業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりです。

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、感染症の変異株「オミクロン株」の世界的な感染急拡大に見舞われましたが、ワクチン接種が進む中、行動制限の緩和策もあり、経済は回復への兆しが少しずつ見え始めました。

一方、半導体関連をはじめとする部材不足や供給遅れ、需給ひっ迫を背景とした原材料・副資材の価格高騰や物流コストの上昇等は依然厳しい状況が続いており、加えて、ウクライナ情勢の緊迫化による資源価格高騰や、中国の厳しいロックダウンによるサプライチェーンの混乱の影響など、先行き不透明感がさらに強まっています。

わが国経済においても、新型コロナウイルスの感染者数が増減を繰り返す中、感染拡大防止策とワクチン接種の進展により経済活動正常化への動きがあったものの、オミクロン株による感染再拡大に加え、半導体不足による各産業への影響や、原油を始めとする資源価格の高騰、ウクライナ情勢等に起因する世界的な経済活動の停滞が懸念されるなど、景気の先行きは引き続き予断を許さない状況が続いています。

 このような状況のもと、当社グループにおいては、社員およびお客様の安全確保を最優先し、間接部門や営業部門についてはテレワークやリモートによる活動を推進、海外においても各国政府の要請に従い対応を図りながら、合理化、効率化を徹底的に進め、事業効率のよい体制への転換や抜本的コスト構造改革を行ってまいりました。加えて、製造請負事業の強化や海外製造拠点における量産立ち上げなど、事業規模拡大に向けた施策を実行しました。

 これらの結果、当連結会計年度の業績は、感染症および部材不足による影響が継続し、売上高は63,277百万円(前年同期比15.4%増)、営業損失361百万円(前年同期は689百万円の利益)となりました。経常利益においては、主に海外子会社へのグループ内貸付金に対する為替差益697百万円の発生により経常利益122百万円(前年同期比22.7%減)となりました。また、EMS事業における米国・メキシコ拠点で実行した事業構造改革費用(164百万円)および減損損失(1,433百万円)、感染症関連費用(138百万円)等による特別損失1,744百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は1,980百万円(前年同期は735百万円の損失)となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

1)HS事業(ヒューマンソリューション事業)

 国内事業については、感染症拡大や半導体関連等の部材不足による影響があったものの、事業規模拡大に向けた施策効果とともに前年同期に比べ感染症影響によるお客様の稼働調整による影響が軽微となったこともあり、事業全体は増収となりました。一方、利益においては、人件費や募集関連費用等、事業規模拡大のための先行投資の影響がありました。

 海外事業については、ASEANにおいて感染症による、お客様の稼働調整等の影響がありましたが、前年同期に比べるとその影響は軽微となり、特に中国、タイにおける業績が改善傾向となりました。

 この結果、当セグメントの売上高は、22,088百万円(前年同期比15.4%増)、セグメント利益は、647百万円(前年同期比26.0%減)となりました。

 

2)EMS事業(エレクトロニクスマニュファクチャリングサービス事業)

 EMS事業は、中国・ASEAN・北中米において生産活動を展開しており、戦略投資の実行期にあります。感染症再拡大に伴う影響として、マレーシア、メキシコにおける各国政府方針によるロックダウンや部材不足等の影響が残りましたが、ベトナム拠点での新規品生産立ち上げの開始や、中国・ASEAN地域においては感染症による影響が前年同期に比べて軽減されたこともあり、前年同期に対し増収となりました。

 利益面では、重点施策として生産立ち上げを進めているメキシコ拠点の先行投資コストに加え、事業全体において、部材不足に起因したお客様の減産や生産計画後ろ倒し、部材価格高騰や物流コストの上昇等が継続し、その影響が大きな利益圧迫要因となりました。

 この結果、当セグメントの売上高は、28,400百万円(前年同期比18.1%増)、セグメント損失は、536百万円(前年同期は29百万円の損失)となりました。

 

3)PS事業(パワーサプライ事業)

 PS事業は、抜本的コスト構造改革による体質強化の効果もあり、第1四半期は想定を上回る状況で推移しましたが、第2四半期以降は部品調達難および副資材も含む部材価格高騰の影響が継続したことに加え、お客様やサプライヤーの生産拠点におけるロックダウン等の影響もあり、前年同期に対し増収とはなったものの、部品調達難、部材価格高騰等の影響により、想定していた収益を確保することはできませんでした。しかしながら、需要は高い水準を維持しており、部品不足解消時および次年度を見据えた取り組みを進めています。

 この結果、当セグメントの売上高は、12,788百万円(前年同期比9.6%増)、セグメント利益は、1百万円(前年同期比99.5%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ364百万円増加し5,106百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。また、現金及び現金同等物に係る換算差額を240百万円計上しています。

「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、1,550百万円の支出(前年同期は943百万円の収入)となりました。主なプラス要因は、減価償却費1,514百万円(前年同期は1,266百万円)、減損損失1,433百万円(前年同期  - )等となり、主なマイナス要因は、税金等調整前当期純損失1,586百万円(前年同期は310百万円の損失)、売上債権の増加額1,008百万円(前年同期は1,329百万円の減少額)、棚卸資産の増加額2,184百万円(前年同期は350百万円の減少額)等によるものです。

「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、926百万円の支出(前年同期は919百万円の支出)となりました。主なプラス要因は有形固定資産の売却による収入378百万円(前年同期は25百万円の収入)等となり、主なマイナス要因は、有形固定資産の取得による支出1,051百万円(前年同期は997百万円の支出)、無形固定資産の取得による支出208百万円(前年同期は42百万円の支出)等によるものです。

「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、2,601百万円の収入(前年同期は664百万円の収入)となりました。主なプラス要因は、短期借入金の純増額3,945百万円(前年同期は2,268百万円の純増額)等となり、主なマイナス要因は、長期借入金の返済による支出848百万円(前年同期は874百万円の支出)、ファイナンス・リース債務の返済による支出347百万円(前年同期は403百万円の支出)等によるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

    当社グループは、製造アウトソーシング事業を主な事業として営んでいます。HS事業につきましては、その大部分が、請負業務・派遣業務であり、重要性が乏しいため、記載を省略しています。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

 至 2022年3月31日)

前年度比(%)

EMS事業 (千円)

26,989,839

122.34

PS事業 (千円)

11,086,239

112.63

合計(千円)

38,076,079

119.35

    (注)1.金額は、製造原価によっております。

 b. 受注実績

    当社グループは、受注から生産までの期間が短く受注管理を行う必要性が乏しく、受注実績と販売実績の差異が僅少のため、受注実績の記載を省略しています。

 c. 販売実績

        当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりとなります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

 至 2022年3月31日)

前年度比(%)

HS事業 (千円)

22,088,784

115.43

EMS事業 (千円)

28,400,631

118.07

PS事業 (千円)

12,788,027

109.61

合計(千円)

63,277,443

115.35

    (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。

       2.主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しています。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月22日)現在において判断したものです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度においては、感染症拡大による経済活動停滞の影響があったものの需要は底堅く、売上高は63,277百万円(前年同期比15.4%増)となりました。一方、利益面では、感染症および部材不足による影響により、営業損失361百万円(前年同期は689百万円の利益)となりましたが、経常利益においては、主に海外子会社へのグループ内貸付金に対する為替差益697百万円の発生により経常利益122百万円(前年同期比22.7%減)となりました。

 また、EMS事業における米国・メキシコ拠点で実行した事業構造改革費用(164百万円)および減損損失(1,433百万円)、感染症関連費用(138百万円)等による特別損失1,744百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は1,980百万円(前年同期は735百万円の損失)となりました。

 

■資産・負債及び純資産

1)資産

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ3,334百万円増加の34,842百万円となりました。

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ4,690百万円増加の26,349百万円となりました。これは主に、受取手形及び売掛金が増収や為替影響により1,236百万円、原材料及び貯蔵品が生産増に伴う買増しや為替影響により2,279百万円増加したことによるものです。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ1,342百万円減少の8,453百万円となりました。これは主に、EMS事業での減損損失の計上により、有形固定資産が前年度末比1,192百万円減少したことなどによるものです。

 戦略投資は当社グループの次なる成長を生み出すものであり、その方針は変わらないものの、感染症による経済活動への影響や部材不足による影響、また、世界情勢の変化等による事業環境変化も想定され、投資実行の見極めを行うとともに、運転資本の圧縮および収益力の向上に努めてまいります。

 

2)負債及び純資産

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ5,343百万円増加し、32,148百万円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べ8,873百万円増加し、26,333百万円となりました。これは主に、短期借入金が7,287百万円増加したことなどによるものです。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ3,529百万円減少し、5,814百万円となりました。これは主に、長期借入金が3,103百万円減少したことなどによるものです。

 純資産は、2,008百万円減少の2,693百万円となりました。主に減損損失の計上を反映した利益剰余金の減少2,046百万円などによるものです。

 以上の結果、自己資本比率は、7.2ポイント低下し7.7%となりました。

 当連結会計年度は、事業構造改革費用および減損損失、感染症関連費用等による特別損失1,744百万円を計上したことにより、自己資本比率が低下しましたが、いずれも一過性のものとなります。今後もコスト構造改革などによる基盤強化を行うとともに資金効率の向上に努め、有利子負債の圧縮および投資効果の早期発現に努めてまいります。

 

 

(単位:百万円)

前連結会計年度末

当連結会計年度末

増減

流動資産

21,658

26,349

4,690

固定資産

9,796

8,453

△1,342

 

有形固定資産

7,890

6,697

△1,192

 

無形固定資産

883

722

△161

 

投資その他の資産

1,022

1,033

11

繰延資産

52

39

△13

資産合計

31,507

34,842

3,334

負債合計

26,804

32,148

5,343

 

流動負債

17,460

26,333

8,873

 

固定負債

9,344

5,814

△3,529

純資産合計

4,702

2,693

△2,008

負債・純資産合計

31,507

34,842

3,334

 

■売上高・利益

1)売上高

 売上高は、感染症の影響はありましたが、前年同期に比べるとその影響は軽微となり、事業拡大に向けた施策効果もあり、前年同期比15.4%増の63,277百万円となりました。

 国内売上高は、前年度比9.1%増の27,810百万円、海外売上高は前年同期比20.8%増の35,467百万円となりました。世界的規模で感染症に伴う、各国政府方針によるロックダウンや外出禁止令、出入国制限等の影響とともに半導体関連をはじめとする部材不足や供給遅れの影響がありましたが、新規事業における量産立上等事業規模拡大に向けた施策の継続により、販売が増加しました。海外売上高比率については前連結会計年度の53.5%から2.5ポイント増加し、56.1%となりました。

 

2)売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益

 売上原価は、売上高の増加とともに部材価格高騰等による影響もあり前年同期比17.6%増の56,555百万円となりました。これにより売上原価対売上高比率は前年同期比1.7ポイント増の89.4%となり、売上総利益は前年同期比0.4%減の6,721百万円となりました。

 販売費及び一般管理費はコスト構造改革の影響はあったものの、事業拡大のための先行投資負担や物流コストの上昇等により、前年同期比16.9%増の7,082百万円となり、販売費及び一般管理費対売上高比率は、前年同期比0.2ポイント増の11.2%となりました。

 この結果、営業利益は前年同期比1,050百万円減の△361百万円となりました。

 

3)経常利益、税金等調整前当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度の経常利益は前年同期比22.7%減の122百万円となりました。

 受取利息及び受取配当金から支払利息、社債関連費用を控除した金融収支の純額費用は、前連結会計年度から18百万円費用が減少し、205百万円の負担となりました。

 また、営業外収益においては、主に海外子会社へのグループ内貸付金に対する為替差益(697百万円)の発生により、前年同期比600百万円増の797百万円となりました。

 営業外費用については、前連結会計年度に発生した為替差損(300百万円)が当連結会計年度は発生しなかったこと等により、前年同期比413百万円減の313百万円となりました。

 親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失として減損損失(1,433百万円)等の計上により、前年同期比1,244百万円減の△1,980百万円となりました。

当連結会計年度に実施した事業構造改革の効果や需要拡大等を背景に次年度は全ての事業セグメントで改善を見込んでおり、引き続きコスト構造改革も行いながら、当期純利益の増加につなげてまいります。

 

  4)減損損失の計上およびその内容

 当連結会計年度において、当社グループの北米EMS事業における固定資産に関し、現在の事業環境を踏まえ、将来キャッシュ・フローによる回収可能価額を慎重に検討した結果、想定していた収益の実現時期が当初より遅れる見通しであり、当連結会計年度において1,433百万円の減損損失を計上しました。対象となる固定資産の主なものは、建物及び機械装置、無形固定資産となります。

 北米EMS事業は、北中米市場における車載関連分野の事業拡大を目的に、設備投資を行ってまいりました。しかしながら、感染症の急拡大に伴う現地ロックダウンによる影響が継続したことに加え、当連結会計年度に入り、部材不足に起因するお客様の稼働停止や生産計画後ろ倒し等による影響が顕著となり、事業全体の停滞を余儀なくされていました。また、予定していた必要設備の追加導入も延期せざるを得ず、想定していた売上規模拡大に時間を要す状況にありました。

 なお、今後も北米EMS事業の拡大をめざすことに変わりはありません。ポートフォリオの見直しを行い、車載関連分野だけでなく、市場規模が大きく、かつ、安定した市場であるエンジニアリングツール分野をターゲットとした顧客開拓を行っており、本年5月から北米顧客向けの量産を開始し、順次、新規量産プログラムを立ち上げていくことが決まっています。引き続き、事業の成長に注力してまいります。

 

 

(単位:百万円)

前連結

会計年度

当連結会計年度

実績

前年度比

主なポイント

売上高

54,856

63,277

15.4%

[売上高]

HS事業 :事業規模拡大に向けた施策効果とともに感染症に起因するお客様の稼働調整による影響が軽微となり増収

EMS事業:中国・ASEANでの感染症影響が軽減されたことに加え、ベトナム拠点における新規品生産立ち上げの開始もあり増収

PS事業 :お客様やサプライヤーの生産拠点におけるロックダウン等影響はあったが、需要は高い水準を維持しており増収

[営業利益]

HS事業 :募集費等事業拡大のための先行投資の影響で減益となったが、需要拡大への対応を継続

EMS事業:メキシコ拠点の先行投資コストに加え、部材不足、部材価格高騰や物流コスト上昇等の継続が利益圧迫要因となり減益

PS事業 :コスト構造改革による体質強化の効果もみられたが、部品調達難および部材価格高騰の影響が顕著となり減益

[経常利益]

営業外収益  797百万円(前年同期比  600百万円増)

営業外費用  313百万円(前年同期比  413百万円減)

[特別利益]   35百万円(前年同期比    7百万円増)

[特別損失] 1,744百万円(前年同期比 1,246百万円増)

営業利益

689

△361

経常利益

158

122

△22.7%

親会社株主に

帰属する当期純利益

△735

△1,980

 

■当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因

当連結会計年度においては、感染症の影響に加え、半導体関連をはじめとする部材不足・部材調達難や供給遅れによる影響が顕著となり、需給ひっ迫を背景とした原材料・副資材の価格高騰や物流コストの上昇等、その解消には時間を要す見通しです。

 また、ウクライナ情勢の緊迫化によるエネルギー・資源価格の高騰や円安の進行に加え、中国のゼロコロナ政策による厳しいロックダウンに伴う人の往来や企業活動への制限による物流停滞の影響により、部材不足および部材供給遅れに拍車をかけており、世界経済の先行きは引き続き予断を許さない状況が続いています。翌連結会計年度においても、感染症による国内外経済活動の一時的制限や物流およびサプライチェーン停滞による影響に加え、部材不足・調達難等による生産活動への影響は残るものと認識しており、世界情勢の変化に伴う為替変動による影響も想定されます。

このような状況のもと、当社グループは、多様化する経営環境変化への対応として、以下の取り組みを進めてまいります。

1)感染症について

感染防止策の徹底を継続し、グループ内相互生産サポート体制や人材リソースの多様化等を図り、事業活動への影響を最小限に留めるとともに、事業運営における生産性向上に向け、リモートワークや業務の電子化対応等の取り組みを継続推進し、一層の基盤強化を進めます。

2)部材不足・部材調達難について

製造業各社においてグローバルでサプライチェーンの見直しが進められているものの、不足・調達難となっている部材が最先端の部材だけでなく、多岐にわたっていることも踏まえ、引き続き顧客の減産潜在リスクは解消されておらず、周辺部材の価格高騰にも波及するものと認識しています。これらの影響を最小限に抑えるため、部材調達リソースの多様化、顧客の生産変動に即応する当社グループのサプライチェーンマネジメントを強化し、グループ全体で機動的かつ柔軟に対応できる体制を整えてまいります。

3)為替変動について

当社グループはすべての事業セグメントにおいて、グローバル市場におけるビジネスを展開しています。為替変動リスクの構成要素である、グループ各社の為替持ち高(エクスポージャー)の圧縮を進めます。為替持ち高の圧縮は外貨建て資産・負債の増減により一定程度の圧縮が可能であり、金融取引・商取引の双方からの取り組みを進め、為替変動リスクの抑制に努めてまいります。

 

翌連結会計年度も不透明な事業環境が続く様相ですが、当連結会計年度に実行した事業構造改革の効果に加え、HS事業における売上・利益の増加やEMS事業の新規量産立ち上げ、PS事業の産業機器分野への電源製品需要拡大等を背景に、すべての事業セグメントで業績改善に転ずる見込みです。

引き続き、グループ全体で事業基盤の強化を進めるとともに、戦略投資の立ち上げや新規事業、新市場への参入も進め、売上・利益の確保に努めてまいります。

 

■セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 

HS事業

 国内事業については、感染症拡大や半導体関連等の部材不足による影響があったものの、事業規模拡大に向けた施策効果とともに前年同期に比べ感染症影響によるお客様の稼働調整による影響が軽微となったこともあり、事業全体は増収となりました。一方、利益においては、人件費や募集関連費用等、事業規模拡大のための先行投資の影響がありました。海外事業については、ASEANにおいて感染症による、お客様の稼働調整等の影響がありましたが、前年同期に比べるとその影響は軽微となり、特に中国、タイにおける業績が改善傾向となりました。

 この結果、当セグメントの売上高は、22,088百万円(前年同期比15.4%増)、セグメント利益は、647百万円

(前年同期比26.0%減)となりました。

 少子高齢化が進む日本において、人材リソースの多様化は喫緊の課題です。外国人材の受け入れ・共生に関する政府施策を背景に、その推進が加速していくことが予想されます。これらを総合的、かつ、専門的に支援していくため、HS事業においては外国人材の定着支援に資する業務の拡大を図ります。特に「外国人技能実習制度」においては、中国、タイ、ベトナム、インドネシアなどアジア各国の技能実習生送り出し機関と提携するとともに、技能実習生が必要とする日本語習得や文化の理解等の入国後教育研修受託に加え、実習生受け入れ先企業に対する総務支援サービスの提供等、2017年8月に教育研修受託および業務支援専門会社を設立し、その展開を行っています。感染症拡大により、当連結会計年度も引き続き、海外各国・地域からの人の往来が制限されましたが、人材の多様化ニーズに変わりはなく、これまで培ったネットワークを活かし、受け入れ先企業へのニーズに合った提案・サービスの提供から技能実習生の母国帰国後の就業支援も行い、外国人技能実習制度に資する取り組みを加速させます。

 当連結会計年度においては、住友商事株式会社と業務提携し、同社が運営する、ベトナム・タンロン工業団地において人材サービスも含めた、製造支援サービスの展開を進めています。アジアにおける高度人材の育成・派遣についても戦略の見直しを行い、各国の大学との連携も活かし、実行スピードを加速させています。

 また、2018年労働者派遣法改正により2020年4月1日から施行された「同一労働同一賃金」を受け、今後、国内における人材派遣の在り方が変化していくものと予想しています。これに対応するため、当社は、単に労働力を提供するのではなく、高度人材の育成・派遣・定着の仕組みを強化しており、その足掛かりとして、2020年1月にグループ内の技術者派遣事業の統合を行いました。今後も人材リソースの多様化を図りながら、継続的に当該事業の強化を行います。

 加えて、請負・受託の事業規模拡大は事業の成長の柱となるものです。これまでHS事業では、モノづくりの知見を活かし、請負・受託の実績を重ねてきました。製造業のファブレス化が進む中、グループ内EMS事業の製造受託ノウハウも融合させ、請負・受託の事業規模拡大を図るとともに、需要変動に耐え得る柔軟かつ強固な基盤を構築し、収益力強化を進めます。

 

EMS事業

 EMS事業は、中国・ASEAN・北中米において生産活動を展開しており、世界的な感染症再拡大に伴い、マレーシア、メキシコにおける各国政府方針によるロックダウンや部材不足等の影響がありましたが、ベトナム拠点での新規品生産立ち上げの開始や、中国・ASEAN地域においては感染症による影響が前年同期に比べて軽減されたこともあり、前年同期に対し増収となりました。

 利益面では、重点施策として生産立ち上げを進めているメキシコ拠点の先行投資コストに加え、事業全体において、部材不足に起因したお客様の減産や生産計画後ろ倒し、部材価格高騰や物流コストの上昇等が継続し、その影響が大きな利益圧迫要因となりました。

 この結果、当セグメントの売上高は、28,400百万円(前年同期比18.1%増)、セグメント損失は、536百万円

(前年同期は29百万円の損失)となりました。

 現在、EMS事業は、戦略投資の実行期にあります。これまで、中国、マレーシアに生産拠点を展開しグローバル生産体制を整えてきましたが、お客様の生産における市場・地域の分散化や、地産地消ニーズが高まる中、これらに即応できるグローバル生産体制の拡充を進めています。

 当連結会計年度においては、ベトナム拠点の量産立ち上げの取り組みが進み、お客様のASEANへの生産移管ニーズもあり、順次新規量産プログラムが立ち上がる予定です。米国・メキシコ拠点においては、感染症の急拡大に伴う現地ロックダウンによる影響や部材不足に起因するお客様の稼働停止や生産計画後ろ倒し等による影響が顕著となり、事業全体の停滞を余儀なくされていましたが、ポートフォリオの見直しを行い、車載関連分野だけでなく、市場規模が大きく、かつ、安定した市場であるエンジニアリングツール分野をターゲットとした顧客開拓を行っており、翌連結会計年度から北米顧客向けの量産を開始し、順次、新規量産プログラムを立ち上げていくことが決まっています。引き続き、事業の成長に注力してまいります。

 国内EMS事業においては、前連結会計年度において抜本的構造改革を実施し、経営効率を高めるとともに、国内外拠点連携によるワンストップソリューションの質をさらに向上させていく体制としています。

 また、新規事業としてシェアリングビジネスを立ち上げました。これまで、発展途上国において大量生産品を日本品質でより低価格で実現する「メガEMS」、熟成したマーケットにおける「オーダーメード型EMS」を基本とし事業展開してきましたが、シェアリングビジネスは、その双方を連動させ新たな価値創出を担う位置づけとなります。グローバルで展開するEMS事業体制を活用し、お客様から設計、調達、生産、物流などの業務の一部をお任せいただくことにより、固定費の大幅削減を可能とするソリューションの提供であり、長年培ってきた設計、製造、モノづくりに関連する様々なサービスのノウハウとインフラが整っているからこそできるサービスです。必要なものをより良い形で提案、提供することで、多くのお客様と強固なパートナーシップを築いてまいります。

 中国・東莞の生産拠点には、商品設計開発機能を設置しており、グループ内生産拠点の設計開発・量産・自動化技術の横展開も行い、国内外で培った実績とノウハウを進化させ、EMS事業全体の競争力強化を進めます。

 

PS事業

 当連結会計年度は、前連結会計年度までに行った抜本的コスト構造改革による体質強化の効果もあり、第1四半期は想定を上回る状況で推移しましたが、第2四半期以降は部品調達難および副資材も含む部材価格高騰の影響が継続したことに加え、お客様やサプライヤーの生産拠点におけるロックダウン等の影響もあり、前年同期に対し増収となったものの、部品調達難および部材価格高騰等の影響により、想定していた収益を確保することはできませんでした。しかしながら、需要は高い水準を維持しており、部品不足解消時および次年度を見据えた取り組みを進めています。

 この結果、当セグメントの売上高は、12,788百万円(前年同期比9.6%増)、セグメント利益は、1百万円(前年同期比99.5%減)となりました。

 PS事業は、2018年1月11日付で「松阪工場」(松阪本社敷地内)を開設し、開発・製造が一体となったマザー拠点機能を強化し、新製品開発・製造・拡販を機動的に行う体制で事業を展開しています。感染症が拡大する中、新規市場分野として、産業機器分野における殺菌・滅菌機器の開発・投入を進めており、電源製品の需要拡大につながっています。当事業は、これまで複写機・複合機を中心としたドキュメント業界が主要市場となっており、新規市場への参入が課題となっていましたが、この需要拡大を背景に、売上成長を伴った製品ポートフォリオの見直しを進めていきます。

 また、PS事業の販売体制一本化を目的として、2020年7月1日にPower Supply Technology(Hong Kong)Co., Limitedを設立、TKR Hong Kong LimitedからPS事業の販売機能および資産を譲受し、2021年1月より事業を開始しています。

 一方、当事業は原材料・部材の外部調達を行っており、その価格の変動による影響を受ける可能性があります。そのため、在庫水準の適正管理を徹底するとともに、引き続き抜本的コスト構造改革を継続実行いたします。翌連結会計年度も、部材調達難および部材価格の高騰は続く様相であり、売価是正まで一定の時間を要す見込みですが、当連結会計年度に実行した基盤強化策の効果に加え、開発、設計、試作から量産、市場投入までのさらなるスピードアップを図り、市場やお客様の新たなニーズに機動的に対応できる体制を構築し、事業全体の収益性向上を図ります。

 今後も不透明な事業環境が続く見込みですが、引き続き、抜本的コスト構造改革の実行および売上成長につながるアクションプランの確実な実行を進め、経営基盤の安定化を図ります。

 

(単位:百万円)

前連結会計年度

当連結会計年度

前年度比

HS事業

売上高

19,135

22,088

15.4%

セグメント利益

874

647

△26.0%

EMS事業

売上高

24,054

28,400

18.1%

セグメント利益

△29

△536

PS事業

売上高

11,666

12,788

9.6%

セグメント利益

327

△99.5%

調整額

セグメント利益

△482

△473

合計

売上高

54,856

63,277

15.4%

セグメント利益

689

△361

 

■設備投資および減価償却費

 当社グループは、グローバル市場における次の成長機会の創出および事業競争力強化に向け、戦略投資を行っています。

 当連結会計年度の設備投資額は、前年度比16.2%増の1,297百万円となりました。これは、主にEMS事業において重点施策として進めているベトナム拠点およびメキシコ拠点における新規受注獲得を目的とした設備投資によるものです。

 また、当連結会計年度の減価償却費は、前年度比16.6%増の1,514百万円となりました。セグメント別では、HS事業45百万円(前年度比3.9%増)、EMS事業1,098百万円(前年度比17.9%増)、PS事業364百万円(前年度比14.9%増)となりました。

 翌連結会計年度以降の設備投資(新規・拡充)については、引き続き感染症や部材不足等の影響により、事業環境は先行き不透明な状況であり、戦略投資を継続する方針を維持するものの、投資内容および投資実行のタイミングについては案件ごとに投資後の事業環境や将来キャッシュ・フローによる回収期間の見極め等を行ったうえで判断を行っていきます。そのうえで、既存・新規を問わず、実行していく投資案件については、投下資本利益率(ROI)の引き上げを行い、投資効果の早期発現をめざします。

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループにおける営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動の資金需要、設備投資資金のための基本的財源となっています。

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ364百万円増加し5,106百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 当社グループのキャッシュ・フローの状況に影響を与える事項として、売上債権及びたな卸資産等による運転資金の変動、また、戦略投資の実行があります。

 営業キャッシュ・フローにおいては、前連結会計年度は、税金等調整前当期純損失の計上となったもののコロナ影響による減収により運転資金が減少、営業キャッシュ・フローは943百万円の収入となりましたが、当連結会計年度は、税金等調整前当期純損失の計上に加えて、生産増や部材不足に向けた対応等による増加運転資金の発生により1,550百万円の支出となりました。

 今後も収益性の改善とともに適正な売掛債権、在庫水準管理に取り組む体制を強化し、営業キャッシュ・フロー・マージンの向上を図ってまいります。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、主にEMS事業における戦略投資の実行により、926百万円の支出(前年同期は919百万円の支出)となり、財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の増加等により2,601百万円の収入(前年同期は664百万円の収入)となりました。

 今後も、営業キャッシュ・フロー・マージンの向上を図るとともに投資の見極めおよび投資効果の早期刈り取り等を行い、キャッシュマネジメントを強化してまいります。

 

 

(単位:百万円)

前連結会計年度

当連結会計年度

 

税金等調整前当期純利益

△310

△1,586

 

減価償却費

1,266

1,514

 

運転資金の増減

1,348

△2,300

 

減損損失

1,433

 

その他

△1,361

△611

 

営業キャッシュ・フロー

943

△1,550

 

固定資産の取得・売却

△1,014

△881

 

その他

95

△44

 

投資キャッシュ・フロー

△919

△926

フリーキャッシュ・フロー

24

△2,476

 

借入金の増減

1,394

3,396

 

配当金支払 他

△729

△795

 

財務キャッシュ・フロー

664

2,601

現金及び現金同等物期末残高

4,741

5,106

 

資本の財源および資金の流動性の分析

 当社の資金需要の主なものは運転資金、設備資金および法人税等の支払です。これに対しては、営業キャッシュ・フローから産み出した内部資金の活用を優先し、内部資金では不足する場合に外部からの借入や資本性の資金調達で対応することを原則としています。

 借入を行なう場合は、低コスト、長短のバランスの勘案、安定的な資金確保を方針としています。長短のバランスについては、運転資金等の短期資金需要については短期借入金で、設備資金やM&Aなどの長期資金需要については長期借入金で調達を行なうこととしています。

 当連結会計年度においては、戦略投資等の設備投資の発生もあり4,184百万円の資金調達(純増額)を行い、当連結会計年度末の手元流動性残高は、現金及び現金同等物5,106百万円となりました。

 グループにおける資金調達は当社(持株会社)に原則一元化し資金効率を高めるようにし、グループ会社の運営資金は、事業戦略に基づき必要と判断した額を、取締役会で決議の上、貸付を行っています。

また、当社グループは引続き戦略投資を実行していて、2023年3月期についても投資実行を計画しています。このため借入は増加する見込みですが、2024年3月期から新規事業による投資回収が始まり、借入金は減少に転じる計画であり、これにより自己資本比率の改善を見込んでいます。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりです。連結財務諸表の作成においては、過去の実績やその時点で合理的と考えられる情報に基づき、会計上の見積りを行っております。重要な資産の評価基準および評価方法、重要な減価償却資産の減価償却の方法、重要な引当金の計上基準等において、継続性・網羅性・厳格性を重視して処理計上しており、繰延税金資産につきましては、将来の回収可能性を十分に検討したうえで計上しております。感染症の影響等についても不確実性が大きくその見積りと実際の結果は異なる場合がありますが、現時点においては経営成績等に大きな影響を与えるものではないと判断しております。

特に、有形固定資産および無形固定資産の減損損失については重要な会計上の見積りが必要となります。当該見積りおよび仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響などは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

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