当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 令和2年3月31日)等を適用しているが、経営成績等への重要な影響はない。
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルスの変異株出現により、社会経済活動への制限が繰り返され、個人消費を中心に一進一退の状態が続いた。足許では、ワクチン接種の浸透に伴う活動制限の緩和や世界経済の回復等により、アフターコロナ経済への移行期待が高まっているが、一方で、ウクライナ情勢の緊迫化、資源や食糧等の供給制約、世界的なインフレ進行と金融政策の変更等による景気減速懸念が、景気の先行き不透明感を強めている。
国内建設市場においては、民間建設投資が戸建住宅等を中心に増加したが、政府建設投資が減少したため、建設投資全体としては緩やかな回復にとどまっている。また、海外建設市場においては、東南アジアの経済活動が、新型コロナウイルスの感染拡大以降停滞し、資材価格や労務費の高騰の影響も加わり、厳しい経営環境が続いているが、足許では、IT企業や物流企業等で設備投資再開の動きが出てきた。
このような状況のなか、当社グループは、当連結会計年度を最終年度とする中期経営計画「中計80」の主要施策を推進し、国内建設事業では、新設された営業本部と技術本部を中心に、営業力と技術力の強化、リノベーション工事の受注拡大、官庁工事への取組みの強化、DX推進に取り組んできた。海外建設事業では、営業力と積算力の強化、工事原価管理手法の更なる改善に取り組んできたが、海外建設事業の業績悪化により目標を達成することができなかった。
その結果、当連結会計年度の経営成績は以下のとおりとなった。なお、文中の数値は内部取引等消去後の数値である。
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ195億23百万円減少し、964億70百万円(前年同期比16.8%減)となった。当連結会計年度の売上高の内容として、前連結会計年度と比べ、建設事業は194億71百万円減少し、952億33百万円(前年同期比17.0%減)となり、不動産事業他は52百万円減少し、12億36百万円(前年同期比4.1%減)となった。
当連結会計年度の営業損失は、8億40百万円(前年同期 営業利益15億55百万円)となった。当社グループの主力事業である建設事業においては、建設事業(日本)の営業利益は、2億83百万円減少し25億83百万円(前年同期比9.9%減)となり、建設事業(東南アジア)の営業損失は、40億4百万円(前年同期 営業損失20億31百万円)となり、建設事業合計の営業損失は、14億21百万円(前年同期 営業利益8億35百万円)となった。不動産事業においては、不動産事業(日本)の営業利益は、1億41百万円減少し5億46百万円(前年同期比20.6%減)となり、不動産事業(東南アジア)の営業利益は、6百万円減少し0百万円(前年同期比89.9%減)となり、不動産事業合計の営業利益は、1億47百万円減少し5億47百万円(前年同期比21.3%減)となった。その他の事業の営業利益は、前連結会計年度に比べ8百万円増加し、33百万円(前年同期比34.5%増)となった。経常損失は、6億27百万円(前年同期 経常利益17億50百万円)となった。また、法人税等合計8億96百万円の計上などにより、親会社株主に帰属する当期純損失は、15億94百万円(前年同期 親会社株主に帰属する当期純利益3億35百万円)となった。
当連結会計年度は、中期経営計画「中計80」の最終年度であったが、「中計80」の目標である建設事業売上高については(最終年度目標1,120億円以上)、国内建設事業、海外建設事業ともに売上高が前連結会計年度より減少し、目標を達成することができなかった。また、連結営業利益についても(最終年度目標32億円以上)、海外において新型コロナウイルスの感染拡大以降の受注が大きく減少したことに加え、資材価格の高騰や労務費の増加等により、海外建設事業が営業赤字となったため、達成できなかった。今後は、新たに策定した新中期経営計画「中計83」の主要施策を確実に遂行し、経営基盤の改革を進め、収益基盤の強化を図っていく。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりである。(セグメント間の内部売上高等を含めて記載している。)
当社グループの建設事業の日本における受注高は、742億42百万円(前年同期比4.7%増)となった。
売上高は、前連結会計年度に比べ80億66百万円減少し、704億91百万円(前年同期比10.3%減)となり、売上高の減少などにより、営業利益は、前連結会計年度に比べ2億83百万円減少し、25億82百万円(前年同期比9.9%減)となった。
当社グループの建設事業の東南アジアにおける受注高は、255億78百万円(前年同期比12.3%減)となった。
売上高は、前連結会計年度に比べ113億91百万円減少し、247億56百万円(前年同期比31.5%減)となり、営業損失は40億4百万円(前年同期 営業損失20億31百万円)となった。これは、一部工事において、新型コロナウイルス感染症の影響による労務費や原材料費の高騰、工期延長によるコストの増加などにより、工事損益が大幅に悪化したことなどによるものである。
賃貸事業を中心とする不動産事業の日本における売上高は、前連結会計年度に比べ30百万円減少し、11億46百万円(前年同期比2.6%減)となり、売上高の減少や新規不動産の取得に伴う不動産原価の増加などにより、営業利益は、前連結会計年度に比べ1億40百万円減少し、5億50百万円(前年同期比20.4%減)となった。
不動産事業の東南アジアにおける売上高は、前連結会計年度に比べ14百万円減少し、2百万円(前年同期比85.2%減)となり、営業利益は、前連結会計年度に比べ6百万円減少し、0百万円(前年同期比89.9%減)となった。これは、ナカノシンガポール(PTE.)LTD.がシンガポールに所有している不動産について、前連結会計年度において、賃貸等不動産から自社使用への所有目的の変更をしたことによるものである。
その他の事業の売上高は、前連結会計年度に比べ3百万円減少し、94百万円(前年同期比3.3%減)となり、営業利益は、前連結会計年度に比べ8百万円増加し、31百万円(前年同期比39.0%増)となった。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりである。
(注) 1 当社グループでは建設事業以外は受注生産を行っていない。
2 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載していない。
3 上記①及び②は、セグメント間取引の相殺消去後の金額である。
4 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
なお、参考のため提出会社個別の事業の実績は、次のとおりである。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の実績
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含んでいる。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)である。
工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
(注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
2 完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
第79期請負金額10億円以上の主なもの
第80期請負金額10億円以上の主なもの
④ 次期繰越工事高(令和4年3月31日)
次期繰越工事のうち請負金額10億円以上の主なもの
(2) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ20億45百万円減少し、821億90百万円となった。資産の内容として、流動資産は、前連結会計年度末に比べ46億12百万円減少し、580億48百万円となった。これは、「現金預金」が46億72百万円増加したが、「受取手形・完成工事未収入金等」が89億4百万円及び「未収入金」が12億55百万円それぞれ減少したことなどによるものである。また、固定資産は、有形固定資産等の新規取得などにより前連結会計年度末に比べ25億67百万円増加し、241億41百万円となった。
セグメントごとの資産は、次のとおりである。
当連結会計年度末のセグメント資産合計は、前連結会計年度末に比べ13億82百万円増加し、313億84百万円となった。これは、「受取手形・完成工事未収入金等」が53億62百万円及び「未収入金」が11億19百万円それぞれ減少したが、「現金預金」が72億8百万円増加したことなどによるものである。
当連結会計年度末のセグメント資産合計は、前連結会計年度末に比べ31億8百万円減少し、218億53百万円となった。これは、「現金預金」が4億49百万円及び「受取手形・完成工事未収入金等」が35億41百万円それぞれ減少したことなどによるものである。
当連結会計年度末のセグメント資産合計は、前連結会計年度末に比べ19億44百万円増加し、144億95百万円となった。これは、不動産の新規取得などによるものである。
当連結会計年度末のセグメント資産合計は、前連結会計年度末に比べ8百万円増加し、77百万円となった。
当連結会計年度末のセグメント資産合計は、前連結会計年度末に比べ24百万円減少し、2億96百万円となった。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ7億12百万円減少し、466億13百万円となった。負債の内容として、流動負債は、前連結会計年度末に比べ60百万円増加し、448億3百万円となった。これは、「短期借入金」が50億円減少したが、「支払手形・工事未払金等」が10億24百万円、「1年内償還予定の社債」が5億円、「工事損失引当金」が19億45百万円及び「未払消費税等」が15億24百万円それぞれ増加したことなどによるものである。また、固定負債は、前連結会計年度末に比べ7億73百万円減少し、18億9百万円となった。これは、「社債」5億円を流動負債の「1年内償還予定の社債」へ振り替えたことによる減少、及び「長期借入金」が2億10百万円減少したことなどによるものである。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ13億32百万円減少し、355億76百万円となった。これは、「親会社株主に帰属する当期純損失」15億94百万円の計上、及び為替の変動による「為替換算調整勘定」の影響などによるものである。
また、自己資本比率については、前連結会計年度末の42.4%から41.9%となった。
当社グループの連結自己資本については、新中期経営計画「中計83」に掲げる基本方針のもと、着実に主要施策を遂行し、財務体質の更なる強化を目指す。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失7億99百万円を計上し、法人税等の支払によるマイナスなどがあったが、売上債権の減少、工事損失引当金の増加、未成工事受入金の増加及び未払又は未収消費税等の増減によるプラスなどにより、115億15百万円のプラス(前年同期は45億49百万円のマイナス)となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻による収入などがあったが、定期預金の預入による支出及び有形固定資産の取得による支出などにより、26億84百万円のマイナス(前年同期は94百万円のプラス)となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の減少及び長期借入金の返済による支出などにより、57億39百万円のマイナス(前年同期は40億57百万円のプラス)となった。
この結果、当連結会計年度末の「現金及び現金同等物の期末残高」は、前連結会計年度末に比べ37億57百万円増加し、256億32百万円となった。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、運転資金及び設備投資資金の調達は、自己資金、借入金及び社債によっている。なお、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設等」に記載のとおり、重要な資本的支出の予定がある。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なることがある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。
また、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (追加情報)」に記載している。
加速する経営環境の変化に適応するため、持続的成長を目指し、技術力の強化を中心とした経営基盤の改革に重点を置く。
・ ワークエンゲイジメントの向上を目指した組織の改革、環境整備の推進、及び自律型人財の育成強化
・ 技術力の向上による総合力の強化
・ 成長分野に対応した重点領域の設定と集中的な投資による収益基盤の強化
① 建設事業売上高合計 1,200億円
② 連結営業利益 38億円
③ 連結自己資本 390億円
④ 株主配当 14円以上
競争力の強化と収益力の確保を実現する為、リノベーション工事と官庁工事を拡大し、DXの推進によって技術力と生産性向上を図り、収益を維持・増加させると共に、働き方改革を推進する。
① 人財の確保と育成
② DX推進による生産性向上と技術力の強化及び働き方改革の実現
③ ソリューション営業と技術提案力の強化
④ 特定技術の強化や新工法の開発
⑤ 安全・品質管理水準の更なる向上
⑥ リノベーション工事の受注拡大
⑦ 官庁営業の推進と受注拡大
⑧ 設計施工の拡充と強化
⑨ 調達力の強化
⑩ 土木工事の受注拡大
(海外建設事業)
堅固な400億円体制を実現できる自律した組織を目指し、ローカル社員と一体となって、営業活動の強化と技術に裏付けられた競争力のある原価により受注を増強し、プロアクティブな調達と原価管理により工事利益を改善して、確実に収益を上げられる基盤を再構築する。
① ローカル社員のワークエンゲイジメント向上と、経営人財を含めた自律型人財の育成
② 受注の増強、工事利益の改善
③ 直傭工の活用
④ M&Aや不動産事業等、今後成長が見込まれる分野や地域への事業規模拡大
手許資金を有効活用し、本業に軸足を置きつつ非建設事業の収益増強を図り、セグメント利益を9億円に引き上げ、長期的には10億円を目標とし、海外での不動産取得や環境問題に呼応した再生エネルギー事業等の新規事業を推進する。
① 不動産収益の拡大
② 再生エネルギー事業(風力・太陽光発電事業等)等、新規事業の取組み
③ 成長性のある東南アジアでの不動産事業の強化
① 新卒採用と中途採用の拡大による総社員数の増強
② ワークエンゲイジメントの向上を目指し、人財の育成と働き方改革を推進
・残業上限規制への対応
・作業所における週休二日(閉所)への取組み
・女性活躍推進の更なる取組み
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