文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「M&A業務を通じて企業の存続と発展に貢献する」ことを経営理念として掲げております。企業は社会の公器であります。その公器たる企業の深刻な後継者問題・先行き不安問題を解決し事業を存続させること、そして更に相乗効果の発揮によりその事業を発展させ譲渡側・譲受側の両当事者はもとより、従業員、取引先等のステークホルダー全員が幸福になる友好的M&Aを実践すること、このことが当社グループの社会的ミッションであり、当社は構築した全国的情報ネットワークを基盤にM&Aのプラットフォームの役割を担うべきものと考えております。
以上の経営理念に基づき、企業の存続と発展のためのM&A仲介業務を通じて顧客に対して常に付加価値の高い役務を提供することにより積極的な成長カーブでの業績アップを図り、配当も確実に実行していくことを通じて株主の皆様方をはじめとするステークホルダーの方々に報いることを経営方針としております。
国内M&Aマーケットの中でも当社グループがメインターゲットとしている後継者問題解決のための中堅中小企業のM&Aマーケットは、少子高齢化や中堅中小企業をとりまく厳しい経済環境等を背景に今後も安定的に拡大を続け、短期的にそのトレンドが大きく変化することは現時点では考えにくいものと当社グループでは考えております。
当社グループでは、企業理念の実現を通じて企業価値の向上を図るため、以下のテーマを自らに課して業務を推進しております。
①コンプライアンス重視の経営
当連結会計年度において当社の連結子会社である株式会社日本M&Aセンターの売上の期間帰属等に関して不適切な報告が発見されたことから、本件事案を厳粛に受け止めるとともに、以下の再発防止策を着実に実行することにより、ステークホルダーの皆様からの信頼回復に努めて参る所存です。
・経営陣によるコンプライアンス重視の経営理念の策定と経営方針の明確化
当社代表取締役社長三宅卓が2022年4月9日開催の「経営方針発表会」において、コンプライアンスを基礎とし た経営を行っていく旨の声明を、2022年度の経営方針とともにグループ全社員に向けて発表いたしました。同発表会ではコンプライアンス重視を織り込んだ新パーパス(経営理念)策定の開始もあわせて宣言いたしました。社員も主体性を持ち、議論を重ねて全社員でパーパスを作り上げていくことで、コンプライアンス意識の醸成・組織文化への定着を図ってまいります。
・コンプライアンス所管部署及びチーフコンプライアンスオフィサー(CCO)の創設によるリスクマネジメントの強化
2022年3月1日付で当社及び株式会社日本M&Aセンターにおいて「コンプライアンス統括部(立上準備室)」を新設し、内部通報制度の再整備・法改正対応の準備などを進めております。同部署の長を担うCCOは既に内定(上席執行役員として2022年7月1日入社予定)しており、CCOが当社のコンプライアンス体制を更に見直し、ブラッシュアップを行うことで更なるリスクマネジメントの強化を図ってまいります。
・実効性のあるコンプライアンス研修・教育の実施
本件不適切報告においては、管理職以上の意識改革が急務との認識のもと、2022年3月に外部講師による株式会社日本M&Aセンターの管理職向けのコンプライアンス研修を実施いたしました。2022年度より、新たなコンプライアンス教育体制を整備し、引続き管理職の意識を変える研修や合宿などを積極的に実施するとともに、全社員向けのコンプライアンスプログラムについても、定期的に実施してまいります。
また、当社グループ社員としての日常の行動規範の指針となる「コンプライアンスブック」を全社員に配布し、コンプライアンス意識の醸成を図っております。
・総合的な人事評価の採用及び四半期業績達成に関する経営管理手法の見直し
株式会社日本M&Aセンターの人事評価につきましては、等級要件に「倫理観」の項目を盛り込み、多面的かつ定性的な評価を実現する新人事制度を策定いたしました。2022年3月に社内説明を完了し、2022年度の評価から新制度が適用される形で運用を開始しております。
・通報窓口の充実強化、営業部門のキーパーソンとの定期的な面談の実施
2022年3月に当社グループの内部通報窓口をより分かりやすくするため、社内ポータルサイトのトップページに設置し、全社員に周知しております。
加えて、2022年度より株式会社日本M&Aセンターの営業部門のグループリーダー職以上のキーパーソンとCCO又は当社の社外取締役との定期的な面談を実施する予定です。これまで交流のなかった営業部門とコンプライアンス部門等との間に定期的にコミュニケーションの機会を設けることで、信頼関係を涵養し、不正の未然防止・早期発見に役立ててまいります。
・監査・監督部門の体制強化
監査体制強化の柱として、内部監査経験の豊富な「内部監査部門の専担者」は既に内定(内部監査室長として2022年7月1日入社予定)しており、引き続き監査・監督体制の強化に努めてまいります。
・本件不適切報告に係る責任の明確化と営業組織の見直し
本件不適切報告を受け、社内規程に則り厳正な処分を実施いたしました。
加えて株式会社日本M&Aセンターの営業組織につきましても2022年4月1日より営業部門のトップ及び傘下の事業部長・部長陣を再編成し、組織の見直しを行いました。
・売上報告及び売上計上に関する業務フローの再構築
従来のフローでは案件担当者が株式譲渡契約書・基本合意書のコピーを入手し、それを証憑として売上を計上していたため、そのコピーを改竄することで不適切な報告をする余地がありました。
この度の変更で、売り手と買い手それぞれから株式譲渡契約書・基本合意書のコピーを入手し、かつ双方から当該契約が締結されたこと等を明記した確認書の原本を入手することにより、各契約を締結した事実を確認するフローを構築いたしました。これらフローの改定により、営業担当者による不適切な報告を排除するフローに変更し、2022年3月より実施しております。
・契約文書等ドキュメント管理の徹底
2022年3月1日付で文書管理課を新設し、2022年度より新業務フローの構築及び標準化、文書管理ルールの策定、システム改修の要求事項の整理等に順次に着手してまいります。
②M&A総合企業への取組
近年、当社グループは、従前の中堅中小企業のM&A仲介事業にとどまらず、上場企業から小規模事業者までの多様な対象企業に対し、M&Aにおけるすべてのプロセスにおいて付加価値の高いサービスを提供できるよう、M&A総合企業への取組を段階的に進めてまいりました。
そこで当社グループはその取組をより一層発展させるべく、創業30周年の節目にあたる当連結会計年度の2021年10月1日をもって純粋持株会社体制に移行いたしました。純粋持株会社体制移行に伴い、グループ各社に権限を委譲することで優秀な経営者人材を育成し、グループ各社がさらなる発展を遂げることで企業価値の最大化につながると考えております。
今後とも当社およびグループ各社を通して国内はもとよりASEAN諸国を中心とする海外を含むあらゆる地域の多様な対象企業に対し、経営戦略、マーケティング、PMI(M&A成立後の統合)等のコンサルティング分野、あるいは、バリュエーション、デューデリジェンスを中心とするエグゼキューション分野等、すべてのプロセスにおいて付加価値の高いサービスを提供できるよう、“世界No.1のM&A総合企業”を目指してまいります。
③コロナ禍の中にある経営者の方々に最適なM&Aソリューションを
新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、経済活動の先行きが不透明な現況において当社グループが果たすべき社会的使命はこれまで以上に極めて重要なものとなっております。
今後、中小単独での生き残りに不安を抱えている経営者の方や後継者不在という潜在的課題の解決を先送りにしていた経営者の方のうちの多くがM&Aによる事業承継を決断なされるものと考えられます。
また、再編が加速する業界や再生事案が多発する業界も数多く見受けられるものと推察いたします。
当社グループは、感染拡大防止を第一義に直ちにテレワーク体制、オンラインコミュニケーション体制を整えました。感染拡大が終息するまでは一定の制限のもとでの営業活動にならざるをえませんが、リーマンショックや東日本大震災等の際と同様、今こそ当社グループは困難を乗り越えてその社会的使命を完遂すべき時であり、企業の存続と発展のためになお一層尽力する所存であります。
④コンサルタントの積極的採用と研修制度のさらなる充実等による人材の育成
中堅中小企業のM&Aの潜在的全需要からすれば当社のシェアは数パーセントに過ぎないものと当社グループでは考えております。
今後、より多くの経営者の方々にM&Aによるソリューションを提供し、業績拡大を実現するために、当社グループでは、引続きコンサルタントの採用を推進し毎年着実な増員を図っていく予定であります。
併せて、採用した人材の早期戦力化を図るために、社歴3年未満のコンサルタントを部署の垣根を外した競争原理により切磋琢磨させ、当社グループで成功しているコンサルタントのノウハウを共有化し、継承すべき当社グループのコンサルタントとしての基本理念・基本行動を伝承する企画を継続して実施しており成果を挙げております。
このような企画と現場でのOJTにより、今後も社歴の浅いコンサルタントの着実な育成を図ってまいります。
目標とする経営指標と達成状況につきましては、「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載しております。
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