文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「企業は社会の公器、企業の社会的責任遂行」という言葉を明確に自覚し、株主を始め、顧客、当社グループ社員、協力会社並びに地域社会からの信頼を得て、社会資本整備を通して「信頼と利益」の調和の取れた企業経営を目指しております。企業である限り競争は必然であり、そのためにより高度で特化した技術が必要であることを認識し、人材教育と技術開発を推進しております。
(経営理念)
・福祉国家建設の一翼を担って社会に奉仕する
・技術を究め創意をこらし自己の責任を完遂する
・和信協同し企業の繁栄と共に幸福を創り出す
(経営方針)
技術の研鑽と創意に努め、安全と安心の企業ブランドのもと、社会資本整備を通して国家建設に貢献するとともに、企業の繁栄と社会的責任の調和を追及する。
(2)経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題
土木分野は、引き続き「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」が推進されることから、国土強靭化関連工事が市場を牽引し、好調を維持すると見ています。一方、建築分野については、新型コロナウイルス感染症の影響による着工遅れが一部に見られるものの、需要そのものが縮小しているという印象はなく、当社が主たる市場とするマンションなどのプレキャストPC板関係は堅調に推移していくと予想しています。また、耐震事業は、ここ2年程厳しい状況が続いているものの、公営住宅などの集合住宅では耐震化工事が未実施の物件が多く残っていることから、今後、さらに営業力を強化していきたいと考えています。2022年度は、過去最高レベルとなる400億円を超える潤沢な手持ち工事を抱えており、今後はこれらを効率的に消化して収益につなげていくことに努めます。
2022年度は、昨年5月に策定した第5次中期経営計画「VISION2030」の2年目になります。順調にスタートした2021年度に続き、中だるみのない確実な計画の実行を目指します。加えて、各施策に進捗度とその効果を確認するためのKPIを設定し、モニタリングを実施して実効性を管理します。メンテナンス事業は、M&Aにより完全子会社化した駿河技建株式会社を核として拡大を図ります。生産力アップのための既存工場の本格的なリニューアル工事を、九州小竹工場を皮切りにスタートし、順次他の5工場に展開します。これらは、比較的規模の大きな投資となることから、資金調達においては財務の健全性を維持しながら最適な方法を検討いたします。さらに協力会社を含めた施工体制の維持・拡張は引き続き経営の重要なテーマであり、社員や協力会社の作業員に対する必要な待遇改善を進めます。これには、その原資を確保するために継続的な高収益体制を構築していく必要があり、その手段のひとつと位置付けるDXの推進と実装を2022年度より本格的に推進していきます。昨年4月に社長直轄の「DX推進プロジェクト」を発足し、この中で業務改善に向けた課題抽出やDXの活用方針などを検討しました。2022年度からは「DX推進部」を設置して、着実にDXの展開・活用を図り、生産性の向上とあわせて社員及び協力会社作業員の働き方改革の実現につなげていきたいと考えています。
最後にウクライナ問題に端を発する、エネルギーや原材料の高騰が短中期的に影響を及ぼすことも懸念され、動向を注視しながら適宜対応していきます。
以上、このような重要課題への対応を着実に進め、その成果を企業風土、企業文化として定着させながら引き続き持続的な成長を目指してまいります。
(3)中期経営計画「VISION2030」について
当社グループは、長期的な市場環境の変化をとらえ、PC技術の特性を核とした技術開発と事業の多様化で持続的な成長を実現するため2025年に向けて「VISION2016」を作成し、その達成を目指してまいりましたが、策定から5年が経過し、この間計画を上回る好調な成績を積み重ねてまいりました。
一方で、想定した市場環境が変化し計画と実績に乖離が生じてきたことや、前提とした設備の拡張などをはじめとする生産環境の整備が思うように進まないなど、今後の成長を考える上で早急な対応を講じる必要も生じてきました。
そこで改めて向こう10年を見据え、「新たな成長戦略に向けた経営リソース(人材、技術・生産設備、財務)の拡充」をメインテーマとした「VISION2030」を策定し、当連結会計年度を初年度としてスタートさせました。
「VISION2030」では、通過点である2025年までの5年間で高収益体制の実現、経常的に経営資源を充実させていく体制・文化の構築を目指すべきゴールとして、「稼ぐ力」を蓄えるためのハード・ソフト両面での環境整備を集中的に行い、その後、2030年に向かってこれをテコに急成長を成し遂げることとしております。2030年にあるべき姿として「価値を創造するエンジニアリング企業」「顧客の要望にワンストップで応える企業」「世界レベルのSDGs達成に貢献する企業」を目標としております。
この「VISION2030」を達成するための方針として、次の4つを掲げております。
事業方針:
(ⅰ)2030年度のゴールに向けて、2025年度までに高収益体質が実現し、経常的に経営資源を充実させていく体制・文化の構築している状態を目指す
(ⅱ)2030年度のゴールを、売上高450億円超・営業利益率5%超とし、2025年度に売上高350億円超・営業利益率5%超を目指し、選別受注及び利益優先主義を継続する
(ⅲ)人員増加施策だけでなく、生産性の向上を図るため、大規模な設備増強や現場負荷軽減のための仕組みづくりに注力する
投資方針:
(ⅰ)工場を中心に5年間で集中的な投資を行い、生産性の向上、製品売上比率の向上を図る
(ⅱ)将来の工場製品売上の増加見通しに伴い、必要な時期において工場の生産能力の増強を検討する
(ⅲ)継続的な研究開発を行うために売上高の0.3%を開発費に充てる
財務方針:
(ⅰ)財務の健全性を重視し、投資は利益の範囲内とする
(ⅱ)将来、大規模な投資が必要となった場合は、保有資産の活用も視野に入れる
(ⅲ)ROEは7%超の維持を目標とする
株主還元方針:配当性向20%超の維持
また、「VISION2030」においては、SDGs<持続可能な開発目標>の17の目標への取り組みについても掲げております。
当社グループは、2015年に国連サミットで採択されたSDGsに対し、当社事業の重要な様相としてSDGsを位置付け、「世界レベルのSDGs達成に貢献する企業グループ」を目標に掲げ、SDGsが描く未来の現実に取り組むことで、さらなる社会貢献を図ること、及び事業活動を通じて、課題抽出と技術革新に取り組み環境負荷軽減を達成することは重要な課題と捉えております。
(4)新型コロナウイルス感染症の影響に関する現状認識と今後の見通しについて
当社グループにおいて、現在まで現場施工・工場生産において工程等の進捗遅れもなく、新型コロナウイルス感染症による当連結会計年度の業績に対する著しい影響はありません。
また、今後の業績への影響に関しましては、現時点では重要な影響はないものと判断しております。
セグメントごとの具体的な影響についての見通しは、次のとおりであります。
①土木事業
土木事業の主力分野である公共事業については、国土交通省を初め、NEXCO、JRTT及び自治体の各発注機関は、入札契約手続き全般の柔軟な対応等により景気の下支えに万全を期すという政府方針に則り、これまでの事業執行体制を維持し、新規事業の発注を従来通りに実施しており、当連結会計年度における当社グループの業績への著しい影響はありませんでした。
今後についても、この方針が継続されるものと考えられることから、当社グループが対象としている市場が縮小される可能性は低く、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期しながら事業を進めることで、営業活動や現場施工及び工場生産への影響は今後も軽微であると見通しております。
そのため、今後の土木事業の業績について著しい影響は生じないものと判断しております。
②建築事業
当連結会計年度においては、民間の建設投資で新型コロナウイルス感染症の影響に起因する新規案件の着工遅れが顕在化するなど景気の不透明感が高まりましたが、市場全体の縮小には至らず推移しました。今後においては、新築建物に替わる既存建物の有効活用や集合住宅の老朽化対策としての維持更新需要が中長期的に継続するものと期待されます。
当社グループにおいても、新型コロナウイルス感染症の影響により施工中の物件において工事が一時中止となり、製品納品に遅れが発生したことから、売上高に影響が生じました。しかしながら、この影響は限定的なものであり、現時点では順調に進捗していることから、見極めが難しい一面もありますが、今後の業績へ重要な影響を及ぼす事象はないと判断しております。
ただし、今後も市場動向を注視していく必要はあり、建築市場への影響が明らかになり、定量的な影響が算定可能となった時点で、随時、当社グループの業績に与える影響を判断し、今後の業績見通しへの反映や、新規戦略の立案を行っていく必要があると考えております。
③当社グループの対応状況
当社グループでは、早い段階より新型コロナウイルス感染症に対する注意喚起を実施し、その後の感染拡大に対応するかたちで国、自治体などの方針に従って様々な対応策を実施してまいりました。その結果、本支店が機能を維持し、また工事・工場ともに通常操業を継続しております。したがって、現時点まで当社グループの業績に重大な影響はありません。
今後も必要な施策を継続していくことで、引き続き通常機能が維持され、通常操業が継続されることを前提として、翌連結会計年度以降においても業績への重要な影響はないものと考えております。
お知らせ