(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済は、昨年度に引き続き新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の制約が続きましたが、海外ではウィズコロナを目指して制約を解除し、経済活動の回復が見られる地域もあり、国内製造業をはじめとする輸出関連企業の業績は順調に回復し、また国内における制約の解除に伴い、個人消費も徐々に回復を見せ始めました。ただコロナ禍で縮小した経済活動からの急激な回復に伴い、サプライチェーンの混乱や原油価格・資源価格等の高騰は、回復基調の経済活動に影を落とす一因になりつつあります。そんな中、延期されていた東京オリンピック・パラリンピックや様々なイベントの開催、冬のオリンピック・パラリンピックが開催され、平常に近づいてくるものと期待していた矢先のロシアによるウクライナ侵攻は、世界的にエネルギー、食糧、資源等のサプライチェーンの混乱を生じさせ、回復局面の世界経済に大きな打撃を与える結果となっており、全く先行きが見通せない状況となっています。
当社グループの主たる事業である建設業界におきましては、公共建設投資は、国土強靭化政策推進の下、自然災害への防災・減災対策や復旧・復興対策、老朽化したインフラ対策等により堅調に推移しました。一方、民間建設投資につきましては、コロナ禍の中、過去最多規模の新型コロナウイルスの感染拡大の第6波もあり、経済活動の制約や雇用・所得環境の悪化、インバウンドの消失の継続等に伴う設備投資計画の中止や延期が見られたものの、生活様式の変化に伴い、物流施設等の需要は堅調に推移しました。
このような状況の中、当社グループは「中期3ヵ年計画(2021年度~2023年度)」の基本方針として[淺沼組らしさ(独自性)を深耕させ「変化に挑戦」]を掲げ、様々な施策に取り組んでおります。「人間にも地球にも良い循環をつくる」ことを目指したリニューアル事業ブランド『ReQuality』もその1つで、このコンセプトに沿った淺沼組独自の環境配慮型リニューアル技術を活かした「GOOD CYCLE BUILDING」の第1弾と位置付けた名古屋支店の改修を9月に終え、『ReQuality』を見える化したショールームとしても活用を始めています。さらに、“新領域(海外・新分野)への取り組み強化”として7月にタイでインフラ改修事業の展開を目指し現地法人を設立、11月にはシンガポールにてリニューアル事業等を営む会社を子会社化することを決定し、本年1月に実現しました。
このM&Aにおける投資額の確定に伴い、中期3ヵ年計画における「新領域関連投資」や「技術開発・ICT関連投資」も含めた全体の資金投入計画を改めて検討・見直しを行い、当初の資金投入計画を減額し、株主還元を増額することを決定し、中期3ヵ年計画期間の配当性向を50%以上から70%以上としました。株主還元につきましては、株主への利益還元を最重要施策としております基本方針に則り、引き続き取り組んでまいります。
その他の施策においても着実に取り組んでいくことで様々な社会変化に対応し、新技術開発による人材不足対策をはじめとした生産性の向上、既存技術の洗練や新領域へも挑戦し、多様に変化する経営環境の中、経営課題をしっかりと捉え、全役職員一丸となってさらなる企業価値向上を目指してまいります。
当社グループにおきましては、新型コロナウイルス感染拡大に伴う影響により一部工事案件の発注先送りなどが見られ、受注競争は厳しさを増してきている中、当連結会計年度の受注高は1,365億6千8百万円となり、前連結会計年度比13.2%の増加となり計画を上回ることができました。
売上高につきましては、1,354億7千8百万円となり、前連結会計年度比2.5%の減少となりました。
損益に関しましては、期初計画と比べ完成工事高の減少により完成工事総利益が下回り、売上総利益につきましては、134億4千4百万円(前年同期比3.6%減)となりました。また、営業利益及び経常利益につきましては、それぞれ、営業利益48億3千5百万円(前年同期比8.6%減)、経常利益49億4百万円(前年同期比8.6%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、37億4千8百万円(前年同期比9.4%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
受注高は1,127億6千2百万円(前年同期比20.5%増)、売上高は1,098億4千9百万円(前年同期比0.3%減)となり、セグメント利益は101億2千6百万円(前年同期比7.7%減)となりました。
受注高は238億6百万円(前年同期比12.0%減)、売上高は245億5千7百万円(前年同期比11.3%減)となり、セグメント利益は30億9百万円(前年同期比15.2%増)となりました。
また、「その他」の事業につきましては、売上高10億7千万円(前年同期比1.6%減)、セグメント利益9千9百万円(前年同期比30.8%減)となりました。
営業活動による資金の増加は15億6千3百万円(前連結会計年度は129億2百万円の資金の減少)となりました。これは主に未収入金の減少によるものであります。
投資活動による資金の減少は22億6千4百万円(前連結会計年度は8億1千5百万円の資金の増加)となりました。これは主に連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出によるものであります。
財務活動による資金の減少は22億6千7百万円(前連結会計年度は19億4千8百万円の資金の減少)となりました。これは主に配当金の支払によるものであります。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物は、28億6千2百万円減少し、当連結会計年度末には128億9千8百万円(前連結会計年度比18.2%の減少)となりました。
(注) 当社グループでは建設事業以外では受注生産を行っておりません。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。
3 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況
a.受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高に
その増減額を含んでおります。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)であります。
3 当事業年度の期首から「収益認識に関する会計基準」等を適用したため、当事業年度の前期繰越工事高を
修正しております。
工事受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) 百分比は請負金額比であります。
(注) 1 完成工事高のうち請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。
前事業年度
当事業年度
2 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が、100分の10以上の相手先はありません。
(注) 次期繰越工事のうち請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。
当連結会計年度における経済環境につきましては、昨年度から引き続き新型コロナウイルスによる影響が継続し、感染の拡大と落ち着きの波を何度か繰り返す状況で推移しましたが、ワクチン接種の進展もあって経済活動の制約も徐々に緩和されるにつれ、回復の兆しが見え始めました。一方、世界的な経済の回復基調を受け、石油や原材料等の価格上昇が見られ、加えてロシアのウクライナ侵攻が物価の上昇に拍車をかけ、また中国では新型コロナウイルスの感染対策から都市のロックダウンが実施されるなどサプライチェーンの混乱を生じさせております。提出会社におきましては、国内の建設作業所における施工活動には特段大きな影響はありませんでした。
そのような環境の中、当社グループにおける受注活動につきましては、大きく制約を受けた昨年度の状況からは改善したものの、発注の遅れや競争の激化は継続しており、第3四半期累計期間においては前年同期より減少となり厳しい状況でありました。しかしながら第4四半期において、いくつかの大型案件の受注が決まり、結果的に前連結会計年度比13.2%増の1,365億6千8百万円となり、中期3ヵ年計画の初年度の計画値である1,321億円を44億円強上回ることができました。
売上高につきましては、一部工事の着工の遅れなどにより計画値を45億2千1百万円下回る1,354億7千8百万円となりました。
損益に関しましては、売上高の計画値未達により売上総利益が134億4千4百万円となり、計画値を4億5千5百万円下回り、営業利益および経常利益はそれぞれ48億3千5百万円、49億4百万円となり、計画値をそれぞれ5億4百万円、3億7千5百万円下回り、親会社株主に帰属する当期純利益は計画値を4億2千1百万円下回る37億4千8百万円となりました。業績数値につきましては、受注工事高以外は計画値未達という結果となりました。
また、自己資本利益率(ROE)は前連結会計年度比1.3ポイント減少の9.0%となり、中期3ヵ年計画の「10%以上確保」は達成できませんでした。
建築部門の経営成績は、受注高が前連結会計年度比20.5%増の1,127億6千2百万円となり、計画値を67億6千2百万円上回りました。これは大型の物流施設の受注があったことが主たる要因です。
売上高は前連結会計年度並みの1,098億4千9百万円となりましたが、計画値からは45億5千万円下回りました。これは、一部工事の着工遅れが響いたことによります。セグメント利益は前連結会計年度比7.7%減の101億2千6百万円となり、これは前連結会計年度と比べ利益率の低下があったことなどによります。
土木部門の経営成績は、受注高が前連結会計年度比12.0%減の238億6百万円となり、計画値を22億9千3百万円下回りました。これは民間工事で造成工事等が増えたものの、官庁工事における特に上下水道関連工事が前連結会計年度と比べ大きく減少したことによります。
売上高につきましては、前連結会計年度比11.3%減の245億5千7百万円となりましたが、計画値からは4千2百万円上回り、ほぼ計画通りとなりました。これに関しましては、期初の繰越工事高には大きな差は無かったものの、手持工事の個々の状況から想定される全体としての進捗予定額の違いによるものです。セグメント利益は前連結会計年度比15.2%増の30億9百万円となり、これは売上高の減少があったものの、利益率が2.9ポイント改善したことによるものです。
(財政状態)
当連結会計年度における財政状態は、資産合計が901億3千2百万円となり、前連結会計年度比20億4千4百万円の減少となりましたが、新たな企業結合により発生したのれんや名古屋支店の改修に伴う建物及び構築物の増加等により固定資産が10億1千6百万円増加した一方、未収入金が44億5千2百万円減少したこと等によるものです。
負債合計は、前連結会計年度比30億7百万円減少し、474億5千8百万円となりましたが、これは主に未成工事受入金が33億7千8百万円減少したこと等によります。
純資産合計は、前連結会計年度比9億6千2百万円増加し、426億7千3百万円となりました。これは主に当期純利益37億7千万円の計上や配当金の支払20億7千万円および投資有価証券の売却と株式時価の下落によるその他有価証券評価差額金9億6千3百万円の減少によるものです。
この結果、連結自己資本比率は46.8%となり、前連結会計年度末から1.8ポイント改善しました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、28億6千2百万円減少し、当連結会計年度末では128億9千8百万円となりました。これは主に未収入金が41億5千1百万円減少したことや未成工事受入金が37億7千3百万円減少したこと等により営業活動によるキャッシュ・フローが15億6千3百万円の増加となった一方、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出21億6千8百万円や主に名古屋支店の改修に伴う固定資産の取得による支出、投資有価証券の売却による収入等により投資活動によるキャッシュ・フローは22億6千4百万円減少し、配当金の支払19億8百万円や借入金の返済により財務活動によるキャッシュ・フローが22億6千7百万円減少したことによるものです。
当社グループにおける主な資金需要は、建設事業における工事施工に要する工事費、販売費及び一般管理費ならびに技術開発・ICT関連の設備投資や新領域関連の投資資金です。
運転資金については、金融機関からの借入金及び社債の発行により調達しており、設備投資資金等については、内部留保等の自己資金でまかなっております。
当社は中期3ヵ年計画において、資金投入計画と共に株主還元計画を打ち出しており、競争力の維持・強化のための成長投資と株主還元のバランスを取る方針としております。株主配当につきましては、中期3ヵ年計画において連結配当性向を70%以上としており、2022年3月期の配当は1株当たり363円、連結配当性向78.1%としました。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成しておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われており、資産・負債や収益・費用の金額にその結果が反映されております。
これらの見積りにつきましては、過去の実績等を踏まえながら継続して評価し、必要に応じ見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なることがあります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
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