当社の研究開発活動は、集合住宅におけるフローとストックの両分野に軸足をおき、DXを見据えたデジタル技術等を積極的に活用しながら、安全・安心、快適・健康、品質・性能、生産性向上等のテーマに取り組むとともに受注の拡大、利益の向上、新たな事業モデルの創出、将来の事業改革に寄与する研究・技術開発を目指しております。
活動にあたっては、研究・技術開発のスピードアップと採用促進を図るため、東京都多摩市の技術研究所を拠点としながら、大学・研究機関等との共同研究・開発を進めるとともに、当社技術推進部門・設計部門・建設部門・価値創生部門等社内各部門及び当社グループ各社との連携・強化に努めております。
活動内容としては、①生産技術開発、②商品開発、③気候変動対応、④そのために必要な基礎的な研究開発、以上の4つに重点を置きながら、特に工業化対応、省エネ・環境対応、長寿命化、防災対応、ストック改修対応など、社会環境や顧客ニーズの変化に即した集合住宅関連技術の開発・商品化に注力しております。
当連結会計年度における研究開発費は、
(建設関連事業)
建設技能労働者の高齢化と将来の労働者不足の懸念に対し、中高層および超高層の集合住宅等を対象に、生産性向上や品質向上を目的とした工業化・ICT活用等、技術開発を推進しております。
また、新たに気候変動に対応した脱炭素に関する技術開発にも注力していきます。
生産技術開発分野として、業務及び生産プロセスの合理化に向けたBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の導入・活用検討において、長谷工独自のBIMツールの開発や業務ワークフロー改善等による、設計・施工まで一貫した「長谷工版BIM」の環境整備を強力に推進しております。音声入力検査システム、図面共有システム、搬出入管理システムによる現場管理業務の省力化、BIMモデル閲覧、超高層PCa梁分割システム、掘削工事にBIM座標データを連動した建機のマシンガイダンスといった様々なシステムとの情報連携が可能となります。今後、施工中や竣工後に得られる実データを引渡し後の管理や修繕に連携する仕組みなども構築していきます。
基礎的研究として、木質化住宅の遮音性や耐風圧性能の向上、実大モデルによる耐地震性能の検証、150N級超高強度コンクリートの開発を行っております。
また、気候変動対応技術として、長谷工式環境配慮型コンクリート「H-BAコンクリート」を普及・促進すべく準備を進めているほか、運送時の建設資材の長距離輸送を鉄道に置き換えるモーダルシフトを試行しております。再生可能エネルギーに関しては、余剰電力の最適な活用に向けた「自己消費型太陽光発電システム」に関する基礎研究を行い、更に、集合住宅の屋上部分のみならず、壁面・手摺等設置面積の拡大に向けた検証を行っております。
商品開発分野として、省エネ性と快適性に加え、空気洗浄機能を搭載した「全館空調システム」の開発を完了しました。本システムは、コロナ禍の在宅時間の長時間化に伴い、快適なテレワーク環境への貢献面でも強力な商品価値があると考えております。
現在、「白金ザ・スカイ」(東京都港区、地上45階/地下1階、制振、1,247戸)、「プレミストタワー靱本町」(大阪市西区、地上36階/地下1階、制振、353戸)、「シエリアタワー大阪天満橋」(大阪市北区、地上30階/地下1階、制振、172戸)、「NAGOYA the TOWER」(名古屋市中村区、地上42階/地下1階、制振、435戸)、「エクセレント ザ タワー」(千葉市中央区、地上31階、制振、397戸)、「ローレルタワー堺筋本町」(大阪市中央区、地上44階/地下1階、制振、511戸)、「ブリリアタワー浜離宮」(東京都港区、地上32階/地下1階、免震、420戸)、「ドレッセタワー武蔵小杉」(川崎市中原区、地上23階、免震、160戸)、「シティタワーズ板橋大山サウスタワー」(東京都板橋区、地上26階/地下1階、制振、239戸)、「(仮称)港区港南3丁目計画」(東京都港区、地上28階/地下1階、耐震、458戸)、「シティタワー千住大橋」(東京都足立区、地上42階、制振、466戸)を建設中であります。
また、2022年3月期は「ブランズタワー芝浦」(東京都港区、地上32階/地下1階、免震、482戸)、「プラウドタワー名古屋錦」(名古屋市中区、地上30階/地下1階、制振、360戸)、「シエリア大阪上町台パークタワー」(大阪市中央区、地上29階/地下1階、制振、112戸)、「パークシティ柏の葉キャンパス サウスマークタワー」(千葉県柏市、地上29階、制振、364戸)が竣工しました。
更なる技術のレベルアップとして、鋼繊維補強高強度コンクリートの活用研究やFc36N/mm2を超える場所打ち杭に使用するコンクリートの充填性などの開発に取り組んでおります。
競争と連携のネットワークを構築するため、多様な研究機関、企業等の幅広い結集を図り、研究開発の共通基盤(プラットフォーム)の確立を目指している「建築研究開発コンソーシアム」などに継続参画し、物流・データセンター等の鉄骨構造関連技術の開発に取り組んでおります。
現在、「(仮称)千葉稲毛物流センター」(千葉市稲毛区、地上4階)、「(仮称)野田物流施設」(千葉県野田市、地上3階)等を建設中です。また、2022年3月期は、「京成リッチモンドホテル東京錦糸町」(東京都墨田区、地上12階)、「Spark SHIBUYA」(東京都渋谷区、地上10階)等が竣工しました。
脱炭素関連技術として開発した環境配慮型コンクリート「H-BAコンクリート」については、現在施工中の「(仮称)西区学園東町計画」(神戸市西区、地上10階、120戸)において主要構造部を含む全てのコンクリートに採用する計画としております。
木造関連技術に関しては、現在施工中である「(仮称)浦安市当代島計画」(千葉県浦安市、地上7階、208戸)の最上階を木質化する計画としております。また、当社研究施設「多摩テクニカルセンター」の敷地内に音響実験棟を建設しています。木造集合住宅の遮音性能確保に対して、効率的な技術開発を行っていきます。
これまで当社では、段ボール古紙や木くずにおける循環型マテリアルリサイクルシステムの構築、また、廃プラスチック類のサーマルリサイクルシステムの構築をしてまいりました。
作業で発生した木くずをバイオマス燃料として再利用し、発電施設で発電された再生可能エネルギーを作業所の仮設電力として使用する取り組みを進めており、2023年4月までに切り替えが全て完了する予定です。今後も、更に環境に配慮した循環型社会の実現に向けた取り組みを推進してまいります。
「住まい情報と暮らし情報のプラットフォーム」(HASEKO BIM & LIM Cloud)の構築に向け、各種パートナー企業、大学や研究機関と連携し、センサー、AIやロボットなどICT活用に本格的に取り組んでおります。第1号物件「Feel I Residence」(㈱長谷工不動産所有の学生向け賃貸マンション、東京都板橋区、地上7階、72戸、2020年3月竣工)を皮切りに、第2号物件「ルネフラッツ谷町四丁目」(総合地所㈱所有の賃貸マンション、大阪市中央区、地上12階、131戸、2021年11月竣工)、第3号物件「コムレジ赤羽」(当社所有の学生・社会人・一般向け複合賃貸マンション、東京都北区、地上8階、340戸、2022年3月竣工)が稼働を開始しております。入居者の皆様のご利用状況・ご意見等を参考にしながら改善を図り、集合住宅の提供価値向上を継続検討いたします。
その他にも、RFID(電子タグ)を活用した排水管通球試験システムによる検査業務効率化や、ロボットコンシェルジュを用いたコミュニケーションプラットフォームサービスの提供、MR(Mixed Reality:複合現実)技術を用いたタイル打診検査記録システムによる大規模修繕工事の省人化などを推進しています。
(サービス関連事業)
(1) 既築集合住宅を対象とした技術の開発
拡大する国内ストック市場における既築集合住宅向け「ストックビジネス」の技術基盤づくりを目指しております。共用部では「建物の延命化・耐震化の工法」、「居住者の負担を軽減できる工法」の開発等、専有部では「住まいの機能の維持やグレードアップの提案」を進める等、継続的にストック・リフォーム分野における研究・技術開発を行っております。
「グループIT投資戦略プロジェクト(名称:FITプロジェクト)」において、リリース第1号サービスである、初期検討顧客層の新築マンション探しをサポートするサービス「マンションFit(フィット)」では、提案物件数を増やすことでレコメンド機能の向上を行いました。リリース第2号サービスである、Web上での一問一答形式のコミュニケーションで最適なマンションを提案する「ミナイエ」では、流通仲介物件に加え新築・賃貸物件までを含めたトータルなレコメンド機能を追加開発しました。リリース第3号サービスである、賃貸マンションオーナー向けのコミュニケーションツール「HOLiY(ホーリー)」では、追加機能開発として、首都圏・関西圏のオーナー様向けのマンスリーレポートのWeb化を実現しました。第4号サービスとして開発を進めていた、第三者管理方式の管理組合運営を実現するコミュニケーションツール「smooth-e(スムージー)」の一次開発が2021年7月に完了し、長谷工コミュニティ管理受託物件へのサービス導入を開始しました。
この他、竣工後のマンション管理業務の効率化や大規模修繕時の作業効率化、生産性向上にも取り組んでおります。
なお、子会社においては、研究開発活動は行われておりません。
建設関連事業及びサービス関連事業以外の事業においては、研究開発活動は行われておりません。
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