(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置の解除以降、経済活動に一部持ち直しの兆しがみられましたが、新たな変異株の発生による新型コロナウイルス感染症の再拡大やウクライナ情勢による地政学リスクの高まりにより、先行き不透明な厳しい状況となりました。
このような状況の中、当社グループの主要事業であります建設事業におきましては、政府の各種政策の効果により公共投資は底堅く推移し、民間投資は企業の設備投資に一部回復がみられるなど堅調に推移いたしました。
このような情勢下におきまして、当社グループを挙げて営業活動を行いました結果、連結受注高においては148,367百万円(前期比9.8%減)となりました。うち、当社受注工事高においては、土木工事で58,608百万円(前期比7.9%減)、建築工事で54,402百万円(前期比13.2%減)、合計113,010百万円(前期比10.5%減)となりました。なお、官民別比率は、官公庁工事50.1%、民間工事49.9%でございます。
また、連結売上高においては156,520百万円(前期比3.2%減)となりました。うち、当社完成工事高においては、土木工事で66,086百万円(前期比1.5%増)、建築工事で52,366百万円(前期比8.4%減)、合計118,453百万円(前期比3.1%減)となりました。なお、官民別比率は、官公庁工事52.9%、民間工事47.1%でございます。
利益面におきましては、連結で経常利益9,316百万円(前期比1.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益5,987百万円(前期比4.4%減)という結果になりました。うち、当社の経常利益で12,477百万円(前期比83.3%増)、当期純利益で10,365百万円(前期比120.9%増)という結果になりました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
土木事業においては、売上高は86,324百万円(前期比0.3%増)、営業利益5,419百万円(前期比7.2%増)となりました。
建築事業においては、売上高は66,519百万円(前期比7.7%減)、営業利益2,973百万円(前期比18.9%減)となりました。
その他の事業においては、売上高は4,461百万円(前期比15.3%増)、営業利益451百万円(前期比35.1%増)となりました。
②財政状態の分析
当連結会計年度末の資産の部は、前連結会計年度末に比べ、受取手形・完成工事未収入金等が11,792百万円増加しましたが、現金預金が8,433百万円、電子記録債権が1,673百万円、立替金が3,138百万円減少したこと等により、資産合計は1,278百万円減少した169,621百万円となりました。
負債の部は、前連結会計年度末に比べ、支払手形・工事未払金等が2,108百万円、未成工事受入金が1,615百万円、預り金が4,758百万円増加しましたが、短期借入金が5,000百万円、未払法人税等が1,639百万円、完成工事補償引当金が1,334百万円、転換社債型新株予約権付社債が1,733百万円減少したこと等により、負債合計は1,640百万円減少した95,128百万円となりました。
純資産の部は前連結会計年度末に比べ、利益剰余金が3,988百万円、自己株式が△2,437百万円増加したこと等により362百万円増加した74,493百万円となり、自己資本比率は43.3%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動により5,537百万円増加し、投資活動により2,194百万円減少し、財務活動により11,971百万円減少し、この結果、現金及び現金同等物は8,451百万円の減少となり、当連結会計年度末残高19,751百万円(前期比30.0%減)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は、純額5,537百万円(前期は4,357百万円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上9,395百万円、仕入債務の増加1,139百万円、未成工事受入金の増加1,615百万円、その他の資産の減少2,150百万円、その他の負債の増加4,577百万円等による資金の増加、完成工事補償引当金の減少1,334百万円、売上債権の増加10,118百万円、法人税等の支払額4,859百万円等による資金の減少があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、純額で2,194百万円(前期比75,3%減)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出2,072百万円等による資金の減少によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、純額で11,971百万円(前期は11,054百万円の獲得)となりました。これは主に、短期借入金の減少5,000百万円、自己株式の取得による支出4,769百万円、配当金の支出1,995百万円等による資金の減少によるものです。
④生産、受注及び売上の実績
a.受注実績
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) (百万円) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) (百万円) |
土木事業 |
85,319 |
79,423 |
建築事業 |
78,544 |
68,424 |
その他の事業 |
583 |
520 |
合計 |
164,447 |
148,367 |
b.売上実績
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) (百万円) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) (百万円) |
土木事業 |
86,090 |
86,324 |
建築事業 |
72,077 |
66,513 |
その他の事業 |
3,529 |
3,682 |
合計 |
161,697 |
156,520 |
(注)1.当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、「生産の状況」は記載しておりません。
2.当連結会計年度において売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設業における受注工事高及び施工高の状況
① 受注工事高、完成工事高、繰越工事高及び施工高
第72期(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
工事別 |
期首 繰越工事高 (百万円) |
期中 受注工事高 (百万円) |
計 (百万円) |
期中 完成工事高 (百万円) |
期末繰越工事高 |
期中施工高 (百万円) |
||
手持工事高 (百万円) |
うち施工高 (百万円) |
|||||||
|
|
|
|
|
|
% |
|
|
土木 |
153,191 |
63,604 |
216,796 |
65,109 |
151,687 |
0.6 |
879 |
62,789 |
建築 |
73,731 |
62,661 |
136,392 |
57,175 |
79,217 |
0.4 |
341 |
57,173 |
計 |
226,923 |
126,266 |
353,189 |
122,284 |
230,904 |
0.5 |
1,220 |
119,962 |
第73期(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
工事別 |
期首 繰越工事高 (百万円) |
期中 受注工事高 (百万円) |
計 (百万円) |
期中 完成工事高 (百万円) |
期末繰越工事高 |
期中施工高 (百万円) |
||
手持工事高 (百万円) |
うち施工高 (百万円) |
|||||||
|
|
|
|
|
|
% |
|
|
土木 |
151,687 |
58,608 |
210,295 |
66,086 |
144,208 |
0.7 |
1,070 |
66,278 |
建築 |
79,217 |
54,402 |
133,619 |
52,366 |
81,253 |
0.3 |
261 |
52,381 |
計 |
230,904 |
113,010 |
343,915 |
118,453 |
225,461 |
0.6 |
1,332 |
118,659 |
(注)1.前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、期中受注工事高にその増減額を含めております。したがって、期中完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2.期末繰越工事高の施工高は、支出金により手持工事高の施工高を推定したものであります。
3.期中施工高は(期中完成工事高+期末繰越施工高-期首繰越施工高)に一致します。
4.提出会社の不動産事業の売上高は、建築の「期中完成工事高」に含めて記載しており、それぞれ第72期は396百万円、第73期は1,040百万円が含まれております。
5.土木工事及び建築工事の期中受注工事高のうち海外工事の割合は第72期はそれぞれ2.9%、-%、第73期はそれぞれ40.5%、-%であります。
6.期中受注工事高のうち海外工事の請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。
第72期 |
該当ありません |
|
第73期 |
桃園市政府航空城工程處 マダガスカル共和国 国土整備 公共事業省 |
桃園航空城計畫區段徴收工程A1分標統包工程 国道2号線(アンタナナリボ-トアマシナ間)におけるマ ングル橋及びアンツァパザナ橋改修計画 |
② 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。
期別 |
区分 |
特命(%) |
競争(%) |
計(%) |
|
第72期 |
(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
土木工事 |
3.4 |
96.6 |
100.0 |
建築工事 |
40.3 |
59.7 |
100.0 |
||
第73期 |
(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
土木工事 |
7.3 |
92.7 |
100.0 |
建築工事 |
48.0 |
52.0 |
100.0 |
(注) 百分比は請負金額比であります。
③ 完成工事高
期別 |
区分 |
国内 |
海外 |
計 (B) (百万円) |
|||
官公庁 (百万円) |
民間 (百万円) |
(A) (百万円) |
(A)/(B) (%) |
||||
第72期 |
(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
土木工事 |
57,346 |
4,787 |
2,975 |
4.6 |
65,109 |
建築工事 |
8,652 |
48,522 |
- |
- |
57,175 |
||
計 |
65,999 |
53,310 |
2,975 |
2.4 |
122,284 |
||
第73期 |
(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
土木工事 |
46,757 |
13,066 |
6,262 |
9.5 |
66,086 |
建築工事 |
9,612 |
42,754 |
- |
- |
52,366 |
||
計 |
56,370 |
55,821 |
6,262 |
5.3 |
118,453 |
(注)1.海外工事の地域別割合は、次のとおりであります。
地域 |
第72期(%) |
第73期(%) |
東南アジア |
93.3 |
45.9 |
アフリカ |
6.7 |
54.1 |
計 |
100.0 |
100.0 |
2.完成工事のうち主なものは次のとおりであります。
第72期 請負金額10億円以上の主なもの
東京地下鉄㈱ |
日比谷線仲御徒町駅エレベーター設置その他に伴う土木工事 |
東京都下水道局 |
千代田区紀尾井町、麹町六丁目付近再構築工事 |
国土交通省 四国地方整備局 |
平成31-32年度 肱川橋下部(P1、P2)工事 |
東急不動産㈱・東急㈱ |
(仮称)横浜市青葉区あざみ野二丁目計画新築工事 |
神戸市 |
HAT神戸新設小学校・特別支援学校新築工事 |
国立大学法人 山形大学 |
山形大学(米沢)工学部8号館新営その他工事 |
第73期 請負金額10億円以上の主なもの
日本下水道事業団 東日本本部 |
石巻市流留第二排水ポンプ場他1施設復興・災害復旧建設工事 |
国土交通省 近畿地方整備局 |
大野油坂道路此の木谷橋下部他工事 |
郡山市下水道局 |
第30-46057号 赤木貯留管築造工事 |
野村不動産㈱ |
(仮称)Landport上尾Ⅰ新築工事 |
大和ハウス工業㈱ |
(仮称)茨木市双葉町PJ新築工事 |
東武鉄道㈱ |
仙台ロジスティクスセンター新築工事 |
3.完成工事高総額に対する割合が100分10以上の相手先はありません
4.提出会社の不動産事業の売上高は、建築工事の「国内」の「民間」に含めて記載しており、それぞれ第72期は396百万円、第73期は1,040百万円が含まれています。
④ 手持工事高(2022年3月31日現在)
区分 |
国内 |
海外 |
計 (B) (百万円) |
||
官公庁(百万円) |
民間(百万円) |
(A) (百万円) |
(A)/(B) (%) |
||
土木工事 |
65,311 |
40,953 |
37,944 |
26.3 |
144,208 |
建築工事 |
6,854 |
74,398 |
- |
- |
81,253 |
計 |
72,166 |
115,351 |
37,944 |
16.8 |
225,461 |
(注)手持工事のうち請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。
兵庫県 阪神南県民センター |
大規模河 第1001-0-001号(二)東川水系津門川 地下貯留管他整備工事 |
2024年3月完成予定 |
福岡市 水道事業管理者 中日本高速道路㈱名古屋支社 |
乙金浄水場整備工事 名古屋第二環状自動車道 上社高架橋他 9橋耐震補強工事 |
2025年3月完成予定
2024年5月完成予定 |
三菱地所㈱ |
(仮称)晴海三丁目計画(ホテル棟)新築工事 |
2024年2月完成予定 |
住友不動産㈱ |
(仮称)三鷹中町計画新築工事 |
2023年1月完成予定 |
法務省 |
新潟刑務所処遇管理棟等新営(建築)工事 |
2023年3月完成予定 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の財政状態及び経営成績について、2021年度の計画に対する達成状況は以下のとおりであります。
指標 |
2021年度(計画) |
2021年度(実績) |
2021年度(計画比) |
受注高 |
159,000百万円 |
148,367百万円 |
10,632百万円減(6.7%減) |
売上高 |
160,000百万円 |
156,520百万円 |
3,479百万円減(2.2%減) |
営業利益率 |
5.4% |
5.7% |
0.3ポイント増 |
自己資本比率 |
- |
43.3% |
- |
ROE(自己資本利益率) |
- |
8.2% |
- |
受注高は、土木事業において台湾で大型の造成工事を受注しましたが、国内土木が伸び悩んだため対前年比、対計画比ともに下回りました。建築事業においては対前年、対計画ともに下回る結果となりました。土木事業については中期経営計画の重点項目「維持修繕事業」の面では中部地方の高速道路の高架橋の耐震補強工事を2件受注しています。建築事業については、コロナ禍や急激な資源高などによる事業の延期や凍結、受注競争の激化などにより、年度後半の受注が低迷しました。特に夏以降の過去に例のない建築物価の急騰は、発注者の事業予算を大きく超過することになり、今後の新規事業が想定通り進まない可能性があります。受注案件では注力分野の冷凍冷蔵倉庫や大型物流、ホテルなどを受注しています。
売上高は、土木事業におきましては対前年、対計画ともに増加しましたが、建築事業におきましては着工遅れによる期づれが生じるなどし、対前年、対計画ともに下回る結果となりました。
営業利益率は、土木事業でケーソン案件の利益が向上したことにより、対前年、対計画ともに上回ることができました。
中期経営計画では2022年度までに事業規模2,000億円、営業利益率6.0%以上、ROE10.0%以上の達成を目指しております。当連結会計年度における売上高は156,520百万円(計画比2.2%減)、営業利益率は5.7%(計画比0.3ポイント増加)、ROEは8.2%(前年比0.9ポイント減少)であり、自己資本の充実と安定配当の維持、及び手元資金の有効活用をして、中期経営計画(2020-22年度)の目標を達成すべくグループ全体で取り組みます。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資本金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動により5,537百万円増加し、投資活動により2,194百万円減少し、財務活動により11,971百万円減少し、この結果、現金及び現金同等物は8,451百万円の減少となり、当連結会計年度末残高は19,751百万円(前期比30.0%減)となりました。
当社グループの財務戦略については、建設事業が主力事業であることから、工事代金の回収及び借入金を主体に資金を調達しております。今後も「財務体質の更なる強化」を図る方針であります。
2022年5月24日開催の当社臨時株主総会決議において、自己株式の取得及びその具体的な取得方法として自
己株式の公開買付を行うこと及び、本公開買付の原資となる分配可能額を確保するため、会社法第448条第1
項の規定に基づき資本準備金7,500百万円を減少させ、その他資本剰余金へ振り替えております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
特に、一定の期間にわたり収益を認識する方法の適用及び工事損失引当金の計上については工事原価総額に重要な会計上の見積りが必要となります。当該見積り及び仮定の不確実性の内容がその変動により経営成績等に生じる影響などは、「第5経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
一定の期間にわたり収益を認識する方法の適用及び工事損失引当金の計上において考慮される工事原価総額の見積りは以下のような高い不確実性を伴います。
・工事契約の完了に必要となる全ての施工内容が特定され、必要と判断された見積工事原価が工事原価総額の見積りに含まれているか否かの判断
・工事の進行途上における当事者間の新たな合意による工事契約の変更、工事着手後の工事の状況の変化による作業内容の変更及び直近の工事原価総額の見積りの見直し時に顕在化していなかった事象の発生等が、適時に合理的に工事原価総額の見積りに反映されているかの判断
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