業績

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

  当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により依然として厳しい状況にありますが、個人消費に持ち直しの動きがみられます。先行きについては、感染対策に万全を期し、経済社会活動を継続していく中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待されますが、内外の感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意する必要があります。

このような状況のもと、当社グループは下記のとおり企業価値の向上に向けた取り組みを実行しました。

(1)細胞医療事業の増収戦略:国内外の営業活動の強化により、収益アップ

当社は創業以来、当社独自の樹状細胞ワクチン療法を中心としたがん治療技術・ノウハウの提供を契約医療機関に行い、当社の収益の柱となっていました。しかしながら、2018年12月12日付開示でお知らせしましたように、当時当社の主要取引先である医療法人との取引を停止し、その後日本国における契約医療機関が減少しました。2019年より営業活動を再開しましたが、がん診療連携拠点病院での自由診療が実質的に規制されたこと、2020年より新型コロナウイルス感染症が世界的パンデミックとなり、2022年になっても収まっていないことなどの理由により、日本国内における契約医療機関の増加には至っておりません。引き続き、営業活動の強化を行って参ります。一方、当社は、2019年3月5日付開示でお知らせしましたように、当社の細胞製造所において近畿厚生局から特定細胞加工物製造許可証を受領し、新たな収益の柱となる製造開発受託事業を開始しました。2021年1月5日には、慶應義塾大学医学部より腫瘍浸潤Tリンパ球製品製造に係る業務を受託し、樹状細胞以外の新たな細胞の製造に成功し、提供を開始しました。今後も、大学や企業からの細胞加工の受託件数を増加させるべく営業活動を行って参ります。

海外においては、2018年9月10日付開示で報告しましたように、台湾の上場企業であるVectorite Biomedical社(以下、「VB社」)とテラのがん免疫療法の台湾における技術移転等に関する業務提携契約を締結しました。2019年2月19日付開示で報告しましたように、VB社は台湾の医療機関に対して、当社の樹状細胞ワクチンのがん治療用免疫細胞の加工を開始し、以来当社には台湾での実績件数に応じたロイヤリティが支払われています。2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延がありましたが、VB社の細胞の提供先である医療機関数は順調に伸びており、2021年12月現在、10医療機関となりました。それぞれの医療機関は、現在台湾のTFDA(Taiwan Food and Drug Administrations)へ自由診療におけるがんに対する樹状細胞ワクチン療法を行うための申請を行っています。当社は引き続きVB社との連携を強め、樹状細胞ワクチンの普及を進めて参ります。

(2)開発品の拡大戦略:現行の開発品を薬事承認申請へ、新規開発品の展開により企業価値向上へ

2016年12月7日付開示でお知らせしましたように、当社子会社テラファーマ株式会社が和歌山県立医科大学と医師主導治験に関する契約を締結し、膵臓がんに対する樹状細胞ワクチン(以下「TLP0-001」)の再生医療等製品としての承認取得を目指して治験をサポートして参りました。2018年12月26日付開示でお知らせしましたように、中間解析にてTLP0-001の安全性が確認され、当該治験が、単一医療機関で安全性を確認する段階から複数の医療機関で有効性を検証する段階に移行いたしました。2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延の影響もあり、2020年2月13日付、2021年3月8日付、2021年12月28日付開示で報告しましたように、患者登録期間の延長を2022年9月までとしたため、TLP0-001の製造販売承認申請するまでの期間につきましても延長となる見込みではありますが、引き続き当医師主導治験をサポートして参ります。

当社の最初の樹状細胞ワクチンによるがん治療の治験における適応は膵臓がんですが、新たな開発品の拡大を行うべく、2019年10月2日付開示でお知らせしましたように、福島県立医科大学と進行再発胸腺がんに対するTLP0-001の有効性および安全性を評価する医師主導治験に関する契約を締結いたしました。当治験も2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延の影響を受けておりますが、引き続きサポートしていくとともに、TLP0-001のがん治療における適応拡大を検討して参ります。

(3)次世代技術の研究開発戦略:次世代技術の研究を促進し、より優れたがん治療の開発につなげる

当社は創業以来、樹状細胞ワクチンによるがん治療に特化してビジネスを展開してまいりましたが、次世代技術の研究として、当社はT細胞等リンパ球によるがん治療の研究開発を開始いたしました。2021年1月5日付開示でお知らせしましたように、当社は、慶應義塾大学医学部より樹状細胞以外の免疫細胞の1つである腫瘍浸潤Tリンパ球(以下、「TIL療法」)製品製造に係る業務を受託しました。TIL療法はメラノーマ悪性黒色腫で効果があることがわかっている免疫細胞療法ですが、本研究開発では、日本でより需要の高い子宮頸癌をターゲットとしています。慶應義塾大学医学部は進行・再発子宮頸癌に対する治療薬開発を目指し、臨床試験を計画し、2020年12月3日に、当該臨床試験は厚生労働省先進医療会議において当該臨床試験が先進医療として許可されました。当社は、引き続き当該研究開発をサポートし、新たなパイプラインとなるように次世代技術の研究開発を推進して参ります。

当連結会計年度につきましては、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延により海外からのがん患者の日本国内における受診、いわゆるインバウンド需要の消失などがマイナス要因となったものの、2021年7月及び8月に大型案件として受注した新型コロナウイルス簡易抗体検査キットを中心に、特定細胞加工物の受託製造事業における受注及びロイヤリティ収入等は前年実績を上回り、売上高は 106,408 千円(前年同期比 30,047 千円増、 39.3 %増)となりました。

コスト面においては、2021年12月13日付適時開示「特別損失(投資有価証券評価損)及び商品評価損の計上に関するお知らせ」にてお知らせしましたが、当社の主要事業である細胞医療事業の当社独自の樹状細胞ワクチン療法における「がん抗原ペプチド」(棚卸資産)については、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延により、海外からのがん患者の日本国内における受診、いわゆるインバウンドの予測及び台湾における自由診療の治療拡大の予測が困難であることなどから、今後の販売予測等の見直しを行った結果、2021年12月期第3四半期決算において、商品の評価損40,933千円を売上原価に計上いたしました。また、販売費及び一般管理費については、前年度発行した新株予約権にかかるコスト(株式報酬費用)について、当期は発行しなかったこと及び前年度CENEGENICS JAPAN株式会社と契約を締結し、現在は解約している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療新薬開発に関する研究開発費が当期は発生しなかったこと等、前期比で大きな減少要因があったことで販売費及び一般管理費は、 695,473 千円(前年同期比 33.9 %減)となりました。一方で、2021年12月13日付適時開示「特別損失(投資有価証券評価損)及び商品評価損の計上に関するお知らせ」にてお知らせしましたとおり、当社が株式会社AI医療福祉介護機器研究開発機構から153,000千円で取得した株式会社CESデカルトの株式について、同社の将来の収益性等の検討を行った結果、投資有価証券評価損153,000千円を特別損失に計上しました。その結果、営業損失は 794,062 千円(前年同期は1,089,236千円の損失)、経常損失は 792,232 千円(前年同期は1,099,333千円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は 948,759 千円(前年同期は1,067,085千円の損失)となりました。

当連結会計年度における報告セグメント別の業績は次のとおりであります。

a.細胞医療事業

細胞医療事業は、当社独自の樹状細胞ワクチン療法を中心としたがん治療技術・ノウハウの提供を契約医療機関に行うとともに、主にがんに対する免疫細胞治療に係る特定細胞加工物の製造開発を受託しております。2021年12月期末時点での細胞医療事業の提携医療機関における樹状細胞ワクチン療法の症例数は、14症例(前年度64症例)であり、当社設立以降の累計では、約12,278症例となりました。

当連結会計年度につきましては、学校法人慶應義塾からの細胞加工の受託製造やVectorite Biomedical Inc.からのロイヤリティの発生があったものの、症例数が前年同期と比べ減少し、開発費用が31,226千円発生しました。その結果、売上高は 106,408 千円(前年同期比39.3%増)、セグメント損失は 795,574 千円(前年同期は1,120,807千円の損失)となりました

b.医療支援事業

遺伝子検査サービスに関しては、当社では遺伝子検査サービスの実施を開始すべく準備を進めてまいりましたが、治療に結び付けた有効なサービスが開発できず、サービスの開始には至っておりません。

当連結会計年度につきましては、売上高は計上無し(前年同期は計上無し)、セグメント損失は 222 千円(前年同期は194千円の損失)となりました。

c.医薬品事業

医薬品事業は、膵臓がんに対する再生医療等製品としての樹状細胞ワクチンの承認取得を目指した活動を推進しております。

当連結会計年度につきましては、膵臓がんに対する再生医療等製品としての樹状細胞ワクチンの承認取得を目指した開発費用が237,865千円発生しました。その結果、売上高は計上無し(前年同期は計上無し)、セグメント損失は 243,566 千円(前年同期は272,414千円の損失)となりました。

(単位:千円)

 

2020年12月

2021年12月

増 減

総資産額

1,292,960

326,405

△966,554

総負債額

175,705

127,711

△47,994

純資産額

1,117,254

198,694

△918,560

 

当連結会計年度末における総資産額は、前連結会計年度末比966,554千円減少し、326,405千円となりました。これは主に、現金及び預金の減少721,093千円、未収入金の減少185,750千円によるものであります。

総負債額は、前連結会計年度末比47,994千円減少し、127,711千円となりました。これは主に、未払金の減少44,317千円によるものであります。

純資産額は、前連結会計年度末比918,560千円減少し、198,694千円であります。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失の計上等による利益剰余金の減少948,759千円によるものであります。

 

②キャッシュ・フローの状況

                       (単位:千円)

 

2020年12月

2021年12月

営業活動によるキャッシュ・フロー

△1,168,803

△813,632

投資活動によるキャッシュ・フロー

103,475

95,269

財務活動によるキャッシュ・フロー

1,020,949

△2,730

現金及び現金同等物に係る換算差額

△279

現金及び現金同等物の増減額

△44,658

△721,093

現金及び現金同等物の期首残高

825,222

780,563

現金及び現金同等物の期末残高

780,563

59,469

 

当連結会計年度における現金及び現金同等物は59,469千円となり、前連結会計年度末と比較して721,093千円の減少となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは813,632千円の支出(前年同期は1,168,803千円の支出)となりました。その主な内訳は、税金等調整前当期純損失945,579千円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは95,269千円の収入(前年同期は103,475千円の収入)となりました。これは主に、有形固定資産の売却による収入33,150千円、投資有価証券の売却による収入62,586千円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは2,730千円の支出(前年同期は1,020,949千円の収入)となりました。その内訳は、リース債務の返済による支出2,726千円であります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

b.受注実績

当社グループは受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

 販売高(千円)

前期比(%)

細胞医療事業

106,408

39.3

医療支援事業

医薬品事業

合計

106,408

39.3

 

(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しております。

   2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社プランA

59,532

55.9

合同会社ブルーエクスプレス

11,510

10.8

Vectorite Biomedical Inc.

6,813

8.9

11,019

10.4

新横浜かとうクリニック

27,675

36.2

4,257

4.0

札幌北楡病院

12,558

16.5

3,535

3.3

 

  3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載しております。

当社グループは収益回復にむけて、営業活動の強化、治験製品の提供、コスト削減に努めてまいります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。なお、当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

運転資金及び設備投資資金など必要な資金需要に対応するため、資本市場からの資金調達などを主に必要資金を確保する方針であります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は異なることがあります。

なお、当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループは、細胞医療事業及び医薬品事業において、樹状細胞ワクチンの薬事承認取得へ向けた開発活動、技術・ノウハウ向上のための研究開発活動、細胞医療事業において、細胞加工受託事業の製品製造費用及び固定費用が発生するものと見込んでおります。これらについて経営成績に重要な影響を与える要因であると認識しております。

 

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