当連結会計年度における国内経済は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が緩和される中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって持ち直しの動きがみられますが、ウクライナ情勢等による不透明感がみられ、原材料価格の上昇や金融資本市場の変動等による下振れリスクに十分注意する必要があります。
2021年度のマンションの新規供給戸数は首都圏で3万2,872戸(前期比13.2%増)、近畿圏で1万8,160戸(同11.8%増)となりました。首都圏では3年ぶりに3万戸を上回り、近畿圏でも3年ぶりに前年度を上回りました。供給商品の内容をみると、首都圏、近畿圏共に分譲単価・平均価格の上昇傾向が継続しています。首都圏の分譲単価は953千円/㎡(同5.2%増)、平均価格は6,360万円(同6.1%増)と、1990年度(949千円/㎡・6,214万円)を上回り過去最高値となりました。近畿圏では分譲単価は759千円/㎡(同8.7%増)、平均価格は4,651万円(同11.8%増)となり、分譲単価は過去最高値、平均価格は1991年度(5,464万円)以来の高水準となりました。
このような中、中期経営計画「HASEKO Next Stage Plan(略称:NS計画)」の2年目となる当連結会計年度につきましては、不動産売上高が大きく伸長したことにより連結売上高は9,097億円を計上するとともに、不動産関連事業において連結子会社の分譲マンションの引渡しが順調に進捗し、サービス関連事業においても各社が着実に利益を積み上げた結果、連結経常利益は期初予想であった750億円を上回り、819億円となりました。
当連結会計年度における業績は、当社における完成工事高が減少したものの、当社における建築受注用地の取扱量増加及び連結子会社における不動産の取扱量増加により売上高は9,097億円(同12.4%増)、主に不動産利益の増加により営業利益は827億円(同13.4%増)、経常利益は819億円(同14.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は545億円(同12.9%増)の増収増益となりました。営業利益率は9.1%(同0.1ポイント増)、経常利益率は9.0%(同0.1ポイント増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(単位:億円)
( )内は前期比増減額
(建設関連事業)
建築工事では、当社の土地情報収集力や商品企画力、施工品質や工期遵守に対する姿勢、効率的な生産体制等について事業主から評価を頂いている中、施工中物件の原価低減努力等もあり、当期の完成工事総利益率は改善しました。
分譲マンション新築工事の受注は、首都圏で200戸以上の大規模物件15件を含む64件、近畿圏・東海圏で200戸以上の大規模物件8件を含む27件、合計で91件となりました。また、分譲マンション以外の工事として、賃貸住宅等15件を受注いたしました。
完成工事につきましては、賃貸住宅等9件を含む計104件が竣工いたしました。
当セグメントにおいては、当社における完成工事高が減少したものの、建築受注用地の取扱量が増加したため、売上高は6,465億円(前期比5.6%増)、完成工事総利益率は改善したものの、完成工事高の減少に伴う工事利益の減少により、営業利益は633億円(同2.1%減)の増収減益となりました。
連結子会社において分譲マンションの新規引渡し及び完成在庫の販売が順調に進捗したことにより、当セグメントにおいては、売上高は1,081億円(前期比45.6%増)、営業利益は156億円(同83.5%増)の増収増益となりました。
大規模修繕工事・インテリアリフォームでは、前期の新型コロナウイルス感染症による営業活動自粛の反動で修繕工事の施工量が増加し、増収増益となりました。
賃貸マンション運営管理・社宅管理代行では、新規受託の順調な推移や継続的な受託により、運営管理戸数は両事業合計174,951戸(前期末比3.4%増)となりました。
新築マンションの販売受託では、首都圏での販売が好調だったこともあり、引渡戸数が増加しました。
不動産流通仲介では、仲介の取扱件数・リノベーション事業の販売戸数ともに増加しました。
分譲マンション管理では、新規受託が堅調に推移し管理戸数は419,060戸(同2.1%増)となりました。
シニアサービスでは、有料老人ホーム・高齢者向け住宅の入居が進捗したことにより、稼働数は2,297戸(同0.7%増)となりました。
当セグメントにおいては、売上高は2,111億円(前期比13.7%増)、営業利益は132億円(同90.0%増)の増収増益となりました。
ハワイ州オアフ島において、不動産売上高が減少しました。引き続き、新規の戸建分譲事業及び商業施設の開発を進めております。当セグメントにおいては、売上高は0億円(前期比98.5%減)、資産の使用可能性の見直しに伴い一部資産を一括で費用計上した影響により、営業損失は43億円(前期は営業損失11億円)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
a.受注実績
(注) 1 当連結企業集団では建設関連事業における建設工事等及び設計監理、サービス関連事業における大規模修繕・内装工事等及び海外関連事業における建設工事等以外の受注実績を把握することが困難であるため記載しておりません。
2 セグメント間の取引については相殺消去しております。
b.売上実績
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
c.建設関連事業の状況
売上実績
d.不動産関連事業の状況
(注) 数量及び稼働数は連結会計年度末現在で表示しております。
e.サービス関連事業の状況
(注) 1 数量及び稼働数は連結会計年度末現在で表示しております。
2「収益認識に関する会計基準」等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度に区分の変更を
行っているため、前連結会計年度の数値を組替えて表示しております。
売上実績
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設工事等及び設計監理の状況
(注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注高にその増減額を含んでおります。従って、当期売上高にもかかる増減額が含まれております。
2 次期繰越高の施工高は、支出金により手持高の施工高を推定したものであります。
3 当期施工高は(当期売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致します。
4 「収益認識に関する会計基準」等の適用に伴い、一部契約について収益の認識時点を変更した影響により、当事業年度の民間分譲マンションの前期繰越高は前事業年度の次期繰越高より増加しております。
工事受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) 百分比は請負金額比であります。
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度 請負金額70億円以上の主なもの
当事業年度 請負金額80億円以上の主なもの
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は次のとおりであります。
④ 手持高(2022年3月31日現在)
(注) 手持工事のうち請負金額80億円以上の主なものは、次のとおりであります。
(2) 財政状態
当連結会計年度末における連結総資産は、建設受注用地およびマンション分譲事業等への資金投下に伴い不動産事業支出金が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ1,282億円増加し、10,819億円となりました。
連結総負債は、借入金の調達及び不動産事業受入金の増加等により、前連結会計年度末に比べ1,049億円増加し、6,642億円となりました。
連結純資産は、収益認識に関する会計基準等の適用により利益剰余金の期首残高が119億円減少したことに加え、配当金の支払及び自己株式の取得があった一方で、親会社株主に帰属する当期純利益を計上し利益剰余金が増加したこと等から、前連結会計年度末に比べ233億円増加し、4,177億円となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の41.4%に対し、38.6%となりました。
建設受注を目的とする短期的な不動産取得及び分譲用不動産の仕入等により、当社グループの保有不動産は増加いたしましたが、適切なリスク管理を実施し、事業を推進しております。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
(単位:億円)
( )内は前期比増減額
(建設関連事業)
建設関連事業において、当連結会計年度末における資産は、建設受注用地への資金投下に伴い販売用不動産及び不動産事業支出金が増加したこと等により前連結会計年度末に比べ297億円増加し、3,538億円となりました。
(不動産関連事業)
不動産関連事業において、当連結会計年度末における資産は、分譲マンションの新規引渡し及び完成在庫の販売にかかる売上債権が回収された一方で、分譲マンションの仕入が順調に進捗し不動産事業支出金が増加したこと等により前連結会計年度末に比べ269億円増加し、3,317億円となりました。
(サービス関連事業)
サービス関連事業において、当連結会計年度末における資産は、預り金の増加に伴い現金預金が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ163億円増加し、2,030億円となりました。
(海外関連事業)
海外関連事業において、当連結会計年度末における資産は、商業施設の開発に伴い建設仮勘定が増加したこと及び関係会社に対する出資を行ったこと等により、前連結会計年度末に比べ189億円増加し、679億円となりました。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の319億円の収入超過と比較して336億円増加し、654億円の収入超過となりました。これは主に、棚卸資産の増加に伴う資金減少400億円(前連結会計年度は532億円の資金減少)によるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の358億円の支出超過と比較して42億円増加し、316億円の支出超過となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得に伴う資金減少268億円(前連結会計年度は298億円の資金減少)によるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の668億円の収入超過と比較して511億円減少し、157億円の収入超過となりました。これは主に、借入金・社債の調達及び返済に伴う資金増加401億円(前連結会計年度は1,157億円の資金増加)によるものであります。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末の2,143億円より506億円増加し、2,649億円となりました。
現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高が前連結会計年度末と比較して大幅に増加しておりますが、その要因は、税金等調整前当期純利益の増加に伴う営業活動によるキャッシュ・フローの増加及び借入金・社債の調達に伴う財務活動によるキャッシュ・フローの増加によるものであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。
当社グループの資金需要のうち主なものは、建設事業にかかる運転資金、建築受注を目的とする短期的な不動産取得、分譲用不動産等の仕入れ、賃貸用不動産及び海外事業への投資などの支出であります。また、当社グループでは、2020年2月に策定した「中期経営計画(2021年3月期~2025年3月期」において賃貸不動産の保有・開発事業、分譲事業及び海外事業への投資を中心に2,400億円の投資を計画しております。これらの資金需要に対して、事業活動から生じる利益及び借入金・社債により調達した資金を充当する方針であります。
当連結会計年度におきましては期限の到来等により、99億円の長期借入金の返済をしておりますが、500億円の長期借入金の調達を行っており、社債を含む借入金残高は439億円増加し3,118億円となりました。
また、当社は運転資金の安定的かつ機動的な調達を行うため取引金融機関と630億円のコミットメントラインを締結しており、現金預金とあわせて十分な流動性を確保しています。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値にその結果が反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は異なることがあります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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