研究開発活動

 

5 【研究開発活動】

当社グループは長年の植物油脂に関わる研究開発を通じ、お客様の豊かな食生活を支える付加価値を創出してまいりました。現在は、「日清オイリオグループビジョン2030」のもと、「脂質栄養による健康寿命の延伸」、「「おいしさ」と「美」をもたらす油脂によるQOL向上」、「植物資源による循環型社会への貢献・環境負荷の低減」など、社会課題の解決も視野に、研究開発を推進しております。

お客様のニーズや市場トレンドにタイムリーに応える「商品開発」と、中長期的な視点で継続的に取り組む「技術開発」を両輪に、研究開発を進めております。また、グループ会社の研究開発部門とも連携を図ることで、油脂単体から油脂加工食品のアプリケーション開発までの多岐にわたる領域で、お客様のニーズに応える研究開発を行っております。

2021年4月には、グループ全体の技術開発戦略の推進、具体的な技術開発機能の強化を目的に、新たに技術本部を設置し、その傘下に中央研究所、生産技術開発部、知的財産部を位置づける機構改革を実施しました(下図参照)。この改革により、グループ内における研究開発の連携および、お客様との共創をさらに推し進め、市場を変革するさらなる価値の創造に挑戦してまいります。

                       開発体制図


 

中央研究所は、グループ研究開発の中核としての役割を担い、グループ全体の事業領域を対象とした研究開発を行っております。商品開発では食用油と調味料、加工油脂、ウェルネス食品の開発を行っております。また、技術開発では油脂の製造・加工、分析、調味評価、調理評価、栄養評価に関わる技術開発に取り組んでおります。これらの研究活動の推進にあたっては、大学や公的機関との共同研究および人材派遣、取引先との共同開発などを行い、成果の早期獲得と新たな研究開発領域の創出に努めています。また、2021年度からは、容器・包装を研究開発の対象と位置づけ、「環境」と「使いやすさ」両面から、新たな容器・包装資材の開発を開始いたしました。

また、海外での研究開発拠点として、パーム油の主要産地であるマレーシアに、Nisshin Global Research Center Sdn. Bhd.を置き、当社グループのIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.と連携のもと、より高品質、高機能かつ持続可能なパーム油の研究開発にも取り組んでおります。

生産技術開発部では、油脂の製造・加工に関わる生産技術に関し、環境、品質、生産性の観点から開発に取り組むとともに、新たな付加価値製品の製造プロセス開発などを通じ、市場へのスムーズな価値提供を実現してまいります。

ユーザーサポートセンターでは、マーケット調査や周辺技術研究、ユーザーニーズに対応した商品開発やアプリケーション開発を推進し、販売と一体となった総合的な技術営業の展開、ソリューション提案を行っております。ユーザーとの接点の中で、ユーザーが抱える課題の解決や新たな価値の創造に関与することで、売上拡大や事業拡大を実現してまいります。

ファインケミカル事業部テクニカルセンターでは、化粧品領域、化学品領域、および食品領域におけるファインケミカル素材の開発ならびに、その機能評価に基づく価値開発やアプリケーション化を進めるとともに、生産部門と連携して製品の品質優位性を高めるための活動を行っております。また、事業のグローバル展開を支える基盤を形作るために、当社グループのIndustrial Quimica Lasem, S.A.U.とは、エステル油剤開発、品質管理、生産技術などにおいて多面的な技術連携関係を構築しております。中国では当社グループの日清奥利友(上海)国際貿易有限公司とファインケミカル事業部テクニカルサポート課が連携して当社製品の技術的、品質的な特徴を顧客にアピールする活動を行い、中国における市場開拓を着実に進めております。

なお、当連結会計年度における研究開発費の合計は2,702百万円(前連結会計年度は2,495百万円)であり、セグメント別の研究開発費については以下のとおりです。

 

油脂事業

加工食品・素材事業

ファンケミカル事業

合計

2021年度(百万円)

1,704

546

452

2,702

 

 

 

〔油脂事業〕

1.油脂・油糧 

①概要

油脂の健康価値が再評価をされるなか、新たなマーケットを創り、市場全体の拡大につながる商品群の開発を行っております。安全・安心・おいしさ・健康からの価値創造はもとより、環境負荷低減やフードロス削減といった課題にも向き合いながら、植物資源が有するポテンシャルを最大限に引き出す開発を進めてまいります。

②主な成果、新商品

ホームユース領域では、食用油の新たな使い方としてのかけるオイル市場の拡大と、これに続く市場の創造に向けた新商品開発に取り組んでおります。食用油の新たな美味しさを楽しんでいただくために、調味料感覚で使用できる「味つけオイル」という新カテゴリーを創出し、その品揃えを拡充いたしました。こうしたなかで、BOSCOエキストラバージンオリーブオイルとオイルに溶け込む素材の香りが織りなす風味が特長の「BOSCO Seasoning Oil」3品、「日清やみつきオイル」の追加アイテム「アジアンパクチー」を発売いたしました。また、機能性表示食品として、ごま由来の「セサミン、セサモリンがLDLコレステロールを下げる」ということが特長の「日清ヘルシーごま香油セサミンプラス」を発売いたしました。さらに、持続可能な社会を実現・発展させていく目的のもと、地球環境に配慮した商品開発の一環として、600gペットボトル製品および400gペットボトル製品においても、ボトル、ラベル、キャップフィルムの一部に再生ペット樹脂を導入いたしました。

業務用食用油では、酸価の上昇や着色を抑制することで長く使用でき、揚げもののサクミを維持することが特長の「日清スーパーデリカエースキャノーラ&パーム」のリニューアルを行いました。現行のCL製法に新たにUL製法を組み合わせることで、酸価の上昇をさらに抑制させました。(CL製法:特許第5274592号、UL製法:特許出願中)また、外食店へのソリューション提案として、機能性油脂や風味油でプロの料理人をサポートする、プロサポートシリーズ「日清素材のオイル」の新たな風味アイテム「和風だし風味」を上市いたしました。かつお節やさば節の香り、コクなどの風味成分を特定し、それらを増強させ、だし風味豊かなオイルを商品化いたしました。

生活科学研究では、食生活を中心とした社会環境や生活者の価値観の変化について、25年以上にわたり調査研究を続け、情報発信をしてまいりました。研究結果は、食品メーカーや流通、行政などの皆様にも幅広くご利用いただいております。

本年度は、世界的に進む地球温暖化への取り組みや、コロナ禍で生活者の食をとりまく環境が変化している状況を踏まえて、「環境に関する意識・実態調査<第1回>」および「キッチンにおける『油』の存在調査<第15回>」をそれぞれ実施し、調査結果をニュースリリースとして発信いたしました。また、活動で得られた調査結果から、将来の生活者の消費動向を予測する取り組みとして、「2022年 生活者の消費マインド予測」を行い、レポートを発信いたしました。

2.加工油脂 

①概要

風味や食感、口どけなど、製菓・製パン商品のおいしさにおいて油脂は大切な役割を担っています。エステル交換や分別技術などの油脂加工技術をベースに、マーガリン・ショートニング、チョコレート用油脂、クリーム用油脂、製菓・製パン素材などの製品を開発しています。また、これら製品の主原料油であるパーム油を生産する当社グループのIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.および、業務用チョコレートを販売する当社グループの大東カカオ株式会社、両社の研究開発部門とも連携することで、油脂製造からアプリケーション開発にわたる領域のニーズに応える研究開発を行っております。

②主な成果、新商品

パイやデニッシュのサクサクとした食感の維持やボリュームアップ機能を有するシートマーガリンが、大手製パンメーカーやコンビニエンスストアのチルド菓子向けとして採用されました。チルド環境下でも、それらの機能が長く維持されることが評価されました。また、保形性の良さと口溶けの良さを兼ね備えた、乳風味豊かなバタークリーム用マーガリンを開発し、同じく採用されました。クリームの形状を保つことを目的に、適度な硬さを有しつつ、口の中で素早く溶ける配合設計を行い、チルド菓子に適した物性を持つクリーム用油脂を実現いたしました。また、クッキーのソフト感を保ちつつ、生地中の油脂移行を抑制した包餡クッキー用ショートニングを開発し、大手製菓メーカーに採用されました。

 

 

〔加工食品・素材事業〕

油脂を素材と捉え、油脂が持つ「おいしさ」や「健康」の機能を様々な加工食品を通じてお客様にお届けする、商品開発やアプリケーション開発を行っております。

1.MCT

当社が長年にわたり研究開発を行ってきたMCTは、2021年5月機能性表示食品「日清MCTオイル」としてリニューアルいたしました。また、MCTの健康機能の研究により、脂肪燃焼に関する新たな知見が国際学術誌「Nutrients」に2報掲載されました。オイルやドレッシングなどの自社商品に加え、エビデンス×ストーリー×プロモーションによる機能性素材マーケティングにより、ユーザーとの市場共創を進めてまいります。

2.調味料

MCTオイルを、日々の生活の中でより手軽においしく召し上がっていただくために、「日清 MCTドレッシングソース」2品(和風オニオン、ごま&ナッツ)を機能性表示食品として発売いたしました。また、シニア層の方から高い支持を得ているアマニ油の市場拡大へ向けて、「日清アマニ油ドレッシング」に、新たな風味のラインアップとして「旨塩たまねぎ」を追加いたしました。

3.機能素材・食品

中高年期のメタボリックシンドロームと並び、高齢期の健康課題として近年注目が集まるフレイルに対し、食が細くなった方でもエネルギーとたん白質を飽きずに毎日補える商品として、「エネプリンプロテインプラス」シリーズを前年度に上市いたしました。今年度は新たにあずき味、ポテトサラダ味の2品を加え、計4品のラインアップといたしました。同品は1個当たり160kcalの高エネルギーとたん白質3.5gを含みながら嚥下に適した物性に設計いたしました。さらに賞味期限を1.5年に延長し、「ローリングストック(災害時等の備蓄品)」にも最適な商品になっております。

エネプリンプロテインプラスシリーズは日本食糧新聞社第35回(令和3年度) 新技術・食品開発賞を受賞いたしました。

さらに、飲料や食べ物の飲み込みがむずかしくなった高齢の方に向けて、とろみ付けが簡単にできる「トロミアップパーフェクト」および「トロミアップやさしいとろみ」が、消費者庁の「とろみ調整用食品」に許可され、特別用途食品としてリニューアル発売いたしました。

当社の独自技術により、100%油脂でできている結晶性油脂を開発いたしました。このうち、MCTを配合した低融点タイプの「エネクイック」は、くちどけが良く、ひんやりした食感が得られるという機能により、液状食品のペースト化や菓子への冷涼感の付与など様々な用途への応用提案を進めております。さらに、少量でもエネルギーアップができるというメリットにより、高齢者の低栄養改善に向け、介護施設や病院での用途拡大にも取り組んでおります。高融点タイプの「コナファット」も、食感の改善、粘度の調整、分散性の向上といった機能を活かし、食品のみならず、幅広い分野での用途開発、市場開拓を進めております。

4.チョコレート

大東カカオ株式会社と連携を取りながら、カカオを中心に、素材にこだわり、配合・物性・製造技術を磨き、他社がまねのできない多様な技術やユーザーの要求にこたえるための高付加価値技術を構築しております。

大手コンビニエンスストアに対する取り組みを継続し、ガトーショコラのヒットに続く新たなアイテム採用に向けた提案や、しっとりとしたチョコケーキの秋口採用を目指した提案、産地別の特徴を生かしたチョコレートを提案しております。また、既存の原料以外の様々な原料を検討し、油脂業界の低トランス思考への対応や製品集約のための置き換え検討、特許回避の為の配合検討を実施、海外関連会社が新たに製造した原料の製品への落とし込みや新たな活用手法の検討を実施しております。さらに、カカオの発酵に関する研究や、機能性チョコレートの安定製造や展開を目指し、そのメカニズム検討を継続して実施しております。

5.大豆食品素材

粒状大豆たん白、全脂大豆粉末、粉末状大豆たん白、脱脂大豆粉末があり、社内外の各部門と連携をとりながら、大豆の素材的価値、栄養価値を活かした様々な食品用途へのアプリケーション開発を進めております。これらの製品は、畜肉、水産練り物の食感改良材や高たん白な食品素材として、さらにプラントベースドフードなどの新たな食ニーズの原料としてお客様にご利用いただいております。

市場が伸長している高たん白食品への利用価値を高めるため、高たん白で大豆特有の臭いを抑えた粒状大豆たん白「ニューコミテックスP-501」を商品化いたしました。さらに、高たん白プロテイン飲料向けに、たん白質の含量が80%以上の粉末状大豆たん白「ソルピーDM-1」を開発し、商品化いたしました。

 

〔ファインケミカル事業〕

化粧品領域における開発活動としては、グローバルな視野で化粧品業界に広く展開できる高機能素材や植物由来成分からなる素材の開発に取り組んでおります。

化学品領域における開発活動としては、情報関連分野・潤滑用途の素材を中心に顧客と直結した開発を進めております。

食品領域における開発活動としては、主力であるMCT製品の品質向上を図るとともに、新たな機能性素材の開発に取り組んでおります。

Industrial Quimica Lasem, S.A.U.との間では、技術的な相乗作用を得るために、製品のみならず原材料評価、品質管理、製品開発、および生産技術など多岐にわたる連携関係を構築してきました。同社が製造販売する、FSSC22000などの認証を背景とした高品質なMCT「QUOLIO(クオリオ)」については、国内展開を図るとともに、高品質な化粧品原料の製造が可能となる生産設備の改良を行い、グローバル供給体制確立への歩みを進めております。

日清奥利友(上海)国際貿易有限公司とは、中国における技術サービスの充実を目的として設置したラボ機能の有効活用を図るとともに、さらに発展させる形で、現地企業を対象とした原料セミナーを複数回開催し、当社製品の優れた特徴をアピールする活動を行い、中国における市場開拓を着実に進めております。

セッツ株式会社において、外食厨房や食品加工工場、さらには介護施設などの衛生管理に役立つ製品やソリューションの提供を通じて、お客様の「食の環境をキレイにする」に貢献するべく、衛生管理事業を推進しております。研究開発部門においては衛生管理の鍵となる微生物制御技術、洗浄技術の深化・融合、商品化に向けた製剤化技術の確立、ユーザーを起点とした疫学的アプローチを通して高付加価値商品及び技術開発に取り組んでおります。大学との共同研究も積極的に活用しております。

重要商品の一つであるウイルス対策アルコール製剤に関しては、商品力の強化と商品ラインアップの充実化に注力しております。また、Key基剤であるブドウ種子抽出物によるウイルス不活化技術の一層の深化と応用展開に向け精力的に取組み、着色抑制に加え、ウイルス不活化効果などの基本性能を大幅に向上させ、大学との共同研究により新型コロナウイルスに対する不活化効果も確認できております。コロナ時代の新しい生活様式、顧客意識変化に対応した商品として、新カテゴリー商品コロウィンを2021年10月に発売いたしました。低濃度エタノールに特定の界面活性剤を複合化することで、洗浄力が高く、アクリル板をはじめとする各種プラスチック材質へも安心して使用でき、拭き取り跡を残さない特長を有する新洗浄剤で、新型コロナウイルス不活化効果も検証でき、幅広い展開が期待できる商品になっております。

 

今後とも技術力の一層の充実を図り、新製品・新技術開発、新分野開拓に積極的に取り組んでいく方針であります。

 

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