課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、「堅実経営と誠実施工を信条に、社会から必要とされ続ける企業として、社業の発展を通じ広く社会に貢献する」ことを経営理念に掲げ、時代の趨勢、経営環境の変化に柔軟かつ迅速に対応して経営基盤の強化を図り、株主の期待に応え、ひいては社会に貢献することを基本方針としています。

当社グループでは、すべての事業活動においてこれらを踏まえ、ステークホルダーに信頼・満足・安心を提供していくことを目指しています。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標

 ① 2030年に向けたビジョン

建設市場においては、防災・減災対策、インフラ長寿命化、PPP/PFI事業の拡大、DXの推進や脱炭素に向けた投資など一定の需要が見込まれるものの、中長期的には、いまだ収束が見通せない新型コロナウイルス感染症や地政学的リスクによる景気への影響に加え、新設の建設投資の抑制、物価上昇による建設コストのさらなる高騰、技能労働者不足の深刻化が懸念されるなど、経営環境は一層厳しさを増すことが予想されます。

このような環境認識のもと、今後も長期的に事業を継続し、社会の持続的な発展に貢献するため、将来のありたい姿を示した「2030年に向けたビジョン」の実現に向け、様々な取り組みを展開しています。

 


 

 ② 中期経営計画

「2030年に向けたビジョン」の実現に向けた第2のステップとして、2022年5月に「中期経営計画(2022~2024年度)」を策定しました。

 


 

同計画の概要については、次のとおりです。

 


 

 


 

 


 

 

 


 

 


 

 

なお、「2030年に向けたビジョン」及び「中期経営計画(2022~2024年度)」の詳細については、当社ウェブサイトに掲載しています。

 

・2030年に向けたビジョン

https://www.okumuragumi.co.jp/corporate/vision/

・中期経営計画(2022~2024年度)

https://www.okumuragumi.co.jp/corporate/plan/

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題

わが国経済の先行きは、新型コロナウイルス感染症の影響による振れを伴いつつも、政策効果等を下支えに緩やかな回復基調を辿ることが期待されていますが、同感染症の動向や地政学的リスクなど不透明感が強く、予断を許さない状況が続くものと思われます。建設業界においては、公共投資を中心に建設投資は底堅く推移すると見込まれますが、建設コストのさらなる上昇が懸念されるなど、経営環境は一層厳しさを増すものと思われます。

当社グループにおいては、経営環境が加速度的に変化し社会のニーズが多様化する中、今後も長期的に事業を継続することで、社会の持続的な発展に貢献していく所存であり、「2030年に向けたビジョン」の実現を見据えた第2のステップとして、「中期経営計画(2022~2024年度)」を策定しました。本計画においては、前中期経営計画に掲げた事業戦略の基本方針を踏襲しつつ、これまでの取り組みをさらに深化させていきます。

具体的には、業務改革や戦略的な技術開発・DXの推進等による生産性及び技術優位性の向上、並びにESG/SDGsへの取り組み強化を通じて「企業価値の向上」を継続的に図るとともに、不動産事業及び新規事業のさらなる拡大や海外事業基盤の構築により「事業領域の拡大」を推進していきます。また、働き方改革の推進や事業戦略を支える多様な人材の活躍及び教育の強化に向けた取り組みにより「人的資源の活用」を引き続き進めていきます。

なお、中期経営計画においては、サステナビリティを巡る課題の解決に向けた方策を反映することで、事業活動とESG/SDGsに関わる取り組みを一体的に推進することとしています。

 

 

<気候変動への対応(TCFDの枠組みに基づく気候関連の情報開示)>

当社グループは、「人と地球に優しい環境の創造と保全」を基本理念に掲げ、環境汚染の予防、環境負荷の低減及び環境の保全に努めています。気候変動をはじめとするサステナビリティを巡る課題への対応について、重要な経営課題であるとの認識のもと、「持続可能な社会の実現」に向けた取り組みを進めています。

 

〔TCFD提言への賛同〕

2022年4月に、TCFD提言への賛同を表明しています。TCFDが推奨している「①ガバナンス」、「②戦略」、「③リスク管理」、「④指標と目標」の4つの枠組みに基づいて、気候変動に関わる情報開示を進めるとともに、持続可能な社会の実現を目指していきます。

 


 

 

①ガバナンス

取締役会の監督の下、気候関連の方針、リスク及び機会の評価・管理をはじめ、ESG/SDGsに関連する課題等について審議し、戦略的な取り組みを推進する組織として、ESG/SDGs推進委員会を設置しています。

同委員会は、代表取締役社長を委員長、各本部組織の長及び東日本・西日本支社長を委員として構成し、その審議結果等について、必要に応じて取締役会に付議・報告することにしており、取締役会による監視が適切に図られる体制としています。

 


 

②戦略

「2℃以下シナリオ」及び「4℃シナリオ」に基づく検討(シナリオ分析)により、気候関連のリスク及び機会が組織に及ぼす影響を分析しました。

・2℃以下シナリオ:世界の平均気温の上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準を保ち、1.5℃に抑える努力

          を継続することを想定したシナリオ

・4℃ シ ナ リ オ:世界の平均気温が産業革命前より4℃程度上昇することを想定したシナリオ

 

具体的には、気候関連を含めたESG/SDGsに関わるリスクと機会、それらが顕在化した場合のインパクトを分析し、その発生可能性と影響度の2軸により、それぞれのシナリオにおける重要度を評価のうえ、ESG/SDGsに関わる当社グループの課題を抽出しています。気候変動に関連したマテリアリティ(重要課題)として「レジリエントなインフラ整備への貢献」及び「環境に配慮した事業の推進」を特定したほか、事業活動の根幹となる「働き方改革の推進」についても、ESG/SDGsに関わる当社グループのマテリアリティ(重要課題)として特定しています。これらの課題解決に向けた方策を中期経営計画における各部門の施策等に反映することで、事業活動とESG/SDGsに関わる取り組みを一体的に推進することとしており、持続可能な社会の実現に向け、長期的に事業を継続していきます。

 

ESG

SDGs

ESG/SDGsに関わる

リスクと機会

リスクと機会が

顕在化した場合

のインパクト

※1

2℃以下

シナリオ

重要度

※2

4℃

シナリオ

重要度

※2

リスクと機会

のタイプ

発現時期

ESG/SDGsに関わる

当社グループの課題

※3

E


 

 

気候変動にともなう

異常気象や地震、台風

などによる大規模災害の

頻発・激甚化

インフラの破損による生活および産業基盤の劣化、保有資産に

対する損害

4

5

物理的リスク(急性)/

移行リスク(法規制・市場)

短・中・長期

レジリエントな

インフラ整備への

貢献

E


気候変動にともなう

気温上昇や環境に

配慮しない開発による

自然環境の破壊

生態系の破壊や水源の汚染、企業評価の悪化による受注の減少

4

5

物理的リスク(急性・慢性)/移行リスク(法規制・評判)

短・中・長期

環境に配慮した

事業の推進

E


気候変動にともなう

炭素税(カーボンプライシング)の導入による

材料・外注費の高騰

建設コストの増額に

ともなう収益力の低下

4

3

移行リスク
(法規制・市場)

短・中・長期

脱炭素化の推進★

E


建設資材に含まれる

天然資源の浪費

天然資源の減少にともなう持続可能性の減退

3

3

移行リスク(市場)

中・長期

リサイクルによる

資源の有効活用

S


危険をともなう労働環境

労働者の

モチベーションの低下

3

3

物理的リスク(急性)/

移行リスク(市場)

短・中期

安心安全な労働環境

S


空き家や空き店舗、

老朽建物の増加

治安・衛生環境の悪化や建物倒壊による

災害、保有不動産の

賃貸収入の減少

3

3

物理的リスク(慢性)/

移行リスク(市場)

中・長期

不動産ストックの

有効活用

S


労働環境における

多様性の欠如

女性をはじめとする

多様な人材の流出、

雇用機会の損失

3

3

物理的リスク(急性)/
移行リスク(市場)

短・中期

ダイバーシティ経営

の推進

E・S


気候変動にともなう

気温上昇による労働環境

の悪化

熱中症リスクの増大、労働生産性の低下に

ともなう建設コスト

の増額

3

4

物理的リスク(慢性)/
移行リスク(市場)

短・中・長期

機械化・省力化・

効率化の推進★

E


 

気候変動への対策となる建築物の省エネルギー化需要の増加

建築物の

省エネルギー化の進展

4

3

製品とサービス、市場

短・中・長期

建築物の

省エネルギー設計★

S


ICTの発展と

建設技術への応用

ICTによる建設技術

の向上

3

3

製品とサービス、市場

短・中・長期

ICTによる技術力と

生産性の向上

S・G


高品質インフラの

需要の高まり

長寿命なインフラ

の整備

3

3

製品とサービス、

レジリエンス

中・長期

施工品質の確保・高度化

E


気候変動への対策となるクリーンエネルギー需要の高まり

CO 2 排出量の少ない

発電方式の普及

4

3

製品とサービス、

エネルギー源、市場

短・中・長期

再生可能エネルギー事業の推進★

S・G


地域社会・企業との連携の促進

地域社会・企業との

パートナーシップ

によるシナジーの発揮

3

3

製品とサービス、市場

短・中・長期

地域社会・企業

との連携

S


業務効率化による

長時間労働の削減

建設業の魅力の向上と従業員の健康増進

4

4

製品とサービス

短・中期

働き方改革の推進

S


働き方の多様化と

雇用流動化の進行

多様な働き方の実現

3

3

製品とサービス

短・中期

ディーセントワーク

の推進

 

※1 リスクに関しては負のインパクト、機会に関しては正のインパクトを記載しています。

※2 発生可能性と影響度の2軸で重要度を評価しました。1~5の5段階で評価し、5が最も重要度が高いことを示しています(5:極めて高い、4:高い、3:中程度、2:低い、

1:極めて低い)。

※3 ESG/SDGsに関わる当社グループのマテリアリティ(重要課題)は 太字下線 で示しています。★印は、気候変動に関連した課題を示しています。

 

③リスク管理

気候関連を含めたリスクと機会及びインパクト、並びにESG/SDGsに関わる当社グループの課題は、ESG/SDGs推進委員会において、分析・識別・評価・管理のうえ、課題の重要度に応じて中期経営計画における各部門の施策の策定や見直し(レビュー)、リスク管理等に活用しています。

 

④指標と目標

当社グループは、気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標を次のとおり設定しています。なお、同目標は中期経営計画(2022~2024年度)における非財務目標としています。

 


 

また、GHGプロトコルの算定基準に基づいた温室効果ガス(GHG)排出削減目標として、次のとおり設定しています。

 


(注)当社グループは、SBT(※)認定を取得するため、温室効果ガス排出削減目標をSBT事務局へ提出

しています。現在、審査の順番待ちの状況であり、SBT事務局の審査内容によっては、目標を変更

する可能性があります。

※SBT (Science Based Targets)とは、パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回

る水準を保ち、1.5℃に抑える努力を継続するもの)が要求する水準と整合した、5~15年先を目標年と

して企業が設定する「温室効果ガス排出削減目標」のことです。

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