事業等のリスク

 

2 【事業等のリスク】

当社グループでは、取締役会が設置するリスクマネジメント委員会が全社的なリスクを総括的に管理しており、リスクが顕在化した場合の緊急体制を整備し、危機対応を図っております。リスクマネジメント委員会では、リスクの棚卸を実施したうえで、影響度合と発生可能性をもとにリスクマップを作成するとともに、個々のリスクに対するリスク対策を管理しております。また、リスクが顕在化した際の影響度を軸とした優先順位付けを行ったうえで、重要なリスクとして選定し、主管部門を中心としたPDCAサイクルによるリスクマネジメントを実施しております。また、リスクマネジメント委員会は全社的リスクの評価や対応方針・状況などを取締役会に報告しています。

以下は、リスクマップの中から、リスクマネジメント委員会で選定した当社グループの重要リスクを示しています。


<直近の重要なリスク認識>

ロシアによるウクライナ侵攻により、燃料価格や穀物価格の高騰およびサプライチェーン(供給網)の混乱により、当社グループの重要なリスクである「原材料の調達におけるリスク」が顕在化しています。また世界的な物価上昇にまで波及しており、企業業績の悪化や消費マインドの低迷等、景気を後退させる懸念があり、「原材料価格の高騰」等、複合的リスクへの対応が求められています。

当社グループとしては、ロシアによるウクライナ侵攻による影響が長期にわたり続く可能性があるとの前提のもと、主として「原材料の調達におけるリスク」、「原材料価格の高騰」のリスクへの対応をより一層高めてまいります。

具体的には、将来までの需要を見据えた調達・在庫確保やサプライヤーの複線化等による安定的な原材料の調達と製品の安定供給に努めております。また、購買、生産、物流、販売等のあらゆる面でのコストダウン施策を実施した上で、上昇が続く原材料コストに見合った適正な販売価格の形成に継続して取り組む等、業績および事業活動への影響を最小化すべく、適時・適切な対応を進めてまいります。

 

当社グループの重要リスクの内容と対応については次のとおりです。

(前年度からの主な変更点)

・前年度の「サプライチェーンにおける環境・人権問題」については、人権への取り組みの重要性が増したことから、「気候変動・環境に関するリスク」「人権に関するリスク」として分けています。

・「消費者ニーズの変化への対応」は、これまで「国内外の製品市況の変動」の中で管理していましたが、その重要性を鑑み、独立して記載しております。

・昨今のサイバー攻撃などの状況から、「情報セキュリティ」の影響度合を「中」から「大」に変更しました。

・前年度に「地震・津波、異常気象(風水害等)、大規模な事故」としていたものは、主に自然現象に関係するかどうか、という視点で、「地震・津波、異常気象(風水害等)」と「大規模な事故」に分けて記載しております。

なお、文中においては将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。

 

重要リスクの内容

対応

① 為替相場および原材料国際価格の変動

 当社グループでは、油脂事業および加工食品・素材事業における原材料である大豆、菜種、カカオ等は全量海外から輸入しております。また、マレーシアをはじめ東南アジア、欧州等において海外事業展開を行っております。このため、当社グループは原材料コストや外貨建てでの販売、外貨での借入金残高などにかかる為替変動リスクを有しており、為替相場の変動により業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 原材料においては、原材料国際価格の相場変動リスクに加え、原油価格高騰などに伴う輸送コスト等の変動リスクを有しております。原材料価格は当社グループのコストにとって重要な部分を占めることから、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼします。

 

 当社グループでは、「デリバティブ・商品先物取引等管理規程」等の規定に則った為替予約、先物市場を利用したヘッジ取引を機動的に行うことで当該リスクに対応しています。なお、ヘッジ取引の実施状況については、当社執行役員会にて四半期に一度、情報の共有化とモニタリングを実施しております。

 さらに原料価格に見合った販売価格の適正化、製造費等のコスト削減などを実施することにより価格変動による影響の抑制を図っています。

 

② 国内外の製品市況の変動

 特に油脂事業の販売におきましては、国内外の製品市況の変動による影響があります。油脂および油粕製品の国内販売価格は国際市況に概ね連動いたします。また、海外からの製品輸入動向が国内販売価格への影響要因となる可能性もあります。これら国内外の製品市況の変動が顕在化した場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼします。

 

 

 当社グループでは、国内外の製品市況の変動に応じてコスト等に見合う適正な価格での販売に努めています(2021年度は油脂製品の価格改定を4回実施)。また、高付加価値商品の拡販に取り組み、徐々にその構成比を上げています。売上原価と販売価格の変動にタイムラグが生じる等の場合もありますが、当該リスクの業績への影響の低減に努めております。

 当社執行役員会では、毎月、経営計画の進捗管理を行っており、必要な施策の実施につなげております。

③ 地震・津波、異常気象(風水害等)

 地震・津波に加え、近年異常気象による風水害等のリスクが年々高まっていると認識しております。このようなリスクにより、従業員の安全面をはじめ、生産拠点の製造設備、物流設備、インフラ等に被害が生じた場合、サプライチェーンの要所への影響から製品の安定供給に支障が生じ、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 

 

 当社グループでは、地震・津波等の災害発生時対策として、従業員等の安否を確認する安否確認システムおよび東日本大震災の経験を踏まえて策定したBCP(事業継続計画)を構築し、随時見直しを行っています。並行して、従業員等の安全および生産体制の基盤強化のため設備面で耐震補強を進めるとともに、護岸・電力調達における地震対策の強化も行っています。

 また、総合防災訓練や教育を定期的に実施するとともに、近年の異常気象による風水害等のリスク軽減についても重要な課題とし、減災の取り組みも含め、推進しております。

 これらの対策を超える甚大な影響のある事象についても継続して検証を行い、可能な限り被害を最小化するとともに、保険を付保し、当社グループの業績および財政状態への影響を低減することに努めております。

④ 食の安全性について

 食品の品質および安全性についての社会的関心の高まりから、より一層厳格な品質管理体制が求められております。品質問題が発生した場合は、当社グループへの信頼や業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当社執行役員会が設置する品質マネジメント委員会にてグループにおける品質保証に関する方針、施策の審議および実行の確認を行っており、国内の主要工場におきましては、ISO9001の認証および食品安全マネジメントシステムに関する国際規格であるFSSC22000の認証を取得し、一部の製造工程ではGMP認証を得るなど、厳しい品質保証体制を構築しております。

⑤ 原材料の調達におけるリスク

 当社グループの製品に必要な原材料のなかでも、特に油脂事業および加工食品・素材事業における大豆、菜種およびカカオなどの主要原料やオリーブ油およびパーム油をはじめとした原料油脂の調達環境が悪化し、十分な量の原材料が調達できない場合や、当社グループが求める品質・安全性を充たした原材料を確保できない場合には、製品の安定供給における多大なリスクが生じ、当社グループへの信頼や業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 世界の人口増加や各地で頻発する異常気象等による食糧需給の不透明感は年々高まりつつあり、また、原材料の生産国における政策動向、地政学リスクの高まり等によっては供給が不安定化するリスクもありますので、細心の注意を要します。

 

 当社グループは、干ばつなど天候の影響、生産国での政策動向、地政学リスクの高まり等による原料の調達環境の変化にも対応できるよう、原料および原料油脂ともに生産国やサプライヤーの複線化により、安定的な調達に努めております。

 特に調達環境の動向が見通しにくい状況下においては、期先までの需要を見据えた調達、在庫確保に努めております。

 なお、安全性が確保された原材料を調達するため、新規の産地・サプライヤーの原材料購買を行う場合には分析や現地視察などによる安全性評価を実施するとともに、既存の購買原材料についても定期的な安全性評価の実施や、原料産地の情報収集を行うことで、安全・安心な原材料の確保に努めております。

 

 

 

重要リスクの内容

対応

⑥ 気候変動・環境に関するリスク

 地球温暖化対策や海洋プラスチックごみ問題などが今日的な課題として注目を浴びており、これらの課題に対応できない場合、当社グループへの信頼や業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 植物資源を事業のベースとする当社グループにとって、地球環境や資源の保護は事業の持続性そのものと考え、脱炭素社会、循環型社会の実現に向けて以下の取り組みを行っております。なお、P14「日清オイリオグループビジョン2030」重点領域におけるCSV目標の地球環境、信頼でつながるサプライチェーンの項に関連する記載があります。

<気候変動対応>

・2022年3月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に基づき、気候変動に対するガバナンス体制、リスク・機会の分析および対応策を開示

※後記(TCFD提言への対応)をご参照下さい。

・投資判断基準としてインターナルカーボンプライシングを導入、運用を開始

<持続可能性に配慮したパーム油の調達>

・「パーム油調達方針」に基づく、持続可能性に配慮した認証パーム油の調達とトレーサブルで透明性のあるサプライチェーン構築に向けた取り組み

<プラスチック容器・包装の削減>

・プラスチック容器について、継続した減量化のほか、再生ペット材を使用した容器・包装を開発し、当社ホームユース製品に導入、対象商品を拡大

・環境対応容器の充填ラインの投資決定(当社堺工場)

⑦ 人権に関するリスク

 当社グループおよび調達先が人権問題を起こしたり、人権上問題のある調達を行った場合、当社グループへの信頼や業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

 

 2022年3月に国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿った「日清オイリオグループ人権方針」を制定いたしました。

 2022年度は、人権デューデリジェンスや救済措置への対応に向けた仕組みを構築し実践することで、サプライチェーン全体における人権問題に取り組んでまいります。

⑧ 消費者ニーズの変化への対応

 近年の消費者ニーズの変化は非常に早く、かつ多様化しており当社グループが認識する前に消費者のニーズが変化する可能性があります。また、認識しても対応できない可能性があり、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

 

 当社が提供している価値と生活者の皆様が求める価値の間に生じるギャップについて、仮説をもって客観的に検証し、正しく理解し、ソリューションを提供することを目的に、1994年に生活科学研究の専門チームを設置し、現在に至るまで生活者研究を継続しております。その研究成果を活用することなどにより、生活者ニーズの変化を認識し対応するように努めております。

 また、顧客との接点強化への取り組みはデジタル技術も活用して進めてまいります。

⑨ 海外拠点の運営に関するリスク

 当社グループは、日本国内のみならず、東南アジア、欧州等の国および地域において事業を展開しております。以下のような事象は、特に海外事業展開においては、リスクとなります。

ⅰ法律等の諸規制の予期せぬ制定または改廃

ⅱ不測の政治的・経済的事象の発生

ⅲテロ、紛争等による社会的混乱および

その他の地政学リスク

 これらの事象が発生した場合には当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当社グループにおきましては、これらのリスクを最小限に留めるべく、情報収集に努め、危機管理体制のなかで的確かつ迅速に対応してまいります。

 また、取締役会において重要拠点のモニタリングを行っております。

 

 

 

 

重要リスクの内容

対応

⑩ 伝染病、感染症等

(新型コロナウイルス感染症への対応)

 伝染病、感染症等が流行し、従業員等の感染、外部委託先も含めた事業活動の制限、原材料の調達不足等によりサプライチェーンの要所に影響が生じることから製品の安定供給に支障が生じ、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。また、製品需要が大幅に変動した場合もこれらに影響を与える可能性があります。

 

 

 

 新型コロナウイルス感染症への対応について、当社グループは、従業員とその家族の安全確保を最優先とし、本社対策本部を中心に全社方針を適宜改訂しながら感染予防、拡大防止策を徹底のうえ、BCPをベースに事業活動を継続しております。

 従業員のワクチン接種を推奨するとともに、職域接種の実施やワクチン接種時の休暇制度を充実することで、従業員がより安心して働くことのできる環境を整備しました。

 

※新型コロナウイルス感染症の影響等については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項 追加情報(新型コロナウイルスの感染拡大の影響について)」をご参照下さい。

⑪  情報セキュリティ

 当社グループでは、生産管理、物流管理、販売管理および財務・会計をはじめとした業務の円滑かつ効率的な遂行のため情報システムを構築しております。また、事業上の重要情報、事業の過程で入手した機密情報および個人情報を保有しています。大規模な災害や停電、またはコンピュータウイルスやサイバー攻撃などにより、システム停止に伴う業務遅延や情報漏洩等が発生した場合、お客さまや市場の信頼が失われ、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当社グループは、情報システムの安定稼働、信頼性向上、情報漏洩防止のため、情報セキュリティに関する規定やルールを制定しております。その上で、ツールによるセキュリティ対策を導入するとともに、従業員教育や訓練を実施し、リスクが顕在化しないように取り組んでおります。

 また、セキュリティ事故発生に備え、対応マニュアルや連絡体制を整備しております。

 情報セキュリティ委員会では、情報セキュリティ対策について定期的な報告を受け、評価および見直しを実施しております。

⑫ 大規模な事故

 火災・爆発などの大規模な事故を起こした場合は、製品の安定供給に支障が生じ、当社グループへの信頼や業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

 当社では、全社的な安全・防災管理にかかわる統括責任を有する安全・防災担当役員を設置するとともに、安全・防災会議を中心とした全社防災体制、および事業場防災体制を構築しております。

 また、緊急時体制を規定のうえ、総合防災訓練や教育を定期的に実施し、事故の発生防止に努めるとともに、万一の発生に備えております。

 なお、2022年2月には火災事故を未然に防ぐために、緊急点検を実施いたしました。

 これらの取り組みおよび保険の付保により、当社グループの業績および財政状態への影響を低減することに努めております。

⑬ 重要な外部委託先(物流委託先)の確保

 お客さまからのご要望通りに商品をお届けするため、必要な物流機能を適正なコストで確保すべく努めておりますが、これができない場合にお客さまへの商品の供給が滞り、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 日本国内では、ローリー車を含めたトラック運転士の不足や高齢化が進むなか、国内での輸送可能量が先々減少していく可能性があり、物流需給ギャップが生じる懸念があります。さらには、食品業界特有の長時間待機や納品付帯作業などの物流諸課題の改善遅れにより、商品をお客さまにお届けできなくなるリスクがあります。

 また、内航船に関しても同様に船員不足と高齢化が進んでおり、物流需給ギャップが生じる懸念があります。

 

 当社グループでは、油脂事業におけるホームユース領域および業務用領域の商品においては、納品リードタイムの見直し、出荷拠点の見直しや増設、鉄道や船舶等の代替輸送手段の確保などの施策をとるとともに、ホワイト物流の取り組みや輸送料金の適正化を進め、当該リスクの低減に努めております。

 また、食品メーカー5社が出資する物流会社を通じた共同配送や物流改善につながる取り組みを推進しております。

 さらに、より消費地に近い工場で生産し運ぶという、いわゆる地産地消を追求したサプライチェーン全体の最適化への取り組みをデジタル技術の活用を含め検討を進めております。

⑭ 人材の獲得(育成)不足による競争力の低下

および継続性のリスク

 「日清オイリオグループビジョン2030」で目指す姿の実現に向けては、多様な価値観や専門性を有した人材が必要不可欠であり、不足すると競争力低下を招いてしまいます。

 また、安全・安心な製品を安定的に提供していくためには、特に製造や物流現場の活動を担う人材が不足することは事業継続性の大きなリスクであると認識しています。

 さらに、社員一人ひとりが、公私ともに充実し、当社グループで意欲的に能力を発揮し続けていくためには、自身の健康が最も大切な要素です。社員の健康リスクの発生は生産性などに影響が生じる可能性があります。

 

 

 当社グループは、社員の多様性を尊重するとともに、一人ひとりが成長できる人材育成プログラム投資の拡充や、必要に応じた外部からの人材登用、女性活躍の推進、健康経営の推進など、イノベーションを生み出す活力に満ち溢れた組織づくりに注力することで、必要な人材の確保と強化に取り組んでいます。

 安全・安心な製品を安定的に提供するにあたり、継続的な採用や教育、テレワークの積極的な活用、労働環境の最適化などにより人材の確保・定着に取り組むとともに、IoTやAI等の活用による作業の効率化や省力化を推進しています。

 当社グループでは、経営トップを健康経営の最高責任者とした推進体制を構築し、社員の心身の健康、働きがい、生産性向上を目的とした健康経営の各種取り組みを推進しています。

 

 

TCFD提言(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応

日清オイリオグループの事業活動は植物資源をベースとしております。植物の生育に大きな影響を与える気候変動への対応は経営の重要テーマであり、2021年3月にTCFD提言に賛同を表明いたしました。今回、TCFD提言が推奨する「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つの項目における当社の取組み内容と気候変動に伴うリスク・機会の分析、その影響度を以下に示しております。今後は財務影響等のシミュレーションなどについても積極的に開示してまいります。

 

1.TCFD提言が推奨する4つの開示項目

項目

内容

ガバナンス

・日清オイリオグループは、事業活動を通じた社会課題の解決により、社会との共有価値を創造し、当社グル-プの持続的な成長と社会の持続的な発展(サステナビリティ)の実現を目指しています。

・法令で定められた事項や経営上の重要事項(気候変動に伴う課題解決を含む)は、取締役会にて審議し意思決定を行っています。また、取締役会の審議委員会としてサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ実現に向けた基本方針の立案、戦略・施策を審議、取締役会への答申を行っています。

・直近では、2030年環境目標の設定、TCFD提言への賛同表明、気候変動対応部門(サステナビリティ推進室、脱炭素化推進室)の設置を実施しています。

戦略

・当社グループは、2021年度より、2030年に向けた長期ビジョン「日清オイリオグループビジョン2030」と、その最初の4か年の取り組みとなる中期経営計画「Value Up +」をスタートさせました。「ビジョン2030」では、当社グループの強みの中核である油脂をさらに磨き上げ、成長の原動力とし、健康やおいしさ、美の多様な価値を創出いたします。そのため事業基盤となる地球環境の保護や原料のサステナビリティをグローバルトップレベルに深化させていきます。

・原料サステナビリティにおいて、持続可能性に配慮した原料(認証油等)の需要拡大に対応すると共に、気候変動に伴う気候パターンの変化による植物原料の生産量低下・価格上昇リスクに対応するため、同一原料の複数産地からの購入やサプライチェーンの複線化によるリスク回避を行っています。

・また、温室効果ガス排出量の少ない製品開発が販売増加の機会となると認識し、環境にポジティブインパクトのある製品・サービスの開発を行っています。

一例として、調理時の使用量を抑えた製品、独自製法で賞味期限・使用期間を延長する製品、環境に配慮した容器包装を使用した製品等が該当し、ステークホルダーとの共創を通じ新たな価値を創出していきます。

・化粧品業界では、気候変動の影響により、原料のナチュラリティ(植物性志向や環境への配慮)を求める動きが広がっており、当社はこの動きへの対応がビジネスチャンスと捉え、化粧品油剤のリーディングカンパニーとなり、世界での存在感を高めることを目指していきます。

リスク管理

・取締役会の審議委員会としてリスクマネジメント委員会を設置し、気候変動に伴うリスクも含め、事業に対する財務または戦略面での重大なリスクを設定しています。

・リスクはグループ全体を対象とし、影響度合と発生可能性を分析した上で、重要なリスクを特定しています。また、リスクは影響度に応じて3段階で評価し、時間軸としては短期・中期・長期に分けて設定しています。

・重要なリスクは担当部門を特定し、PDCAサイクルによるリスクマネジメント及び緊急時対応を実施しており、リスク評価として、リスクマネジメント委員会による取締役会への報告、内部監査室によるモニタリングを実施しています。

指標と目標

・当社グループは、環境理念、環境方針にもとづき、サステナビリティの実現に向けた具体的な取り組みとして「環境目標2030」を策定。気候変動対策として温室効果ガス排出量削減を掲げ、「スコープ1及び2の温室効果ガス排出量をSBTに準拠し、2030年度までに31%削減(2016年比)」、「スコープ3は購入した製品・サービスおよび輸配送(上流)の排出量の70%をカバーするサプライヤーに、2026年までに科学に基づく削減目標設定を促す」を目標としています。

 

 

 

2.気候変動シナリオ分析

気候変動シナリオ分析の前提として、産業革命以降に気温を2℃上昇に抑えた世界、4℃上昇した世界を想定、それぞれの世界観のなかでリスクと機会の検討・抽出を行いました。同時に当社グループの事業活動への影響が大きいリスク・機会については、対策の検討と財務影響の試算を行いました。

 

<気候関連リスク>

事業活動への影響が大きいリスクとして、2℃上昇時には炭素税によるコスト増加やCO2排出枠購入費用の発生等が、4℃上昇時は自然災害がより頻発・激甚化することから、原料産地の生産量低下による原料調達コストの増加、台風等により生産工場が洪水・停電等の被害を被り、生産能力低下による売上減少が想定されました。

 

リスク分類

事業への影響

影響度

移行

政策・法規制

カーボンプライシング

炭素税の上昇・新規導入により、エネルギー・容器・輸送等のコスト増加のリスクがあります。また、企業のCO2排出量取引制度の導入により、排出枠購入費用が発生する可能性があります。

訴訟

気候変動による社会環境の変化や法規制の強化の影響により、サプライチェーンの法令違反や森林破壊・人権問題による訴訟を受けるリスクがあります。

技術

脱炭素設備・生産方法への置き換え

生産体制の脱炭素化に向けた大規模な設備導入が進められ、設備投資費用が増加します。また、投資が想定通りの効果を発揮しないリスク、資金不足によりブレイクスルー的な新技術を導入できないリスクがあります。

市場

持続可能性に配慮した購買行動の高まり

パーム油等において、持続可能性を担保した製品への購買行動が高まり、結果として原料コストが上昇するリスクがあります。また持続可能性を担保できない場合、製品価値の低下から消費者離れに繋がり、売上が減少するリスクがあります。

評判

気候変動を含む持続可能性に配慮した投融資の加速

気候変動を含む持続可能性に対応する取組みの遅れ、当社取組み状況に関する情報開示が不十分な場合、株価の低下や融資が停滞するリスクが生じます。また、強硬なステークホルダーからアクセスされ、意図しない訴訟・提案を受けるリスクがあります。

物理的

急性

原料産地・生産拠点での自然災害の頻発・激甚化

原料産地でハリケーンや洪水等の被害が拡大した場合、減産に伴う価格高騰により、調達コストが上昇するリスクがあります。また、生産拠点が被災した場合、生産・販売・物流能力が一時的に低下し、売上が減少するリスクがあります。

慢性

気象パターンの変化
(気温上昇、降水量変化等)

気象パターンが極端に変動した場合、主原料である大豆やパーム等の生産量が減少し、原料価格高騰により調達コストが増加するリスクがあります。また原料の品質・安全性や製品の安定供給に悪影響を受けるリスクがあります。

 

 

 

<気候関連機会>

事業活動へ影響する大きい機会として、2℃上昇時、4℃上昇時どちらの場合も原料作物の生育に大きな減少は見られず安定した原料調達が可能であることが挙げられます。また、CO2排出量を抑えた製品開発・販売、持続可能な原料の使用等が顧客満足度の向上につながることから、売上増加に向けた大きな機会と捉えています。

 

機会分類

事業への影響

影響度

資源の効率性

エネルギー効率向上

効率的な機器の導入や高度な生産管理により、生産拠点でのエネルギー効率が向上し、生産コストを削減出来ています。

エネルギー源

再生可能エネルギーの
利用

顧客のサプライチェーン排出量削減要求に応え、再生可能エネルギーを使用し、CO2排出量(スコープ1&2)を抑えた製品を製造・販売することで、顧客満足度向上による売上増加につながります。

製品・サービス

CO2排出量の少ない
製品の開発

顧客のサプライチェーン排出量削減要求に応え、調理時に吸油の少ない、通常品より賞味期限が長い等、LCA視点でCO2排出量を抑制した製品を開発する事で、顧客満足度向上による売上増加につながります。

市場

持続可能性に配慮した
購買行動の高まり

気候変動の影響を縮小するため、森林保護の重要性が高まっており、持続可能性に配慮した原料(製品)の需要が拡大しています。特に油脂の中で生産量が最も多いパーム油において、顧客が要望する認証油の提供が、取引先との関係強化や新たな販売機会の獲得につながるため、売上増加を達成できると認識しています。

化粧品業界での植物
由来製品の需要拡大

ナチュラリティ(植物性志向や環境への配慮)が広まる化粧品業界をターゲットとするファインケミカル事業において、植物由来製品の需要が拡大し、当社売上の増加を想定しています。また、油脂事業に続く主力事業に成長させることで、グループ全体の収益安定化に繋がります。

強靭性
(レジリエンス)

BCP強化

気候変動に由来する自然災害の頻発・激甚化に備えたBCPを強化することで、緊急時の製品供給体制を維持し、企業の社会的価値を高める事が可能です。結果として、売上高の増加や株価上昇に加えて資金調達の優位性に寄与すると捉えています。

容器包装のリサイクル
促進と安定調達

気候変動対応として、脱化石燃料化が進行しています。当社では製品容器の主原料にプラスチックを使用しており、リサイクル企業への投資による資源循環の確立、バイオプラスチックやプラ代替容器への切替えを行う事で、容器原料の安定調達と企業評価の向上が可能と考えています。

 

 

 

<気候関連リスク・機会への対応策>

当社グループの事業活動へ大きく影響するリスク・機会への対応策は以下の通りであり、CO2排出量削減、環境・人権に配慮した持続可能な原料調達、法令遵守・訴訟の回避、付加価値型製品の開発・販売、自然災害を考慮したBCP強化等を軸に対応を進めてまいります。

今後は、影響度の精査や、より長期にわたる植物原料の生育、基幹エネルギー源、顧客要求の変化等を分析していきます。

項目

対応策

リスク

機会

カーボン
プライシング

エネルギー効率
向上

・GHG排出量を2030年までに2016年度比31%削減する目標を設定

・徹底した省エネ活動や、より効率的な設備への移行、新技術の導入

・インターナルカーボンプライシングを活用した、積極的な設備導入

脱炭素設備・
生産方法への移行

消費者の持続可能性配慮志向の高まり

・環境・人権に配慮した認証原料の調達を強化

- パーム油のRSPOサプライチェーン認証取得拠点(SG及びMB)の拡大

- 特に欧州で求められるRSPO認証SG品を重点的に拡大

- 複数の認証油を販売できるよう、マレーシアMSPO、インドネシアISPO調達を準備

- 大豆等の原料について持続可能性を高める調達活動を推進

・認証原料に対する顧客及び消費者理解を醸成

・温室効果ガス排出量の少ない製品開発等、環境にポジティブインパクトのある製品・サービスを開発

・サプライチェーンに関わるステークホルダーを含めて法令遵守を徹底し、訴訟リスクを低減

 

化粧品業界での植物由来製品の需要拡大

・付加価値エステル類の生産能力増強と化粧品認証へ適応した施設化を目的に、横浜磯子工場内に化成品工場を新設

・中国を中心に、コロナ後の化粧品市場の回復・拡大を想定し、グローバルに販売拡大

自然災害の頻発・
激甚化

BCP強化

・原料供給の安定化、価格上昇リスク抑制のため、サプライヤーの複線化、原料産地の分散化、品質確認体制の強化

・生産拠点の風水害や地震等に対応した補強を計画。2021年には横浜磯子工場の護岸設備や搾油設備、ユーティリティの耐震補強を実施

・プラスチック原料のリサイクルを行う企業への投資により、容器包装原料の安定的な確保。また、プラスチック代替容器の開発を推進

 

 

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