事業等のリスク

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当年度末現在においてアサヒグループが判断したものであります。

 

1.アサヒグループのリスクマネジメント体制

 アサヒグループは、グループ全体を対象に、エンタープライズリスクマネジメント(ERM)を導入しています。この取組みの中で、「Asahi Group Philosophy」の具現化、並びに「中長期経営方針」の戦略遂行及び目標達成を阻害しうる重大リスクを、戦略、オペレーション、財務、コンプライアンス等全ての領域から特定及び評価し、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを継続的に実施することで、効果的かつ効率的にアサヒグループのリスク総量をコントロールします。

 ERMを推進するにあたり、代表取締役社長をはじめとする業務執行取締役及び代表取締役社長が指名する執行役員で構成される、リスクマネジメント委員会を設置しています。ERMはグループ全体を対象とし、リスクマネジメント委員会の委員長である代表取締役社長が実行責任を負います。

 

 アサヒグループ各社は、事業単位毎にERMを実施し、リスクマネジメント委員会に取組内容を報告します。同委員会はそれらをモニタリングするとともに、委員自らがグループ全体の重大リスクを特定、評価、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを実施します。これらの取組みは取締役会に報告され、取締役会はこれらをモニタリングすることで、ERMの実効性を確認します。

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2.アサヒグループ リスクアペタイト

 アサヒグループは、ERMを推進するとともに、「中長期経営方針」の目標達成のために、「とるべきリスク」と「回避すべきリスク」を明確化する、「アサヒグループ リスクアペタイト」を制定しました。

 「アサヒグループ リスクアペタイト」は、アサヒグループのリスクマネジメントに関する「方針」です。ERMの運用指針及び意思決定の際のリスクテイクの指針となるものであり、リスクに対する基本姿勢を示す「リスクアペタイト ステートメント」と、実務的な活用を想定した、事業遂行に大きく影響する主要なリスク領域に対する姿勢(アペタイト)を示す「領域別リスクアペタイト」で構成されます。グループ戦略、リスク文化とリスク状況、及びステークホルダーの期待をもとに検討し、取締役会にて決定、グループ全体に適用され、実施状況はリスクマネジメント委員会でモニタリング、取締役会へ報告されます。本取組みを通じて、アサヒグループ全体で適切なリスクテイクを促進してまいります。

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3.主要リスク

 当社グループでは、「1.アサヒグループのリスクマネジメント体制」に記載の通り、当社代表取締役社長をはじめとする業務執行取締役及び執行役員で構成されるリスクマネジメント委員会で、中長期経営方針の事業遂行及び目標達成を阻害しうる特に重大なリスクを特定及び評価し、以下の(2)から(16)までの事項をかかるリスクとして認識しております。

 加えて、それ以外に考えられる当社グループの事業等のリスクについても、(17)にまとめて記載しております。但し、以下に記載したリスクは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資者の判断に影響を及ぼす可能性があります。

 また、前述の、当社グループリスクマネジメントの取組みの中で、以下に記載する各リスクに対する対応策を含む種々の対応策をとりますが、それらの対策が有効に機能しない等によりリスクが解消できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(1)中長期経営方針について

 当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指して、2019年に「Asahi Group Philosophy(AGP)」を制定し、本年、それに基づいて、また、その後のグループ内外の環境変化も踏まえて中長期経営方針を更新しました。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、本方針では、3年程度を想定した主要指標のガイドラインや、財務・キャッシュ・フロー方針を示しておりますが、これらのガイドライン・方針は、策定時に当社グループが入手可能な情報や適切と考えられる一定の前提に基づき、将来の事象に関する仮定及び予想に依拠して策定されたものです。そのため、本「2 事業等のリスク」に記載の各リスク等を含む様々な要因により変更を余儀なくされるものであり、当社グループの事業や業績が中期経営方針内の同ガイドライン・方針等を達成できない可能性があります。

 

(2)事業環境について

 当社グループの売上収益において国内事業の占める割合は約54.5%(2021年12月期決算)となっております。今後の日本国内での景気の動向によって、酒類・飲料・食品の消費量に大きな影響を与える可能性があり、人口の減少、少子高齢化が進んでいくと、酒類・飲料・食品の消費量が減少する可能性があります。また、これまでのデフレ環境が想定以上に継続することにより国内での競争環境がさらに激化する結果、販売単価の下落を招き、当社グループ事業の収益性が想定より損なわれる可能性があります。

 国内事業の売上収益のうち、ビール類は4割を超えます。このような状況は、当社グループのビール類商品に対するお客様の信頼を反映したものであり、当社グループ国内酒類事業での効率的な利益創出に寄与しておりますが、消費者の嗜好性の変化、世代交代等により、お客様の支持を失ってしまうと、本商品群の売上が低下し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは海外での事業領域を拡大しており、2021年12月期決算での売上収益における海外事業の占める割合は、約45.5%となっております。今後、欧州、豪州地域を中心とする当社グループが事業を展開する各国における景気の悪化、当該各国での競争環境の激化、消費者の嗜好の変化等、市場の需要動向が変化すること等により、当該地域における当社グループの売上収益の低下、利益率の悪化が生じる可能性があります。

 当社グループは、中長期経営方針に『ビールを中心とした既存事業の成長と新規領域の拡大』を掲げ、グローバル5ブランド『アサヒスーパードライ』、『Peroni Nastro Azzurro』、『Pilsner Urquell』、『Grolsch』、『Kozel』をはじめとした高付加価値ブランドの価値向上や新市場の創造を目指すとともに、今後の環境変化も見据えた収益構造改革を加速することで、本リスクが顕在化した場合の業績及び財政状態への影響の低減を図っていきます。また、ビール類以外にも酒類全般における商品のラインアップを充実させることで売上収益を増加させるとともに、飲料、食品事業において、消費者の健康志向の高まり及び高齢化社会に対応する領域へ挑戦することで、事業拡大を図っていきます。

 

(3)新型コロナウイルス感染拡大の影響

 2020年に世界中へ拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、当社グループでは、顧客、取引先及び社員の安全第一を考え、また更なる感染拡大を防ぐために、WHO並びに各国保健行政の指針に従った感染防止策の徹底をはじめとして、感染リスクが高い国や地域への、及びそれらの国や地域からの渡航の原則禁止、各国と地域の感染状況に合わせて、工場見学や販売促進企画等の多くのお客様にお集まりいただくイベントの休止や制限、テレワーク(在宅勤務)の原則化等、対応を実施しております。主要原材料の十分量確保、業務用商品の需要低迷を家庭用商品で補完する等により、事業影響の低減を図っておりますが、2021年12月期決算においては、世界各国における外食産業の低迷や外出制限による経済停滞のマイナス影響等、当社グループの業績への影響が生じております。多くの国や地域でワクチン接種が進み、治療薬の承認も始まるといった進展が見られる一方で、同ウイルスの変異種の断続的感染拡大が続き、今なお予断を許さない状況です。世界全体では2022年内にも事態が鎮静化するとの見方もあるものの、当社グループが事業展開する個々の地域において沈静化が遅れた場合、また更なる変異種の感染拡大或いは事態の長期化並びにそれに伴うロックダウンや緊急事態宣言が新たに生じた場合には、業務用ビールを中心とした売上低迷の長期化、利益率が比較的低い新ジャンルやRTDの売上高構成比の上昇による収益性の悪化等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、新型コロナウイルス感染拡大によって、消費者が、経済の先行き不透明感に伴い節約志向が強まる一方で、健康志向及び環境への意識が高まるとともに、信頼性・安全性の高いブランドをより重視するようになりました。また、オンラインチャネル(EC等)の利用がスタンダード化し、デジタルデバイス及びサービスの活用が拡大しています。このような消費者、市場、社会等の変化には不可逆的なものもあり、当社グループの従来の戦略及び事業の競争力が失われ、当社グループの中長期的業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、新型コロナウイルス感染拡大による環境変化の加速に加えて今後のテクノロジーの発展が、人類に新たな技術力と自由な時間を与え、気候変動・資源不足といった地球規模の課題を抱える中、社会・経済だけではなく人類の幸福(Well-being)のあり方も変化していくものと想定しています。そうしたメガトレンドを踏まえて中長期経営方針を見直し、「おいしさと楽しさで“変化するWell-being”に応え、持続可能な社会の実現に貢献する」との方針をより強く打ち出しました。本方針のもと、変化しつつあるWell-beingへの迅速な対応、市場環境の変化を先取りした事業戦略の立案と展開、ならびに新たなオペレーティングモデルの構築を通じて、当社グループの戦略及び事業の競争力を強化してまいります。

 

(4)事業拡大について

 当社グループは、Schweppes Australia社の買収(2009年、買収額1,185百万豪ドル(適時開示の際に公表した金額、以下同じ))、カルピス社の買収(2012年、買収額920億円)、旧SAB Miller社の西欧ビール事業の取得(2016年、買収額2,550百万ユーロ)、中東欧ビール事業の取得(2017年、買収額7,300百万ユーロ)及びCUB事業の買収(2020年、買収額160億豪ドル)をはじめとして、国内外での事業領域拡大のため、積極的に外部の経営資源を獲得してきました。2020年6月には、CUB事業を取得する手続きを完了することで、日本、欧州に加え、豪州地域での事業を盤石にし、日、欧、豪の3極を核としたグローバルプラットフォームを構築、成長基盤の拡大を実現しました。当面は財務基盤の強化を優先し大型の買収を積極的に行う予定はありませんが、今後も、成長のために、外部の経営資源を活用していきます。

 外部の経営資源獲得にあたっては、慎重に検討を行い、一定の社内基準をもとに、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合のみ実行します。しかしながら、営業、人員、技術及び組織の統合ができずコスト削減等の期待したシナジー効果が創出できなかった場合、アルコールや砂糖の摂取に対する社会の価値観の変化や人口動態の変化等により、買収した事業における製品に対する継続的な需要を維持できない場合、買収した事業における優秀な人材を保持し又は従業員の士気を維持することができない場合、高付加価値ブランドの育成不振等、効果的なブランド及び製品ポートフォリオを構築することができない場合、並びに異なる製品ラインにおける販売及び市場戦略の連携(クロスセルの拡大)ができない場合等により、当社グループの期待する成果が得られない可能性があります。

 当社グループは、買収に伴い、相当額ののれん及び無形資産を連結財政状態計算書に計上しており、2021年12月末現在、のれん及び無形資産の金額はそれぞれ、連結総資産の40.0%(18,168億円)及び22.1%(10,027億円)を占めております。

 当社グループは、当該のれん及び無形資産につきまして、それぞれの事業価値及び将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が将来にわたって大きく損なわれると判断された場合、又はカントリーリスクの顕在化による金利高騰や市場縮小等により適用される割引率や長期成長率が大きく変動した場合等は、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当社グループは、AGP及び中長期経営方針に基づいた価値創造経営により、事業の持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指しており、『ビールを中心とした既存事業の成長と新規領域の拡大』、や『持続的成長を実現するためのコア戦略の推進』とともに、『長期戦略を支える経営基盤の強化』の一環としてグループガバナンスの更なる実効性向上に向けた取り組みを実施することで、グループ戦略の実行と期待成果をより確実なものとします。

 

(5)気候変動に関わるリスク

 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)においてパリ協定が採択、各国で批准されたのを機に、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減を目的とした取組みが世界的に進められています。

 当社グループは、将来的な気候変動が、その業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性がある物理リスクとして、以下の通り認識しています。海外の生産拠点における干ばつが深刻化し、水需給が逼迫、水価格の高騰による操業コストが上昇する可能性があります。気温上昇(生育環境や労働環境の変化)・天候・自然災害・CO2濃度等が需給バランスや品質に影響し、主要な原材料価格が変動する可能性があります。更に、必要な水資源が確保できない場合、操業停止による機会損失と工場移転費用が発生する可能性があります。異常気象の激甚化により、深刻な風水害及び土砂災害が発生することで生産ラインや物流が停止し、設備被害や機会損失、製品廃棄による損失が発生する可能性があります。

 また、将来的な気候変動を見据えた脱炭素社会への移行リスクを以下の通り認識しています。炭素税が導入され、特にPETボトル等の製品原材料への価格転嫁や生産拠点の操業コストが上昇する可能性があります。水ストレスの高い地域の生産拠点において取水制限を受けて操業が停止、機会損失が発生する可能性があります。エシカル志向の高まりにより、環境配慮が不十分な製品があった場合、その需要が低下し、当社グループの売上に影響を与える可能性があります。

 当社グループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、2050年のCO2排出量ゼロを目指す中長期目標「アサヒカーボンゼロ」の達成に向けて取組みを加速させるために、2030年のScope1,2の目標値を従来の50%削減(2019年比)から70%削減(2019年比)に上方修正し、更なる省エネルギーと再生可能エネルギーの活用に取り組んでいきます。2020年12月に同目標値を30%削減(2015年比)から50%削減(2019年比)に上方修正したことに続き、二度目の上方修正となります。Scope3においては、2030年までに2019年比30%削減を目指して取り組んでまいります。また、グループ全体で水使用量削減に向けた取組みを進めて、水リスクに対応していきます。

 将来的な気候変動リスクに関連する経営のレジリエンスと持続性を高めるために、2019年5月、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言に賛同しました。2019年にビール事業、2020年にはビールを含む全酒類事業及び飲料事業に対象を拡大してシナリオ分析を実施し、統合報告書やホームページ等において情報開示を行いました。2021年は、更に食品事業を含む主要事業へ分析の対象を拡大し、より包括的に気候変動が当社グループ事業に及ぼすリスクと機会の分析と対応の検討を行い、5月発行の統合報告書、Webなどで開示する予定です。2022年は、TCFD提言に基づく分析を更に深化させ、取組みを強化してまいります。

※ Scope1は、自社(工場・オフィス・車など)での燃料の使用によるCO2の直接排出、Scope2は、自社が購入した電気・熱・蒸気の使用によるCO2の間接排出、Scope3は、自社のバリューチェーンからのCO2の排出を指します。

 

(6)主要原材料の調達リスク

 当社グループが国内外で事業を展開する酒類・飲料・食品の製造に関して、市況の悪化による原材料価格の高騰、サプライヤーの倒産や買収、競合による買い占め等により原材料が調達不能となる可能性があります。また、大規模な自然災害や新型コロナウイルス感染症の拡大等により、サプライヤーでの原材料の製造制限や物流遅延等により、原材料の調達が困難・遅延となる可能性があります。また、環境配慮対応への社会からの要求の高まりによるコスト影響も増加傾向にあります。これにより、原料高騰による製造コストの上昇、必要量の原材料が調達できず生産数量が減少、原材料供給の停止や遅延により製品の製造が困難等の事象が発生し、グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、市況と連動する原材料については、固定価格や複数年契約に加え、金融商品を活用し相場状況に応じて安定価格で調達することにより価格高騰リスクを回避しています。また、複数購買化による競争環境構築での価格高騰の抑制及び調達リスクの分散、代替原料の検討による調達リスクの回避及びコスト抑制に取り組んでいます。また、原材料の確保については、安全在庫確保の観点で、必要性に応じて数ヶ月分の在庫を保持することによる原材料の調達困難時での対応時間の確保、在庫保管場所の複数拠点への振り分けにより、地理的な供給リスクの分散にも取り組んでいます。

 

(7)技術革新による新たなビジネスモデルの出現

 当社グループが国内外で事業を展開する、酒類・飲料・食品業界は、その製造販売に関して、技術革新による競争環境の変化が比較的少ない安定した業界でしたが、最近では、低アルコール飲料、ノンアルコールビールテイスト飲料、成人向け清涼飲料などのビール隣接カテゴリー(BAC:Beer Adjacent Categories)による新たな飲用シーンの提案ができるようになり、最新デジタル技術を活用して“変化するWell-Being”に応えることで新たな価値の提供、AI活用によるサプライチェーンの効率化、あるいはアルコール代替品等、技術革新による新たなビジネスモデルの可能性も示されております。更に、2020年以降世界中へ拡大した新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークの急激な普及や、EC等のオンラインチャネル利用の加速等、それまで将来的に発生すると想定されていた変化が前倒しで出現しています。

 こうした環境変化や新たなビジネスモデルの出現により、当社グループ事業がコスト構造や顧客体験で劣後し、業界での主導権喪失や競争力の低下につながり、売上収益、事業利益の低下等、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。その一方で、当社グループがこのようなイノベーションを先導することによって、市場優位性獲得や、新規市場創出につなげることが期待できます。

 当社グループは、このような状況に対して、単なるリスク対応に留まることなく技術革新を先取りすることを目指して、中長期経営方針において「DX=BXと捉え、3つの領域(プロセス、組織、ビジネスモデル)でのイノベーションを推進」及び「R&D(研究開発)機能の強化による既存商品価値の向上・新たな商材や市場の創造」を掲げ、領域を特定した戦略的DX及びR&D投資を推進していきます。DX領域においては、デジタルネイティブ組織を整備するとともに、データプラットフォームの構築やデータマネジメントの高度化、個々人のWell-being欲求への対応や社会的責任に応える情報開示やサービス提供に対して投資を推進します。また、R&Dにおいては、変化する価値観に対応した新たな価値創造、消費者の身体と心の健康の実現、サステナビリティ実現に向けた環境・気候変動リスクの軽減、及び新規事業に繋がる非凡なシーズの開発を重点領域と位置づけ、投資を推進します。

※ DX=BX:デジタル・トランスフォーメーション = ビジネス・トランスフォーメーション

 

(8)情報セキュリティ

 当社グループは、高い市場競争力を確保するため、事業活動の多くをITシステムに依存しており、停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、あるいはサイバー攻撃によって、事業活動の混乱、機密情報の喪失、個人情報の漏洩、詐欺被害、EU一般データ保護規則(GDPR)等の各国法令違反が発生する可能性があります。

 このようなリスクが顕在化した場合、事業の中断、損害賠償請求やセキュリティ対策費用の増加等によるキャッシュアウト、GDPR違反による制裁金等により、当社グループの業績及び財政状態、並びに企業ブランド価値に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、2016年8月にASAHI-CSIRTを設置し、ITシステム上でサイバーセキュリティインシデントが起きていないかどうか監視すると共に、万が一インシデントが発生した場合には、その適切な対応を行うことは勿論のこと、原因解析や影響範囲の調査を行い、再発防止並びに防御の最適化を図る体制を敷いています。そのうえで、ソフトウェアや機器でのセキュリティ対策、及び社員教育や訓練を実施し、本件リスクが顕在化しないように取り組んでいます。新型コロナウイルス感染症拡大によってテレワークが普及・定着しつつありますが、このような環境においてもASAHI-CSIRTが有効に機能し、インシデント防止に役立っています。また、海外においても、地域毎にセキュリティ対策を維持、及び向上させるための取組みを実施し、定期的にその取組みをモニタリングしています。

 

(9)アルコール摂取に対する社会の価値観

 アルコールの摂取は、人々の生活を豊かにしてきた一方で、その不適切な摂取は、健康面あるいは社会的悪影響が指摘されています。WHOにおいては、世界的な規模での酒類販売に関する規制が検討されており、当社グループの予想を上回る規制強化が行われる可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界的に健康志向が更に高まっていることもあり、アルコールに対する消費者需要が縮小する可能性もあります。これらの要因により、規制に対応するための費用支出による利益圧迫や、酒類の消費が減少することによる売上収益の縮小、さらにはアルコールを製造・販売する当社グループのレピュテーション及びブランド価値を毀損する等し、その結果、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、アルコール飲料を製造・販売する企業として、企業の社会的責任を果たすため、WHOの目指すアルコールの有害な使用の低減による健康被害の予防について、酒類事業を行う各地の関連法令遵守のほか、IARDをはじめとする業界団体や業界と協力、連携して、販売や広告に関する自主基準を設け、責任あるマーケティングに取り組んでいます。2020年1月28日には、IARDに加盟する企業のCEOによる、未成年飲酒防止に向けた取組みを推進する共同声明を公表しました。その後もIARDとして、2021年1月にeコマースのプラットフォームなどと共にeコマースにおける世界基準の策定と実践、9月にはインフルエンサーマーケティングの世界基準を新たに策定し広告代理店やPR代理店などと共に取り組むことを宣言するなど、適正飲酒の啓発活動を積極的に推進し、不適切な飲酒の撲滅に取り組んでいます。また、当社グループとして責任ある飲酒の取り組み促進のために、グループスローガン「Responsible Drinking Ambassador」を打ち出し、現在取り組んでいる不適切な飲酒撲滅活動を強化すると同時に、社員に対する責任ある飲酒の研修の取り組みを拡大する等活動を加速させています。更に、新しい飲用機会の創出に取り組みとして、2025年迄にアサヒグループにおけるノンアルコール・低アルコールの販売構成比を15%にする目標を掲げ、アルコール起因の課題解決にも取り組んでいます。2020年12月、アサヒビールは「スマートドリンキング宣言」を発表し、商品毎の純アルコール量の積極的な開示を開始。多様な飲み方に対応すべく、様々な度数の低アルコール飲料による飲み方提案や、ノンアルコール飲料の強化などを進めています。

※IARD=International Alliance for Responsible Drinking(責任ある飲酒国際連盟)の略称。不適切な飲酒の撲滅と、責任ある飲酒を促進するという共通の目的のもとに、世界のビール、ワイン、スピリッツの製造業者である大手企業12社の加盟企業で構成される非営利団体。

 

(10)大規模自然災害

 大規模な地震、津波、台風、洪水等の自然災害に関連するリスクは年々高まっており、近年国内外問わず、世界各地で大規模災害が現実のものとなっています。今後も、中長期的に継続するとともに規模の拡大が懸念されております。このような大規模な自然災害の発生により、従業員の被害、工場損壊、設備故障及びユーティリティー(電気、ガス、水)遮断により製造が停止、倉庫損壊及び保管製品破損により出荷が停止、並びに物流機能停止により原材料資材の調達及び製品の出荷が不能になる可能性があります。更に、事務所施設の損壊、交通機関マヒによる従業員の通勤不能、及びシステム障害に伴う重要データの消失等もあわせて、事業活動が停止する可能性があります。事業活動の復旧に長期を要した場合、施設等の改修に多額の費用が発生した場合、消費マインドが落ち込んだ場合等、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社グループは、大規模災害が発生した際に、いち早く従業員及びその家族の安否を確認する仕組みを導入するとともに、大規模地震を含め災害リスクが高い日本においては、早急に被災地の被害状況を把握するため、衛星携帯電話の配備をはじめとした緊急時通信体制の強化を進めています。そのうえで、定期的な訓練を実施することで、有事の対応力を強化するとともに、災害対応意識の啓発に努めています。

 また、生産工場では、建物倒壊対策のため、全建物対象に耐震診断を実施しました。対策が必要な物件については、順次計画的に補強工事を実施しています。ボイラー、冷凍機等の大型エネルギー供給設備には大地震(震度5弱相当)を検知すると、安全に自動停止する機能が付属し、大型ビール工場では電力供給が遮断した場合でも、自家発電によりタンクを冷却させることで、半製品の大量腐敗を防止する等2次災害のリスク低減対策を進めています。

 また、主要グループ会社において、過去の防災対策の実績及び自然災害の経験を踏まえた「事業継続計画(BCP)」の策定を行い、主要商品の供給を継続するための需給調整機能を早急に復旧する体制を構築するとともに、受発注処理等に関する重要なデータを処理するサーバーセンターのバックアップセンターを設置する等、大規模な自然災害が起こった場合であっても被災地以外での事業活動に支障が無いように備えています。

 なお、大規模な災害等が発生した際には、代表取締役社長を本部長とした「緊急事態対策本部」を設置して対応する危機管理体制を構築しており、平常時のリスクマネジメントにおいて、顕在化した際に即時対応を要するリスクを抽出し、その影響度と必要な対応を想定することで、危機発生時にクライシスマネジメントへ寸断なく移行できるよう準備しています。あわせて、国内を含めた4つのRegional Headquarters(RHQ)体制への移行に伴い、危機の類型に応じてRHQとHDの役割を改めて明確にするとともに、危機発生時の情報ラインの整流化を図るなど、グローバルなクライシスマネジメント体制の強化も進めています。

 これらの事前対策により災害による被害の最小化、当社グループの業績及び財政状態に対する影響の低減に努めています。

 

 

(11)多様で有能な人材の確保

 中長期経営方針に掲げる目標達成のためには、多様な価値観や専門性を持った社員の力が必要不可欠です。そのため、当社グループは、社員の多様性を尊重するとともに、一人ひとりが成長できる人材育成プログラムへの投資を拡大し、必要に応じて、経営幹部、一般社員問わず、外部からの登用も進めています。

 しかしながら、グローバルな事業地域の拡大に伴う人材需要の増高及び必要スキルの変更や高度化により、多様で有能な経営幹部並びに一般社員を、必要数確保、育成及び定着させることができず、中長期経営方針の戦略を実行し目標を達成する能力を損ねる可能性があります。

 当社グループは、中長期経営方針に「目指す事業ポートフォリオの構築やコア戦略を遂行するための人的資本の高度化」を掲げ、戦略を支える経営基盤を強化するために、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを推進し、エンゲージメントの高い企業風土を醸成しています。エンゲージメントサーベイを実施することで、目指す企業風土の実現度合いを定期的に確認し、結果に基づき、地域を超えた人材育成プログラムの実施や国籍や性別等にとらわれない人材の登用・配置を推進しています。また、計画的に経営者人材を育成するため、将来の経営幹部候補を育成するグローバルリーダーシッププログラムを継続的に実施することで、人材パイプラインの拡充・強化を進めています。また、グループの経営幹部の後継者計画を討議するグローバルタレントレビューを実施することで、各地域の人材の可視化やグローバルでの適材適所配置を実施し、多様で有能な人材のグループ内での活用を推進しています。加えて、今後必要となる新たなケイパビリティを獲得するため、社外からの人材登用も積極的に行っています。

 

(12)国内物流需給ギャップの拡大

 当社グループが事業展開する、酒類・飲料・食品の製造販売業界においては、物流は重要、かつ費用の構成比も高い機能です。国内の物流環境は、少子高齢化による労働人口減少に加え、電子商取引の拡大で、ドライバー需給ギャップの拡大が予想されます。2021年も新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、企業間取引の荷量の減少と、同時に、外出自粛、人の移動制限による巣ごもり需要による電子商取引の増加がさらに加速し、物流環境全体のバランスに大きな変化が起きています。物流業界が従来から取り組む長時間労働の削減、生産性の向上等に加え、先の読めない時代の環境変化への柔軟な対応が求められており、課題の複雑性が増しています。

 当社グループ全事業の、売上収益ベースで54.5%、事業利益ベースで35.5%(2021年12月期決算)を占める国内事業において、製品の運搬に必要な量の物流機能を適切な費用で確保することが安定的に事業展開する上で不可欠ですが、ドライバー不足による製品供給の滞りや運搬費の増嵩等が、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、地産地消ロジスティクスの推進や効率的な物流体制の実現による輸送量の削減及び長距離トラック輸配送の削減、並びに物流機器・システムの導入による物流業務省人化と物流負荷低減に取り組んでいます。この一環として、2021年にはアサヒビール名古屋工場にアサヒ飲料製品製造ライン及び自動倉庫の新設稼働、長距離配送を要する消費地に新たな物流拠点の設置稼働等、輸配送網の整備を進めています。また、物流業務支援ツールに最新技術を積極的に活用し、業務効率化・負荷軽減を推進しています。

 従来から取り組んでいるモーダルシフト(鉄道・船舶輸送)や、効率化・省人化を目指した新たな幹線輸送スキームの確立、軽重貨物混載による積載率向上等、同業他社や異業種、物流事業者との連携による高効率輸送の実現や物流効率化施策による労働環境改善も推進しています。これらの取組みは、日本社会全体の課題とも密接に関連しており、当社グループは、国土交通省・経済産業省・農林水産省が推進する「ホワイト物流」推進運動の趣旨に賛同する旨を表明しており、実証施策に積極的に参画しています。

 

(13)プラスチック使用

 近年、廃棄プラスチックの規制強化の動きが加速しています。同時に、プラスチックを大量に使用する製品に対する社会の目は厳しくなってきており、容器包装をプラスチック素材に依存している当社グループの飲料・食品製品の需要が著しく低下し、売上に影響を与えるだけでなく、対応不十分とのことで、当社グループに対するレピュテーションが低下する可能性があります。また、リサイクル費用の負担が増加することや、生分解性素材等の代替素材を使用した場合の材料費が増加すること等で、製造原価が増嵩する可能性があります。

 当社グループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、「持続可能な資源利用100%を目指す(農産物原料、容器包装、水)」ことを目標に掲げ、容器包装の中でも喫緊の課題である海洋汚染や生態系への影響が世界的に問題視されている海洋プラスチック問題への対応については、2020年、グループの戦略の方向性として、「3R+Innovation」を定め、グローバル統一の新たな目標として、2030年までのPETボトルを100%環境配慮素材に切り替えることを設定しました。それに基づき、グループ各社において、様々な取組みを進めています。

 

 国内では、アサヒ飲料株式会社が、リサイクルPET・環境配慮素材の使用、リデュースの推進、環境への配慮を前提とした新容器開発等へ取り組む目標「容器包装2030」の達成に向けて、更なる「ラベルレスボトル」製品の拡大やリサイクル素材100%PETボトルのために「ボトルtoボトル」の再生事業者である日本環境設計株式会社への融資を行い、ケミカルリサイクルPET樹脂の調達を進めています。また、業界の枠を超えた連携体制による、使用済のプラスチックを再資源化する会社に共同出資を行い、中長期的なPET調達に向けた取組みも強化しています。

 海外では、オーストラリアの子会社Asahi Beverages Pty Ltdが、2030年までに、特定のブランドでリサイクルPET素材100%を達成する目標の達成に向けて、業界の枠を超えたリサイクル大手企業、容器メーカーと合弁会社を設立し、リサイクルPET樹脂の更なる生産と供給のための工場建設を進めています。

 当社グループ全体として、プラスチック環境配慮素材の更なる活用を推進してまいります。

 

(14)法規制とソフトローのコンプライアンス

 当社グループは事業の遂行にあたって、食品衛生法、製造物責任法、労働関連規制、贈収賄規制、競争法、GDPR等の個人情報保護規則、環境関連法規等の様々な法規制の適用を受けています。これらの法令が変更される、又は予期し得ない法律、規制等が新たに導入される等の理由による法令違反や社会規範に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受け、規制遵守対応のためのコストが増加し、又はお客様をはじめとしたステークホルダーの信頼を失うことにより、レピュテーションやブランド価値が毀損し、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社グループは、「アサヒグループ行動規範」を制定し、事業活動を行う全ての国・地域において、適用される法令・ルールを遵守することを含め、「Asahi Group Philosophy」で示したステークホルダーに対する5つのPrinciplesに基づき、企業倫理・コンプライアンスを実践するための10条の行動規範を規定し、グループ全体での実践を推進しています。そして、代表取締役社長が委員長を務め、業務執行取締役及び委員長が任命した執行役員で構成される「コンプライアンス委員会」を設置し、グループ全体の企業倫理・コンプライアンスを推進・監督するとともに、「アサヒグループ行動規範」に関する社員の研修等を通じてコンプライアンスのレベルを高め、法令違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するよう努めています。

(人権について)

 グローバルな事業地域が大きく拡大した今、当社グループにとって、人権保護並びに関連法規制の遵守は特に重要と認識しています。そこで、『ESGへの取組み深化』における重点課題の一つとして「人権の尊重」を掲げ、第一ステップとして、2019年、人権に関する最上位の方針として、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「アサヒグループ人権方針」を制定しました。本方針で掲げた人権デューデリジェンスについては、サプライヤー、自社従業員、救済へのアクセスの構築を優先度が高い取組みとして進めています。サプライヤーについては、2020年は国内外事業会社の原材料全一次サプライヤーに対して、セルフアセスメント質問表(SAQ)への回答を依頼し、回答いただいた全サプライヤーに対し、調達担当者からのコメントを付けて結果をフィードバックしました。2021年はこの結果も踏まえて、国内12社のサプライヤーをインタビュー調査の対象とし、人権を尊重した労働環境を整えていくための対話等を行い、改善を進めました。2022年もサプライヤーとの対話を継続していきます。また2020年にはサプライヤーエシカル情報共有プラットフォームを提供しているNPO会員組織Sedex(Supplier Ethical Data Exchange)に加入し、サプライヤーの人権や労働の管理状況を確認しながら進めています。また、2017年に実施した現代奴隷リスク分析の結果に基づき、2021年はエチオピアとタンザニアのコーヒー豆に関わるサプライヤー等を対象とした現地調査やデスク・リサーチを行いました。2022年はこの調査結果を踏まえて人権リスクを特定・評価し、負の影響の是正や発生予防に取組む予定です。自社従業員については、従業員一人一人が人権方針を遵守するための人権教育として、2021年は国内外全役員・社員に対し、CEOによる人権メッセージの動画配信や、担当役員による人権研修動画の配信等を行いました。また、2020年に外国人技能実習生が在籍するアサヒグループ食品岡山工場を対象に、NGOとともに実習生の労働実態調査及び実習生への母国語によるヒアリングを実施し、2021年には指摘事項の改善を行いました。また救済へのアクセス構築については、内部通報制度の認知拡大や、社外からの問い合わせに対して適切に救済を行うために必要な体制整備の検討を進めています。

 

(15)事業展開国のカントリーリスク

 現在、当社グループは20を超える国に拠点を構え、世界経済全体の動向に加え、各国固有の政治、経済、社会、法規制、自然等の要素が、各国事業に影響を与える可能性があります。具体的なリスクとしては、政情不安、経済危機、関税報復措置、難民排斥運動、人種差別、規制強化、税制改正、自然災害、新興感染症等が想定されます。

 これらのリスクが顕在化した場合には、関税引き上げ等、在外資本企業に対する不利益条件によるコスト競争力の低下、利益の圧縮、政治的・軍事的・社会的圧力による営業困難あるいは営業停止、社員の安全不安、経営計画未達、中長期的損失計上、さらには事業撤退により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当社グループは、グループ各社での情報収集や外部コンサルタント起用等を通じて、各事業展開国/地域の該当リスクの調査、情報収集、評価をもとに、これらリスクを早期に認識し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処をするよう取り組むことで、その予防・回避に努めるとともに、重大インシデント発生に備えた事業継続計画の策定等を行っていきます。また、当社グループは、今後の更なるグローバル化により収益源の分散化を進め、本件リスク顕在化時の、グループ全体への影響の低減を図ってまいります。

 

(16)品質について

 当社グループは、最高の品質をお客様にお届けすることをグループ理念に掲げ、いずれのグループ会社も品質を通して、お客様との信頼関係を築くことに不断の努力を続けています。お客様の健康に密接に関連する事業を展開しているため、万一、不測の事態により、お客様の健康を脅かす可能性が生じたときは、お客様の安全を最優先に考え、迅速に対応します。

 しかしながら、万一、品質に問題が生じて、商品の安全性に疑義が持たれた場合には、商品の回収や製造の中止を余儀なくされ、その対応に費用や時間を要するだけでなく、お客様からの信頼を失う可能性があります。このような事象が発生した場合、中長期経営方針に掲げた「既存地域でのプレミアム化とグローバルブランドによる成長、展開エリアの拡大」の未達を含む、当社グループの業績及び財政状態、並びにレピュテーション及びブランド価値に対して影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、品質確保及び向上の取組みとして、商品設計から販売に至るまでのプロセス毎に、品質に影響を与える業務や注意すべき事項を抽出し、その点検と是正を実施しています。また、品質保証技術の高度化のため、AI等先端技術の導入にも取り組んでいます。特に、生産工程においては、重要な管理項目を整理し、必須要求事項としてグローバルへ展開し、工場毎の定期自己点検や生産工程の監査へ活用しています。これらの取組みについては、今後も深化させていきます。

 また、当社グループは、食の安全に関わる最新の分析技術を開発しています。その対象は、微生物・農薬・カビ毒・重金属・樹脂・放射性物質等多岐にわたっており、海外も含めたグループ全体の高度な品質保証体制を技術面から支えています。

 さらに、各グループ会社の商品特性や製造工場の環境に応じて、国際的な品質・食品安全マネジメントシステムの考え方を取り入れ、必要に応じて外部認証取得しています。

 

(17)その他のリスク

財務リスク

為替変動     :当社グループはグローバルに事業を展開しているため為替リスクを負っています。このうち、海外子会社及び関連会社における資産や負債については円高が進行すると在外営業活動体の換算差額を通じて自己資本が減少するリスクがあります。このため、必要に応じて為替リスクのヘッジをする等の施策を実行していますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。また、海外連結子会社等の損益の連結純利益に占める割合が比較的高く、これらの収益の多くが外貨建てであり、当社の報告通貨が円であることから、外国通貨に対して円高が進むと、連結純利益にマイナスのインパクトを与えます。一方、本国で行う輸出入、及び外国間等の貿易取引から発生する、外貨建債権及び債務等は為替レートの変動によるリスクを有しておりますが、このリスクは為替予約等と相殺されるため影響は限定されます。

金利変動     :当社グループは銀行預金や国債等の金融資産及び銀行借入金や社債、リース負債等の負債を保有しております。これらの資産及び負債に係る金利の変動は受取利息及び支払利息の増減、あるいは金融資産及び金融負債の価値に影響を与え、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、金利リスクを回避する目的で、金利を実質的に固定化する金利スワップを利用しております。またヘッジ会計の要件を満たす取引については、ヘッジ会計を適用しております。

格付低下     :当社グループに対する外部格付機関による格付けが引き下げとなり、当社グループの資本・資金調達の取引条件の悪化、もしくは取引そのものが制限される場合には、当社グループの業務運営や業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

保有資産の価格変動:当社グループが保有する土地や有価証券等の資産価値の下落や事業環境の変化等があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

税務リスク

 当社グループはグローバルに事業を展開しており、本国をはじめとする、各国の税制による適用を受けており、予期し得ない改正や税務当局からの更正処分を受けた場合、大幅なコストの増加、競争環境の悪化、事業活動の制限等が懸念され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

訴訟リスク

 当社グループは、事業を遂行していくうえで、訴訟を提起される可能性があります。万一当社グループが訴訟を提起された場合、また訴訟の結果によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

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