競争力やステークホルダーからの評価が低下するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、当社グループでは気候変動による事業への影響を重要な経営課題の一つと捉え、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿ったシナリオ分析を行い、統合レポートやウェブサイト等で情報開示を進めるとともに、国の施策や社会の動向を注視し、適切に対応しながら、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指しております。
最大の課題であるカーボンニュートラルの達成に向けては、グループ全体で環境負荷低減活動(TSA:TAISEI Sustainable Action)に取り組み、スコープ1・2のCO2排出量削減を進めております。加えて、グリーン調達の推進や環境配慮コンクリート、ZEB技術の開発・普及促進等によりスコープ3のCO2排出量削減に努め、脱炭素社会の実現に取り組んでおります。
当社グループでは「事業を通じて生物多様性や人権デューデリジェンス等のサステナビリティ課題の解決を図るというSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を実現し、人々が豊かで文化的に暮らせるレジリエントな社会づくりに貢献すること」をサステナビリティの基本方針として定め、積極的・能動的に取り組むこととしておりますが、その取り組みが不十分な場合には、企業競争力やステークホルダーからの評価が低下するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、サステナビリティに関する社会からの要請や法整備の動向等、サステナビリティ関連情報の収集に努め、不足している取り組みに対応するとともに、サステナビリティ課題への取り組みや進捗状況、KPIを適時適切に開示し、積極的な対話を通じてステークホルダーとの良好な関係構築を図っております。
建設事業の工事代金を受領する前に取引先が信用不安に陥った場合には、工事代金の回収遅延・不能のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、組織的なプロジェクトリスク管理体制を整備し、具体的根拠と客観的評価に基づいた与信管理の徹底に努めております。
当社グループの事業において、発注者や関係者の要求・担当者の契約約款に対する理解不足等から、著しく不利な契約を締結した場合には、過度な義務の負担による工事収支の悪化や工事代金の回収不能等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、不利益条項に対する審査ルールを徹底するとともに、必要に応じて外部の専門家に対応策の検証を依頼する等、営業段階から組織的な契約リスク管理体制を整備・運用しております。また、営業担当者に対して意思決定ルール等を周知教育するための社内研修を行い、リスクの抑止を図っております。
(18)感染症流行リスク
新型コロナウイルスや悪性鳥インフルエンザ等の感染症の流行に伴い、役職員やその家族、専門工事業者の作業員等が感染し、就業不能となった場合には、事業継続が困難となるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、当社では「感染症発生時における事業継続計画」を策定しており、役職員及び専門工事業者へ発生時の行動や職場において感染者が発生した場合の対処等について啓発を行うとともに、必要な消毒液・マスク・個人防護具の備蓄を行っております。
新型コロナウイルス感染症に対しては、当該計画の実行及び感染防止対策を徹底し、テレワーク(在宅勤務)や分散勤務等の取り組みを推進しながら、事業継続に努め、社会資本整備の担い手として建設業に求められる社会的使命を果たします。
(19)カントリーリスク
海外におけるテロ・戦争・暴動等の発生及びその国の政情悪化等により、海外事業の継続が困難となるリスクや、国内事業も含めて資材価格が高騰するリスク、物流混乱により納期が遅延するリスクがあります。また、海外事業においては、現地の法律・商習慣への理解不足等から、著しく不利な契約を締結した場合には、過度な義務の負担による工事収支の悪化や工事代金の回収不能等のリスクが生じます。
これらのリスクに対応するため、事業継続に関しては、役職員の安全を確保する手段や非常時の危機管理体制の確立に努めるとともに、必要に応じて日本政府・現地日本大使館・外部専門家等との連携を図ります。物流混乱に対しては、製作地や輸送経路の確認を行い、自然条件・社会条件・法的リスクを検討するとともに、納期遅延を発生させないように調達業務の進捗管理を行っております。契約上のリスクに対しては、審査ルールを徹底するとともに、契約後は契約条件の履行状況を継続的にチェックし、リスク低減を図っております。資材価格の高騰については「(1)市場リスク ②資材価格の変動」に記載のとおりです。
なお、カントリーリスクが発生した場合には、情報を一元化して正確な状況把握に努め、適切に対応します。
お知らせ