文中には、中期経営方針等に関する様々な業績予想及び目標数値、並びにその他の将来に関する情報が開示されています。これらの業績予想及び目標数値、並びにその他の将来に関する情報は、将来の事象についての現時点における仮定及び予想、並びにアサヒグループが現在入手可能な情報や一定の前提に基づいているため、今後様々な要因により変化を余儀なくされるものであり、これらの予想や目標の達成及び将来の業績を保証するものではありません。
(1)経営の基本方針
アサヒグループは、純粋持株会社であるアサヒグループホールディングス株式会社のもと、日本、欧州、オセアニア、東南アジアを核として酒類、飲料、食品事業を展開しています。
グループ理念「Asahi Group Philosophy(AGP)」に基づき、未来のステークホルダーからも信頼されるグループを目指しています。AGPは、Mission、Vision、Values、Principlesで構成され、グループの使命やありたい姿に加え、受け継がれてきた大切にする価値観とステークホルダーに対する行動指針・約束を掲げています。各地域の統括会社及び事業会社が、AGPに基づく戦略を策定、実行していくことにより、グループ全体で企業価値の向上に努めています。
(2)中長期的な経営戦略
AGPの実践に向けて、メガトレンドからのバックキャストにより、これまでの中期経営方針を、長期戦略を含む新たな『中長期経営方針』として更新しました。『中長期経営方針』では、長期戦略のコンセプトとして「おいしさと楽しさで“変化するWell-being”に応え、持続可能な社会の実現に貢献する」ことを掲げています。
目指す事業ポートフォリオを示すとともに、サステナビリティと経営の統合、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やR&D(研究開発)といったコア戦略の一層の強化により、持続的な成長と全てのステークホルダーとの共創による企業価値向上を目指していきます。
『中長期経営方針』:長期戦略の概要
<長期戦略のコンセプト>
おいしさと楽しさで“変化するWell-being”に応え、持続可能な社会の実現に貢献する
◆目指す事業ポートフォリオ:ビールを中心とした既存事業の成長と新規領域の拡大 ・既存地域でのプレミアム化とグローバルブランドによる成長、展開エリアの拡大 ・健康志向などを捉えた周辺領域での成長、ケイパビリティを活かした新規事業の創出・育成
◆コア戦略:持続的成長を実現するためのコア戦略の推進 ・サステナビリティと経営の統合による社会・事業のプラスインパクトの創出、社会課題解決 ・DX=BX※と捉え、3つの領域(プロセス、組織、ビジネスモデル)でのイノベーションを推進 ・R&D(研究開発)機能の強化による既存商品価値の向上・新たな商材や市場の創造
◆戦略基盤強化:長期戦略を支える経営基盤の強化 ・ケイパビリティの獲得・ありたい企業文化の醸成・経営人材輩出に向けた人的資本の強化 ・グループガバナンスの進化による最適な組織体制構築、ベストプラクティスの共有 |
※ BX: ビジネス・トランスフォーメーションの略。
■目指す事業ポートフォリオ
※ BAC:Beer Adjacent Categoriesの略。低アルコール飲料やノンアルコールビールテイスト飲料、成人向け清涼飲料などビール隣接カテゴリーを指します。
(3)目標とする経営指標
<主要指標のガイドライン>
|
2021年実績 |
2022年以降のガイドライン(3年程度を想定) |
事業利益 |
2,179億円 |
・CAGR(年平均成長率):一桁台後半※1 |
EPS(調整後※2) |
305.17円 |
・CAGR(年平均成長率):一桁台後半 |
FCF※3 |
3,191億円 |
・年平均2,000億円以上 |
※1 2021年為替一定ベース
※2 調整後とは、事業ポートフォリオの再構築や減損損失など一時的な特殊要因を除くベース
※3 FCF=営業CF-投資CF ※M&A等の事業再構築を除く
<財務方針>
|
2022年以降のガイドライン |
成長投資・債務削減 |
・FCFは債務削減へ優先的に充当し、成長投資への余力を高める ・Net Debt/EBITDAは2024年に3倍程度を目指す (劣後債の50%はNet Debtから除いて算出) |
株主還元 |
・配当性向35%程度を目途とした安定的な増配 (将来的な配当性向は40%を目指す) |
(4)対処すべき課題
中長期的な外部環境としては、テクノロジーの発展が人類に新たな技術力と自由な時間を与え、気候変動・資源不足といった地球規模の課題を抱える中、社会・経済だけではなく人類の幸福(Well-being)のあり方も変化していくものと想定されます。
そうしたメガトレンドを踏まえて更新した『中長期経営方針』に基づき、各地域統括会社は、既存事業の持続的成長に加えて、その事業基盤を活かした周辺領域や新規事業・サービスを拡大していきます。さらに、サステナビリティと経営の統合などコア戦略の一層の強化により、グループ全体で企業価値の向上に努めていきます。
<地域統括会社の中期重点戦略>
[日本]
① 変化を先読みする商品ポートフォリオ最適化とシナジー創出による日本事業のポテンシャル拡大
② ニーズの多様化に対応したスマートドリンキングなどの推進、高付加価値型サービスの創造
③ カーボンニュートラルなど社会課題の事業による解決、日本全体でのサプライチェーン最適化
[欧州]
① グローバル5ブランドの拡大と強いローカルブランドを軸としたプレミアム戦略の強化
② ノンアルコールビールやクラフトビール、RTDなど高付加価値商品を軸とした成長の加速
③ 再生エネルギーの積極活用や循環可能な容器包装の展開など環境負荷低減施策の推進
[オセアニア]
① 酒類と飲料を融合したマルチビバレッジ戦略の推進、統合シナジーの創出
② BACなど成長領域でのイノベーションの推進、健康・Well-beingカテゴリーの強化
③ 新容器・包装形態などサステナビリティを重視した新価値提案、SCM改革の推進
[東南アジア]
① マレーシアの持続成長と自社ブランドの強化など、域内6億人超の成長市場での基盤拡大
② 植物由来商品など新セグメントの拡大による最適なプレミアムポートフォリオの構築
③ 環境配慮型容器の展開などによる持続可能性の確保や原材料調達での地域社会との共創
サステナビリティ
アサヒグループは、サステナビリティと経営の統合を推進し、社会的課題の解決を通じた事業の成長を目指しています。
1 サステナビリティ戦略
アサヒグループはサステナビリティと経営の統合を実現するため、重点方針の設定や、マテリアリティにおけるテーマの見直しなどを行いました。また、「Cheer the Future」 をアサヒグループの未来への約束として設定しました。事業活動を通じて、かけがえのない未来を元気にしていきます。
サステナビリティ・ストーリー
~「Cheer the Future」 に込めた4つのストーリー~
2 重点方針及び重点テーマ
(1)気候変動への対応 地球温暖化による異常気象などの気候変動問題は、「自然の恵み」を享受して事業を行うアサヒグループにとって重要な社会的課題です。事業活動における環境負荷“ゼロ”(ニュートラル)を目指し、大切な「自然の恵み」を次世代につなげていきます。
|
|
①アサヒカーボンゼロ上方修正
アサヒカーボンゼロは、2018年にCO2排出量削減の中長期目標として策定され、2050年にScope1,2,3においてCO2排出量を“ゼロ”とし、カーボンニュートラルの実現を目指すもので、2030年の目標値も合わせて設定されています。
この2030年のScope1,2の目標値について、再生可能エネルギーの積極的な活用や製造工程の見直しによる省エネ、新技術の開発などを進めることによって、2021年に続き2022年1月に再度上方修正を行い、2019年比で70%の削減を目指すこととしました。
アサヒグループでは使用電力を全て再生可能エネルギーに切り替えることを目指すイニシアチブ「RE100」に参画し、2050年までに使用電力の100%再生可能エネルギー化を目標としています。また、Scope3の目標値については、SBT(Science Based Targets)イニシアチブ※の2℃認定から2℃を十分に下回る水準(Well Below 2℃)の認定へと引き上げました。
各地域統括会社において、これらの目標の実現に向けた取組みの計画を策定していくなか、目標値を上方修正することによりさらなる取組みの加速を目指していきます。
豪州カールトン&ユナイテッド・ブルワリーズ社のヤタラ醸造所の屋上には、約7,000枚のソーラーパネルが設置されています。
豪州とニュージーランドにおいて、2025年までに事業全体に使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指しています。
※ 企業のCO2排出量削減目標の科学的根拠を認定する国際的なイニシアチブ。
②「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への取組み深化
アサヒグループは、気候変動によるリスクと機会に関連する事業インパクトの評価及び対応策の立案が、持続可能な社会の実現及び事業の持続可能性に不可欠であると認識し、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しています。
2019年にビール事業のシナリオ分析を開始し、2020年にはビールを含む全酒類事業及び飲料事業に対象を拡大しました。
・事業インパクト評価と対応策
シナリオ分析の結果、主要農産物原料の収量減によるコスト増や炭素税導入による生産コスト増、炭素税導入による価格転嫁された際のPETボトルコスト増のリスクによる影響額を可視化しました。
シナリオ分析で可視化されたリスクに対する対応策として、それぞれのリスク軽減に効果的であると考えられる、サプライヤーとの協働や農業支援、自社技術の活用などを検討しています。
・気候変動への対応に向けた地域農業支援 : 「FOR HOPS」
チェコの酒類子会社のプルゼニュスキー プラズドロイ社は、マイクロソフト社、アグリテクチャー社などと協力し、最先端の技術を駆使してホップ農家を支援するプロジェクト「FOR HOPS」を、2021年に開始しました。
チェコのザーツ産ホップは、極寒や猛暑に加え、干ばつによって引き起こされる水不足や短期間の集中豪雨により、収穫量や品質に深刻なダメージを受けています。
本プロジェクトでは、ホップ畑の土壌やホップの苗にセンサーを取りつけ、降水量・湿度・土壌中の栄養素といったデータを収集します。マイクロソフト社とアグリテクチャー社は、これらのデータを処理・評価する独自のソフトウェアを開発し、ホップの状況を正確に把握できるようにしました。限られた水をホップ生産に最大限活用できるよう、効率的なかんがいの仕組みを確立することを目指しています。 |
|
(2)プラスチック問題への対応 不適切に廃棄されたプラスチック製の容器包装による、海洋汚染や生態系への影響が喫緊の社会的課題となっています。アサヒグループは、海洋プラスチック問題などに対応するとともに、環境・社会に配慮した容器包装を推進しています。
|
|
①PETボトルの環境配慮素材活用に関する目標を設定
アサヒグループは、グループ目標「3R+Innovation」において、2022年1月に、「2030年までにPETボトルを100%環境配慮素材に切り替える」という新たな目標を策定しました。
②具体的な取組み
国内では、アサヒ飲料株式会社が一部の大型PETボトルに、ケミカルリサイクルにより再生された樹脂を100%使用し、2022年4月から生産開始することを予定しています。これにより大型PETボトルの年間生産量の約40%に再生PET樹脂を使用することとなり、ボトルに使用するCO2排出量は従来比で約47%削減され、年間で約18,400tのCO2が削減される見込みです。 海外においては、豪州のアサヒビバレッジズ社が異業種と協業しリサイクルPETボトル原料製造工場を建設。使用済みPETボトルを加工し、食品容器に適したグレードのリサイクルPET原料の製造が可能となります。 |
|
|
(3)人と人のつながりの創出による持続可能なコミュニティの実現 経済が発展する一方で、世界各地で都市集中化や過疎化などの人口の偏りが発生し、共通の価値観を持った「つながり」が希薄化している中、アサヒグループは、人と人、人と地域のつながりをつくる取組みを各地で展開しています。
|
|
①廃棄コーヒー豆や“パン耳”からつくるクラフトビール
アサヒグループは、サステナブルファッションブランド「ECOALF」とコラボレーションし、次世代に向けたサステナブルなライフスタイルを提案する「UPCYCLE B」プロジェクトを、2021年から開始しました。
廃棄コーヒー豆や余剰食材“パン耳”のアップサイクル※をテーマに、台東区、墨田区の事業者と連携してクラフトビール「蔵前BLACK」「蔵前WHITE」を製造し、数量限定で発売しました。廃棄物の削減・有効活用を推進するとともに、地域経済の活性化を促進します。
|
|
|
※ アップサイクルとは、本来であれば捨てられてしまう不用品や廃棄物に付加価値を持たせて、より良く生まれ変わらせる方法論のこと。そのままの素材を活かすことができるため、環境への負荷を軽減することができます。
②ビール酵母で育てる畑のお米チャレンジプロジェクト
アサヒバイオサイクル株式会社は、北海道・網走の福田農場と、「ビール酵母で育てる畑のお米チャレンジプロジェクト」に取り組みました。
ビール製造工程で発生する副産物「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材(肥料原料)は、稲の免疫力を高め根の成長を促進することから、根張りが向上し、発生した細かな根から植物の成長に必要な土壌中の栄養分を吸収するのを促進します。2021年は、農場の畑約3a(約100坪)において、米の栽培に成功しました。 地元の子供たちとともに種まきや稲刈りなどを実施し、地域コミュニティや農業の活性化を目指す取組みで、将来的には、小学校の給食で地元生産の米を提供することを目標に、地元関係者の参画を拡げ、陸稲栽培の規模の拡大を目指していきます。 |
親子での種まき風景 |
③“稲作の天敵”ジャンボタニシによる稲の食害が低減
アサヒバイオサイクル株式会社は、JAぎふ(所在 岐阜県岐阜市)と共同で、水稲栽培に「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材(肥料原料)を使用することで、ジャンボタニシ※による稲の食害を低減できるかを確認する評価試験を行いました。
ジャンボタニシは水田作物を食害することで知られている外来種の貝の一種です。農業資材を使用しなかった、隣接する水田の約2割の稲が食害被害があったのに対し、使用した水田では食害された稲はほとんど見られませんでした。
この農業資材は植物の免疫力を高め根の成長を促進することから、根張りが向上し、発生した細かな根から植物の成長に必要な土壌中の鉄分を多く吸収することができます。ジャンボタニシは鉄に対する耐性が弱いことが知られており、鉄分を多く含んだ稲を食べなかったと考えられます。
※ 正式名スクミリンゴガイ。
[未使用] |
|
[使用後] |
|
|
|
農業資材を使用せず約2割のジャンボタニシに食害された水田 |
|
農業資材を使用し食害被害が抑えられた水田 |
(4)新たな飲用機会の創出によるアルコール関連問題の解決 アサヒグループは、様々な理由でお酒を飲めない方や適度な飲酒を求める人のニーズ、及びアルコールが引き起こす社会的課題解決のため、ノンアルコールや低アルコール商品の拡充や情報発信を強化しています。
|
|
|
①スマートドリンキング アサヒビール株式会社は、2020年12月から、お酒を飲む人も飲まない人もお互いが尊重し合える社会の実現を目指す「スマートドリンキング」を推進しています。 2021年3月から主な商品に含まれる純アルコール量(g)をホームページ上で開示し、2023年には全ての缶容器の商品での表記の完了を目指しています。 また、2025年までに、アルコール分3.5%以下のアルコール及びノンアルコール商品の販売容量構成比を20%※へ拡大していきます。 さらに、健康にお酒を楽しむための動画コンテンツを2021年5月からアサヒビールのホームページで公開しています。「お酒に強い、弱いって何?」「適正なお酒の量ってどれくらい?」「飲酒運転のことちゃんと知ってますか?」 「絶対飲酒してはダメな人、絶対やっちゃいけない飲み方」「いいお酒の飲み方とは?」の全5話で適正飲酒について分かりやすく説明しています。 |
|
飲食店従事者向けには、動画コンテンツ「運転や20歳未満飲酒を防ぐために」を2021年7月に作成しました。この動画では、飲酒運転と未成年飲酒防止のための接客対応について、分かりやすく解説しています。
※ アサヒビール株式会社のビール類、RTD、ノンアルコール商品の販売容量合計比
|
|
|
WEB アサヒビールと学ぶお酒のこと「大切な人と、素敵なときを、適切な飲酒で」
https://www.asahigroup-holdings.com/pressroom/2021/1105_2.html
お知らせ