文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
①三機工業グループ経営理念
当社グループは、「三機工業グループ経営理念」を掲げ、社会における当社グループの存在意義と役員・従業員のあるべき姿を総合的に表現しております。当社グループではこれを「三機スタンダード」と呼んで社内外への浸透を図っております。
この経営理念のもと、当社グループは創立100周年となる2025年度を最終年度として、10年間の長期ビジョン“Century 2025”を策定し、以下の3つの中期経営計画期間を通じてすべてのステークホルダーから「選ばれる」会社を目指しております。
・“Century 2025”Phase1(2016~2018年度):「質」を高める3年間
・“Century 2025”Phase2(2019~2021年度):「信頼」を高める3年間
・“Century 2025”Phase3(2022~2025年度):「選ばれる」4年間
②2050年の姿(超長期ビジョン)
当社グループは、2022年度から始まる“Century 2025”Phase3の立案にあわせ、超長期ビジョンとして2050年のあるべき姿を定め、サステナビリティに関する基本的な方針や当社グループのカーボンニュートラル宣言を決定しました。
また、様々な視点から抽出した課題を「環境・社会価値の向上」と「企業価値の向上」の面から評価し、優先順位の高いものをグループ化して次の5つをマテリアリティとして特定しました。今後、サステナビリティ経営を推進するために優先的に取り組む課題になります。
当社グループの強みは、幅広い技術と豊富な実績はもとより、日本経済やインフラを支える数多くの大切なお客さまと長きにわたって培ってきた信頼関係であると捉えており、長期ビジョンの実現によってこれらをさらに拡大・強化したいと考えております。
また、コーポレートガバナンス・内部統制の一層の強化、技術力の伝承・向上、CSRの推進、リスク管理の徹底及びサステナビリティの向上などを経営課題として捉え、企業価値の向上に取り組んでまいります。
企業活動の大前提であるコンプライアンスについては、「三機工業グループコンプライアンス宣言」、「三機工業グループ行動規範・行動指針」及び「三機工業グループ行動基準」に基づき、法令遵守をはじめとしたコンプライアンス意識の向上に努めております。
これらを当社グループの経営の基本方針として、来たるべき100周年に向け着実に企業価値を高めてまいります。
(2) 経営環境及び対処すべき課題等
経営環境については脱炭素化の動き、少子高齢化、働き方改革、DXの急速な進展等、大きく環境が変化していると認識しております。これらの環境変化に対応すべく、「省エネルギー・創エネルギー事業」、「自動化・省人化事業」、長時間労働の解消など働きやすい環境づくりを目的とした当社独自の働き方改革である「スマイル・プロジェクト」を推進してまいります。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響については、状況が日々変化しておりますので、引き続き情報収集を実施し、人命最優先としつつ、影響を最小限にすべく取り組んでまいります。
①“Century 2025” Phase2の概要
2019年度~2021年度は中期経営計画“Century 2025” Phase2の期間でしたが、Phase2では「信頼」を高めることを新たなテーマとして掲げ、Phase1の「質」を高める取り組みを継続するとともに、新たに「財務・資本政策」と「ESG方針」の開示及び「情報発信力の強化」による企業理解の促進に注力することで、ステークホルダーの皆様の当社グループに対するご理解を深めていただくべく、取り組みを進めました。
当連結会計年度の環境認識及び取り組んでまいりました施策は以下のとおりであります。
・建築設備事業では、2021年度は引き続き新型コロナウイルス感染症拡大の影響があったものの、2020年度ほどの影響もなく、全体として需要は堅調に推移しました。
・機械システム事業では、労働人口の減少に伴う自動化・省人化ニーズや、物流施設への設備投資の拡大が継続しました。これを大きなチャンスと捉え、物流センター向けの新商品を開発・市場投入しました。
・財務・資本政策については、安定的かつ継続的な株主への還元を行うべく、自己株式100万株の取得を行いまし
た。
・ESG方針の取り組みとしては、当社グループの温室効果ガス排出量について、Scope1,2,3のすべてにおいて算定が終了した他、CSR調達を意識し「三機工業グループ調達方針」に沿った適切な調達活動の実施や、「三機工業コーポレートガバナンス・ガイドライン」に基づき、より良いガバナンスに向けた取り組みを継続してまいりました。
②“Century 2025” Phase2の結果
こうした活動を通じてPhase2の目標達成に努めました。その結果は以下のとおりであります。
a.業績目標と結果
Phase1からの持続的な成長を目指してまいりました。
(単位:億円)
※2021年11月12日に公表した連結業績予想を記載しております。なお、売上高と経常利益につきましては、
2021年5月14日に東京証券取引所の適時開示で公表した連結業績予想から変更ありません。
b. Phase2最終年度の目標と結果
※ROE=自己資本当期純利益率
c. Phase2期間中の目標と結果
③“Century 2025” Phase3の概要
2022年度~2025年度は中期経営計画“Century 2025” Phase3の期間となり、長期ビジョンに掲げる「選ばれる」会社の実現に向けた総仕上げの中期経営計画となります。
当連結会計年度末における環境認識及び課題は以下のとおりであります。
a.各事業の環境認識と課題
・建築設備事業では、今後、当事業分野で極端な需要減が起こるとは考えておらず、リニューアル工事など今後も一定の需要を見込んでおります。当社グループでは、「過重労働の回避を考慮した受注」、「省エネルギーシステムの開発」及び「ICT・BIMなどデジタルツールの活用による施工品質の向上」を目指してまいります。
・機械システム事業では、労働人口の減少に伴う自動化・省人化ニーズや、物流施設への設備投資の拡大が継続しております。また、新型コロナウイルス感染症の感染防止等の対策で、製造工場や物流施設において人と人との非接触を求めるニーズが拡大していることから、当社の保有技術が感染防止等の対策に貢献できるよう取り組んでまいります。
・環境システム事業では、下水処理施設・廃棄物処理施設などの公共施設において施設建設のみならず維持・管理まで含めた対応が求められております。当社グループでは、DBO(Design Build Operate)などに積極的に取り組むとともに、引き続き省エネルギー・創エネルギー事業を拡大してまいります。
b.財務・資本政策の基本方針
・将来への投資については、人財が最も重要な経営資源であるとの認識のもと、教育を含む人的投資を充分に行うとともに、R&D(研究開発)に注力してまいります。
・ステークホルダーへの還元については、配当性向及び1株当たり年間配当金を目標値として定め、安定的かつ継続的な株主への還元を行ってまいります。
・資本効率の向上を目指し、政策保有株式の縮減を継続してまいります。
c.ESG方針
・E(環境)については、事業活動を通じて、脱炭素化・省エネルギー・創エネルギー等の地球環境問題解決に貢献します。また、「SANKI YOUエコ貢献ポイント」や「三機の森」育成、植林プロジェクトなどの環境保全活動も積極的に実施してまいります。当社グループの温室効果ガス排出量については、具体的な削減目標を立案し取り組みを進めてまいります。
・S(社会)については、働き方改革を重要課題と捉え、当社独自の働き方改革「スマイル・プロジェクト」を継続するとともに、コミュニケーションの活性化により、多様な人財が働きやすい職場環境の整備に努めてまいります。さらに環境活動をはじめ、文化・スポーツ支援等についても積極的に実施してまいります。
・G(企業統治)については、「三機工業コーポレートガバナンス・ガイドライン」に基づき、より良いガバナンスに向けた取り組みを継続してまいります。
このような環境認識及び課題を踏まえ、次のとおり“Century 2025” Phase3を策定いたしました。
a.基本方針
Phase1の重点テーマ「技術と人の質を向上する」及びPhase2の重点テーマ「信頼を高める」ための施策を成熟・進化させつつ、新たな取り組みにより「選ばれる」企業グループを実現するとともに次なる時代に向けた布石を打つ
b.重点施策
・Phase1の継続
○コア事業の強化 ○成長戦略の推進 ○三機ブランドの向上
・Phase2の継続
○財務・資本政策の開示 ○情報発信力の強化
・新たな取り組み
○社会のサステナビリティへの貢献 ○働き方改革の加速 ○次世代に向けた投資
c.経営目標
・Phase3最終年度業績の目標
・Phase3期間中の目標
※計画期間中の累計
当社グループは、長期ビジョンを実現し「選ばれる」会社となるため、引き続き環境変化に柔軟に対応できる企業体制を構築しつつ、新技術の開発、コーポレートガバナンスの一層の強化に取り組み、コンプライアンスの徹底を土台として、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向け鋭意努力を重ねてまいります。
◎TCFD提言に基づく情報開示
脱炭素に関連する省エネルギー・創エネルギーへの取り組みは、総合エンジニアリングを展開する当社グループの本業に直結する部分であることから、最優先課題として位置づけております。
当社は、2021年11月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同しております。TCFDの提言を踏まえて「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」に関し開示するとともに、サプライチェーン排出量を併せて開示いたします。
≪ガバナンス≫
当社グループは、気候変動をはじめとするサステナビリティ課題全般について対応するため、代表取締役社長を委員長とし取締役をメンバーとするサステナビリティ委員会を設置いたしました。
サステナビリティ委員会では、サステナビリティ経営を実現するための重要課題・施策を審議・決定いたしますが、2021年度は、サステナビリティ方針、マテリアリティ、カーボンニュートラル宣言について討議し、取締役会に上程し決定いたしました。
委員会の下部組織として設けた各部門の実務担当者からなるサステナビリティ推進会議でも、グループ全体にわたる脱炭素推進活動を討議・推進しております。
また、気候変動を事業に影響を与えるリスクと認識し、グループ全部門の代表者から構成されるリスク管理委員会とその下部組織である気候変動リスク分科会にてリスク管理を行っております。
各委員会の審議・決定内容については経営会議に報告され、取締役会においては経営会議に報告された気候関連の事項についてその課題への取り組み状況の監督を行っております。
■サステナビリティ推進体制
≪戦略≫
■シナリオ分析
気候変動が事業に与える中・長期的なインパクトを把握するため、シナリオ分析を実施いたしました。分析においては、2100年時点において産業革命時に比べ世界の平均気温上昇が2℃未満に抑制されることを想定した2℃未満シナリオと、4℃程度上昇する4℃シナリオを採用し、各シナリオにおいて政策や市場動向の移行に関する分析と、災害などによる物理的変化に関する分析を実施しております。
各シナリオに対して、当社グループに対するリスク・機会の要因を洗い出し、事業への影響度を検証し、大・中・小の3段階で評価しております。事業へ大きな影響を与えるリスクとして「気候関連政策・法規制等」「気温上昇・異常気象」を、機会として「市場・製品・サービス」「レジリエンス(回復性)」を抽出しております。
[2℃未満シナリオ]
気候変動に対する厳しい対策が取られ、2100年時点において産業革命時に比べ気温上昇が2℃未満に抑制され
るシナリオ
※参照シナリオ:IEA(※1)によるSustainable Development Scenario(SDS)、IPCC(※2)によるRepresentative Concentration Pathways(RCP2.6)
(※1)国際エネルギー機関(International Energy Agency)の略称。エネルギー安全保障の確保を目標に掲げるOECD(経済協力開発機構)の下部の国際機関であり、エネルギー政策全般をカバーしている。
(※2)気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略称で、気候変化、影響、適応および緩和方策に関し、包括的な評価を行うことを目的として、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された組織。
[4℃シナリオ]
気候変動に対する厳格な対策が取られず、2100年時点において産業革命時に比べ4℃程度気温が上昇するシナ
リオ
※参照シナリオ:IEAによるStated Policies Scenario(STEPS)、IPCCによるRepresentative Concentration Pathways (RCP8.5)
抽出されたリスクと機会への対応策は、中期経営計画“Century 2025”Phase3に組み込まれており、これを各部門の執行計画に展開し実施してまいります。
■リスクと機会
≪リスク管理≫
当社グループでは、事業に係るリスクを統括するリスク管理委員会においてリスクを洗い出し分類したうえで、所管する分科会、コントロールの内容などを定め、影響度や頻度等を可能な限り計量化して評価し、それらの優先順位や対応方針を策定・実施し、定期的に見直しを行っております。
気候関連のリスクに関しては、気候変動リスク分科会において、評価やコントロールを検討し、リスク管理委員会に報告しております。決定された施策に関しては、評価したリスクの重要性に応じてサステナビリティ委員会、経営会議、取締役会に上程され、審議・決定し、サステナビリティ推進会議と連携し、グループ全部門へ展開されております。中期経営計画の施策として取り上げられたものは、各部門の執行計画に組み込み、進捗を管理しております。
≪指標と目標≫
■当社グループサプライチェーン排出量
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