業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度(2021年5月21日から2022年5月20日まで)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症再拡大による国内の法人・消費者動向へのマイナス影響に加え、エネルギー価格の高騰や急速な円安等の為替動向の懸念等により、依然として先行きは不透明な状況となっております。

当社グループが属するeコマース市場は、新型コロナウイルス感染症拡大による影響から、新しい生活様式における人との接触を減らす購買活動としての役割に対する期待が高く、成長が続いております。一方で、同業他社とのサービス品質競争は続いており、お客様の様々なご要望にお応えしながら、持続的な増収増益を実現していくことが経営課題となっております。

このような状況の中、当社グループは2022年5月期を、中期経営計画(2022年5月期~2025年5月期)実現に向けた足固めの年として位置付け、中期経営計画の達成の原動力となる「ASKUL東京DC」の物流設備や新アスクルWEBサイトの構築(注1)等、積極的な設備投資を実行してまいりました。

当連結会計年度において、BtoB事業は、新型コロナウイルス感染対策商品の特需の減少や働き方の変化等による文具等のオフィス用品需要の減少があったものの、注力分野である生活用品・MRO商材の売上高の伸長により増収となりました。一方、計画通りではありますが、特需の減少等による売上総利益率の低下と「ASKUL東京DC」の稼働開始前の賃料発生により減益となりました。BtoC事業は、海外向け需要の増加やZホールディングスグループ等との販促の連携強化により増収となり、また、収益改善は変動費比率の改善(「収益認識に関する会計基準」等適用の影響を除く実質値)に加え、「LOHACO本店」リニューアルに伴う固定費の削減、連結子会社株式会社チャームの増益により、計画通りの結果となりました。

ロジスティクス事業は、物流業務受託の拡大等により大幅に収益が改善し、下期において営業損失から営業利益への転換を達成しております。

この結果、当連結会計年度の当社グループの業績は、売上高4,285億17百万円(前期比1.5%増、実質前期比2.7%増(注2))、営業利益143億9百万円(前期比2.8%増)、経常利益142億70百万円(前期比3.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益92億6百万円(前期比18.7%増)となり、売上高、営業利益、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益いずれも過去最高となりました。

なお、当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を適用しており、当連結会計年度の売上高は51億92百万円減少しております。

 

セグメント別の経営成績につきましては、以下のとおりです。

<eコマース事業>

当社グループの主力分野であるBtoB事業につきましては、売上高は堅調に推移しました。手指消毒液やマスク等の新型コロナウイルス感染対策商品の特需の減少や働き方の変化等による文具等のオフィス用品需要の減少があったものの、様々な仕事場で利用される飲料等の生活用品商材、eコマース需要の増加による梱包資材等のMRO商材、品揃え強化に注力するロングテール商材等の売上高が伸長したことから、当連結会計年度は増収となりました。

また、インターネット広告等の活用によるお客様基盤の拡大や、戦略的に強化する医療・介護業種および製造業を中心に、それぞれの業種で必要となる専門商材の品揃えの拡大に注力してまいりました。

この結果、BtoB事業の売上高は、前期比で28億32百万円増収3,480億25百万円(前期比0.8%増、実質前期比2.0%増)となりました。

BtoC事業につきましては、2021年6月に「LOHACO本店」をヤフー株式会社が提供するシステム基盤に移行し、新本店としてリニューアルオープンいたしました。リニューアル後も使いやすいWEBサイトとなるように継続的な機能改善を図るとともに、ソフトバンク株式会社、ヤフー株式会社と連携した大型販促を定期的に実施してまいりました。

この結果、「LOHACO」の売上高は、前期比で14億71百万円増収の543億30百万円(前期比2.8%増、実質前期比4.4%増)となり、BtoC事業合計で、前期比で20億85百万円増収706億73百万円(前期比3.0%増、実質前期比4.6%増)となりました。

以上の結果、両事業を合計したeコマース事業の売上高は4,186億98百万円(前期比1.2%増、実質前期比2.4%増)となりました。売上総利益は1,043億33百万円(前期比0.2%増、実質前期比1.1%増)となりました。

「LOHACO本店」リニューアルに伴う固定費削減や「LOHACO」および連結子会社株式会社チャームの物流費の改善、営業利益の期初計画値からの超過額に応じて支給される決算賞与の減少等により、売上高販管費比率が前期比0.1ポイント減少(実質前期比0.1ポイント減少)し、販売費及び一般管理費が899億87百万円となり、営業利益は143億46百万円(前期比4.3%減)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は51億92百万円減少しております。

 

<ロジスティクス事業>

ASKUL LOGIST株式会社の当社グループ外の物流業務受託の拡大により、売上高が増加いたしました。前連結会計年度においては、物流業務受託の準備期間に係る物流センター賃料等の費用が先行して発生しておりましたが、当連結会計年度においては物流受託売上高が増加したことから前期比で営業損益は大幅に改善し、当連結会計年度の下期においては営業損失から営業利益への転換を達成しております。

この結果、当連結会計年度の売上高は90億30百万円(前期比17.6%増)、営業損失は34百万円(前期は営業損失11億円)となっております。なお、収益認識会計基準等を適用したことによる影響はございません。

 

<その他>

嬬恋銘水株式会社での飲料水の販売が「LOHACO」を含めて好調であることから売上高は増加しました。生産能力の高い新製造ラインが2021年11月に完成し、稼働しておりますが、新型コロナウイルス感染症による新製造ラインの工期の遅延等が発生し、稼働直後の生産性が想定値まで伸びなかった影響等により製造単価が上昇した結果、売上総利益率が低下し、増収減益となりました。

この結果、当連結会計年度の売上高は14億97百万円(前期比12.5%増)、営業利益は0百万円(前期比98.7%減)となっております。なお、収益認識会計基準等を適用したことによる影響はございません。

 

(注) 1 第3四半期連結会計期間に45億円の追加投資を実行することを決定しております。これは、当初想定しきれなかった開発ボリュームの追加等により工数が増加したこと、また、確実なリリースを実現するために開発体制を大幅に強化することによるもので、追加投資を含めた投資予定総額は105億円となります。追加投資は中期経営計画の全体予算の中で可及的に吸収予定です。

2 2021年5月期から収益認識会計基準等を適用したと仮定した場合の前期比です。

 

 

財政状態の状況は以下の通りであります。

 

(資産の部)

当連結会計年度末における総資産は1,880億24百万円となり、前連結会計年度末と比べ20億82百万円減少いたしました。主な減少要因は、自己株式の取得81億43百万円等により現金及び預金が74億70百万円減少したことであります。主な増加要因は、ソフトウエア仮勘定が49億82百万円増加したことであります。

(負債の部)

当連結会計年度末における負債は1,307億53百万円となり、前連結会計年度末と比べ1億49百万円減少いたしました。主な減少要因は、長期借入金(1年内返済予定を含む)が25億9百万円、リース債務(長期)が8億23百万円減少したことであります。主な増加要因は、支払手形及び買掛金が12億26百万円、電子記録債務が9億78百万円増加、未払金が4億14百万円増加したことであります。

(純資産の部)

当連結会計年度末における純資産は572億71百万円となり、前連結会計年度末と比べ19億32百万円減少いたしました。主な減少要因は、親会社株主に帰属する当期純利益92億6百万円の計上等があったものの、資本効率向上および株主還元を目的とした自己株式の取得後の自己株式の消却80億65百万円、配当金の支払30億73百万円があったこと等により利益剰余金が19億39百万円減少したことであります。

以上の結果、自己資本比率は30.2%(前連結会計年度末は30.9%)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は587億89百万円となり、前連結会計年度末に比べ74億70百万円減少いたしました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは179億52百万円の収入(前期は159億98百万円の収入)となりました。これは、法人税等の支払額47億30百万円があったものの、税金等調整前当期純利益138億71百万円、減価償却費とソフトウエア償却費、のれん償却額の合計65億59百万円仕入債務の増加22億4百万円があったこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは107億48百万円の支出(前期は90億79百万円の支出)となりました。これは、ソフトウエアの取得による支出71億90百万円、有形固定資産の取得による支出28億94百万円があったこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは146億74百万円の支出(前期は39億19百万円の支出)となりました。これは、長期借入れによる収入101億79百万円があったものの、長期借入金の返済による支出126億88百万円自己株式の取得による支出81億43百万円、配当金の支払額30億73百万円があったこと等によるものであります。

 

③ 生産、仕入および販売の状況

  a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

その他 (注)1

1,043

+29.8

合計

1,043

+29.8

 

(注) 1 「その他」の区分は報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、水の製造を行っております。

2 金額は、製造原価によっております。

3 eコマース事業およびロジスティクス事業につきましては、生産業務を行っていないため該当事項はありません。

 

  b. 仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前期比(%)

eコマース事業

313,708

+1.0

その他 (注)1

152

+44.1

合計

313,860

+1.0

 

(注) 1 「その他」の区分は報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、水の製造を行っております。

2 セグメント間取引については、相殺消去しております。

3 金額は、仕入価格によっております。

4 ロジスティクス事業につきましては、物流・小口貨物輸送サービスの提供が主要な事業であるため、記載を省略しております。

 

  c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

eコマース事業

418,698

+1.2

ロジスティクス事業

9,030

+17.6

その他 (注)1

788

+13.8

合計

428,517

+1.5

 

(注) 1 「その他」の区分は報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、水の製造を行っております。

2 セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。連結財務諸表の作成にあたっては、報告期間の期末日における資産・負債の計上、期中の収益・費用の計上を行うため、必要に応じて会計上の見積りを用いております。この会計上の見積りには、その性質上不確実性があり、実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りのうち、重要なものは以下のとおりであります。なお、当連結会計年度の連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りのうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあるものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(固定資産の減損)

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産グループについて、資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識および測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、新たに減損処理が必要となる可能性があります。

 

(のれんの減損)

当社グループは、のれんについて、その効果の発現する期間にわたって均等償却しております。また、その資産性について子会社の業績や事業計画等を基に検討しており、将来において当初想定していた収益が見込めなくなった場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上する可能性があります。

 

(繰延税金資産の回収可能性)

繰延税金資産については、将来の利益計画に基づく課税所得を慎重に見積り、回収可能性を判断した上で計上しております。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額が減少した場合は、繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

a. 経営成績等

「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。

b. キャッシュ・フローの分析

「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

 ③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループが属するeコマース市場は引き続き成長が見込まれているものの、競合とのサービス競争は激化しており、競合他社の状況が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があります。当社グループといたしましては、BtoB事業は、新たに位置付けた2大戦略業種(医療・介護、製造業)向けを中心に、お客様のご要望にあった品揃えの拡大や当社オリジナル商品の拡充を進めるとともに、既存サイトの特長を結集し、新たな機能も兼ね備えた新アスクルWEBサイトの構築により、他社との差別化を図ってまいります。BtoC事業は、ヤフー株式会社のシステム基盤の活用をはじめとするZホールディングスグループとのシナジーにより、固定費の大幅な削減を図り、お客様の支持拡大のためのサービス品質向上に注力してまいります。その他、経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載の通りです。

 

 ④ 資本の財源および資金の流動性についての分析

当社グループの資金需要の主なものは、物流センターの新設・増強やWEBサイトの刷新等の設備投資資金、各事業の成長を加速させるためのシナジー効果のある事業者の買収資金等があります。

設備投資資金や買収資金等の資金については、金利コスト等を勘案しながら、自己資金または金融機関からの借入金、リース契約等により調達しております。

 

 ⑤ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは劇的に変化する競争環境を勝ち抜くため、2021年7月2日に2025年5月期を最終年度とする4年間の中期経営計画を発表いたしました。中期経営計画では、オフィス通販からすべての仕事場とくらしを支えるインフラ企業へのトランスフォーメーションを成し遂げるべく、2025年5月期の経営目標として連結売上高5,500億円、連結営業利益率5%、ROE20%を新たな目標に掲げております。なお、当連結会計年度においては連結売上高4,285億円、連結営業利益率3.3%、ROE15.9%となっております。今後は、BtoB事業における「戦略業種と品揃え拡大」「BtoB最強eコマースサイトの構築」、BtoC事業における「Zホールディングスグループとのシナジー」、加えて両事業を支える「プラットフォームの改革」、新たなチャレンジとしての「BtoBビジネスの新サービス」を最重要戦略として、中期経営計画の経営目標達成に向けて各施策を推進してまいります。

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