課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月22日)現在において当社グループが判断したものです。

(1) 経営方針

当社グループは、「ニッポンのモノづくり品質を世界へ」をキーワードに、ともに成長をめざすという『経営理念』のもと、HS・EMS・PSの3つの事業セグメントを国内外で事業展開しています。

この多様化した事業構造は、お客様に新たな価値を提供するための源泉となるものであり、当社グループの特長です。これをさらに進化させ、変化に対し柔軟かつ機動的に対応できる基盤を強化し、企業価値・株主価値のより一層の向上を図るため、2017年4月より持株会社体制へ移行しました。

 

当社(持株会社)の経営方針は以下のとおりです。

① グループ経営と事業執行の分離による意思決定スピードの向上・責任の明確化

② 事業会社間のシナジーの追求

③ 迅速なM&A・グループ再編の実行

④ 間接部門の重複業務集約や事務効率改善によるコストの最適化

⑤ グループ各社の事業特性に応じた機動的な会社運営

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループが重視する経営指標は、売上高、営業利益および自己資本比率です。これらの経営指標は、企業の成長性、収益性、財務体質を分析するための基本的な指標であり、当社グループでは、これらの指標を継続的に改善させることにより、中長期的な株主価値の向上を図ってまいります。

 

(3) 経営戦略、事業上及び財務上の対処すべき課題

技術革新によるグローバリゼーションが進む中、市場はボーダーレス化し、地政学的リスクも絡み、世界経済は今後も目まぐるしく変化することが想定されます。

日本の製造業においては、技術力だけでなく、景況変動への機動的な対応力が求められる状況となっており、固定費の圧縮や事業の選択と集中に加え、ファブレス化への転換が進んでいます。雇用においても少子高齢化が進む中、外国人材の受け入れ・共生に関する政府施策を背景に、その推進が加速していくことが予想されます。

当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)の影響に加え、半導体関連をはじめとする部材不足・部材調達難や供給遅れによる影響が顕著となり、需給ひっ迫を背景とした原材料・副資材の価格高騰や物流コストの上昇等、その解消には時間を要す見通しです。

このような状況のもと、当社グループは引き続き、中期経営方針「変化を好機に、攻めの施策で成長基盤を構築」を掲げ、独自のビジネスモデルである「人材ビジネスとモノづくりの融合」を基に、持続的成長を実現すべく、重点項目および対処すべき課題として次の4点を掲げ、基盤強化と戦略投資の両輪による施策実行を進めています。

 

① HS事業:人材リソースの多様化およびグループ内ノウハウを活用した請負・受託の拡大

② EMS事業:製造業のファブレス化に即応する拠点戦略および設計・開発機能の強化

③ PS事業:製品ポートフォリオ見直し、抜本的コスト構造改革による収益力強化および

グループリソース活用によるASEANへの事業展開

④ 持株会社体制の高度化

 

 

① HS事業:人材リソースの多様化およびグループ内ノウハウを活用した請負・受託の拡大

少子高齢化が進む日本において、人材リソースの多様化は喫緊の課題です。外国人材の受け入れ・共生に関する政府施策を背景に、その推進が加速していくことが予想されます。これらを総合的、かつ、専門的に支援していくため、HS事業においては外国人材の定着支援に資する業務の拡大を図ります。特に「外国人技能実習制度」においては、中国、タイ、ベトナム、インドネシアなどアジア各国の技能実習生送り出し機関と提携するとともに、入国後教育研修受託に加え、実習生受け入れ先企業に対する総務支援サービスの提供等の展開を行っています。感染症拡大により、当連結会計年度も引き続き、海外各国・地域からの人の往来が制限されましたが、人材の多様化ニーズに変わりはなく、これまで培ったネットワークを活かし、受け入れ先企業へのニーズに合った提案・サービス提供から母国帰国後の就業支援も行い、外国人技能実習制度に資する取り組みを加速させます。

また、当連結会計年度においては、住友商事株式会社と業務提携し、同社が運営する、ベトナム・タンロン工業団地において人材サービスも含めた、製造支援サービスの展開を進めています。アジアにおける高度人材の育成・派遣についても戦略の見直しを行い、各国の大学との連携も活かし、実行スピードを加速させています。

国内においては、2020年4月1日からの「同一労働同一賃金」施行に伴い、高度人材の育成・派遣・定着の仕組みを強化しています。その足掛かりとして、2020年1月にグループ内の技術者派遣事業の統合を行いました。今後も人材リソースの多様化を図りながら、当該事業の強化を行います。

加えて、製造業のファブレス化が進む中、グループ内EMS事業の製造受託ノウハウも融合させ、請負・受託の事業規模拡大を図るとともに、需要変動に耐え得る柔軟かつ強固な基盤を構築し、収益力強化を進めます。

 

② EMS事業:製造業のファブレス化に即応する拠点戦略および設計・開発機能の強化

 当連結会計年度においては、ベトナム拠点の量産立ち上げの取り組みが進み、お客様のASEANへの生産移管ニーズもあり、順次新規量産プログラムが立ち上がる予定です。米国・メキシコ拠点においては、感染症の急拡大に伴う現地ロックダウンによる影響や部材不足に起因するお客様の稼働停止や生産計画後ろ倒し等による影響が顕著となり、事業全体の停滞を余儀なくされていましたが、ポートフォリオの見直しを行い、車載関連分野だけでなく、市場規模が大きく、かつ、安定した市場であるエンジニアリングツール分野をターゲットとした顧客開拓を行っており、翌連結会計年度から北米顧客向けの量産を開始し、順次、新規量産プログラムを立ち上げていくことが決まっています。引き続き、事業の成長に注力してまいります。

国内EMS事業においては、前連結会計年度において抜本的構造改革を実施し、経営効率を高めるとともに、国内外拠点連携によるワンストップソリューションの質をさらに向上させていく体制としています。

また、新規事業としてシェアリングビジネスを立ち上げました。これまで、発展途上国において大量生産品を日本品質でより低価格で実現する「メガEMS」、熟成したマーケットにおける「オーダーメード型EMS」を基本とし事業展開してきましたが、シェアリングビジネスは、その双方を連動させ新たな価値創出を担う位置づけとなります。グローバルで展開するEMS事業体制を活用し、お客様から設計、調達、生産、物流などの業務の一部をお任せいただくことにより、固定費の大幅削減を可能とするソリューションの提供であり、長年培ってきた設計、製造、モノづくりに関連する様々なサービスのノウハウとインフラが整っているからこそできるサービスです。必要なものをより良い形で提案、提供することで、多くのお客様と強固なパートナーシップを築いてまいります。

中国・東莞の生産拠点には、商品設計開発機能を設置しており、グループ内生産拠点の設計開発・量産・自動化技術の横展開も行い、国内外で培った実績とノウハウを進化させ、EMS事業全体の競争力強化を進めます。

 

③ PS事業:製品ポートフォリオ見直し、抜本的コスト構造改革による収益力強化およびグループリソース

活用によるASEANでの事業展開

主軸の電源部品が立脚する複合機・複写機などドキュメント関連市場は、市場の成熟化もあり環境の変化が激しくなっています。安定した事業基盤の再構築が急務であり、そのためには新規市場への参入が急務となっています。このような状況のもと、感染症が拡大する中、新規市場分野として、産業機器分野における殺菌・滅菌機器の開発・投入を進めており、電源製品の需要が拡大しています。産業機器分野への参入は電源製品の新たな価値を創出するものであり、この需要拡大を背景に、売上成長を伴った製品ポートフォリオの見直しを進めます。

また、グループリソース活用による機動的な生産体制構築、ASEANでの事業展開も進めています。2018年1月11日付で「松阪工場」(松阪本社敷地内)を開設し、開発・製造が一体となったマザー拠点機能を強化しましたが、既存製品の生産は中国・広東省(佛山)にて一極集中生産を行っていることから、チャイナリスクや国際情勢の変化に対応すべく、2020年3月、タイに販売拠点を設置しました。加えて、PS事業の販売体制一本化を目的として、2020年7月1日にPower Supply Technology(Hong Kong)Co., Limitedを設立、TKR Hong Kong LimitedからPS事業の販売機能および資産を譲受し、2021年1月より事業を開始しております。

一方、当事業は原材料・部材の外部調達を行っており、その価格の変動による影響を受ける可能性があります。そのため、在庫水準の適正管理を徹底するとともに、引き続き抜本的コスト構造改革を継続実行いたします。

開発、設計、試作から量産、市場投入までのさらなるスピードアップを図り、市場やお客様の新たなニーズに機動的に対応できる体制を構築し、事業全体の収益性向上を図ります。

 

④ 持株会社体制の高度化

当社(持株会社)においては、持株会社体制の高度化を図るべく、持株会社の機能見直し・再定義を行っています。具体的には、①グループ戦略機能 ②グループコントロール機能 ③企業責任遂行機能 ④専門サービス・オペレーション機能、の4つの観点で機能を定義し、必要に応じグループ内業務の重複解消や移管等を行い、グループ経営の最適化を図っています。

 

事業戦略と持株体制高度化戦略の実行を機動的に行うことで、企業価値・株主価値のより一層の向上をめざします。

 

(4) 経営環境

当連結会計年度においては、感染症の影響に加え、半導体関連をはじめとする部材不足・部材調達難や供給遅れによる影響が顕著となり、需給ひっ迫を背景とした原材料・副資材の価格高騰や物流コストの上昇等、その解消には時間を要す見通しです。

また、ウクライナ情勢の緊迫化によるエネルギー・資源価格の高騰や円安の進行に加え、中国のゼロコロナ政策による厳しいロックダウンに伴う人の往来や企業活動への制限による物流停滞の影響により、部材不足および部材供給遅れに拍車をかけており、世界経済の先行きは引き続き予断を許さない状況が続いています。翌連結会計年度においても、感染症による国内外経済活動の一時的制限やサプライチェーンへの停滞による影響に加え、部材不足・調達難等による生産活動への影響は残るものと認識しており、世界情勢の変化に伴う為替変動による影響も想定されます。

今後も不透明な事業環境が続く様相ですが、当連結会計年度に実行した事業構造改革の効果に加え、HS事業における売上・利益の増加やEMS事業の新規量産立ち上げ、PS事業の産業機器分野への電源製品需要拡大等を背景に、すべての事業セグメントで業績改善に転ずる見込みです。

引き続き、グループ全体で事業基盤の強化を進めるとともに、戦略投資の立ち上げや新規事業、新市場への参入も進め、売上・利益の確保に努めてまいります。

 

 

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