業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営成績等の状況の概要

(1) 財政状態

当連結会計年度末の資産につきましては、30,908百万円となり、前連結会計年度末と比べ4,227百万円減少しました。これは、流動資産その他及び仕掛品が減少したことが主な要因であります。

負債合計につきましては、22,003百万円となり、前連結会計年度末と比べ5,360百万円減少しました。これは短期借入金及び前受金が減少したことが主な要因であります。

純資産合計につきましては、8,904百万円となり、前連結会計年度末と比べ1,132百万円増加しました。これは親会社株主に帰属する当期純利益の利益剰余金への計上が主な要因であります。

 

(2) 経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大により緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が断続的に適用され、経済社会活動が大きく抑制されました。新たな変異株の出現等予断を許さない状況に変わりはありませんが、感染対策に万全を期し、経済社会活動が正常化に向かう中で、景気が持ち直していくことが期待されます。一方で、ウクライナ情勢等による不透明感が見られ、原材料価格の上昇や金融資本市場の変動、供給面での制約等による下振れリスクに直面し、先行きが見通せない状況が続いています。

当社グループを取り巻く経営環境は、集客エンタメ産業における公演の中止や延期、人数制限などの厳しい状況が徐々に緩和される中で、コンサート・イベント需要が緩やかに回復していくことが期待されます。

このような状況のもと当社グループ(当社と連結子会社19社)は、コロナ危機への対処を最優先課題として、①財務の安定化、②収益改善、③経営改革による未来収益創造の3点に取り組みました。

当連結会計年度は、コンサート・イベントサービス事業が新型コロナの影響をより強く受けた前連結会計年度から大きく改善し、東京オリンピック・パラリンピック関連の売上をほぼ計画通りに達成しました。また、建築音響・施工事業が好調に推移したことなどから、売上高は過去最高を更新し、利益は前連結会計年度と比べ大幅に改善しました。

これらの結果、売上高42,426百万円(前連結会計年度比39.0%増)、営業利益1,339百万円(前連結会計年度は営業損失4,073百万円)、経常利益1,921百万円(前連結会計年度は経常損失2,636百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益1,074百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失2,423百万円)となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

[電気音響・販売施工事業]

電気音響・販売施工事業は、日本国内において、コンサート・イベント市場、シネマ市場、設備市場が大きく冷え込むなどコロナ禍の影響が色濃く、厳しい状況が続きましたが、韓国子会社が、設備市場における大型案件の獲得やコンシューマー向け商品の販売により好調を維持したことから、売上高及び利益は前連結会計年度と比べ改善しました。一方、半導体等の部品不足による商品調達の遅れや、輸送費の高騰、円安に伴う輸入コストの上昇が顕在化しています。

これらの結果、売上高16,051百万円(前連結会計年度比4.9%増)、セグメント利益54百万円(前連結会計年度はセグメント損失46百万円)となりました。

 

[建築音響・施工事業]

建築音響・施工事業は、コロナ禍の影響をあまり受けず、放送局の建替やスタジオの新設、都市再開発に伴う文化・交流施設の新築計画が中長期的に控えていることなどから、良好な事業環境にあります。

ポストプロダクションや放送局のスタジオをはじめ、ホール、メーカー等の音響実験室、大学の音響教育研究施設の建築音響工事、データセンターの電磁波シールド工事等幅広く手掛け、これら大型案件の集中と順調な工事進捗により、売上高及び利益が押し上げられました。

これらの結果、売上高9,669百万円(前連結会計年度比17.9%増)、セグメント利益648百万円(同39.8%増)となりました。

 

[映像製品の開発・製造・販売事業]

映像製品の開発・製造・販売事業は、コロナ禍で設備投資に対する企業の慎重な姿勢が続く中、東京オリンピック・パラリンピック需要後の端境期となり、大型映像装置の需要が一時的に減少しています。

前連結会計年度から検収が遅れていた大型案件を計上したことに加え、東京・新宿駅東口の街頭ビジョン、スポーツ競技施設、電機メーカーや自動車メーカー等にLEDディスプレイ・システムを納入しましたが、売上高及び利益は前連結会計年度を下回りました。

 

 

このような状況下、第3四半期にグループ内事業移管を実施し、映像製品の開発力強化及びものづくり体制の最適化に着手しています。

これらの結果、売上高1,551百万円(前連結会計年度比11.3%減)、セグメント利益77百万円(同63.7%減)となりました。

 

[コンサート・イベントサービス事業]

コンサート・イベントサービス事業は、第1四半期及び第2四半期において緊急事態宣言発出による影響を受けましたが、東京オリンピック・パラリンピック関連の売上をほぼ計画通りに達成しました。コンサート・イベント市場は、緊急事態宣言が解除された第3四半期から持ち直しの動きが加速しましたが、第4四半期における新たな変異株の流行によって再び失速に転じました。

一方、2021年7月に「Hibino VFX Studio」の運用を開始し、新たな映像制作手法であり、今後市場の急拡大が見込まれる「バーチャルプロダクション」への参入を果たしました。コンサート・イベントで培ったLEDディスプレイ運用のノウハウや、世界の有力な映像機器メーカー等とのネットワークを活用することで、早期収益化を実現しています。さらに第3四半期には、連結子会社でカメラ関連の機材・技術に強みを持つヒビノベスコ株式会社を当社に吸収合併し、バーチャルプロダクションで世界最高水準のシステムとオペレーションサービスを提供する体制を構築しています。

これらの結果、売上高14,844百万円(前連結会計年度比198.7%増)、セグメント利益1,766百万円(前連結会計年度はセグメント損失3,622百万円)となりました。

 

[その他の事業]

その他の事業は、業務用照明機器の販売、システム設計・施工・メンテナンスを行っております。

売上高309百万円(前連結会計年度比3.8%増)、セグメント利益1百万円(前連結会計年度はセグメント損失7百万円)となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度に比べ237百万円減少し、3,578百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

  営業活動の結果獲得した資金は6,018百万円(前年同期は1,097百万円の資金使用)となりました。

  資金の主な増加要因としては、減価償却費2,532百万円及び税金等調整前当期純利益1,822百万円であります。また、主な減少要因としては、前受金の減少額2,442百万円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

  投資活動の結果使用した資金は1,899百万円(前年同期比12.7%減)となりました。

  資金の主な減少要因としては、有形固定資産の取得による支出1,791百万円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  財務活動の結果使用した資金は4,438百万円(前年同期は4,307百万円の資金獲得)となりました。

  資金の主な減少要因としては、短期借入金の純減額4,494百万円及び長期借入金の返済による支出3,584百万円であります。

 

生産、受注及び販売の実績

    (1) 生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

電気音響・販売施工事業

         (千円)

2,212,647

126.0

建築音響・施工事業

         (千円)

5,749,921

107.8

映像製品の開発・製造・販売事業

          (千円)

500,602

733.0

合計          (千円)

8,463,171

118.3

 (注)1.電気音響・販売施工事業及び建築音響・施工事業の金額は、一部の国内連結子会社における当期完成工事高を記載しております。

2.映像製品の開発・製造・販売事業の金額は、製造原価によっております。

 

(2) 受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

電気音響・販売施工事業

3,369,411

88.0

1,592,360

93.6

建築音響・施工事業

5,446,800

74.4

4,519,840

93.7

映像製品の開発・製造・販売事業

1,052,112

272.1

543,142

56.2

合計

9,868,324

85.5

6,655,343

88.8

 (注)1.電気音響・販売施工事業及び建築音響・施工事業は、一部の国内連結子会社における建設工事に限定しております。

2.映像製品の開発・製造・販売事業の受注実績は、特注品を対象にしております。

(3) 商品仕入実績

 当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

電気音響・販売施工事業

         (千円)

7,125,498

121.2

映像製品の開発・製造・販売事業

                  (千円)

279,308

63.5

その他の事業   (千円)

166,590

58.8

合計          (千円)

7,571,398

192.1

 

(4) 販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

電気音響・販売施工事業

         (千円)

16,051,170

104.9

建築音響・施工事業

         (千円)

9,669,367

117.9

映像製品の開発・製造・販売事業

                  (千円)

1,551,430

88.7

コンサート・イベントサービス事業

                   (千円)

14,844,522

298.7

その他の事業   (千円)

309,790

103.8

合計        (千円)

42,426,280

139.0

 (注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

パナソニックシステムソリューションズジャパン株式会社

5,202,439

12.3

   2.前連結会計年度については、総販売実績に対して10%以上に該当する相手先がないため記載を省略しております。

   3.パナソニックシステムソリューションズジャパン株式会社は、2022年4月1日付で、吸収分割承継会社としてパナソニックコネクト株式会社に社名変更しております。

 

経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において分析、判断したものであります。

 

(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたりまして経営陣は、資産・負債及び収益・費用の計上、偶発債務等の開示に関連した種々の見積りを行っております。これら見積りにつきましては過去の実績や状況を勘案した合理的な仮定に基づき判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5経理の状況の1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しており、重要な会社の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「同注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(2) 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 売上高及び売上総利益

売上高は、コンサート・イベントサービス事業が新型コロナの影響をより強く受けた前期から大きく改善し、東京オリンピック・パラリンピック関連の売上をほぼ計画通りに達成したことや、建築音響・施工事業も好調に推移し、過去最高を更新しました。

売上総利益は、売上高の増加に伴い、前連結会計年度と比べ増加しました。

これらの結果、売上高42,426百万円(前連結会計年度比39.0%増)、売上総利益は13,485百万円(同82.8%増)となりました。

 

② 営業損益、経常損益

販売費及び一般管理費は、事業活動の活性化により、給与・賞与等人件費や旅費交通費が増加したことに伴い、前連結会計年度に比べ増加しましたが、損益へのインパクトが大きいコンサート・イベントサービス事業の回復により、営業利益は、大幅に改善しました。

営業外収益は、休業に伴う助成金収入及び中止案件の受取キャンセル料等を計上し、前連結会計年度と比べ減少し831百万円となりました。営業外費用は、前連結会計年度と比べ増加し249百万円となりました。

これらの結果、営業利益は1,339百万円(前連結会計年度は営業損失4,073百万円)、経常利益は1,921百万円(前連結会計年度は経常損失2,636百万円)となりました。

 

③ 特別損益及び親会社株主に帰属する当期純損益

特別利益はなく、特別損失は、関係会社債権放棄損45百万円や、連結子会社ののれん及び有形固定資産の減損損失43百万円等を計上しました。

法人税、住民税及び事業税は519百万円、法人税等調整額は128百万円となりました。

これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,074百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失は2,423百万円)となりました。

 

(3) 経営成績等に重要な影響を与える要因について

経営成績等に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に詳述したとおりであります。

 

(4) 経営戦略の現状と見通し

経営戦略の現状と見通しは、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に詳述したとおりであります。

 

(5) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

① キャッシュ・フロー

当社グループのキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3)キャッシュ・フローの状況」に詳述したとおりであります。

 

② 資金需要

当社グループの資金需要の主なものは、運転資金、子会社取得に要する資金及び設備投資資金であります。設備(機材)投資資金は、最新鋭かつ大量の機材を保有し他社との差別化を図るために欠かすことのできないものです。また運転資金としては、売上債権の入金時期と仕入債務の支払時期に差異が出るため、一定の資金を常に保有しておく必要があります。

 

③ 財務政策

当社グループは、運転資金、子会社取得に要する資金及び設備投資資金について、必要に応じて借入による資金調達を行っております。運転資金につきましては、貸出コミットメント契約を締結し機動的な調達を行なっております。子会社取得に要する資金及び設備投資資金につきましては、長期借入金による調達を行っております。また、グループ全社資金の効率化を図るため、資金余剰状態にある子会社から当社が資金を借り入れ、資金需要が発生している子会社に貸出を行うグループファイナンスを実施しております。

なお、貸出コミットメント契約の締結につきましては以下の財務制限条項が付されており、これに抵触した場合、借入先の請求に基づき、借入金を一括返済することがあり(複数ある場合は、条件の厳しい方を記載しております。)、当社グループの財政状態、経営成績及び信用に影響が及ぶ可能性があります。

・各年度及び第2四半期の決算期末日において、貸借対照表(連結及び個別)における純資産の部の金額を、前年度決算期末日における純資産の部の合計額の80%以上に維持すること。

・各年度及び第2四半期の決算期末日における、損益計算書(連結及び個別)の営業損益及び経常損益においてそれぞれ損失を計上しないこと。

 

(6) 経営者の問題認識と今後の方針について

当社グループを取り巻く経営環境は、技術革新や社会インフラ整備の進行により日々変化し続けております。

当社グループの経営陣は、当社グループを「仕事にこだわりを持つ、技術力を背景にした信頼度の高いプロ集団」と位置づけ、グループ全体でヒビノブランドの知名度拡大・浸透を図りながら、プロ用AV&IT業界の牽引役になれるよう法令等の遵守のもと改善・改革を推し進め、時代の変化を先取りして創造性を十二分に発揮することで事業を継続的に発展させ、企業価値の最大化を目指してまいります。

とりわけ、電気音響・販売施工事業においては、すでに品質の良さを認知されている著名なブランドだけでなく、国内での知名度は高くなくても当社グループが品質等に関して優秀であると見極めたブランドについても輸入販売権を確保することで、より一層の業績拡大を図ってまいります。

LEDディスプレイ・システムを中心とした映像製品の開発・製造・販売事業においては、高品質・高精彩によって世界的な評価を得ている当社製LEDディスプレイ・システムの性能をさらに高めることやコンサート・イベントサービス事業との連携を強化すること等により、事業基盤を拡充してまいります。また、さらなる「ものづくり」事業の強化に向けて、LED関連のオリジナル製品や、市場ニーズを先取りした製品の研究開発に注力するとともに、製造面で一層のコストダウンを図り収益性を高めてまいります。

さらにM&Aや業務提携による事業分野の拡大を進めるとともに、グループ全体の連携、共同事業の拡大、業務の効率化にも努めてまいります。

グループ経営に関しては、引き続き内部統制体制を強化しつつ、リスク管理の徹底、公正な経営の推進ならびに透明性の確保によりコーポレート・ガバナンスの充実を図ってまいります。

 

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