課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日(2022年7月29日)現在において当社グループが判断したものであります。
 
(1)経営方針および中長期的な経営戦略等
 当社は1992年のアスクル創業以来、オフィスに必要なものやサービスを「迅速かつ確実にお届けする」トータルオフィスサポートサービスにおけるパイオニアとして、お客様の声を聞きながら、商品・サービス・システムを絶えず進化させて中小事業所から中堅大企業までのあらゆる企業の多様なニーズにお応えし、着実な成長を実現してまいりました。    
 これに加え、eコマース(インターネット等を介して行われる電子商取引ビジネス)へのニーズは、一般消費者へも急速に高まり、当社グループは、このような状況を絶好の成長機会と捉え、2012年11月20日に一般消費者向けインターネット通信販売サイト「LOHACO」のサービスを開始しました。
 一方で新型コロナウイルス感染症を起因とした新しい生活様式へのシフトやテクノロジーの急速な進化等により、当社を取り巻く事業環境は劇的に変化し、eコマース市場規模およびeコマース化率は拡大を続けているものの、他方で、競争は激化しており、この激化する競争に勝ち抜くため2022年5月期から2025年5月期の4年間の経営方針として中期経営計画を策定しました。
 中期経営計画の基本方針として、「サステナブル経営」、「お客様価値最大化」、「高収益モデルへの転換」の3つを掲げており、環境保全や社会課題の解決を考えたサービス「エシカルeコマース」の実践により、環境課題の解決を事業と一体化して実現してまいります。この方針のもと、当社グループが有する多様なお客様基盤・ビッグデータ、全国に当日翌日配送を可能とする高度に自動化された独自の物流基盤、長年蓄積してきたオリジナル商品開発力等、これらの優位性を活かしながら、グループの総力を結集して、オフィス通販からすべての仕事場とくらしを支えるインフラ企業へとトランスフォーメーションを図ってまいります。 
 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、(3)会社の対処すべき課題の5つのテーマに注力して取り組みますが、中期経営計画の最終年度である2025年5月期には、連結売上高5,500億円、連結営業利益率5%、連結株主資本利益率(ROE)20%を実現してまいります。

 当連結会計年度(2022年5月期)は、新型コロナウイルス感染対策商品の特需の減少やオフィス用品需要の低下を注力分野である生活用品・MRO商材の売上拡大でカバーしたのに加えて、さらなる物流効率化とLOHACOの収益構造改善に取り組み、売上高は4,285億円、売上高営業利益率は3.3%、ROEは15.9%となりました。

 次期(2023年5月期)においては、BtoB事業は、売上高の成長カーブを変える年度と位置付けております。2022年7月に完了した新アスクルWEBサイトの一部機能の先行リリースを成長エンジンに、戦略業種向けを中心とした取扱い商品数の拡大とロングテール商品の商材拡大に加え、インターネット広告等の販促の強化により、売上高の高い成長率を目指してまいります。BtoC事業は、Zホールディングスグループとの連携によるWEBサイトの機能進化、売上総利益率改善、物流構造改革に加え、固定費圧縮をさらに強力に推進し、売上高の増加と黒字化を実現してまいります。その結果、売上高は4,555億円、売上高営業利益率は3.2%、ROEは15.7%となる見通しです。

 

 

(3)会社の対処すべき課題

当社グループは、以下5つのテーマに注力して取り組んでまいります。

 

① 戦略業種と品揃え拡大

BtoB事業は、WEBサイトの刷新を成長エンジンに、取扱い商品数を拡大することで高い成長率を目指しております。医療・介護、製造業を2大戦略業種と位置付け、戦略業種向けを中心に、2025年5月期には、取扱い商品数は1,800万アイテム、いつも買う「明日来る」の在庫商品数は33万アイテム、価格・品質の優位性があり、環境配慮型商品であるオリジナル商品数は1万2,000アイテムまで拡大することを計画しております。2022年5月期末時点においては、取扱い商品数1,179万アイテム、在庫商品数は12万9,000アイテム、オリジナル商品数は8,700アイテムとなっており、2023年5月期末時点においては、取扱い商品数1,400万アイテム、在庫商品数15万アイテム、オリジナル商品数は1万アイテムを目指してまいります。

 

② BtoB最強eコマースサイトの構築

WEBサイトの刷新を予定しております。新アスクルWEBサイトは、従来からの購買管理機能、ボリュームディスカウント、検索からの最速購入、パーソナライズドリコメンドを結集・強化し、テレワーク対応の新機能も追加することで、お客様の購買頻度の増加や購入単価の向上、購買集約による定着率向上により、2025年5月期までの累計売上高の増加額として500億円超を計画しております。2022年5月期においては、新アスクルWEBサイトにつき、開発を進めてまいりましたが、当初想定しきれなかった開発規模となることが見込まれ、また、確実なリリースを実現するために開発体制を強化することから投資額を増額することを決定しました。2022年7月に一部機能の先行リリースを完了しており、引き続き全ての機能リリースに向けて開発を進めてまいります。

 

③ Zホールディングスグループとのシナジー

BtoC事業は、「LOHACO」の収益事業化の実現を目指しております。ヤフー株式会社の有するシステム基盤等を活用することで、サービス品質の向上とコストダウンを図り、2023年5月期での黒字化を計画しております。黒字化以降は、売上高を再成長軌道に乗せ、収益を拡大してまいります。2021年6月に新たにオープンした「LOHACO 本店」と「LOHACO PayPayモール店」両店の相乗効果を最大化し、2025年5月期までの累計売上高の増加額として200億円超を計画しております。2022年5月期の「LOHACO」については、ヤフー株式会社の有するシステム基盤等の活用により固定費削減が大きく進み、着実に黒字化への計画を進めてまいりました。2023年5月期においては、売上高の成長と売上総利益率の改善等により、計画通りの2023年5月期での黒字化を目指しております。

 

④  プラットフォームの改革

圧倒的強みである高速・高効率物流を進化させ、ロングテール商品の「明日来る」の実現を目指してまいります。この実現のため、物流センターの構造を改革し、併せてBtoBとBtoCの物流の融合を進めてまいります。具体的には、物流センターの後方に商品補充用の倉庫ネットワークを構築し、物流センターでの出荷取扱い商品数を拡大することにより、物流センター本来の機能である出荷能力を最大化してまいります。AIやロボット等の最先端技術の導入等によりバリューチェーンのデジタルトランスフォーメーションを図り、当社グループの生産性向上にとどまらず、お客様の価値向上に繋げてまいります。2022年5月期においては、東日本のフラッグシップセンターとなる「ASKUL東京DC」の稼働に向けて物流設備等の工事を進めてまいりました。2022年11月に稼働開始を予定しております。

 

⑤ BtoBビジネスの新サービス

2023年5月期において、オフィス通販からのトランスフォーメーションに向けての新サービスの第一弾として、BtoB事業におけるメーカー向け広告ビジネスの開始を予定しております。「LOHACO」で培った広告ビジネスの知見と、従来からのメーカーとの強い関係性とBtoB事業の規模を最大限活用して、ビジネスを拡大してまいります。また、ソフトバンク株式会社のグループ各社との連携による中小事業所向け新サービスも検討を開始しております。

 

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