(業績等の概要)
(1)業績
当期における世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が続いたものの、米国や欧州などの経済活動の回復により、全体では景気は持ち直しの傾向が見られました。日本経済においても、個人消費の落ち込みの影響は残るものの、各種政策や世界経済の改善などにより、景気は徐々に持ち直しの動きが見られました。
こうした状況のなかアサヒグループは、「中期経営方針」に基づき、引き続きグローバルとローカルの両面から価値創造経営を推進するとともに、コロナ禍により急激に加速する社会環境の変化を見据えた経営改革に取り組みました。
「中期経営方針」では『稼ぐ力の強化』、『経営資源の高度化』、『ESGへの取組み深化』を重点課題に設定し、『稼ぐ力の強化』においては、各事業の主力ブランドの価値向上や新たな価値提案の強化に加えて、更なるコスト効率化により、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた業績の回復を促進するとともに、『経営資源の高度化』や『ESGへの取組み深化』に再投資するための収益構造改革を推進しました。
その結果、アサヒグループの売上収益は、日本や欧州における外食産業の低迷によるマイナス影響があったものの、2020年6月に取得手続きが完了した豪州のビール・サイダー事業(以下「CUB事業」といいます。)の新規連結効果などにより、2兆2,360億7千6百万円(前期比10.3%増)となりました。また、利益につきましては、事業利益※1は2,179億4千万円(前期比29.9%増)、営業利益は2,119億円(前期比56.8%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,535億円(前期比65.4%増)となりました。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比6.1%の増収、事業利益は前期比23.1%の増益となりました。※2
※1 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。
※2 2021年の外貨金額を、2020年の為替レートで円換算して比較しています。
アサヒグループの実績 (単位:百万円) |
|
実績 |
前期比 |
売上収益 |
2,236,076 |
10.3% |
事業利益 |
217,940 |
29.9% |
営業利益 |
211,900 |
56.8% |
親会社の所有者に 帰属する当期利益 |
153,500 |
65.4% |
当年度の財政状態の状況は、連結総資産は前年度末と比較して1,083億6千9百万円増加し、4兆5,477億4千8百万円、負債は前年度末と比較して1,329億6千2百万円減少し、2兆7,886億円となりました。また、資本は前年度末に比べ2,413億3千2百万円増加し、1兆7,591億4千8百万円となりました。
セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。
なお、当年度より、酒類セグメントに含まれていた一部の会社について、報告セグメントの区分をその他セグメントに変更しております。
以下の前期比較は前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
事業セグメント別の実績 (単位:百万円) |
|
売上収益 |
前期比 |
事業利益 |
前期比 |
売上収益 事業利益率 |
営業利益 |
前期比 |
酒類 |
722,126 |
△3.3% |
70,756 |
△14.7% |
9.8% |
56,781 |
△21.2% |
飲料 |
357,809 |
1.3% |
33,139 |
19.2% |
9.3% |
64,115 |
121.8% |
食品 |
125,898 |
2.0% |
11,447 |
4.1% |
9.1% |
10,493 |
△6.1% |
国際 |
1,017,586 |
28.3% |
160,561 |
70.6% |
15.8% |
111,076 |
113.2% |
その他 |
105,990 |
1.2% |
△141 |
- |
- |
106 |
- |
調整額計 |
△93,334 |
- |
△26,738 |
- |
- |
△30,673 |
- |
無形資産償却費 |
- |
- |
△31,084 |
- |
- |
- |
- |
合計 |
2,236,076 |
10.3% |
217,940 |
29.9% |
9.7% |
211,900 |
56.8% |
※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。
[酒類事業]
酒類事業につきましては、各カテゴリーにおいて主力ブランドへの投資を重点化するとともに、多様化する消費者ニーズに対応した商品や飲み方提案を強化することにより、新たな市場の創造に取り組みました。
ビール類では、飲食店のジョッキで飲む樽生ビールのような味わいが楽しめる『アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶』や、“ぬくもりのある世界観”や“まろやかなうまみのある味わい”が特長の『アサヒ生ビール』の缶商品を発売し、新たな価値提案に取り組みました。また、家庭用生ビールサービス『THE DRAFTERS(ドラフターズ)』の展開を開始するなど、ビール市場の活性化を図りました。発泡酒や新ジャンルにおいては、『アサヒスタイルフリー<生>』、『クリアアサヒ』、『アサヒ ザ・リッチ』を中心に主力ブランドの広告・販売促進活動を強化し、ブランドの価値向上に取り組みました。
ビール類以外では、RTD※において、主力ブランド『アサヒ贅沢搾り』の果実の味わいを強化するリニューアルを行ったほか、豊かなレモンの香りを実現した『アサヒ ザ・レモンクラフト』の全業態への販路拡大や広告・販売促進活動の展開など、ブランドの強化を図りました。また、アルコールテイスト清涼飲料においては、『アサヒドライゼロ』で新たなユーザー層の拡大を図ったほか、新たな“微アルコール”カテゴリーとして、100%ビール由来原料ならではの麦のうまみとコクを実現した『アサヒ ビアリー』や、ウイスキーの本格的な味わいや上質な余韻が楽しめる『アサヒ ハイボリー』などを発売し、お酒の飲み方の多様性を提案する「スマートドリンキング」の取組みを推進しました。
以上の結果、酒類事業の売上収益は、健康志向の高まりなどの消費者ニーズの変化を捉えた『アサヒスタイルフリー<生>』やアルコールテイスト清涼飲料などの売上は前年実績を上回ったものの、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う酒類提供規制などの影響が続き、飲食店向けのビールの売上が大幅に減少したことなどにより、前期比3.3%減の7,221億2千6百万円となりました。
事業利益については、製造原価の低減や収益構造改革などに取り組みましたが、売上収益の減少により、前期比14.7%減の707億5千6百万円となりました(営業利益は前期比21.2%減の567億8千1百万円)。
※ RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。
[飲料事業]
飲料事業につきましては、主力ブランドを中心にこれまで培ってきたブランド価値をより一層磨くとともに、変化する生活に寄り添った商品や社会的課題の解決に向けた提案の強化などに取り組みました。
主力ブランドにおいては、『三ツ矢』ブランドにおいて、有糖炭酸の“おいしさ”と無糖炭酸の“さっぱり”を兼ね備えた“甘すぎない”炭酸飲料として『三ツ矢サイダー レモラ』を発売し、新たな価値提案を強化しました。また、『ウィルキンソン』ブランドでは、脂肪や糖の吸収を抑える機能を有する機能性表示食品『ウィルキンソン タンサン エクストラ』をリニューアルするなど、健康需要や家庭内需要により好調な炭酸カテゴリーにおいてブランド価値の更なる向上を図りました。『カルピス』ブランドでは、誕生30周年を迎えた『カルピスウォーター』のリニューアルに加え、生活様式の変化に合わせた希釈用商品のアレンジレシピの提案を推進し、ブランド力の強化に取り組みました。
社会的課題の解決に向けた提案の強化においては、『十六茶』ブランドで、新たな素材や製法、環境配慮素材(PET再生樹脂、バイオ素材樹脂)を使用した新容器を採用しました。また、『アサヒ おいしい水 天然水 シンプルecoラベル※』の店頭販売を開始するとともに、食品業界で初めてレーザーマーキング技術を使用した完全ラベルレスの商品を『十六茶』ブランドから発売し、ラベルレス商品の展開強化を通じて環境負荷低減に取り組みました。
以上の結果、飲料事業の売上収益は、最盛期における天候不順や新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたものの、炭酸飲料やお茶飲料の販売数量が前年実績を上回ったことなどにより、前期比1.3%増の3,578億9百万円となりました。
事業利益については、増収効果に加えて、ブランドの選択と集中による固定費全般の効率化などにより、前期比19.2%増の331億3千9百万円となりました(営業利益は前期比121.8%増の641億1千5百万円)。
※ シンプルecoラベルとは、法定記載事項等の必要表示内容が記載された小面積のシールです。
[食品事業]
食品事業につきましては、新しい生活様式に合わせた価値創造と、市場構造の変化に適応した各カテゴリーの強化により、持続的な成長基盤の構築に取り組みました。
タブレット菓子『ミンティア』については、マスク着用時専用商品のほか、健康志向の高まりに対応した栄養機能食品や機能性表示食品の商品を発売するなど、新たな喫食シーンの提案によるブランド価値の向上に取り組みました。栄養サポート食品『1本満足バー』については、健康志向やからだづくりへの関心が高まる中、プロテインシリーズを中心に商品ラインアップの拡充や販売促進活動の強化を推進しました。フリーズドライ食品『アマノフーズ』については、『いつものおみそ汁』シリーズの高価格帯商品のラインアップの拡充に加え、調理時間の時間短縮ニーズの高まりや個食化に対応した『お食事メニュー』シリーズを発売するなど、手軽で本格的な味わいを楽しめるフリーズドライ食品の価値を訴求しました。
ベビーフードについては、お客様のニーズを捉え、離乳食づくりをサポートする商品などのラインアップを拡充し、ユーザー層の拡大を図りました。サプリメントについては、『ディアナチュラ』において、セルフケアニーズの高まりに対応したラインアップを拡充したほか、広告・販売促進活動の展開によりブランド力の向上に取り組みました。
以上の結果、食品事業の売上収益は、オフィス勤務や外出機会の減少に伴い『ミンティア』の売上が減少したものの、巣ごもり需要を捉えたフリーズドライみそ汁やセルフケアニーズの高まりに対応した『ディアナチュラ』などの売上が前年実績を上回ったことなどにより、前期比2.0%増の1,258億9千8百万円となりました。
事業利益については、増収効果に加えて、固定費全般の効率化などにより、前期比4.1%増の114億4千7百万円となりました(営業利益は、前期比6.1%減の104億9千3百万円)。
[国際事業]
国際事業につきましては、ローカル市場における主力ブランドやアルコールテイスト清涼飲料を軸としたプレミアム戦略の推進に加えて、グローバルプレミアムブランドの販路拡大を強化しました。
グローバル市場全体に向けたブランドの拡大展開においては、『アサヒスーパードライ』における「ラグビーワールドカップ2023フランス大会」や『Peroni Libera 0.0%』のモータースポーツチームAston Martin Cognizant FORMULA ONETM TEAMとのパートナーシップの契約締結により、ブランドの情報発信力の強化を図りました。
欧州事業については、『Peroni Nastro Azzurro』や『Radegast』など主力のプレミアムブランドを中心にマーケティング活動を強化し、また、『Pilsner Urquell』において、パッケージを100%リサイクル可能な素材にリニューアルするなど、各国において環境負荷低減に向けた取組みを推進し、ブランド価値向上を図りました。アルコールテイスト清涼飲料では、『Birell』や『Lech Free』などにおいてフレーバー入り商品のラインアップを拡充し、新たな飲用機会の獲得に向けた取組みを強化しました。
オセアニア事業については、酒類において、『Great Northern』を中心に積極的なマーケティング活動を展開したほか、アルコールテイスト清涼飲料『Great Northern Zero』を豪州全域で発売するなど、新たな価値提案の強化に取り組みました。飲料においては、炭酸カテゴリーやスポーツ飲料を中心にノンシュガー商品の販売を強化し、市場における存在感の向上を図りました。また、『アサヒスーパードライ』などのプレミアムビールや清涼飲料の飲食店向けの販売を強化するなど、強固な事業基盤を活かしてシナジーの創出に向けた取組みを推進しました。
東南アジア事業については、マレーシアで『WONDA Brown Sugar Latte』を発売するなど、アサヒグループ保有ブランドを中心にラインアップを拡充することにより、ブランド認知度の向上を図りました。
以上の結果、国際事業の売上収益は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う各国の規制による影響などは残ったものの、CUB事業の新規連結効果や規制緩和に伴う飲食店の売上回復などにより、前期比28.3%増の1兆175億8千6百万円となりました。
事業利益については、主にCUB事業の新規連結効果や欧州事業の増収効果などにより、前期比70.6%増の1,605億6千1百万円となりました(営業利益は、前期比113.2%増の1,110億7千6百万円)。
なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比17.7%の増収、事業利益は前期比56.2%の増益となりました。※
※ 2021年の外貨金額を、2020年の為替レートで円換算して比較しています。
[その他の事業]
その他の事業につきましては、売上収益は、前期比1.2%増の1,059億9千万円となりました。
事業損失については、前期比10億3千9百万円改善の1億4千1百万円となりました(営業利益は前期比51億1千9百万円改善の1億6百万円)。
[「中期経営方針」のガイドラインの進捗]
中期経営方針の「財務、キャッシュ・フローのガイドライン」については、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響を受けたものの、不稼働資産の売却などによるキャッシュ創出を図ったことにより、当期(2021年度)のフリー・キャッシュ・フローは2,000億円を上回り、Net Debt/EBITDAについてもガイドラインを超過する進捗となりました。
また、株主還元については、EPSが業績改善により増加し、当期は1株当たりの配当額を109円とすることにより、ガイドラインを上回る予定です。
なお、「主要指標のガイドライン」は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を踏まえ、2021年2月に取り下げています。
財務、キャッシュ・フローのガイドライン
|
2021年以降のガイドライン |
2021年進捗 |
キャッシュ・フロー |
・フリー・キャッシュ・フロー(FCF):年平均2,000億円以上 (FCF=営業CF-投資CF ※M&A等の事業再構築を除く) |
3,191億円 |
成長投資・債務削減 |
・FCFは債務削減に優先的に充当し、成長投資への余力を高める ・Net Debt/EBITDA※1 は2024年に3倍程度を目指す (劣後債の50%はNet Debtから除いて算出) |
4.24倍 |
株主還元 |
・配当性向※235%程度を目指した安定的な増配 (将来的な配当性向は40%を目指す) |
36.0% |
※1 Net Debt/EBITDA(EBITDA純有利子負債倍率)=(金融債務-現預金)/EBITDA
※2 配当性向は、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築などに係る一時的な損益(税金費用控除後)を控除して算出しております。
(2)キャッシュ・フローの状況
当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益が1,998億2千6百万円となりましたが、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加や運転資本の効率化により、3,378億1千2百万円(前期比:619億5千2百万円の収入増)の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出などにより、143億4千8百万円(前期比:1兆2,290億2千4百万円の支出減)の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に短期借入金の返済による金融債務の減少があり、3,203億2千5百万円(前期比:1兆2,770億8千4百万円の支出増)の支出となりました。
以上の結果、当年度末では、前年度末と比較して現金及び現金同等物の残高は42億8千3百万円増加し、527億4千3百万円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1)生産実績
当年度におけるセグメントごとの生産実績は以下の通りであります。
セグメントの名称 |
数量又は金額 |
単位 |
前期比 |
酒類 |
1,818,067 |
KL |
△3.9% |
飲料 |
341,901 |
百万円 |
0.6% |
食品 |
129,473 |
百万円 |
8.6% |
国際 |
828,035 |
百万円 |
36.1% |
(注)1 金額は、販売価額によっております。
2 IFRSに基づく金額を記載しております。
3 酒類事業の生産数量、飲料事業及び食品事業の生産高には、外部への製造委託を含めております。
4 上記金額には消費税等は含まれておりません。
(2)受注実績
当社グループでは受注生産はほとんど行っておりません。
(3)販売実績
当年度におけるセグメントごとの販売実績は以下の通りであります。
セグメントの名称 |
金額 |
前期比 |
|
酒類 |
722,126 |
百万円 |
△3.3% |
飲料 |
357,809 |
百万円 |
1.3% |
食品 |
125,898 |
百万円 |
2.0% |
国際 |
1,017,586 |
百万円 |
28.3% |
その他 |
105,990 |
百万円 |
1.2% |
調整額 |
△93,334 |
百万円 |
- |
合計 |
2,236,076 |
百万円 |
10.3% |
(注)1 調整額はセグメント間取引であります。
2 上記金額には消費税等は含まれておりません。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
|
前年度 |
当年度 |
||
相手先 |
販売高 (百万円) |
割合 (%) |
販売高 (百万円) |
割合 (%) |
伊藤忠食品㈱ |
202,893 |
10.0 |
- |
- |
なお、当年度については、外部顧客への売上収益のうち、総販売高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下の通りであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表注記 5 重要な会計上の見積り及び判断)」に記載しております。
(2)当年度の経営成績の分析
① 売上収益
アサヒグループの当年度の売上収益は、前期比10.3%増、2,083億1千3百万円増収の2兆2,360億7千6百万円となりました。酒類事業においては、健康志向の高まりなどの消費者ニーズの変化を捉えた『アサヒスタイルフリー<生>』やアルコールテイスト清涼飲料などの売上は前年実績を上回ったものの、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う酒類提供規制などの影響が続き、飲食店向けのビールの売上が大幅に減少したことなどにより、前期比3.3%減の7,221億2千6百万円となりました。飲料事業においては、最盛期における天候不順や新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたものの、炭酸飲料やお茶飲料の販売数量が前年実績を上回ったことなどにより、前期比1.3%増の3,578億9百万円となりました。食品事業においては、オフィス勤務や外出機会の減少に伴い『ミンティア』の売上が減少したものの、巣ごもり需要を捉えたフリーズドライみそ汁やセルフケアニーズの高まりに対応した『ディアナチュラ』などの売上が前年実績を上回ったことなどにより、前期比2.0%増の1,258億9千8百万円となりました。国際事業においては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う各国の規制による影響などは残ったものの、CUB事業の新規連結効果や規制緩和に伴う飲食店の売上回復などにより、前期比28.3%増の1兆175億8千6百万円となりました。その他の事業においては、前期比1.2%増の1,059億9千万円となりました。
② 事業利益
当年度の事業利益は、前期比29.9%増、501億1千7百万円増益の2,179億4千万円となりました。酒類事業においては、製造原価の低減や収益構造改革などに取り組みましたが、売上収益の減少により、前期比14.7%減の707億5千6百万円となりました。飲料事業においては、増収効果に加えて、ブランドの選択と集中による固定費全般の効率化などにより、前期比19.2%増の331億3千9百万円となりました。食品事業においては、増収効果に加えて、固定費全般の効率化などにより、前期比4.1%増の114億4千7百万円となりました。国際事業においては、主にCUB事業の新規連結効果や欧州事業の増収効果などにより、前期比70.6%増の1,605億6千1百万円となりました。その他の事業においては、前期比10億3千9百万円改善の1億4千1百万円の事業損失となりました。
③ 営業利益
営業利益は、事業利益の増益に加え、その他の営業収益の増加などにより、前期比56.8%増、767億3千2百万円増益の2,119億円となりました。
④ 税引前利益
当年度の税引前利益は、営業利益の増益に加え、金融収益が前期比20.4%減、14億7千5百万円減少の57億5千4百万円となったことや、金融費用が前期比23.6%増、35億3千4百万円増加の185億1千6百万円となったことなどにより、前期比59.4%増、744億2千6百万円増益の1,998億2千6百万円となりました。
⑤ 親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益の増益などにより前期比65.4%増、606億7千3百万円増益の1,535億円となりました。
また、基本的1株当たり利益は302.92円(前期196.52円)となり、親会社所有者帰属持分比率は38.6%(前期34.2%)となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築など一時的な特殊要因を除いた親会社の所有者に帰属する当期利益を算出に用いた調整後基本的1株当たり利益は302.92円(前期196.52円)となりました。
(3)財政状態の分析
① 総資産
当年度の連結総資産は、為替相場の変動によるのれん及び無形資産の増加等により、総資産は前年度末と比較して1,083億6千9百万円増加し、4兆5,477億4千8百万円となりました。
② 負債
負債は、社債及び借入金の減少等により、前年度末と比較して1,329億6千2百万円減少し、2兆7,886億円となりました。
③ 資本
資本は、前年度末に比べ2,413億3千2百万円増加し、1兆7,591億4千8百万円となりました。これは、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が増加したこと及び為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が増加したこと等によるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は38.6%となりました。
また、事業ポートフォリオ再構築や為替変動など一時的な特殊要因を除いた「親会社の所有者に帰属する当期利益」及び「親会社の所有者に帰属する持分合計」を算出に用いた調整後親会社所有者帰属持分当期利益率は11.0%(前期7.5%)となりました。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フロー分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
また、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下の通りであります。
|
前年度 |
当年度 |
親会社所有者帰属持分比率(%) |
34.2 |
38.6 |
時価ベースの親会社所有者帰属 持分比率(%) |
48.4 |
49.9 |
キャッシュ・フロー対有利子 負債比率(年) |
7.1 |
5.1 |
インタレスト・カバレッジ・ レシオ(倍) |
27.5 |
30.1 |
(注)親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/総資産
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
※ キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを使用しております。
② 資金の調達
アサヒグループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入、社債の発行からなります。当社は経営方針として、有利子負債残高の圧縮を基本として掲げておりますが、「事業基盤強化・効率化を目指した設備投資」及び「M&Aを含む戦略的事業投資」については資金需要に応じて金融債務を柔軟に活用することとしております。一方、運転資金需要については、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーでまかなうことを基本としております。
③ 資金の流動性
当社及び主要な連結子会社はCMS(キャッシュマネジメントシステム)を導入しており、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化を図っております。
(5)戦略的現状と見通し
2022年は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響や原材料コストの大幅な上昇など、厳しい経営環境が続くことが想定されますが、「中長期経営方針」に基づいて、既存事業の持続的成長と新たな成長領域の拡大、コア戦略の推進による企業価値向上を目指します。
日本においては、酒類、飲料、食品事業の「強み」のあるブランドに経営資源を投下するとともに、新たな価値提案などを通じて各事業のブランド価値向上を図ります。また、日本全体での事業の枠を超えたシナジーの創出やSCM※の最適化、サステナビリティへの取組み強化により、持続的な成長基盤を強化していきます。
欧州においては、「アサヒスーパードライ」などのグローバルブランドの拡大展開を図るとともに、主力のローカルブランドの強化、ノンアルコールビールを中心としたBACの一層の拡大により、各国のブランドポートフォリオのプレミアム化を推進します。また、環境問題への対応やありたい企業風土の醸成に向けた取組みを強化することで、持続的な成長基盤の更なる拡大を図ります。
オセアニアにおいては、酒類、飲料事業の強みを融合したマルチビバレッジ戦略を推進するとともに、統合シナジーを創出することにより、収益基盤の盤石化を目指します。また、ノンアルコールビールなどの新たな成長カテゴリーへの投資強化に加えて、サステナビリティを重視した新価値提案やSCM改革などを推進していきます。
東南アジアにおいては、自社ブランドを中心としたブランド投資の拡大などにより、マレーシアを中心とした展開国におけるプレゼンスの更なる拡大を図ります。また、持続可能な容器包装の活用など、環境問題への対応した取組みを推進します。
※SCM : サプライチェーンマネジメントの略。
(6)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、この文中に記載したほか、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通りであります。
(7)経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載の通りであります。
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