当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症拡大により、2020年4月に全国を対象に緊急事態宣言が発出され、経済活動や国民生活に甚大な影響が及びました。5月に宣言が解除された以降は、緩やかに景気持ち直しの動きが見られましたが、11月以降、感染再拡大が深刻化し、2021年1月に11都道府県を対象とした2度目の緊急事態宣言が発出され、内需の回復ペースは鈍化しました。また現在、新たに新型コロナウイルス変異株の脅威が生じ、事態の終息が見えない先行き不透明な状況が続いています。
当社グループを取り巻く環境は次のとおりです。航空市場では、国内線は1度目の緊急事態宣言解除後、航空旅客需要に回復基調が見られましたが、感染再拡大に伴い回復は鈍化しました。国際線は依然厳格な出入国制限が続き、インバウンド需要は消失したままとなりました。また、外食業への営業制限や人々の外出自粛などにより外食需要は低迷した状態が続きました。一方で、消費者の在宅での購買意欲の高まりを背景に、各種小売店や通信販売を通じた購買活動は比較的旺盛な傾向となりました。
このような事業環境の中、当社グループでは、空港店舗事業、免税店舗事業、免税店舗向け卸販売のほか、空港をはじめとする交通系リテール向け土産菓子や弁当類の卸販売、ホテル・レストラン・飲食店向けの水産物・農産物・ワインの卸販売、航空機エンジン部品販売、海外空港運営事業など、多岐にわたる事業に影響が及びました。
その結果、当社グループにおける当連結会計年度の経営成績は以下のとおりとなりました。
売上高は、空港店舗・免税店舗の販売及び免税店舗向け卸販売の減少、土産菓子や弁当類の卸販売の減少、水産物・農産物・ワインの卸販売の減少、航空機エンジン部品販売の減少などにより、前期に比べ64,341百万円減の80,346百万円(前年同期比55.5%)となりました。
売上総利益は、売上高が減少した結果、前期に比べ13,322百万円減の12,518百万円(同48.4%)となりました。
営業利益(△は損失)は、売上総利益が減少した一方、歩合家賃や人件費など販売費及び一般管理費も減少した結果、前期に比べ6,885百万円減の△2,915百万円(前期は営業利益3,969百万円)となりました。
経常利益(△は損失)は、営業外収益として投資有価証券の受取配当金が増加したほか、連結子会社における助成金収入を計上、一方で、営業外費用として持分法による投資損失を計上した結果、前期に比べ7,164百万円減の△2,426百万円(前期は経常利益4,738百万円)となりました。
なお、各空港店舗の臨時休業期間中に発生した固定費(人件費・賃借料・減価償却費)726百万円を店舗臨時休業による損失として特別損失に計上しました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益(△は損失)は、前期に比べ5,447百万円減の△2,366百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益3,081百万円)となりました。
[セグメントの概況]
セグメント別の概況につきましては以下のとおりです。
なお、当社グループ企業の決算期について、国内連結子会社は3月期、海外連結子会社は12月期です。
[経営者の視点による当連結会計年度の経営成績の認識及び分析]
当連結会計年度におきましては、世界中で拡大した新型コロナウイルス感染症が経済や人々の日常生活に甚大な影響を及ぼしました。そして現在も新たに新型コロナウイルス変異株の脅威が生じるなど、未だ事態の終息が見通せない状況が続いています。日本国内においても、2度の緊急事態宣言発出などにより、人々の移動や接触は著しく制限されました。一方でこのような状況から、リモートワークの普及が加速し、日常生活においても人々の外出が控えられたことから、消費者の在宅での購買意欲の高まりが見られました。
世界の航空市場について、国際航空運送協会(IATA)は2021年2月に「2020年の航空需要は前年比65.9%減となり、航空史上、最も急激な減少」と発表しました。また、このうち国際線の需要は同75.6%減、国内線の需要は同48.8%減となり、国境を越えた人々の移動が著しく制限されたことを示す結果となりました。
このような状況の下、当社グループでは期初に、2021年3月期の対策方針として、
・「守り重視」の経営に軸足を置き、健全な財務体質を維持する
・ 収益構造をバランス化し、当社グループならではの事業ポートフォリオの最適化を図る
・ 企業ガバナンスをさらに強化し、持続的成長を実現する蓋然性の高い成長戦略を打ち出す
の3つを掲げ、販売経費の見直しや人件費削減など様々なコスト削減に取組むと同時に、非航空・空港ビジネス領域での収益力強化への取組みを加速させてきましたが、当連結会計年度における経営成績は、売上高が80,346百万円と前期に比べ45.5%減少したことから、営業損失は2,915百万円、経常損失は2,426百万円、親会社株主に帰属する当期純損失は2,366百万円となりました。
非航空・空港ビジネス領域の収益力強化に向け、空港以外の消費市場である各種小売店、コンビニエンスストアや当社ECサイト「JALショッピング」を通じ、消費者の在宅での購買意欲の高まりに応じた食品事業に注力しています。また、地方経済の持続的な成長に資するべく「地方創生・第6次産業プロジェクト」を始動し、地方の良質な産品にスポットを当て、新たなバリューチェーンの構築に尽力しています。これまで当社グループがアプローチできていない潜在顧客層をターゲットに新たな顧客づくりに注力しています。
なお、当社グループは2020年4月以降の手元現預金を通常時より増加させ、当期末時点において連結現預金残高84億円を有しています。また、2020年4月にはコマーシャル・ペーパー発行限度額を増枠するとともに、複数行とのコミットメントライン契約も増枠し(2021年6月17日時点、全額未使用)、十分な流動性を確保しています。さらに、2020年6月には複数行から長期借入金合計40億円を調達しており、長期的な安定資金を確保しています。
当社グループは、イノベーション推進による既存事業の収益力強化と新たな事業創造による収益力向上、並びにサステナビリティ推進による持続可能な社会の実現に資する事業活動に取組むことを、当社グループの成長ドライブの両輪とし、短期的な業績回復と中長期的な持続的成長に向けて最大限努めてまいります。
[生産、受注及び販売の実績]
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント分類については(セグメント情報等)に記載しています。
2.当連結会計年度において、リテール事業、航空・空港事業、フーズ・ビバレッジ事業に著しい変動がありました。これは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるものですが、その内容については「(1)業績等の概要」に記載しています。
3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント分類については(セグメント情報等)に記載しています。
2.当連結会計年度において、フーズ・ビバレッジ事業に著しい変動がありました。これは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるものですが、その内容については「(1)業績等の概要」に記載しています。
3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント分類については(セグメント情報等)に記載しています。
2.当連結会計年度において、リテール事業、航空・空港事業、フーズ・ビバレッジ事業に著しい変動がありました。これは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるものですが、その内容については「(1)業績等の概要」に記載しています。
3.最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。
4.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
5.当連結会計年度の川崎重工業㈱に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満であるため記載を省略しています。
手元流動性の確保を図るため手元現預金残高を増加させた結果、現金及び預金が増加しました。また、航空事業や不動産事業での仕入のための前渡金が増加しました。一方で、一部重工業向け航空機エンジン部品の売掛金の回収が進んだ結果、売上債権が減少しました。
その結果、流動資産は前連結会計年度末と比較して7,977百万円減少し、40,788百万円になりました。
主にリテール事業の子会社において繰延税金資産が増加しました。一方で、空港店舗の出店及び各種システム投資を行ったものの、空港店舗及びリース用資産の減損損失を計上し、有形及び無形固定資産が減少しました。また、持分法による投資損失を計上し、投資有価証券が減少しました。
その結果、固定資産は前連結会計年度末と比較して591百万円減少し、11,487百万円になりました。
一部重工業向け航空機エンジン部品の仕入債務及び航空機エンジン部品の輸入に係る未払費用の支払いが進み、また、売掛金の回収により獲得した資金とコマーシャル・ペーパーの発行及び、長期借入金の調達により、短期借入金の返済を行いました。
その結果、流動負債は前連結会計年度末と比較して8,544百万円減少し、23,159百万円になりました。
長期的な安定資金を確保するため、長期借入金の調達を実行しました。
その結果、固定負債は前連結会計年度末と比較して3,337百万円増加し、4,431百万円になりました。
配当金の支払いを行ったとともに、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことにより、利益剰余金が減少しました。
その結果、株主資本は前連結会計年度末と比較して2,998百万円減少し、23,830百万円になりました。また、自己資本比率は1.6ポイント増加し44.9%になりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、資金という)は、前連結会計年度末と比較して2,291百万円増加し、8,462百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの内容は以下のとおりです。
税金等調整前当期純損失の計上や一部重工業向け航空機エンジン部品の仕入債務及び、輸入に係る未払費用の支払いを行った一方、一部重工業向け航空機エンジン部品の売掛金の回収が進みました。
その結果、営業活動により獲得した資金は3,825百万円(前連結会計年度より2,337百万円収入増)になりました。
空港店舗の出店やシステム投資等に伴う固定資産の取得による支出を行いました。
その結果、投資活動により支出した資金は592百万円(前連結会計年度より2,152百万円支出減)になりました。
長期借入金の調達や、コマーシャル・ペーパーの発行を行いました。一方で、配当金の支払い、短期借入金の返済を行いました。
その結果、財務活動により支出した資金は917百万円(前連結会計年度より2,335百万円支出増)になりました。
当社グループの主要な資金支出は、販売商品の購入や販売費及び一般管理費等の営業費用並びに空港店舗に関する設備投資等です。
(主な資金調達方法と流動性)
当社グループは自己資金、コマーシャル・ペーパー及び金融機関からの借入金による調達にて対応しています。自己資金については、当社及び一部国内連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入することにより、各社における余剰資金を貸借することで、資金効率の向上を図っております。
コマーシャル・ペーパーについては、当社は翌年度資金計画に基づき、適切な発行上限額を定め、コマーシャル・ペーパー償還のバックアップとして、取引金融機関2行との間でコミットメントライン契約を締結しております。
借入金については、当社グループは翌年度の資金計画に基づいた、必要十分なアンコミットメント枠を取引各行と設定しております。
手元流動性については、手元現預金を通常時より増加させ、 2021 年3月期末決算において、連結現預金残高 84 億円を有しています。また、コマーシャル・ペーパー発行枠を 80 億円、複数行とのコミットメントライン契約も 80 億円( 2021 年6月17日現在、全額未使用)に増枠し、十分な流動性を確保しています。 さらに、2020年6月には複数行から長期借入金合計40億円を調達しており、長期的な安定資金を確保しています。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成にあたっては会計上の見積りを行う必要があり、期末日現在の資産・負債の金額、偶発的な資産・負債の開示及び報告対象期間の収益・費用の金額に影響を与える様々な見積りや仮定を用いており、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
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