当社グループは「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日、以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しています。
なお、経営成績に関する説明の当連結会計年度の各数値は、当該収益認識会計基準等を適用した後の数値となっていることから、前連結会計年度と比較した売上高の増減及び前期増減率は記載していません。
収益認識会計基準等の適用に関する詳細については、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](会計方針の変更)」をご覧ください。
(1) 業績全般の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は、次のとおりです。
① 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、2021年7月に景気回復の起爆剤と期待された東京オリンピック・パラリンピックが無観客開催となり、同時期に新型コロナウイルス変異株のデルタ株発生により新規感染者数が急増したことや、2022年3月下旬にまん延防止等重点措置が全面解除されたものの、相次ぐ変異株の出現により新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないことなどから引続き外食産業や観光産業を中心に経済活動は低調に推移しました。また、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻に端を発する国際情勢不安や世界経済の混乱などもあり、景気回復について予断を許さない状況が続いています。
すり身をはじめとした原材料、原油などの資源価格は、世界経済の回復基調、ウクライナ情勢、急激な円安の進行などにより高騰し、また、慢性化しつつある人手不足による人件費の増加など、さまざまなコストが想定を超えて大幅に上昇し、不安定な社会経済情勢の中でこれらの価格はさらに上昇するおそれもあり、当社グループを取り巻く経営環境はより一層厳しさを増しています。
このような状況のもと、当社グループでは、“ICHIMASA30ビジョン”(2045年度のありたい姿)を目指し、2021年7月から2026年6月までの第二次中期経営計画の初年度を迎え、“国内外のマーケットへの果敢なチャレンジを通じ、事業の成長力・収益力基盤を確立し、ファーストステージ「成長軌道」を確実に実現する”を基本方針として経営課題に取り組んでいます。
また、地球環境の維持は企業活動の持続的な成長・発展のためには不可欠であり、「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」の達成を目指し、2021年7月1日には「持続可能な社会の実現への貢献と企業価値向上を両立する」ESG経営を推進するために「一正蒲鉾株式会社 ESG経営宣言」を制定し、ステークホルダーの皆さまと協働しながらサステナブルな課題の解決に取り組んでいます。
以上により、当連結会計年度の売上高は316億36百万円、営業利益は5億45百万円(前連結会計年度比11億89百万円(68.5%)の減少)、経常利益は6億23百万円(前連結会計年度比11億82百万円(65.5%)の減少)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は5億65百万円(前連結会計年度比21億18百万円(78.9%)の減少)となりました。
セグメントの状況は、次のとおりです。
健康志向の高まりが続いているなかで、主力商品群のカニかまは魚肉たんぱくが手軽に摂れる食材として多くの支持を集めています。なかでも、期間限定商品「サラダスティック枝豆風味」は“夏のおつまみ”として、また、食べ応えのある「大ぶりカニかま」やそのリニューアル商品の「ガブリッチ 魅惑のカニかま」 は“晴れの日”の食卓シーンの主役としてたいへんご好評をいただきました。海外向けには常温商品のカニかま「Sea Salad(シーサラダ)」を開発し、アジア各国で試験販売をしており、中東方面にも輸出先を拡大しています。加えて、年末のおせち商品は、主原料・副材料のすべてが国産の「純」シリーズの蒲鉾や伊達巻が伸長しましたが、売上に関しては、収益認識会計基準等の適用および2021年5月の連結子会社マルス蒲鉾工業株式会社の清算等の減少影響がありました。
また、製造コストに関しては、主原料であるすり身価格の国際相場の高騰が続いています。これは、健康志向の高まりや新興国の経済成長による世界的なすり身需要の増加、ロシアへのウクライナ侵攻に対する経済制裁により、ヨーロッパ諸国がスケトウダラ製品の輸入をロシアからアメリカへシフトしたことも背景となっています。また、エネルギー価格は原油価格の代表的な指標の一つであるWTIが100ドル前後で推移するなど、新型コロナウイルスからの世界経済の回復やウクライナ情勢を要因として高止まりの傾向を示しています。さらには穀物等の需要拡大や主要産地の天候不順等による度重なる食油の値上げ、急激な円安の進行も重なり様々なコストの上昇が続いています。こうした状況から、当社は水産練製品、惣菜類について2022年3月1日出荷分より約5%~15%の価格改定を行いましたが、当期における利益効果は限定的でした。
以上の結果、当セグメントの売上高は 271億7百万円 、セグメント 利益(営業利益)は46百万円 (前連結会計年度は 9億24百万円のセグメント利益(営業利益) )となりました。
全般的に野菜の生育は順調に推移し、一部の野菜の品薄もあり秋以降の野菜の市場価格は前年を上回りましたが、きのこの市場価格に関しては、消費の伸び悩みと他社の増産の影響もあり、供給過多状態により軟調に推移しました。
そのような市場環境のなか、生産面においては、安定栽培や生産の効率化、品質管理体制の強化に努めるとともに、販売面においては、大容量商品や新発売の「希なり」の提案・販売強化を行いました。
以上の結果、当セグメントの売上高は 40億37百万円 、セグメント 利益(営業利益)は4億61百万円 (前連結会計年度は 7億32百万円のセグメント利益(営業利益) )となりました。
運送事業においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で国内需要が低迷し消費全体が足踏み状態にあるなか、主に気象影響による輸入青果物の取扱数量の減少に加え、設備投資に伴う減価償却費の増加および燃料価格高騰により、売上高、利益ともに前期を下回る結果となりました。
倉庫事業においては、売上高は前期を若干下回りましたが、保管効率の改善へ向けた取組強化により、利益は前期を上回る結果となりました。
以上の結果、報告セグメントに含まれないその他の売上高は 4億91百万円 、セグメント 利益(営業利益)は27百万円 (前連結会計年度は 64百万円のセグメント利益(営業利益) )となりました。
② 財政状態の状況
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は91億12百万円(前連結会計年度末比12億36百万円の増加)となりました。これは主に現金及び預金が9億97百万円並びに原材料及び貯蔵品が3億35百万円の増加によるものです。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は161億83百万円(前連結会計年度末比18億43百万円の増加)となりました。これは主に有形固定資産の減価償却の進行の一方、本社第二工場の建設仮勘定の増加によるものです。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は83億64百万円(前連結会計年度末比21億45百万円の増加)となりました。これは主に短期借入金が9億95百万円並びにその他が9億97百万円の増加によるものです。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は30億68百万円(前連結会計年度末比6億56百万円の増加)となりました。これは主に長期借入金が7億82百万円の増加によるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は138億62百万円(前連結会計年度末比2億77百万円の増加)となりました。これは主に利益剰余金の増加によるものです。
なお、自己資本比率は本社第二工場の建設に伴う総資産増加により61.2%から54.8%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)残高は、前連結会計年度末に比べ9億95百万円増加して22億82百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって獲得した資金は18億2百万円(前連結会計年度末は24億16百万円の獲得)となりました。これは主に棚卸資産の増加額が5億45百万円の計上の一方、税金等調整前当期純利益が7億84百万円及び減価償却費が13億67百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によって支出した資金は22億22百万円(前連結会計年度末は6億88百万円の支出)となりました。これは主に投資有価証券の売却による収入が2億62百万円の計上の一方、有形固定資産の取得による支出が24億81百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によって調達した資金は14億13百万円(前連結会計年度末は18億21百万円の支出)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出が12億66百万円の計上の一方、短期借入金の増加額9億95百万円及び長期借入れによる収入21億円によるものです。
(キャッシュ・フロー関連指標の推移)
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。
2 株式時価総額は、期末時価終値×期末発行済株式数(自己株式数控除後)により算出しています。
3 キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。
有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。
また、利払いにつきましては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
④ 生産、受注及び販売の実績
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しています。
2 収益認識会計基準等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度に係る金額については、当該収益認識会計基準等を適用した後の金額となっていることから、前年同期比(%)は記載していません。
(水産練製品・惣菜事業、きのこ事業)
見込生産を行っているため、該当事項はありません。
(その他)
該当事項はありません。
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しています。
2 収益認識会計基準等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度に係る金額については、当該収益認識会計基準等を適用した後の金額となっていることから、前年同期比(%)は記載していません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、本文における将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものです。
① 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の売上高は316億36百万円となりました。売上高については、収益認識会計基準等を適用した後の数値となっており、前連結会計年度と同様の基準で試算した場合、売上高の増減率は1.5%減となります。
当連結会計年度の営業利益は主原料であるすり身価格の高騰等の影響により前連結会計年度に比べて68.5%減の5億45百万円(前連結会計年度比11億89百万円の減少)となりました。なお、売上高等の詳細については、「(1)業績全般の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載しています。
また、売上総利益率及び販売費及び一般管理費比率は、収益認識会計基準等の適用によりそれぞれ6.0%減少しています。
経常利益は休止固定資産減価償却費が減少しましたが、営業利益の減少により6億23百万円(前連結会計年度比11億82百万円の減少)となりました。
税金等調整前当期純利益は、投資有価証券売却益の計上の一方、経常利益の減少及び減損損失、固定資産除却損の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益は5億65百万円(前連結会計年度比21億18百万円の減少)となりました。
② 財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態の状況の分析・検討内容については、「(1)業績全般の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載しています。
③ キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「(1)業績全般の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しています。
④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. 資本政策の方針
当社グループは、企業価値の継続的な向上を目指し、収益基礎の強化、生産設備等への投資を行っていきますが、これらの資金が効率的かつ安定的に調達されるよう、株主資本と負債のバランスを適切な水準に維持します。その際、株主資本の水準については、資本の効率性とともに、事業にともなうリスクに対して十分なレベルであることなどを考慮して決定します。
b. 資金需要の動向
当社グループの運転資金需要は、製品製造のための原材料費、労務費、経費及び販売活動等のための販売費、人件費、その他経費等です。設備投資需要は、製品製造のための建物及び生産設備等への設備投資です。
c. 資金調達の方法及び状況
当社グループの資金調達は、主に営業キャッシュ・フローを財源とする自己資金に加え、銀行等金融機関からの資金調達を有効に活用しています。銀行等金融機関からの資金調達については、設備資金及び長期運転資金は長期借入及び社債の発行を基本とし、それ以外の主に営業取引に係る短期資金は、短期借入を基本としています。また、長期性の資金調達に際して、調達コストの低減に努める一方、過度な金利変動リスクに晒されないよう金利の固定化を図るとともに、自己資本比率、ROE、ROICといった財務指標への影響度等を総合的に勘案したうえで、最適な資本構成を目指して実施しています。
d. 資金の流動性
流動性に関しては、事業活動に必要な水準の手元流動性を確保するため、金融機関とシンジケート形式によりコミットメントライン契約、当座貸越契約の締結により資金調達の十分な流動性を確保しています。
⑤ 重要な会計方針の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成に当たり、資産、負債、収益及び費用の報告に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は、実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表で採用した重要な会計方針は、「第5 [経理の状況] 1 [連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、次の重要な会計方針は、連結財務諸表における見積りの判断に影響を及ぼすものと考えています。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による会計上の見積りについては、「第5 [経理の状況] 1 [連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [注記事項](追加情報)」に記載しています。
a.固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価に当たり、事業等を基礎としてグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしています。
固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の見積りに重要な変更があった場合、固定資産の減損損失が発生する可能性があります。
b.棚卸資産の評価
当社グループは、棚卸資産の評価について、商品及び製品、仕掛品は総平均法による原価法により算定し、原材料は個別法による原価法により算定しています。なお、貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定額を計上しています。
c.その他有価証券の減損
当社グループでは、売買目的有価証券以外の有価証券のうち、市場価格または合理的に算定された価額(時価)のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額を評価損として計上することとしています。また、時価のない株式についても、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したと判断される場合は、相当の減額を行い、評価差額は評価損として計上することとしています。新型コロナウイルスの感染拡大の影響も含め将来の市況悪化または投資先の業績不振等により、新たに減損処理が必要となる可能性があります。
d.繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産に計上しています。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りとなるため、事業環境等の変化により見積りが減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 [事業等のリスク]」に記載しています。
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