業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(重要な会計方針及び見積り)

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りは、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるために実際の結果は異なる場合があります。

採用している重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況」における「3.重要な会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。

 

 (1) CFO/CROメッセージ


 

  カゴメの事業成長を支えるための財務経理基盤の構築

① CFOとして

企業が中長期的に成長していくために、売上の成長は必須です。第3次中期経営計画は、この売上の成長に軸足を置いています。具体的には、既存事業を中心とするオーガニックな成長に加え、M&Aなどのインオーガニックな成長を目標として掲げています。2021年度には、インオーガニックな成長のための必要資金として、自己株式の取得を行いました。成長のための投資に対する調達手段として有効に活用していきます。
 一方、第3次中期経営計画期間において、利益率の改善は大きく見込んでいません。これは、売上成長を確実に成し遂げるために必要な投資や費用の拠出を積極的に行うためです。
 こうした事業成長を、各部門とともに確実に達成することがCFOである私の役割ですが、そのためには、健全な財務基盤と適切な財務経理ガバナンスの構築が大切です。
 まず、財務基盤です。コロナ禍を経験し、私たちは健全な財務基盤の重要性を改めて強く意識しました。想定していない状況下でも事業を安定的に進めることができる財務構造を堅持する。これはカゴメの財務構造の基本だと考えています。特にインオーガニックな成長のためには多額の資金が必要となりますが、現在の財務構造から大きく変える計画はありません。
 次に、適切な財務経理ガバナンスです。これは、品質と並びカゴメの事業の礎となります。財務経理ガバナンスとは、端的に言えば、常に適切な会計処理を行う体制やルールを作り、それを実行すること、また、万が一誤謬などによりそれが損なわれてしまった場合でも、速やかにその事実が認識され、適切な対応ができる体制や仕組みです。この点において、企業理念の一つである「開かれた企業」は非常に重要な意味を持ちます。ステークホルダーに対して良いことも悪いことも、タイムリーに分かりやすく発信するという企業風土は、当社の財務経理ガバナンスを強く支える基盤になっています。

 

② CROとして

こうしたことは、リスクマネジメントの視点においても同様のことが言えます。すなわち、リスクが顕在化することを未然に防ぐための体制・仕組みの構築と、万が一起きた場合の対応の2点です。会社におけるリスクは、その全てが財務数値と直結するものではありませんが、その考え方には多くの共通点があります。事業成長を進める上で基盤となる強い財務構造の堅持及び財務経理ガバナンスの推進、リスクマネジメントの体制構築を確実に進めていきます。

 

 (2) 経営成績の分析

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、次の通りであります。

①  売上収益

売上収益は、1,896億52百万円 となり、前連結会計年度の 1,830億41百万円 に比べ、 66億10百万円の増加 ( 3.6%増 )となりました。

国内加工食品事業では、健康志向や内食需要の高まりが継続するとともに、外食需要も回復基調にあります。このような環境のもと、「野菜をとろうキャンペーン」による需要喚起効果も相まって増収となりました。国際事業においても、新型コロナウイルス感染症対策の影響などにより、外食需要が回復し、米国を中心に増収となりました。

 

② 事業利益

事業利益は、141億38百万円 となり、前連結会計年度の 135億99百万円 に比べ、 5億38百万円の増加 ( 4.0%増 )となりました。

国内事業は広告宣伝費や販売促進費の増加で減益となったものの、国際事業において、前述の米国を中心とした増収や、前期に 持分法適用会社への投資に関わる減損損失を計上したことの反動などにより、増益 となりました。

 

③ 営業利益

営業利益は、140億10百万円 となり、前連結会計年度の 106億82百万円 に比べ、 33億28百万円の増加 ( 31.2%増 )となりました。

前期に、ポルトガル子会社が保有する固定資産の減損損失を計上したことの反動などにより、増益となりました。

 

④  親会社の所有者に帰属する当期利益

親会社の所有者に帰属する当期利益は、97億63百万円となり、前連結会計年度の74億25百万円に比べ23億37百万円の増加31.5%増)となりました。

前期に前述の減損損失を計上したことの反動などにより、増益となりました。

 

以上により、当連結会計年度の売上収益は、前期比 3.6%増 1,896億52百万円 、事業利益は前期比 4.0%増 141億38百万円 、営業利益は前期比 31.2%増 140億10百万円 、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比 31.5%増 97億63百万円 となりました。

 

 

 

 

セグメント別の業績は、次の通りであります。

なお、 当連結会計年度より、前期まで国内加工食品事業の食品他に含めておりました、通販事業を独立開示するセグメント区分の変更をしております。当社は、同セグメントを成長期待事業として位置付けており、経営管理上の重要性が増したことによります。

 (単位:百万円)

セグメントの名称

売上収益

事業利益(△は損失)

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

 

 

飲料

74,270

75,480

1,209

7,669

7,165

△503

通販

12,644

13,518

873

1,441

1,272

△169

食品他

47,580

47,730

150

3,692

2,793

△899

加工食品 計

134,495

136,729

2,233

12,803

11,231

△1,572

10,189

9,542

△647

272

286

13

その他

786

1,005

218

344

64

△280

消去及び調整(注1)

△3

△71

△68

国内事業 計

145,468

147,205

1,736

13,420

11,581

△1,839

国際事業

44,344

51,681

7,336

178

2,556

2,378

消去及び調整(注2)

△6,772

△9,234

△2,462

合計

183,041

189,652

6,610

13,599

14,138

538

 

(注) 1国内事業内のセグメント間売上収益を消去しております。

2国内事業と国際事業間のセグメント売上収益を消去しております。

 

各セグメントの概要及び成果については以下の通りです。

<国内加工食品事業>

加工食品事業では、飲料、調味料、サプリメントやスープ等の製造・販売を手掛けております。

当事業における売上収益は、前期比 1.7%増 1,367億29百万円 、事業利益は、前期比 12.3%減 112億31百万円 となりました。

 

① 概要

トマト、にんじん、その他の多様な野菜を使用した野菜飲料や食品などの商品を展開しています。お子様からご高齢の方まで、幅広い世代の方々に、日常生活の様々な場面においてご利用いただくことで、野菜の摂取量を増やし、健康寿命の延伸に貢献します。

 

② 2021年度の概要(成果・課題)

 

成果

課題

 野菜飲料は、野菜摂取量を「あと60g増やす」を目指した「野菜をとろうキャンペーン」を推進し、積極的な広告投下、販促活動を実施しました。加えて、コロナ禍による健康への関心の高まりもあり、飲用機会の増加につながりました。通販はECチャネルの利用拡大により、「つぶより野菜」などの野菜飲料、「スルフォラファン」などのサプリメント、野菜スープが好調に推移しました。飲料、通販、食品他、すべてのカテゴリーで売上収益は増収となりましたが、売上拡大のための販売促進策や広告の投下、下期の原材料・エネルギー価格の高騰を受け事業利益は減益となりました。

 国内加工食品事業は、当社の中核事業であると同時に利益の源泉です。特に、売上・利益ともに野菜飲料への依存が高い構造となっています。今後、世界的な原材料価格や物流コストの高騰が予想される状況において、トップラインの持続的な成長による利益の獲得と原価構造改革の両面で、従来の延長線上にない新たな取り組みを進めます。特に、既存領域の継続的なバリューアップとともに、植物性ミルク・プラントベースフード・植物性サプリメントなどの新たな領域への拡大により、売上・利益拡大因子の複線化を図っていきます。

 

 


 

③ 第3次中期経営計画での重点事項

 >「野菜をとろうキャンペーン」を中心に、生活者と野菜の接点を多様化<
 新型コロナウイルス感染症拡大により、生活者のライフスタイルや食に対する意識・行動が、この数年で大きく変化しました。そのような中、需要創造の活動の中心に「野菜をとろうキャンペーン」を据え、これまで以上に野菜摂取推進の活動を強化していきます。特に生活者と野菜の接点を拡大するため、チャネル適性に応じた荷姿の開発をはじめ、業務用ユーザーのご要望に応じた加工度の野菜素材など、野菜の提供形態の拡充を図っていきます。また、野菜飲料の新たな価値情報の発信に加え、伸長している野菜スープの強化など、多様な野菜摂取の強化を進めていきます。家庭用・業務用の垣根を越えて、生活者の食シーンへの対応力をさらに磨いていきます。 

2025年度目標

 

売上収益

1,530 億円

 

事業利益

131 億円

 

※オーガニック成長のみを表示

 

 

バリューチェーン分析による本事業の強み・弱み

STRENGTH 強み

■ 120年の歴史に培われたカゴメのブランド力

■ 畑から関与する原料調達力、品質保証力

■ 素材の力を活かした機能性研究・商品開発力

■ 幅広い商品カテゴリーを持ち、幅広い販路に到達し、ソリューションの提供ができる営業力

WEAKNESS 弱み

■ 環境変化への臨機応変なバリューチェーンの柔軟性

■ 幅広いカテゴリー対応維持のための営業力などの資源分散

■ コモディティ市場における価格競争力

■ 若年層への到達力

成長機会の取り込み

―持続的な成長に向けて―

リスクへの対応

―資本コストの低減―

■ 生活者の健康、野菜摂取志向のさらなる上昇に対応した、新たな商品の提供

■ コロナ禍により加速した生活者の購買行動と、流通の変化に伴う、戦略的な資源の投下

■ 生活者のブランド選択の変化への対応

■ デジタル化による生活者との新たな情報、購買接点の拡大

■ 為替、相場をはじめとする不安定な原料調達に対する、調達国・エリアの分散

■ 低価格圧力の拡大に対する、付加価値型商品の提供

■ 既存領域における相対的な価値低下に対応する、新たな価値の持続的な創出

 

 

④ 中長期的な価値創造に向けて

 生活者の健康管理や環境に対する意識の高まりに伴い、植物性ミルクやプラントベースフードに対する関心が大きく高まっています。当社では先行的にプラントベースフードの商品開発に取り組んできましたが、この植物性領域でのおいしさの実現には、当社が従来取り組んできた、自然の恵みを最大限に活かし添加物に頼らない設計を心掛けるモノづくりのノウハウが活かされています。また、野菜の繊維、野菜だし、野菜エキスなど、当社が持つ多様な原料がプラントベースフードのおいしさを支える素材


として用途を広げつつあります。これまでの商品開発で培った素材の価値を引き出す技術を用い、さらには環境に配慮した容器包材を使用した新商品「畑うまれのやさしいミルク」を、2022年3月に発売します。
 今後も多様な生活者の健康期待に対し、新たな取り組みを進め、持続的な成長とともにお客様の健康寿命の延伸に貢献していきます。 

 

 

<国内農事業>

農事業では、主に生鮮トマト、ベビーリーフ等の生産・販売を手掛けております。

当事業の売上収益は、前期比 6.4%減 95億42百万円 事業利益は前期比 5.1%増 2億86百万円 となりました。

 

① 概要

生鮮トマトやベビーリーフなど生鮮野菜の生産・販売を中心に「野菜の会社」を体現すべく事業活動を進めています。

生産から消費までのバリューチェーンの高度化を図り、安定的な収益を獲得するとともに、「日本農業の振興」と「健康寿命の延伸」の社会問題解決に貢献します。

 

② 2021年度の概要(成果・課題)

 

成果

課題

2021年1月より、意思決定の迅速化、生産性の向上、アライアンスの推進、ガバナンスの強化を目的として、国内農事業を会社分割によりカゴメアグリフレッシュ株式会社に移管し、新たな体制にて事業を推進しました。
 営業面では、全社の「野菜をとろうキャンペーン」と連動し、生鮮トマトやベビーリーフパッケージに「平野レミさんおすすめメニュー」を掲載して需要喚起を行いました。生産性向上の取り組みでは、菜園でのIE手法を取り入れた作業効率向上や受発注業務のシステム化など事業基盤整備を進めました。家庭園芸やアグリサポートなど新規事業の育成も進めたことにより、利益を産み出すことができました。

 2021年度は1月から4月にかけての生鮮トマト市況低迷による販売単価下落、7月以降の猛暑や長雨などによる夏秋期における生鮮トマト取扱量の大幅減少など、想定を超える外部環境悪化の影響を受けました。しかし、新体制での様々な取り組みを進めた結果、減収ながら増益は確保しました。引き続き収益構造改革に取り組み、市況影響を受けにくい事業構造への転換を推し進めることが最大の課題と捉えています。
 また、収益の安定化とともに事業の成長を実現するためには、新たな成長領域の開発も課題と捉えています。日本の「農業振興」や「健康寿命の延伸」など社会課題解決にも貢献できるように、農分野での成長領域開発に取り組んでいきます。

 

 


 

③ 第3次中期経営計画での重点事項

 >安定的に利益獲得できる企業体質への転換と新たな成長領域の開発<
 安定的に利益を確保する体質への転換のため、中核の生鮮トマト事業では粗利額の最大化に取り組みます。関連部門との連携を強化し、「KAGOMEトマトブランド」の認知率向上と、顧客接点拡大に取り組むとともに、「高リコピントマト」「高GABAトマト」などの付加価値商品の販売構成を上げ、市況の影響を受けにくい構造へシフトします。また、環境制御技術の導入やエネルギー利用効率改善などにより、低市況でも利益を確保できるコスト構造を実現します。新たな成長領域の開発としては、トマトやベビーリーフに次ぐ生鮮野菜の開発・育成に取り組みます。家庭園芸事業では「植育」をコンセプトとした野菜を育てる楽しさの提案を通じて、お客様との関係性構築と販路拡大を進めます。

2025年度目標

 

売上収益

112 億円

 

事業利益

7 億円

 

※オーガニック成長のみを表示

 

 

 

バリューチェーン分析による本事業の強み・弱み

STRENGTH 強み

■ 生鮮トマトでのナショナルブランドの確立

■ トマトの高度な品種開発力、生産調達力、マーケティング力

■ 自社営業網・物流網による周年供給力と販売網

■ 機能性成分や残留農薬の分析による品質保証体 

  制

WEAKNESS 弱み

■ 生鮮トマト特有の市況や数量増減のボラティリティへの対応力不足

■ 生鮮トマトのコモディティ市場における価格競争力の低下

■ 労働集約型の施設園芸分野における生産自動化の遅れ

■ トマト、ベビーリーフ以外の野菜の品種、産地、流通などの生産基盤の不足

成長機会の取り込み

―持続的な成長に向けて―

リスクへの対応

―資本コストの低減―

■ 政府による「農業の成長産業化と活性化」政策の推進

■ ロボット・AI・IoTを活用したスマート農業や環境制御技術の開発進展

■ 生鮮野菜の販売チャネルの多点化と健康志向の高まり

■ ESG投資やSDGsなど農業分野での関心の高まり

■ 大型温室の増加による競争激化への対応

■ 人件費、エネルギー費、資材費、物流費などのコスト上昇への対応

■ 気候変動による栽培適地の減少や新たな病害虫の発生への対応

 

 

④ 中長期的な価値創造に向けて

「先進的で持続可能な農ビジネスを構築し、日本の農業をアグレッシブにリフレッシュする!」ことを目指して価値創造を進めます。そのために、品種開発力×技術力×調達力×営業力を、社内外との業務連携により高め、生鮮野菜の生産から消費までのバリューチェーンの高度化を推進します。
 具体的には、研究開発部門と連携した新たな高機能性野菜の開発、最新テクノロジーを活用した植物体モニタリング技術や収穫ロボットなどの研究・開発、AIを活用した出荷予測技術の導入など、先進的なバリューチェーンへの変革に取り組みます。サプライチェーンの高度化を通して、高付加価値化した生鮮野菜や関連商品を拡充することにより、消費者の多様化


する健康ニーズに応えていきます。また、環境配慮型設備の再整備による菜園CO2排出量の削減など、環境への取り組みも積極的に進めます。これらの取り組みにより、日本の「農業振興」「健康寿命の延伸」など社会問題解決にも貢献していきます。

 

 

 

<国際事業>

国際事業では、種子開発から農業生産、商品開発、加工、販売まで垂直統合型ビジネスを展開しております。

当事業における売上収益は、前期比 16.5%増 516億81百万円 、事業利益は、前期比14倍の 25億56百万円 となりました。

 

① 概要

インオーガニック成長を視野に入れた米国業務用ビジネスの拡大と既存事業のポートフォリオ拡充により国際事業の売上成長を実現させます。

 

② 2021年度の概要(成果・課題)

 

成果

課題

 新型コロナウイルス感染症の影響で大きく落ち込んだ外食需要の回復などにより増収増益となりました。

 米国のKagome Inc.は、外食需要の回復基調により、新規顧客を含むフードサービス企業向け販売が好調に推移したほか、生産性の向上や固定費の削減による利益貢献もあり、増収増益となりました。ポルトガルのHIT社は主力商品であるトマトペースト価格の上昇や2020年度の減損による収益性の改善などで増益となりました。Kagome Australia Pty Ltd.は、グループ向けに販売しているにんじん濃縮汁の生産規模拡大に伴い、増収増益となりました。台湾可果美は、家庭向け新商品の導入や外食チェーン向け販売が好調に推移し、増収増益となりました。

2020年度までに、ポルトガルHIT社が保有する固定資産の減損損失を計上するなど、川上であるトマトの一次加工の生産規模を適正化し、収益構造が改善しました。今後は川下の二次加工において、米国市場全体を対象としたB to Bセグメントをさらに強化し、「収益安定化」から「成長」のステージへ移行させていくことが課題です。
 そのためには、インオーガニックな事業成長も視野に入れた売上成長の実現が必須となります。また、世界的な原材料価格や物流コストの高騰も大きな課題であり、生産性の向上や固定費の削減をさらに進めるほか、価格改定などにより、利益を確保していくことが求められます。

 

 


 

③ 第3次中期経営計画での重点事項

>インオーガニック成長を視野に入れた米国業務用ビジネスの拡大<

 米国でのインオーガニックな事業拡大を視野に入れ、米国成長戦略プロジェクト室を設置しました。米国におけるB to B事業領域での資源獲得機会を探索していきます。その他の地域においては、子会社ごとに事業、商品ポートフォリオを拡充し、グループ間連携による売上拡大を目指します。B to C事業領域では、引き続きアジア圏への野菜飲料の輸出を強化していくほか、アジア圏以外も含めた海外展開について検討を進めます。また、品質保証の基盤である「KBMP」を各子会社で定着させ、継続的に品質改善や生産性の向上に取り組み、コスト上昇による影響を最小限に抑えて利益の確保に努めていきます。

2025年度目標

 

売上収益

526 億円

 

事業利益

28 億円

 

※オーガニック成長のみを表示

 

 

 

バリューチェーン分析による本事業の強み・弱み

STRENGTH 強み

■ フードチェーンに向けたメニュー提案によるソリューション力

■ グローバルなトマトの一次加工ネットワーク

■ グループ会社共通の品質管理基準の展開による品質力

WEAKNESS 弱み

■ 一次加工など川上ビジネスにおける収益ボラティリティ

■ 購入額の大きい特定顧客への依存度の高さ

■ B to Cにおけるブランド認知の不足

成長機会の取り込み

―持続的な成長に向けて―

リスクへの対応

―資本コストの低減―

■ 米国の外食産業でのQSR(Quick Service Restaurant)及びファストカジュアル業態への提案強化

■ コロナ禍での簡便食・テイクアウト・デリバリーニーズを捉えた小型容器商品などの開発

■ 生活者の健康意識が高まるアジアでの野菜飲料の拡大

■ 一次加工でトマト以外の野菜や果実加工品の生産可能性検討

■ インオーガニック成長も含めた新規顧客の開拓と高付加価値商品へのシフト

■ 野菜飲料の価値伝達や独自素材の使用による差別化とブランド確立

 

 

④ 中長期的な価値創造に向けて

当社の国際事業は、トマト加工品の業務用ビジネスを中心に拡大してきましたが、中長期的に当社の国内事業の中核である野菜飲料を世界の消費者に販売することで、「野菜をジュースでとる」ことの健康価値、おいしさ、楽しさを伝え広め、世界各国の人々の「体の健康」と「心の健康」を促進していきます。


10年後の全社収益に貢献できる事業規模を目指し、第3次中期経営計画期間は「仕込み期間」として、現在野菜飲料を輸出販売しているアジア地域の需要創造活動と販売チャネル構築を進めるほか、アジア地域以外での海外展開の選択肢を検討します。また、子会社の台湾可果美では、現地製造の「野菜生活100」シリーズの販売を始めており、同社との連携を強化してラインナップの拡充を図ります。日本で培ってきた野菜飲料の開発・製造のノウハウに加え、現地での徹底的なマーケティング活動によって、市場ニーズに適合した商品を投入し、習慣飲用者を獲得して事業の基盤を築いていきます。

 

 

なお、今後の見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通りであります。

また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載の通りであります。

 

 

(3)財政状態の分析

当連結会計年度末は、資産合計につきましては、前期末に比べ 97億4百万円減少 いたしました。

流動資産につきましては、前期末に比べ 180億81百万円減少 いたしました。

これは、「営業債権及びその他の債権」が 15億52百万円 、「棚卸資産」が主に原材料価格の高騰に備えた在庫の積み増しにより 48億45百万円 それぞれ増加したものの、「現金及び現金同等物」が、前連結会計年度に実行した新型コロナウイルス感染症拡大による資金調達環境の逼迫等に備えた短期借入金の返済や、配当金や法人所得税の支払いなどにより 255億37百万円 減少したことによります。

非流動資産につきましては、前期末に比べ 83億77百万円増加 いたしました。

これは主に、「有形固定資産」が 76億22百万円 増加したことによります。

主な内容は、富士見工場のリニューアル51億64百万円をはじめとした当社の製造設備の更新、 ポルトガル子会社であるHolding da Industria Transformadora do Tomate,SGPS S.A.の排水処理施設などの建設11億60百万円を含む 固定投資による増加133億12百万円、減価償却費による減少65億77百万円となります。

負債につきましては、前期末に比べ165億95百万円減少いたしました。

これは、主に「営業債務及びその他の債務」が 15億62百万円増加 、「長期借入金」が 23億64百万円増加 たものの、先述の通り短期借入金の返済により、「借入金」が210億28百万円減少したことによります。

資本につきましては、前期末に比べ 68億90百万円増加 いたしました。これは、「自己株式」の取得及び処分により 24億59百万円 減少したものの、「利益剰余金」が主に「親会社の所有者に帰属する当期利益」により 97億63百万円 増加、剰余金の配当により 32億19百万円 減少したことにより 65億4百万円 増加したこと、「その他の資本の構成要素」が主に主要通貨に対する円安が進行したことにより 24億67百万円 増加したことによります。

この結果、親会社所有者帰属持分比率は 54.6% 、1株当たり親会社所有者帰属持分は 1,328円36銭 となりました。

なお、上記の自己株式の取得については、第3次中期経営計画の実施に先立ち、機動的な事業拡大への投資を視野に、資本効率の向上を通じた株主利益への貢献を目的として実施したものとなります。

 

(4)連結キャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、 312億31百万円 となり、前連結会計年度末比で 255億37百万円減少 いたしました。

各キャッシュ・フローの状況は次の通りであります。

営業活動によるキャッシュ・フローは、約 147億96百万円の純収入 (前期は204億42百万円の純収入)となりました。この主要因は、税引前利益が約 138億80百万円 となったこと、減価償却費及び償却費が 74億95百万円 (以上、キャッシュの純収入)、法人所得税等の支払いにより 45億45百万円 支出したこと(以上、キャッシュの純支出)によります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、約 141億62百万円の純支出 (前期は33億98百万円の純支出)となりました。この主要因は、前述の製造設備の更新などによる、有形固定資産及び無形資産の取得(投資不動産含む)により 148億23百万円 支出(前期は61億7百万円支出)したことによります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、 276億52百万円の純支出 (前期は 121億4百万円 の純収入)となりました。これは、主に先述の通り短期借入金の減少により 231億45百万円 、配当金の支払いにより 32億19百万円 、それぞれ支出があったことによります。

 

(資本の財源及び資金の流動性)

 

① 財務戦略の基本方針

当社グループは、安定した財務体質のもと、成長投資と利益還元を両立することを財務戦略の基本方針としています。

 

(a) 財務基盤の安定

自己資本比率※ 50% 以上

信用格付 シングル A の維持

 

持続的な成長を支え、景気変動の影響に耐えうるには、財務基盤の安定維持が前提となります。第3次中期経営計画におけるM&Aを含むインオーガニック成長に必要な資金は、オーガニック成長により獲得した利益及び、自己資本比率50%を維持する範囲内での借入や自己株式の活用を想定しています。事業拡大による成長を図りつつ、信用格付けシングルAの維持と、自己資本比率50%以上を保つことで、財務安全性を確保しています。

※親会社所有者帰属持分比率


 

(b) 資本効率を重視した成長

ROE 9%以上

 

第3次中期経営計画においては、資本効率を重視した成長を図ります。資本を効率的に活用できていることを測る指標としてROEをKPIとして管理します。本中期経営計画においては、ROE9%以上を計画としています。資本効率の向上を図りながら、経営環境の変化に応じた機動的な資本政策を進めます。

 

(c) 安定的な利益還元

総還元性向 40% 以上

安定的、継続的な株主還元 自己株式の取得

 

第3次中期経営計画においては、配当及び自社株買いを含めた総還元性向が40%以上となるよう安定的・継続的 に株主還元を行う予定です。また、第3次中期経営期間における配当計画については、38円以上を安定的に配当することとしております。

 

 

② 資金調達及び資金需要、キャッシュ・フロー計画

 

第3次中期経営計画においては、オーガニック成長に向けた戦略やDX、環境投資等として約450億円の投資を見込んでいます。また、自己資本比率50%を維持する範囲内での借入や自己株式の活用により、M&Aを含めたインオーガニック成長のための事業投資に300~500億円の投資を検討しております。なお、債券格付けシングルAを取得しており、外部からの資金調達に関しては問題なく実施可能と認識しています。


③ 資本効率を高める取り組み

当社では、従前より収益項目に関するKPIを設定し目標管理を行っていましたが、利益だけではなく、それを獲得するために投下した資本の適切性や効率性を測定するため、2021年度よりカゴメROIC(*)による管理を導入しました。

 

これにより、貸借対照表項目を各要素に分解し、改善すべき課題を明確にすることを目的としております。なお、カゴメROICでは、獲得したEBITDAに対して投下した資本の効率性を測定しております。2021年度における当社の取り組みは、債権の回収サイト短縮に向けた交渉や出荷計画の精度向上による製品在庫の削減、販売状況に合わせた原材料在庫のコントロールを中心に取り組みました。

第3次中期経営計画においては、資産効率の良い経営を行うことが出来ているか否かも可視化するため、取り組みが改善につながっているか継続的にモニタリングを行うことを計画しております。なお、将来的には事業別に資本コストとROICとの比較などを行い、各事業の効率性を検証し、効率的に利益を稼ぐことで企業価値の向上を目指してまいります。

* カゴメROIC:EBITDA÷投下資本

 

(ROICツリー展開)

当社においては、ROICツリーを資本効率を高めるためのコントロールドライバーとして活用しております。ROICツリーの展開により、ROICからブレイクダウンしたBS指標を各部門のKPIに落とし込むことで、これに基づくアクションプランを各社・各組織にて設定し、自律的にPDCAを回すことで指標の改善を図っております。その上で、各部門にて効率を意識した改善活動を行い、最適な生産体制の構築をはじめとした取り組みを進めてまいります。

 


 

 

④ 効率的な投資を実行するための体制

 

設備や事業への投資においては、社内専門部署の選抜メンバーで構成される投資委員会により、各部署から起案された投資について採算性やリスク評価を踏まえた審査を経て決定されており、投資後のモニタリングを実施し、その効果を確認しています。同委員会の確認を受けた議案が経営会議や取締役会へ上程され、正式な審議を受けています。


 

 

(生産、受注及び販売の状況)

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメント毎に示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

 

 

飲料

32,140

△0.6

通販

731

△4.0

食品他

17,143

1.4

加工食品 計

50,015

0.0

2,776

3.3

その他

178

△17.1

国内事業 計

52,970

0.1

国際事業

40,899

25.0

合計

93,870

9.6

 

(注) 1  金額は製造原価によっております。

2  金額は消費税等を含めておりません。

 

b. 受注状況

主要製品の受注生産は行っておりません。

 

 

 

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

構成比(%)

前期比(%)

 

 

飲料

外部顧客に対するもの

75,480

 

1.6

セグメント間取引

 

75,480

39.8

1.6

通販

外部顧客に対するもの

13,518

 

6.9

セグメント間取引

 

13,518

7.1

6.9

食品他

外部顧客に対するもの

47,730

 

0.3

セグメント間取引

 

47,730

25.1

0.3

加工食品

外部顧客に対するもの

136,729

 

1.7

セグメント間取引

 

136,729

72.1

1.7

外部顧客に対するもの

9,537

 

△6.4

セグメント間取引

4

 

9,542

5.0

△6.4

その他

外部顧客に対するもの

937

 

19.8

セグメント間取引

67

 

1,714.5

1,005

0.5

27.8

調整額(注1)

△71

△0.0

 

 

外部顧客に対するもの

147,205

 

1.2

セグメント間取引

 

国内事業  計

147,205

77.6

1.2

国際事業

外部顧客に対するもの

42,447

 

13.0

セグメント間取引

9,234

 

36.4

51,681

27.2

16.5

調整額(注2)

△9,234

△4.8

 

連結売上収益

189,652

100.0

3.6

 

(注) 1  国内事業内のセグメント間売上収益を消去しております。

2 国内事業と国際事業間のセグメント売上収益を消去しております。

     3  金額は消費税等を含めておりません。

4  主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社日本アクセス

34,222

18.7

34,085

18.0

 

 

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