研究開発活動

5【研究開発活動】

 当社の研究開発につきましては、建設費の低減と安全性の向上に加え、DX化やカーボンニュートラルへの取組を強化することで受注の拡大を目指すべく、土木部門におきましては、独自技術の大深度化・改良、自動化を積極的に実施しております。具体的には、施工の無人化、遠隔化、工期短縮のためのプレキャスト化、計測・管理技術の高度化による精度・品質・安全性の向上、CIM導入による施工の効率化等について取り組んでおります。また、建築部門におきましては、森林資源の好循環のための建築の木構造・木質化技術の開発、DXの推進・BIM一貫体制導入や、省エネ技術などの研究に取り組んでおります。

 当連結会計年度における研究開発費の総額は183百万円であります。各セグメント別の研究開発費の区分は困難であるため、研究開発費は総額で記載しております。また、主な研究開発成果は以下のとおりであります。なお、子会社におきましては、研究開発活動は特段行っておりません。

 

(土木事業)

1.New DREAM工法の開発

大豊式ニューマチックケーソン工法に多機能型ケーソン掘削機、掘削機メンテナンスシステム、大気圧エレベーター、DHENOXシステム(ヘリウム混合ガスシステム)、遠隔地耐力試験装置等を組み合わせ、主要高気圧作業の100%無人化施工を可能とするNew DREAM工法を開発しました。本工法は国土交通省のテーマ設定技術に選定されました他、2車線道路断面シールド工事の発進立坑に採用され、施工が完了しました。今後、大断面道路・鉄道トンネルの立坑や雨水貯留施設等の大深度、大断面の地下構造物への適用が期待されます。

2.狭小断面ニューマチックケーソン工法の開発

自社開発の狭小断面用の遠隔操作掘削機やエレベーター等を配備することで、直径6m程度の2車線道路橋や鉄道橋の基礎、下水道人孔等の狭小断面の施工を可能とする、完全無人化狭小断面ニューマチックケーソン工法を開発しました。本工法は東京都下水道局発注の大深度狭小断面のケーソン工事に採用され、安全かつ高精度で施工が完了し、その適合性が実証されました。今後さらなる大深度狭小断面のニューマチックケーソン工事への適合可能な工法として、その用途拡大が期待されます。

3.減圧管理プログラムの開発

ニューマチックケーソン工法が大深度化する中、高気圧作業従事者が大気圧に帰還する際の安全な減圧方法に関する計算プログラムを専門医とタイアップして自社開発しました。本プログラムを使用することにより、ニューマチックケーソンの多種多様な条件下における高気圧作業の安全な減圧工程が、迅速かつ確実に算定可能となり、大深度のニューマチックケーソンを施工する際などの安全性確保と健康管理の徹底を図ります。2015年度の運用開始から現在に至るまで50基のニューマチックケーソン工事に採用し、この間、高気圧作業従事者の減圧症予防に多大な貢献をなしています。

4.ニューマチックケーソン工法の高度施工管理技術の開発

ニューマチックケーソン工法の適用範囲が拡大する中、大断面・大深度への対応は元より、構造物の高規格化へも対応しつつ効率的に施工を進めることが強く求められております。このような状況の下、施工精度向上及び施工管理の効率化を図るため、リアルタイムの沈下姿勢計測システム、高圧作業室内の掘削形態計測システム、高気圧作業従事者を対象とする作業情報自動認証システムを開発しました。これらのシステムは、高度計測技術に当社開発のソフトを組み込みデータ処理するものであり、現場での試験運用を経て本格運用の段階に至っております。特に、作業情報自動認証システムについては、最新の仕様ではAIによる顔認証機能を追加装備するなどの改良も行っており、既に28基のニューマチックケーソン工事に適用され、施工管理の効率化に多大な貢献をなし得ております。近年、i–constructionの推進に伴う生産性向上や施工管理技術の高度化は喫緊の課題となっており、今後もニューマチックケーソン工事分野への新技術の導入を積極的に図り、施工管理技術の大幅な向上に資するシステム開発を継続します。

5.硬質地盤掘削システム

ニューマチックケーソン工法の大深度化・大断面化に加え近年では岩盤硬質地盤への適用が増加する中、岩盤硬質地盤の効率的掘削を可能とする硬質地盤掘削システムを開発しました。本システムは、当社保有掘削機DREAMⅡに装着可能なリッパバケットなどの特殊掘削バケットなどから構成し、岩盤硬質地盤の掘削効率の大幅向上を実現します。今後、貯留容量の確保により大断面大深度化する雨水貯留池やポンプ場、大深度立坑などでの採用が期待されます。

 

6.ケーソン健康管理アプリの開発

ケーソン健康管理アプリは、ニューマチックケーソン工法の高気圧作業従事者の健康状態を迅速・的確に把握し、健康状態に応じた注意喚起、及び健康データのデータベース化などを実現します。本アプリの開発目的は、近年のニューマチックケーソンの大深度化と、ベテラン技術者の確保が難しい状況に対応することであり、現場管理者の経験に過度に依存しない高気圧作業従事者の健康状態の判断と継続・連続的な把握、さらに、健康管理に関する書類作成業務の排除などが可能となります。高気圧作業の実施に際しては、現場管理者が高気圧作業計画をアプリ上で作成し、併せて高気圧作業従事者が無線通信の健康測定器具で健康状態を測定・送信します。これにより、加圧~高気圧作業~減圧の各プロセスの健康管理とデータ蓄積が自動的に行われます。本アプリは2021年度着工のニューマチックケーソン工事から実装を開始し、高気圧作業従事者の確実な健康管理と管理業務の簡素化・効率化が図られています。

7.ケーソン掘削シミュレータの開発

ケーソン掘削シミュレータは、コンピュータグラフィックを駆使して作成したサイバー空間にケーソン掘削機を再現し、実機と同様の感覚での掘削操作の体験を可能とします。このシミュレータは、開発中のケーソン自動掘削や長距離遠隔操作の技術開発で必要となるデジタルベースの掘削機を利用して開発したもので、パソコン及び掘削機操作レーバー等の周辺機器で構成し、職員・作業員の教育訓練の他、一般の方向けの体験等に活用しています。一般の方向けの活用では、よりケーソン工法に親しみをもっていただくための配慮としてケーソン工法に関するクイズやゲームなども搭載しており、全国各地の建設技術展やケーソン現場で大いに活躍しています。

 

8.DAPPI(ダッピ)工法の開発

泥土加圧推進工法をベースに、管路内から地中障害物を安全・確実に撤去できるDAPPI工法を開発しました。本工法は、カッター駆動部を管内から発進立坑へ引抜き、障害物等を撤去した後、駆動部を搬入、装着し再掘進する着脱・再掘進型管渠築造工法であります。また障害物を坑内から撤去するため、地上の交通や地域住民への影響を最小限にできます。東京都発注の下水道再構築工事で初めて採用され、5件の施工実績があり、今後都市の再構築等、類似工事での採用が期待されます。

9.DRES(ドレス)工法の開発

港湾、河川、湖沼等の高含水の浚渫土を効率的に脱水・分級してリサイクルできるシステムを開発しました。本工法は、田子の浦港で浚渫土の減容化に採用され、また、新門司の築堤材製作工事では日本最大規模の処理システムで稼働するなど、浚渫土処理累計は約107万m3に上り、港湾の維持や環境影響の低減に貢献しています。特に田子の浦港では、高濃度ダイオキシン類の浚渫土中間処理にも採用され、環境負荷の低減やコスト縮減に貢献しており、今後さらに湖沼、港湾等での活躍が期待されます。

10.鋼製函体締切工法の開発

既設橋脚の水中部を鋼製函体で仮締切し、ドライな状態で高品質な橋脚耐震補強を安全に行うことのできる鋼製函体締切工法を民間4社で共同開発しました。本工法に用いる函体は、浮力を利用して曳航沈設が可能なため、桁下空間の制限を受けず、フーチング上に設置できます。これまでに河川内の橋脚耐震補強に採用され、当社施工分として完了工事が5件あります。

  また、本工法の派生工法として狭隘な場所や浅水深による作業制限がさらに緩和でき、大幅な工費の低減を可能

 とする当社独自開発の「複合壁体締切(RECC)工法」と「カプセル壁体締切工法」も併せて開発しており、前

 者は8基、後者は4基の施工実績を有します。今後、同様な施工条件下の工事への採用が見込まれ、安全・安心社

 会の構築に貢献することが期待されます。

 

(建築事業)

1.木構造・木質化技術の開発

地球温暖化防止にはCO2の削減とともに、CO2の吸収源を確保することが重要であります。吸収源の大部分は森林でありますが、人工林の高齢化とともに森林吸収量は減少傾向にあり、現在の潤沢な森林資源を活用し植林する循環サイクルを加速させることが必要であります。そのため国を挙げて木材の積極利用、都市の木造化が推奨されております。また木材はCO2を固定化することができる第二の森林ともいわれております。木造は鉄骨やコンクリート造に比べ建設に伴うCO2排出量が約6割と少なく、建物が蓄える炭素量は4倍であり、木造化は2050年のカーボンニュートラルに向けた重要な手段であり、優先的に取組む必要があります。

当社における木質材料の活用及び木構造の技術開発に関しましては、茨城県阿見町の技術研究所で試験施工した木構造技術(大断面集成材のラーメン構造と鉄筋コンクリート造を組み合わせた、立面ハイブリッド工法や、鉄筋コンクリート造架構に組み込んだCLT耐震壁、配筋付き製材型枠)を発展させております。

CLT耐震壁に関しては産学共同研究による実物モデル架構による加力試験や要素試験を実施して、新たな設計法を開発しました(特許申請中)。また、設計施工案件や自社案件で木質材料を積極的に採用し、実施物件での施工検証を行っております。

また、鉄骨と木質トラスを併用した木トラス鉄骨ハイブリッド構造を検証するため、新工場の建設プロジェクトを開始しました。

 

2.DXの推進・BIMによる設計施工一気通貫生産システムの構築

働き方改革、生産プロセス改革の為には、建設のデジタル化加速が急務であり建設業界におけるDXの取組が加速しています。生産性向上や効率化のためのITツールの導入や支援ソフトの導入によりDXによる業務改善を推進しております。また、BIM(Building Information Modeling)に関しては導入の基盤整備を進め実施物件への適用を行い、BIMの設計施工一気通貫体制への移行に取り組みを加速させております。オリジナルプラットフォーム・ファミリの構築を実施し、BIM設計実物件数を増やしながら、問題点の改善や生産性の向上に取り組み、更に施工プロセスへの展開を図っております。

 

  3.省エネルギー設計技術の研究

建築物に関連するCO2の排出量は非常に多く、建築物の省エネルギー化は大変重要であります。当社技術研究所では省エネ設計技術を研究し、ZEBReady(ZEBとは、ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略で、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロとすることを目指した建物)を取得しました。またZEBプランナー登録を行い昨年度はオフィスビルでのZEBの設計を行いました。現在は関西で施工中のマンションにおいて、ZEH-M(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス マンション)を導入しております。

4.免震・制震工法の開発

各種用途の建築物への免震工法の適用は定着しており、当社でも関東近郊、東海、関西、九州地区等、集合住宅を中心とした多くの実績があります。最近では、首都直下型・南海トラフ等の巨大地震の発生が懸念される中、防災拠点の耐震化や企業のBCP(企業継続計画)対策のひとつとして重要視されております。

免震工法では、基礎免震による共同住宅や中間免震の高層ホテル、杭頭免震でのPC圧着関節工法による大型物流倉庫、免震タワーマンションなどに取り組んでおります。また、制震工法につきましては、超高層住宅での「摩擦ダンパー工法」や、官庁物件における「アンボンドブレース工法」の適用を通じて多くのノウハウを蓄積しており、関連技術を総合的に活用し、免震・制震分野へ継続的に取組んでいきます。

 

5.プレストレスプレキャスト技術の導入

建設業の就労人口の減少により慢性的な労務不足のなか、工場で製作し、現場で組み立てて接合するプレキャスト工法は、省力化や工程短縮など有効であります。

プレストレスプレキャスト工法(PCaPC工法)は、プレキャストコンクリートに高張力(プレストレス)を加えることで、大スパンが可能でひび割れも発生しない、高品質・高耐久性・高耐震性を備えた優れた工法であります。すでに物流倉庫など複数の工事においてその有効性を確認しており、今後も積極的に推進していきます。

 

6.耐震補強関連技術の開発

耐震基準を満たさない、いわゆる「既存不適格建築物」への対応は緊急の課題であり、「改正耐震促進法」への対応も求められております。当社では要素技術として「MARS(連続繊維補強)工法」、「鋼管(低騒音・低振動)コッター工法」、「デザインフィット工法(部分アンカー枠付き鉄骨ブレース補強)」、「スマイルパラレル工法」などを保有しており、それらを活用しながら物件の特性に配慮した多くの耐震補強工事を実現してきました。最近の事例としては、東北地区の庁舎改修工事でPCa部材とPC(高強度)鋼棒を使用した外側補強を行っており、前記技術と併せて官公庁物件を含む耐震改修分野への展開を図っていきます。

 

7.杭・基礎関連技術の開発

  当社では、引抜き抵抗力に優れるなどの特徴を持つ中間及び先端に拡径部を有する場所打ちコンクリート杭

 工法「Me-A工法」を共同開発し、一般財団法人ベターリビングより一般評定を取得しております。本工法は、

 アースドリル工法を用いて、杭軸部の中間及び先端に節状の拡径部(節)を設けて、建物を支える力を増大させ

 た場所打ちコンクリート杭を造成する工法であり、この拡径部は地震の時に建物を転倒させようとする力に抵抗す

 るため、杭の引抜き抵抗としても有効に働きます。従来の杭より短く、もしくは杭軸部を細くすることが可能にな

 り、杭の工事費を低減できます。これまでに、東京の集合住宅6件(109本)で採用されております。また、阪

 神・淡路大震災における杭頭破壊の事例を契機に、杭頭の損傷を制御する研究・開発が行われるようになり、多く

 の関連技術が実用化されるようになってきました。当社でも「CTP(杭頭半固定接合)工法」の導入を図り、杭

 性能の向上とともにコストダウンにも有効なツールとして検討を進めてきた結果、これまでに4件(62本)の高

 層集合住宅で採用しております。両工法は汎用性に優れており、今後も全国への積極的な展開を進めていきます。

 

(その他の事業)

研究開発活動は特段行っておりません。

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