当グループは、二酸化炭素等の温室効果ガスの放出による地球環境問題や道路交通騒音・振動等の沿道環境問題への対応、道路インフラの効率的な保全、デジタル技術の活用等、社会及び国民の幅広いニーズに応えるべく、「人と環境に配慮した技術」、「維持修繕の効率化に貢献する技術」、「生産性の向上に寄与する技術」及び「持続可能な社会をつくる技術」を重点テーマにあげて研究開発に取り組んでいる。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。
(1) 「人と環境に配慮した技術」に関する研究開発
① 当社が開発したフォームドアスファルト技術を用いたアスファルト混合物(以下「合材」という。)の製造出荷が可能な工場を全国37箇所に増加させた。本技術は、アスファルトを発泡し合材を製造するものであり、製造した合材に残存する微細泡(マイクロバブル)がアスファルトの粘度を下げ、合材の締固め特性を向上させる。これにより、通常の合材よりも低い温度で締固めを行うことが可能となるため、製造温度を低減させた「中温化混合物」や製造温度はそのままで施工性を向上させた「施工性改善混合物」に利用することができる。
「中温化混合物」は、合材の製造温度を低下させることができ、製造時の燃料使用量が減少し、二酸化炭素排出量が削減できるとともに、施工温度が低いため、舗装現場の作業員環境を改善でき、熱中症対策にも期待できる。
「施工性改善混合物」は、製造温度は同じでも締固めの可能温度域を広げることができ、温度低下による施工不良が発生しにくくなる。また、長距離・長時間運搬が可能となり、これまで合材の供給が困難であった空白圏域での施工も可能となる。
さらに、合材を持続的にリサイクルしていくためには再生アスファルト混合物の品質向上が不可欠であるが、これにもフォームドアスファルト技術は有効である。
② 舗装修繕時に発生した古い舗装材をリサイクルする工程において、乾燥・加熱時には臭気が発生する。通常、その対策としてフィルターや脱臭炉を設置しているが、より効果的で効率的な装置として蓄熱式脱臭炉を開発した。蓄熱式脱臭炉は、燃焼室内のハニカムセラミック蓄熱体で熱を蓄えることで、従来の脱臭炉と同等の脱臭効果を維持しながら、燃料消費量及び二酸化炭素排出量の大幅な削減が可能であることが確認された。現在、各工場への展開を進めている。
(2) 「維持修繕の効率化に貢献する技術」に関する研究開発
① 舗装ストックは年々増加しており、我が国の道路整備は「造る時代」から「メンテナンスの時代」へと変化した。しかしながら道路のメンテナンスにかけられる費用には限りがあるため、効率的な道路補修のニーズが高まっている。この対策として、既設舗装上に厚さ20㎜程度で施工を行う薄層オーバーレイ工法「スマートコート」を開発し実用化に至った。これにより、経済的に路面のリフレッシュ及び延命化を図ることが可能となったが、使用する合材の性質上、破損レベルや交通量などに制限があり、破損の激しい個所や重交通路線への適用は困難であった。そこで合材の性能を向上させることで、より重度な破損個所や重交通路線への適用を可能とし、本技術の普及を図っている。
また、舗装の構造的破損(走行に支障をきたすような重度の破損)の原因のひとつに路盤層以下への水分の浸透による支持力低下がある。これは、路面のひび割れから雨水などの水分が過剰に浸透することにより発生するため、ひび割れを塞ぐことにより防止することができる。そこで、主剤と硬化剤を混合することにより硬化するクラック注入剤「MDシール」を開発し販売を行っている。これは、浸透性に優れ微細なひび割れや深部まで容易に浸透するため、既設舗装の延命化に有効である。
② 舗装の長寿命化によるライフサイクルコストの低減を図るため、高耐久アスファルト舗装を開発し、耐久性の検証を行っている。高耐久アスファルト舗装は、従来の半たわみ舗装と同等の耐久性と耐油性を有しつつ、より低コスト・短期間での施工が可能であり、大規模物流ターミナルやバスターミナルといったの大型車両の駐車場などに適用することを想定している。
(3) 「生産性の向上に寄与する技術」に関する研究開発
当グループでは、i-Constructionに代表されるような情報通信技術(ICT)などを活用した建設現場の生産性向上技術の開発に取り組んでいる。ICTを活用した情報化施工では、舗装修繕工事向けの独自手法を自社工事で多数導入するとともに、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録することで自社以外の工事への汎用化を進めている。現場作業の効率化では、開発中であった建設機械搭載型レーザースキャナを用いた出来形管理技術が国土交通省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に選定され実用化に至った。舗装工事における省人化は、生産性向上のみならず安全性向上にも寄与する重要課題と捉え、作業の機械化など様々な研究開発を行っている。
(4) 「持続可能な社会をつくる技術」に関する研究開発
国の第4次社会資本整備重点計画においてグリーンインフラの推進が掲げられ、当グループでも、防災・減災技術である雨水流出抑制の研究開発を始め、自然環境の改善を目的とした水質浄化や雨水浸透による地下水涵養など、持続可能な社会に向けた技術の開発に取り組んでいる。防災・減災技術では、20年に渡り施工実績がある雨水貯留・浸透技術「アクアプラ工法」をベースに、ゲリラ豪雨による内水氾濫など近年の都市型水害に対応する冠水対策工事の提案型設計施工を行っている。この冠水対策技術の確立と対策効果向上を目的として、雨量計や水位計によるモニタリングを実施し設計へのフィードバックを行っている。
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