研究開発活動

 

5 【研究開発活動】

  当社グループは、中期経営計画のグループ基盤整備計画:技術開発において、「オープンイノベーションの活用を通じて、環境・社会課題の解決に向けた技術開発を推進する」ことを重点課題として特定し、「経済と環境の好循環により成長が期待される産業分野に貢献する技術開発」及び「競争優位性のある技術開発」を目指し、経営資源を戦略的に投入しております。

 具体的には「洋上風力産業」、「物流・人流・土木インフラ産業」、「カーボンリサイクル産業」、「住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業」、「ライフスタイル関連産業」、「水素産業」、「原子力産業」、「食料・農林水産業」、「資源循環関連産業」の各分野において新技術の開発や効率化、低コスト化を推進しております。

  また、「大型プロジェクト対応の特殊技術」、「高付加価値化・高品質化に資する技術」の開発も進めております。

 当連結会計年度における研究開発費は152億円であります。このうち、主な研究開発事例とその成果は次のとおりであります。

 

  (土木事業)

      (1)   環境配慮コンクリート「-eConcrete®」セメント・ゼロ型のシールドトンネル全線への大量適用

 コンクリート材料製造時のCO2排出量を大幅に削減できる「-eConcrete®」セメント・ゼロ型を、シールドトンネル工法により施工される地中送電洞道のプレキャストインバート及び歩床部材に適用しました。本製品の適用により従来のコンクリートに比べ、材料製造時のCO2排出量を8割程度削減しております。当社が開発した「-eConcrete®」シリーズは、普通セメント(ポルトランドセメント)の代わりに産業副産物を混合して製造する環境に配慮したコンクリートで、4種類のラインアップを揃えており、目的用途に応じた使用が可能となります。今後、同シリーズを有効な環境対策技術として、様々な場面で適用することでCO2排出量の削減と産業副産物の有効利用を推進し、脱炭素社会と循環型社会の構築に貢献してまいります。

 

      (2)   「カーボンリサイクルCO2地熱発電技術」の開発

 当社と地熱技術開発株式会社は共同で、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が公募した地熱発電技術研究開発事業に応募し、「カーボンリサイクルCO2地熱発電技術」が2021年7月に採択されました。本技術は、高温状態にあるものの熱水量が不足するため、従来の技術では地熱発電に適用できなかった地熱貯留層中にCO2を圧入し、高温になったCO2を回収することで地熱発電を可能とするものです。今後、本事業において、これまで培った技術を駆使し、CO2を用いた地熱発電の社会実装のための基礎技術を確立し、脱炭素社会と循環型社会の構築に貢献してまいります。

 

      (3)   自動運転リジッドダンプ「-iROBO® Rigid Dump」の開発

 積込機械や敷均し機械と連携しながら、土砂の運搬・排土作業に至る全ての運搬作業を自動で行う、大型土工事対応のリジッドダンプ「-iROBO® Rigid Dump」を開発しました。本リジッドダンプは、有人走行と遜色のない走行速度で土砂運搬作業を実施することができ、各種機器やセンサーの活用により人や障害物を検知した場合には自動走行を停止し、緊急時には監視者が手動で停止することが可能となります。また、連携する積込機械や敷均し機械の位置情報を座標として認識し、低速で精度の良い「接近走行」を行うことも可能となります。今後、実際の工事現場において検証を継続し、高度な自動化及び複数台での自動連携を視野にいれた技術開発を進め、自動化技術のさらなる進化を目指してまいります。

 

 

      (4)   道路橋RC床版の高耐久補修工法「T-Sus Layer」の開発

 高速道路や一般国道等の道路橋で劣化した鉄筋コンクリート製(RC)床版に超高性能繊維補強セメント系複合材料を用いて、床版上面を打ち替える高耐久な補修工法「-Sus Layer」を開発しました。本工法により、RC床版上面に高強度で緻密な保護層を構築することで大幅な延命化を実現でき、再補修サイクルの延長を図れることから、補修工事の実施回数を削減し、それに伴う交通規制等の社会的影響の軽減、維持管理費用の低減が可能となります。将来的には、劣化が進行していない床版の予防保全も視野に入れて実際の構造物への適用を進め、既存インフラの長寿命化を通して国土強靭化に貢献してまいります。

 

      (5)   連結子会社における研究開発の主なもの

 大成ロテック㈱において、生産性向上・働き方改革に寄与する技術として「デジタル技術を利用した施工方法、品質管理、出来形管理に関する技術開発」、脱炭素社会と循環型社会の構築に寄与する技術として「アスファルトの再生利用技術の高度化に関する研究」、「カーボンニュートラル・カーボンネガティブな舗装用素材及び舗装用材料の製造技術の開発」等、国土強靭化に資する技術として「路盤強化工法を用いた舗装の長寿命化技術に関する共同研究」、「アスファルト舗装やコンクリート舗装用の高耐久な補修材料の開発」、「道路橋床版の補強技術に関する研究」等を実施しております。

 

   (建築事業)

      (1)   「-eConcrete®/Carbon-Recycle」の建築物への国内初適用

 CO2排出量収支がマイナスとなるカーボンリサイクル・コンクリート「-eConcrete®/Carbon-Recycle」で製造した壁部材を国内で初めて建築物に適用しました。通常のコンクリートで壁部材を製造する場合のCO2原単位274kg/m³が、本材料では△50kg/m³となり、壁材全体として1.1トン以上のCO2排出量を削減しております。今後、「-eConcrete®/Carbon-Recycle」をCO2排出量収支マイナスとなる「ビヨンド・ゼロ」を具現化する建設材料として、積極的な技術開発を引き続き推進し、脱炭素社会と循環型社会の構築に貢献してまいります。

 

      (2)   脱炭素に寄与するエネルギー生産型の下水処理技術の開発

 下水から発電などに活用できるメタンを生成して脱炭素に寄与するエネルギー生産型の下水処理技術を開発しました。本技術により、短期間で安定したメタン生成が可能となるだけではなく、メタン生成量を増加させることで、下水処理における消費エネルギー削減と効率的・安定的なエネルギー創出も可能となるため、エネルギー収支の大幅な改善が見込めることとなります。今後は、下水処理場や食品工場等の有機性排水や廃棄物の処理への適用を目指し、新たな下水処理施設の設置を図ることで、脱炭素社会と循環型社会の構築に貢献してまいります。

 

      (3)   大規模生産施設において国内初となる「ZEB」認証の取得

 一次エネルギー収支ゼロを目指す工場「ZEF」の第一号プロジェクトとして始動した「OKI本庄工場H1棟」において、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)で5段階評価の最高ランクを獲得すると同時に、大規模生産施設で国内初となる「ZEB」認証を取得しました。本工場では、建物の高断熱化とともに、室内のCO2濃度に応じた換気制御等を導入することで空調エネルギーを削減し、人感センサーによる照明制御等を採用することで照明エネルギーを削減しております。さらに屋根面積の約半分に太陽光発電設備を採用することで、エネルギー消費を大幅に上回る創エネルギーを実現しました。今後は、生産施設全般の顧客に対して、「ZEB」や「ZEF」に関する様々な提案を行い、普及・展開を図ることで、脱炭素社会の構築に貢献してまいります。

 

 

      (4)  タワークレーン一体型クライミングシステム「テコアップシステム」の開発

 超高層建築物の環境配慮解体工法「テコレップ」に用いた仮設架構昇降技術を新築工事に応用し、タワークレーンを搭載した専用鉄骨フレームごと上昇させて施工する新システム「テコアップシステム」を開発し、国内の超高層RC造集合住宅に初めて適用しました。本システムでは、1フロア毎に上階へクレーンを移動させて躯体床と干渉せず効率的に工事を進めることで、従来の開口部を有する工法と比較し、工期短縮によるコスト低減とCO2排出量の削減が可能となります。今後、本システムを超高層建築物の自動化施工及び全天候型(全閉)施工が可能な工法として、さらなる技術開発を進めてまいります。

 

      (5)   RC造建築物の耐震性を向上させる技術「-HR構法」の開発

 鉄筋コンクリート造(RC造)建築物の柱と梁の接合部の耐震性能を大幅に向上させる技術「-HR構法」を開発し、国内の超高層RC造集合住宅に初めて適用しました。本構法により、大地震時の揺れにより柱梁接合部に生じる損傷を防いで、耐震性能を10%程度向上させることが可能となります。さらに、プレキャスト化にも対応可能であるため、短工期で高品質なRC造建築物を提供できます。今後、適用範囲拡大を図るとともに、安全安心で耐震性に優れた高品質なRC造建築物を提供するべく本構法を積極的に提案してまいります。

 

  (土木事業・建築事業共通)

      (1)  透過性地下水浄化壁工法「マルチバリア®」の長期耐久性の検証

 揮発性有機塩素化合物を対象とした汚染地下水拡散防止技術である透過性地下水浄化壁工法「マルチバリア®」について、設置から15年以上経過後も浄化効果が継続されていること、さらにこの先10年以上の浄化機能維持が見込めることを確認しました。今後は設置された「マルチバリア®」の実測データを増やし、耐久性予測精度の向上を図ります。また、既に開発済みの浄化機能を回復させるメンテナンス技術と併せて、本工法による汚染地下水拡散防止技術のさらなる信頼性向上に取り組んでまいります。

 

      (2)   「-iDigital Field」の機能拡張

 施工中に得られる作業員や建設機械の位置などの膨大なデジタルデータを活用して工事関係者間で情報共有し、効率的な施工及び安全管理を支援するシステム「-iDigital Field」の機能を拡張しました。本機能拡張により、デジタルツイン技術を用いて建設現場を仮想空間上に再現し、作業員や建設機械の位置を把握することで、現実空間での接触を防止することが可能となります。今後、現場適用により蓄積される建設機械の作業データを分析し、最適な施工方法の選定や環境に配慮した建設機械の燃費効率などの検証を行い、さらに有効な機能の開発と適用を進めてまいります。

 

      (3)   プロジェクションマッピングを利用した墨出し技術「-iDigital MARKING」の開発

 建設現場でプロジェクションマッピングを利用して設計図書等を床面へ高精度に投影した原寸大図面から墨出しを行う技術「-iDigital MARKING」を開発しました。本技術により、床面に投影した墨出しに必要な情報を基に専門知識の有無に関わらず、必要最小限の人員で正確かつ迅速に作業を行えるため、現場作業の生産性を大幅に向上させることが可能となります。今後、土木・建築分野の全ての建設工事で必要となる墨出しにおいて、生産プロセスDX化による生産性向上に向けた取り組みの一環として、本技術を積極的に適用してまいります。

 

      (4)   低騒音・低振動で地盤密度を増大させる液状化対策工法「TS-improver®」の開発

 低騒音・低振動のボトムフィード方式と高周波の振動締固め手法を採用して、地盤の密度増大を効率的に行う液状化対策工法「TS-improver®」を開発しました。本工法により、改良杭の本数削減による低コスト化が実現でき、また低騒音・低振動の環境配慮型の施工が可能となります。今後、土木・建築分野を問わず、施工の効率化と工事域周辺の環境保全を両立する液状化対策工法として、積極的に提案してまいります。

 

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