当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
当連結会計年度におけるわが国経済は、長引く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を大きく受けた1年となりました。国内景気は緩やかな持ち直しの動きがみられましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が繰り返される中で、個人消費の持ち直しに足踏みがあるなど一部に弱さがみられました。さらに、深刻化するウクライナ情勢により、資源や原材料価格の上昇や金融資本市場の変動、供給面での制約等による世界経済の下振れリスクが拡大するなど、これまで以上に先行き不透明な状況が続く厳しい事業環境となりました。
国内の住宅市場では、住宅取得支援策の実施や生活様式の変化を背景に住宅取得への関心が高まり、新設住宅着工戸数において、持家・貸家・分譲住宅の全てで前年度比プラスとなりました。一般建設市場でも、建築物の着工床面積において、事務所・店舗・工場・倉庫の使途で増加しており、全体でも前年度比プラスとなりました。
そのような事業環境の中で当社グループは、本年度を最終年度とする3ヵ年計画「大和ハウスグループ第6次中期経営計画」に基づき、グループ全体でガバナンス体制の抜本的な見直しを図り、事業構造や組織体制の変革に向けて経営改革を進めてまいりました。そして、2021年4月には事業本部制の運用を本格始動し、事業特性に応じたリスクマネジメント体制を強化するとともに、グループ会社も含めた事業バリューチェーン一体でお客様に価値あるサービス提供していくことを追求してまいりました。
また、積極的な不動産投資で物流施 設の開 発強化を行い、物流ディベロッパーのトップランナーへと大きく成長し、海外事業においても、北米を中心に今後のグループ成長を牽引するための事業経営基盤を整備いたしました。
以上の結果、当連結会計年度における 売上高は4,439,536百万円 ( 前連結会計年度比7.6%増 )、 営業利益は383,256百万円 ( 前連結会計年度比7.3%増 )、 経常利益は376,246百万円 ( 前連結会計年度比11.4%増 )、 親会社株主に帰属する当期純利益は225,272百万円 ( 前連結会計年度比15.5%増 )となりました。
なお、上記の営業利益には退職給付数理差異等償却益50,989百万円を含んでおり、数理差異等を除いた営業利益は332,267百万円(前連結会計年度比0.8%増)となりました。
セグメント別の概況は次のとおりです。
戸建住宅事業では、事業本部制移行に際し、事業ミッション「『続く幸せ』を、住まいから」及び、事業ビジョン「LiveStyle Design(リブスタイルデザイン)~家を、帰る場所から『生きる』場所へ~」を策定し、新しいミッション・ビジョンのもとで、お客様の人生に寄り添い、地域に密着した事業展開を推進してまいりました。
2021年4月に木造とRC造の混構造を採用した当社最高級戸建住宅商品「Wood Residence MARE-希-(マレ)」を発売するとともに、Webサイト上で楽しく簡単に家づくりを体験できる「Lifegenic(ライフジェニック)」や、当社オリジナルのテレワークスタイル「快適ワークプレイス」・「つながりワークピット」、家族で家事をシェアする「家事シェアハウス」など、社会や生活の変化をとらえた多彩な商品と住まい方の提案で、お客様の課題解決と新たな価値の提案に積極的に取組んでおります。さらに、事業本部傘下の関連グループ会社とバリューチェーン改革に取組み、新築住宅だけでなく、リフォームや自宅の住み替え・売却、ご家族の住まい探しや家具の提案等、「大和ハウスの住まい」という基盤を用いて、今後もお客様のライフタイムバリューに対応した提案の拡大に取組んでまいります。
海外では、主要進出エリアである米国において、経済が好調な米国東部・南部・西部を結ぶスマイルゾーンでの戸建住宅事業の展開を進め、東海岸のStanley Martin Holdings, LLC、西海岸のTrumark Companies, LLCに加えて、2021年9月に南部のCastleRock Communities LLCを当社グループに迎えることで事業拡大の基盤を強化してまいりました。また、米国においても新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響としてサプライチェーンの混乱や行政当局の許認可業務の遅延が発生しておりましたが、戸建住宅の需要は引き続き堅調であること、安定供給に向けた資材調達の強化に注力し影響を最小限に抑えることができていることから、期初計画を上回る業績を達成いたしました。
以上の結果、当事業の 売上高は626,889百万円 ( 前連結会計年度比21.5%増 )、営業利益は 29,708百万円 ( 前連結会計年度比36.2%増 )となりました。
賃貸住宅事業では、ご入居者様に選ばれ、長く住み続けたいと思っていただける住まいをご提供し、オーナー様の資産価値の最大化・長期安定経営に繋がる賃貸住宅経営のご提案とサポートに取組んでおります。感染防止対策の徹底と社会経済活動の両立が進み、緊急事態宣言の発令等により停滞していた対面営業での提案機会が増える中で、分譲賃貸物件や環境負荷低減につながるZEH-M物件等の販売を推進してまいりました。また、Webセミナーについても引き続き定期的に開催し、最新の土地活用・賃貸住宅市場等の情報提供を通じて、お客様との継続的な関係構築を行ってまいりました。
大和リビング株式会社では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下において、ご入居者様の転居が抑制されたことや、テレワーク等の新しいライフスタイルの浸透に伴い、インターネットを標準導入した物件へニーズが高まっていることにより、高い入居率を維持いたしました。また、同社グループの大和リビングケア株式会社では2021年12月、全国で17棟目となるサービス付き高齢者向け住宅「D-Festa(ディーフェスタ)柏たなか」(千葉県)をオープンいたしました。なお、大和リビング株式会社と大和リビングマネジメント株式会社は、2022年1月1日付で大和リビング株式会社を存続会社とする吸収合併により経営統合いたしました。意思決定の迅速化とワンストップ体制により、オーナー様やご入居者様の更なる利便性向上を目指してまいります。
海外では、主な展開エリアとなる米国において、2021年8月にテキサス州で開発した賃貸住宅を売却し、物件売却実績は2016年の売却第1号案件から累計で5件となりました。稼働中物件においても、経済活動が徐々に改善していることから入居が順調に進んでおり、物件売却に向けて順調に稼働実績を積み上げております。
以上の結果、当事業の売上高は1,029,195百万円(前連結会計年度比4.7%増)、営業利益は94,337百万円(前連結会計年度比3.9%増)となりました。
マンション事業では、お住まいになる方々の多彩なライフスタイルに応えるため、ハウスメーカーとして培ってきたノウハウを駆使しながら、長寿命の住まいに欠かせない基本性能や快適性、安全性、管理体制の提供を追求してまいりました。そして、お客様にとっての資産価値に加えて、環境や社会への配慮、地域社会への貢献を目指した付加価値の高いマンションづくりに努めております。
駅前大規模複合再開発物件である「プレミストタワーズ札幌苗穂」では、2街区の内、1街区(アクアゲート)が2022年1月に完成し、JR苗穂駅や大型商業施設に直結している利便性の高さと、充実した共用部・併設施設が高く評価され、早期に完売いたしました。また、「プレミスト大濠二丁目」(福岡県)では、大濠公園近接という福岡市内随一の立地に加えて、建物の高断熱化及び高効率・省エネ設備機器を採用することによりZEH-M Oriented認証を取得、自然や生態系の保全活動を目指したABINC認証を取得するなど、環境や次世代を見越した仕様が評価され、販売が順調に進捗しております。
株式会社コスモスイニシアでは、都心の優良不動産を低予算で取得可能にする共同出資型の投資用不動産「セレサージュ豊洲」(東京都)の販売が好調に推移し、総募集口数を完売いたしました。
大和ライフネクスト株式会社では、マンション1棟1棟に合わせたオンリーワンの防災マニュアルを制作するサービスを2021年6月より発売開始した他、横浜市消防局監修による「VR(バーチャルリアリティ)消防訓練サービス」を株式会社理経と共同開発し、2021年11月より同社が管理を受託するマンション管理組合向けに提供を開始いたしました。
海外では、中国において、「グレースレジデンス(和風雅頌)」(南通市)及び「グレースレジデンス(琅越龍洲)」(常州市)にて早期に住戸が完売となるなど好調な事業展開を進めており、新たに蘇州市での開発事業にも着手しております。
以上の結果、当事業の売上高は379,865百万円(前連結会計年度比11.8%増)、営業利益は9,762百万円(前連結会計年度比80.9%増)となりました。
住宅ストック事業では、当社施工の戸建・賃貸住宅を所有されているオーナー様に対し、インスペクション(点検・診断)を通じたリレーションの強化や保証期間延長のためのリフォーム提案を強化してまいりました。併せて法人のお客様の事業用資産に向けたメンテナンス提案に注力し、受注拡大を図ってまいりました。
様々な住まいのニーズにワンストップサービスでお応えする「Livness(リブネス)」では、コロナ禍における営業活動としてオンラインセミナーを実施してまいりました。住宅事業部門においては、全国60拠点のリブネス課を設置し、オーナー様を中心に、住み替えや売却、リノベーションなど様々なご相談に対して、当社グループをあげて対応しております。
以上の結果、当事業の売上高は126,955百万円(前連結会計年度比1.8%増)、営業利益は8,877百万円(前連結会計年度比15.0%減)となりました。
商業施設事業では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の状況を考慮しながら、テナント企業様の事業戦略やエリアの特性を活かし、ニーズに応じたバリエーション豊富な企画提案を行ってまいりました。特に、大型物件への取組みの強化や、投資用不動産の購入を検討されているお客様に向けて当社で土地取得・開発企画・設計施工・テナントリーシングまで行った物件を販売するなど業容の拡大を図り、事業を推進してまいりました。
また、大和情報サービス株式会社とダイワロイヤル株式会社では、更なる事業シナジーの最大化、経営効率化を図ることを目的に、2021年10月1日付で経営統合し、社名を大和ハウスリアルティマネジメント株式会社へ変更いたしました。同社では、海外初出店となる「ロイネットホテルソウル麻浦(マポ)」(大韓民国)を2022年3月にオープンいたしました。さらに、当社が2019年に取得し、同社が運営管理するショッピングセンター「ALPARK(アルパーク)」(広島県)では、大規模改装工事を経て2021年12月東棟、2022年4月西棟がリニューアルオープン、2023年4月に全面リニューアルオープン予定であるなど、開発企画・設計施工・運営管理事業におけるグループの経営資源を組み合わせた複合施設開発に取組んでおります。
大和リース株式会社では、2021年10月に、地域の皆様がご利用いただけるコミュニティルームや災害時の一時避難場所も設けたコミュニティ型複合商業施設「ブランチ茅ヶ崎3」(神奈川県)を開業した他、2022年3月には、「食」で結ぶ新たな交流をコンセプトに飲食店や宿泊施設等も整備した「鳥居崎海浜公園」(千葉県)をリニューアルオープンいたしました。
しかしながら、開発物件売却の減少等により、当事業の売上高は796,922百万円(前連結会計年度比1.4%減)、営業利益は114,825百万円(前連結会計年度比6.6%減)となりました。
事業施設事業では、法人のお客様の様々なニーズに応じた施設建設のプロデュースや不動産の有効活用をトータルサポートすることで業容の拡大を図ってまいりました。業績を牽引してきた物流施設開発に次ぐ事業の柱とすべく、データセンターブランド「DPDC(ディープロジェクト・データセンター)」を立ち上げた他、「生活インフラ」の整備の一環として、老朽化した公設卸売市場の建替え支援事業第一弾「富山市公設地方卸売市場再整備事業」や日本最大級のサーモンの陸上養殖施設も手掛けてまいりました。
物流施設関連では、2021年10月に完成した東日本最大(※1)で当社最大の延床面積(322,299㎡)を誇るマルチテナント型物流施設「DPL流山Ⅳ」(千葉県)をはじめ、全国40ヶ所で物流施設を着工するなど、豊富な経験とノウハウでお客様の物流戦略をバックアップしてまいりました。
医療介護施設関連では、老朽化し耐震基準を満たしていない建物を持つ病院をターゲットに建替えや移転の提案、さらに、CCRC(※2)やヘルスケアを核とした街づくりを起点とした提案を強化してまいりました。
事務所・工場等の拠点サポート関連では、2021年4月に「広島イノベーション・テクノ・ポートⅡ」に着手するなど、当社開発の工業団地の事業化促進、企業誘致を強化していることに加え、脱炭素社会に向け省エネ建物を推進するためZEB提案を強化してまいりました。
食品工場関連では、大型植物工場2件を着工いたしました。
大和ハウスプロパティマネジメント株式会社では、主に当社が開発した物流施設を管理・運営しており、2021年10月完成の「DPL流山Ⅳ」(千葉県)、2022年3月完成の「DPL新横浜Ⅰ」をはじめとする物流施設40棟について新規プロパティマネジメント(PM)、ビルマネジメント・ビルメンテナンス(BM)契約を締結し、累計管理棟数は209棟、管理面積は約762万㎡となりました。
株式会社フジタでは、大型タワーマンションや複数の大型物流施設、フィリピンにおけるマニラ首都圏地下鉄の追加工事等を受注したことなどにより、建設受注高は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響があった前期から大幅に改善いたしました。
以上の結果、当事業の売上高は1,139,640百万円(前連結会計年度比15.1%増)、営業利益は131,769百万円(前連結会計年度比13.7%増)となりました。
※1.当社調べ(1棟単体、竣工ベース)。
※2.Continuing Care Retirement Community(コンティニューイング・ケア・リタイアメント・コミュニティ)の略。地域住民や多世代と交流しながら健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができる地域づくりを目指すもの。
物流事業では、大和物流株式会社において、拠点新設に伴う初期費用の発生や原油価格高騰による燃料費増加の影響もありましたが、主力である建築建材の荷動きの復調により輸送量が増加していることから、業績は堅調に推移しております。株式会社ダイワロジテックにおいては、IT事業にて物流自動化設備に関わるシステム導入の案件が増加した他、物流事業にてeコマースへのシフト、巣ごもり需要の高まりを背景に、倉庫の拡張や自動化、物量増加が進む中で、お客様の様々なニーズにこたえてまいりました。
ホームセンター事業では、ロイヤルホームセンター株式会社において、木材や住宅設備商品(給湯器・ビルトインコンロ・温水便座等)で品薄状態が続いていることや、新たな変異株の感染拡大による消費者心理の悪化もあり、厳しい事業環境が続いておりますが、地域に密着した暮らしと住まいのベストパートナーを目指して業容拡大を図っております。
フィットネスクラブ事業では、スポーツクラブNAS株式会社において、徹底した感染症対策を講じながら運営を続けております。変異株の感染拡大の影響からフィットネスクラブ会員数(自由に施設利用が可能なコース)の回復には遅れが生じておりますが、スクール会員数(各カリキュラムに沿って通うコース)は以前の水準に戻ってきております。
アコモデーション事業では、大和リゾート株式会社において、通期稼働率が前年度をわずかながら上回る結果となりました。インバウンド需要の回復は当面先となる見通しですが、国内宿泊需要では緩やかな回復がみられております。
しかしながら、環境エネルギー事業における請負工事の減少等により、当事業の売上高は501,831百万円(前連結会計年度比1.1%減)、営業利益は2,542百万円(前連結会計年度比76.4%減)となりました。
(注) 各セグメント別の売上高は、外部顧客への売上高にセグメント間の内部売上高又は振替高を加算したものです。(「第5 経理の状況 1 (1) 連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」を参照。)
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による資金の増加336,436百万円、投資活動による資金の減少467,423百万円、財務活動による資金の増加24,427百万円等により、あわせて90,276百万円減少いたしました。この結果、当連結会計年度末には326,250百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動による資金の増加は336,436百万円(前連結会計年度比21.8%減)となりました。これは、主に販売用不動産の取得や法人税等の支払いがあったものの、税金等調整前当期純利益を353,300百万円計上したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動による資金の減少は467,423百万円(前連結会計年度は389,980百万円の減少)となりました。これは、主に大規模物流施設や商業施設等の有形固定資産の取得を行ったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動による資金の増加は24,427百万円(前連結会計年度比76.2%減)となりました。これは主に、株主配当金の支払いを行ったものの、棚卸資産や投資用不動産の取得等のために、借入金や社債の発行による資金調達を行ったことによるものです。
3.生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当社グループの生産・販売品目は、広範囲かつ多種多様であり、生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載しておりません。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 各セグメントの金額は外部顧客への受注高・受注残高を表示しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.各セグメントの金額は外部顧客への売上高を表示しております。(「第5 経理の状況 1 (1)連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」を参照。)
2.総販売実績に対する割合が10%以上の相手先はありません。
(参考)提出会社個別の事業の状況は次のとおりです。
受注高、売上高及び繰越高
(注) 1.損益計算書においては、建築請負部門は「完成工事高」、不動産事業部門は「不動産事業売上高」、その他事業部門は「その他の売上高」として表示しております。
2.前期以前に受注したもので契約の更改により金額に変更あるものについては、当期受注高及び当期売上高にその増減を含めております。
3.次期繰越高は(前期繰越高+当期受注高-当期売上高)です。
4. 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第83期の期首から適用しており、第83期の前期繰越高については、当該会計基準等を適用し表示しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証
するものではありません。
<CFOメッセージ>
第6次中期経営計画の振り返り
過去最高の売上高を更新するも、コロナ影響によりROEは11.7%で着地
2019年度からスタートした第6次中期経営計画において、当初は賃貸住宅、商業施設、事業施設の3事業を成長ドライバーに位置づけ、財務健全性を維持しながら資本コストを上回るROEを創出し、株主価値を向上させる3年間としていましたが、2020年の初めから新型コロナウイルス感染症が広まり、事業計画を見直さざるを得ない状況となりました。一方で、巣ごもり消費やeコマース拡大を見据え、物流施設開発への投資計画は2020年6月に3,000億円増額し、不動産開発には総額1兆587億円を投資しました。出口戦略に基づく利益確保は順調に推移し、この3年間で7,169億円の売却による回収が実行でき、投資の成果を着実に示すことができたと考えています。
最終年度である2021年度は、過去最高の売上高4兆4,395億円を達成することができましたが、ホテル・スポーツクラブ運営へのコロナ禍の影響は続き、ROE13%の目標は未達となりました。
コロナ禍に加え、成長投資先行により、D/Eレシオは0.6倍で推移
財務規律としているD/Eレシオ0.5倍については、コロナ禍に加え、成長分野への投資が先行していることにより、2021年度は0.61倍(ハイブリッドファイナンス資本性考慮後)という結果となりました。この3年間の資金調達については、2019年には1,500億円の公募ハイブリッド社債を発行し、2020年には1,000億円のハイブリッドローンを実行するなど、先行き不透明な環境下においても、強固な財務基盤が評価され、多様な資金調達を実行することができました。当社が取得している格付AA格を維持しながら、成長分野への投資資金を確保することができました。
海外事業の管理体制を強化し、継続的に事業投資を遂行
海外展開においては、地域統括会社を設置し、管理部門を配置するなど管理体制を強化しつつ、米国の住宅会社のM&Aや中国でのマンション開発に向けた継続的な事業投資を遂行し、海外事業の売上高は4,451億円を達成するに至りました。来期以降も米国事業は伸びしろがあり大幅増収が期待できるほか、中国マンション開発の業績寄与も期待できますが、海外事業については、CFOとして引き続き金利動向や世界情勢など注視しながら監督していきます。
働き方改革、技術基盤整備へ投資を継続
人的資本への投資としては、働き方改革に向けたデジタル投資、教育投資、採用投資を進め、この3年間で従業員の働き方は大きく変革しました。特に、2020年9月に環境配慮型施設の開発や再生可能エネルギーの活用など環境負荷低減のための資金として200億円のグリーンボンドを発行しましたが、その使途先の1つである「みらい価値共創センター」が、2021年10月に完成しました。西日本最大級のこの新研修施設は、「風・太陽・水」を活かした最先端の技術による世界水準のサステナブル建築となっています。「みらい価値共創人財」を社会と共に育むことを目指し、地域の子供たちを対象とした「共育活動」にも積極的に取り組んでおり、交流の場としても親しまれています。
また技術基盤整備への投資としては、BIMの構築によって「営業・設計・生産」から「施工・維持管理」に至る一気通貫により効率的な業務基盤のための投資を実行しました。加えて、ICTによる現場の省人化やIoT・ロボットを活用したデジタルコンストラクションへの投資も実行し、生産性の向上を図りました。
第7次中期経営計画における財務戦略・資本政策
人的資本・知的資本・環境への投資を推進
第7次中期経営計画の資本政策における最大のテーマは、将来の成長へ向けた投資を積極的に行うと共に、利益成長と資本効率向上を両立することにより、企業価値を最大化することです。経営指標としては、引き続きROE13%以上を目指しつつも、D/Eレシオは0.6倍程度、配当性向は35%以上へと見直しました。
7次中計期間においても引き続き積極的な不動産開発投資を推進し、5年間で2.2兆円の投資を計画しています。加えて、戦略投資としては、成長分野である海外事業への投資や、カーボンニュートラル実現に向けた環境への投資を予定しており、5年間の投資CFは6,500億円を計画しています。更に、将来の事業を支える人的資本・知的資本への投資も含め、住宅系共通の次世代プラットフォーム構築や、建築系の生産拠点強化、DXのためのIT基盤投資、デジタルコンストラクション投資などの設備投資には3,700億円を計画しています。
持続的成長モデルの構築に関わる投資を最優先としながら、一方で着実な利益成長によって営業キャッシュ・フローを増やし、安定的な株主還元を実現していきます。
ROE13%以上の実現
第7次中期経営計画期間中も成長投資のフェーズと捉えていますが、5年後の第8次中期経営計画以降の成長を見据えつつ、ROE13%以上を達成するためには、より資本効率の高い経営を実現する必要があります。そのためには、事業ポートフォリオの最適化や、M&Aでグループ入りした事業についてのガバナンス強化、低採算の事業の再構築、非効率資産の圧縮など、さまざまな観点から資本効率の改善に向けて取り組んでいきます。
また成長投資と資本政策のバランスをいかにとっていくかは課題となりますが、成長投資の機会を逃さないよう、資金調達の状況を踏まえながら、最適なタイミングで投資を実行していきます。
不動産開発投資では物流施設、データセンター、商業施設等の再生が成長ドライバー
不動産開発の重点投資領域は引き続き物流施設ですが、今後はデータセンターの開発も視野に入れています。投資対象は分散させていく計画で、特に既存商業施設のNSC再生バリューアップなど「再生と循環」を切り口にした開発は積極的に取り組みます。
既に、投資不動産残高は1.3兆円を超えています。特に流動化不動産における未稼働不動産は増加しておりますが、大半が建設中となっています。第7次中期経営計画期間においては未稼働不動産への開発を促進し、稼働物件についてはインカムゲインを最大化しながら、最適なタイミングで売却を図るなど、利益の最大化を図ります。なお5年後の投資不動産残高は2.1兆円を目指しています。
また出口戦略の強化に向けては、2021年11月、ダイワハウス・ロジスティクス・トラストがシンガポール証券取引所に上場しました。投資家からの期待も高いと認識しており、今後は国内で培った物流施設開発をアセアン諸国で積極的に展開していきます。回収した資金を次の開発原資に充て、循環するビジネスモデルを構築するとともに、機動的な資金調達を図っていきます。
資産回転率の改善によりROICを改善し、ROE向上を目指す
総資産はこの3年間で、2019年3月末の4.3兆円から2022年3月末で5.5兆円へと1.3倍増加しました。増加している要因の1つは、米国における住宅事業会社の買収や中国における進行中のマンション開発により、棚卸資産が増加していることです。今後も、選択と集中による収益源への資金投下を進め、資産回転率を意識した販売用不動産の販売を促進し、安定的なキャッシュ創出に取組みます。
また、2021年4月から本格導入した事業本部制ではROICを重要な経営指標のひとつとして採用しました。売上高・利益の成長に加えて、経営効率や社会的価値を高め、企業価値の向上を図っていく方針に基づいており、今後は事業の見直しや資本効率を重視した経営の浸透を図っていきます。それぞれの事業特性に応じて、事業本部長が傘下のグループ会社を含めたバランスシートにも責任をもち、事業本部単位でストックとフローのバランスを取りながら回転率を上げていきます。また、業務効率の改善を推し進めることでROICを改善させ、会社全体のROEの向上につなげていく考えです。
D/Eレシオ0.6倍程度の考え方
これまでD/Eレシオ0.5倍程度という数値を財務規律として設定してきましたが、その背景には、不安定な社会・経済情勢の中、安定した資金調達を行うためには格付AA格の維持が必要という考えがあったからです。加えて、不動産開発等の資金回収に時間がかかる投資については、当社のバランスシートを使うため、資本効率を考慮しない投資に対して社内的に歯止めをかける意味ももっていました。
現在、足元の金利は上昇傾向にあり、資材・労務費高騰などのリスクもあります。海外投資については、特にしっかり見極めながら投資判断をしていく考えですが、我々は第7次中期経営計画以降の成長も非常に強く意識しています。当社グループの事業は、投資が不要な建設請負事業が中心であったところから、不動産開発事業のように先行投資が必要な事業の割合が増加してきています。その状況を踏まえ、成長投資を行いながらも規律を守ることのできる最適な投資レベルを維持していくことが重要であると考え、今回、財務規律の指標を0.6倍程度(ハイブリッドファイナンス資本性考慮後)に見直しました。7次中計期間中に、成長のための投資が先行し一時的に規律を上回ることもあるかもしれませんが、2026年度の最終年度に向けて戻していく考えです。なお、進捗に応じて投資額を増額する場合には、回収も増やす施策を取る予定です。
株主還元について
株主資本の有効な活用により株主価値の持続的な成長を図る
当社は、事業活動を通じて創出した利益を株主の皆さまへ還元することと併せ、中長期的な企業価値の最大化のために不動産開発投資、海外事業展開、M&A、研究開発及び生産設備等の成長投資に資金を投下し、1株当たり当期純利益を増大させることをもって株主価値向上を図ることを株主還元に関する基本方針としています。2021年度は、年間配当金額126円(記念配当10円含む)、配当性向36.6%とし12期連続の増配を実現しました。
今後も基本方針に変わりはありませんが、2022年度から始まる第7次中期経営計画以降は配当性向を35%以上とし、業績に連動した利益還元を行い、かつ年間の1株当たりの配当金額の下限を130円とし、安定的な配当の維持に努めていきます。
自己株式の取得については、2020年度に1,000万株、取得金額260億円を実行しましたが、今後も市場環境や資本効率等を勘案し、状況に応じて機動的に実施していきます。
ステークホルダーの皆さまへ
業界トップとしての自覚をもち、社会から選ばれる企業へ
第7次中期経営計画において私がもうひとつ大切にしたい考え方は、「業界トップとしての自覚をもち、社会から選ばれる企業へ」ということです。そのためにも、事業所の業績評価を改定するとともに、法令遵守や品質技術、経営健全度評価そして人財育成を重視した経営を進めています。なかでも、人的資本への投資を充実させることで、従業員の働きがい追求と働き方改革を加速させ、成果の最大化および健全な職場環境の両立を実現していくことは、持続的な成長を実現するための大きな原動力となるはずです。
私たち大和ハウスグループは、ステークホルダーの皆さまから信頼される企業としてあり続け、“将来の夢”の実現に向けて、共創することでこれからも世の中に価値を創出してまいります。ぜひ、ご期待いただきたいと思います。
2021年度末の総資産は、2020年度末比で4,686億円増加し、5兆5,216億円となりました。その主な要因は、戸建住宅事業及びマンション事業における販売用不動産の仕入により棚卸資産が増加したことや、投資用不動産等の取得により有形固定資産が増加したことによるものです。
負債合計については、2020年度末比で2,507億円の増加となり、3兆4,102億円となりました。その主な要因は、棚卸資産や投資用不動産の取得等のために借入金や社債の発行による資金調達を行ったことによるものです。
純資産合計については、2020年度末比で2,178億円増加し、2兆1,113億円となりました。その主な要因は、株主配当金792億円の支払いを行った一方、2,252億円の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによるものです。
リース債務等を除く有利子負債残高は、2020年度末比で1,505億円増加し、1兆4,254億円となりました。D/Eレシオについては、2012年度が始まる時点の2011年度末の0.58倍と比較すると、内部留保と2013年度に実施した増資によって一時改善したものの、2021年度末においては0.61倍(※1)と上昇しております。資産の内訳については、棚卸資産の残高が1兆5,624億円となり、大きな割合を占める状況となっております。今後も、棚卸資産や投資用不動産の取得等により、資産が膨らむことが予測されますが、最適資本構成の検証により財務の健全性維持に努めてまいります。
※1 ハイブリッドファイナンス(2019年9月に発行した公募ハイブリッド社債(劣後特約付社債)1,500億円、及び2020年10月に調達したハイブリッドローン(劣後特約付ローン)1,000億円)について、格付上の資本性50%を考慮して算出しております。
キャッシュ・マネジメントについては、事業活動によるキャッシュ創出額を基準として投資を行うことを基本的な考え方としております。優良な投資機会に対しては、積極的な投資を行う必要があり、外部から調達する資金を含めて投資枠の設定を行っております。そのため、D/Eレシオが一時的に0.5倍を超えることがありますが、中長期的には、0.5倍程度に有利子負債の水準をコントロールし、成長投資と財務健全性の維持の均衡を図っております。なお、第7次中期経営計画においては、財務規律としてD/Eレシオを0.6倍程度へ見直しました。
2021年度における営業活動CFは、3,364億円となり、2020年度に比べ938億円減少いたしました。自己資本に対する営業活動CFは、2020年度の23%から6ポイント下降し17%で推移しております。主な要因としては、3,533億円の税金等調整前当期純利益を計上したものの、販売用不動産の取得や法人税等の支払いがあったことによるものです。
投資活動CFについては、第6次中期経営計画における投資計画に基づき、賃貸等不動産等の取得や、不動産開発事業への投資を3,178億円実行したことなどにより、△4,674億円となりました。その結果フリー・キャッシュ・フロー(営業活動CF+投資活動CF)は△1,309億円となり、また、棚卸資産や投資用不動産の取得等のために、借入金や社債の発行による資金調達を行ったことなどにより、財務活動CFは244億円となりました。
これらの結果、現金及び現金同等物の2021年度末残高は2020年度末から900億円減少し、3,262億円となりました。
キャッシュ創出力を示す減価償却前の営業利益(EBITDA)(※2)は4,835億円となっており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下においてもキャッシュを生み出す力を維持し続けております。今後についても、有利子負債の水準を一定程度に維持しつつ、優良な投資案件への積極的な投資を行うという方針を継続するとともに、新たな収益の柱を育てることによって、キャッシュ創出力をさらに高め、企業価値を向上させてまいります。
2021年度末の企業価値(EV)(※3)は、時価総額2兆1,326億円にリース債務等を除くネット有利子負債1兆877億円を合算し3兆2,204億円となっております。企業価値とキャッシュ創出力の倍率を示すEV/EBITDA倍率は2021年度末で6.7倍となっております。
※2 減価償却前の営業利益(EBITDA)=営業利益+減価償却費
※3 企業価値(EV)=時価総額+ネット有利子負債
税引後営業利益(NOPAT)(※5)は、2,660億円となり、投下資本(自己資本+有利子負債)3兆2,784億円(※6)に対する利益率(ROIC)は8.1%となりました。
当社は、第6次中期経営計画においてはROE13%以上を経営目標のひとつに掲げておりましたが、D/Eレシオ0.5倍を目安として借入等を行い事業を展開しているため、事業投資においては投下資本全体に対するリターンがWACC(株主資本コストと負債コストの加重平均)を上回るように意識をして取組んでおります。ROICの維持・向上によって、株主資本に対する利益率(ROE)の維持・向上に努めてまいります。
※5 税引後営業利益(NOPAT)=営業利益×(1-実効法人税率)
※6 期中平均
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