業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の進行や行動制限の緩和などにより、経済社会活動は回復の動きが続いたものの、新型コロナウイルス感染症の再拡大によるサプライチェーンでの供給懸念、資源価格の上昇、ウクライナをめぐる国際情勢の悪化など、景気の先行きについては引き続き不透明な状況が続いております。

このような経営環境の下、当フジボウグループは、中期経営計画『増強21-25』において、計画期間5年間の前半3年を「高収益体質への転換と種まき」ステージと位置づけ、収益の柱とする研磨材・化学工業品・生活衣料、第4の柱を目指す化成品を軸に高収益な業態に転換を図り、各事業の成長基盤の増強に取り組みました。

この結果、当連結会計年度の売上高は前年同期比1,015百万円(2.8%)減収の35,916百万円となり、営業利益は591百万円(11.2%)増益の5,877百万円、経常利益は594百万円(10.9%)増益の6,045百万円となりました。これに特別損益、法人税等を加減した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期比139百万円(3.2%)増益の4,455百万円となりました。

なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用したことにより、売上高は3,721百万円減少しております。これを勘案しますと、売上高は39,638百万円となり、前年同期比2,706百万円(7.3%)増収となります。

 

セグメント別の経営成績は以下のとおりであります。

 

ア.研磨材事業

主力の超精密加工用研磨材のうち、シリコンウエハー用途および半導体デバイス用途(CMP)等は、旺盛な半導体需要に世界的な半導体不足が拍車をかけ、5G通信用、自動車、各種センサー用およびパソコン、スマートフォン、データセンタ―用の半導体向けの需要が拡大しました。ハードディスク用途は一部ユーザーからの受注が減少しましたが、液晶ガラス用途については、TV用大型パネル向けの需要が牽引し、堅調に推移しました。

この結果、売上高は前年同期比1,968百万円(15.0%)増収の15,137百万円となり、営業利益は148百万円(4.2%)増益の3,682百万円となりました。なお、収益認識会計基準等の適用による影響はありません。

 

イ.化学工業品事業

機能性材料、医薬中間体および農薬中間体などの受託製造は、コロナ影響の一巡による国内需要の回復に加え、サプライチェーンの見直しや中国における環境規制の影響による化学工業品生産の日本国内回帰の傾向が続いており、安定生産を継続することができました。また、売上は順調に推移しましたが、原材料費の高騰や減価償却費の上昇により、利益が圧迫されました。

この結果、売上高は前年同期比2,257百万円(16.5%)減収の11,407百万円となり、営業利益は15百万円(1.2%)減益の1,367百万円となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は3,675百万円減少しております。これを勘案しますと、売上高は15,083百万円となり前年同期比1,418百万円(10.4%)増収となります。

 

 

ウ.生活衣料事業(旧名称:繊維事業)

生活衣料事業は、コロナ禍による消費活動の制限に加え、国内市場の消費マインドの冷え込みの影響も続き、実店舗における衣料品の販売は総じて苦戦するなど、厳しい状況が続きました。そのため、顧客の購買動向に応じたより収益性の高い製品への絞り込みを行うことで、採算が改善しました。一方、インターネットなどの新規チャネル販売は、巣ごもり消費という新しい消費スタイルが生まれ定着しつつあり、堅調に推移しました。

この結果、売上高は前年同期比78百万円(1.1%)減収の6,988百万円となり、営業利益は534百万円(238.2%)増益の759百万円となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は46百万円減少しております。これを勘案しますと、売上高は7,034百万円となり、前年同期比32百万円(0.5%)減収となります。

 

エ.その他

化成品部門は、デジタルカメラ用部品および医療機器用部品については、コロナ禍以降落ち込んでいた需要が徐々に回復してきました。金型部門は、不振が長引く自動車業界の影響を受け、受注が減少しました。貿易部門は、収益性、安全性の高い取引に対象を絞り、体質改善を進めました。

この結果、売上高は前年同期比649百万円(21.4%)減収の2,383百万円となり、営業利益は74百万円(52.1%)減益の68百万円となりました。なお、収益認識会計基準等の適用による影響はありません。

 

② 財政状態の状況

(資産)

資産合計は前連結会計年度末に比べて2,742百万円増加の58,531百万円となりました。

流動資産は4,111百万円増加の22,544百万円となりましたが、これは売上債権が減少しましたが、現金及び預金などが増加したことによります。

固定資産は1,368百万円減少の35,987百万円となりましたが、これは減価償却により有形固定資産が減少したことなどによります。

 

(負債)

負債合計は前連結会計年度末に比べて471百万円減少の18,034百万円となりました。

流動負債は406百万円減少の11,476百万円、固定負債は65百万円減少の6,557百万円となりました。これは、設備関係支払手形などのその他流動負債や未払法人税等が減少したことなどによります。

 

(純資産)

純資産合計は前連結会計年度末に比べて3,214百万円増加し、40,497百万円となりました。これは、剰余金の配当による減少が1,260百万円ありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加が4,455百万円あったことなどによります。

 

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、法人税等の支払などがありましたが、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上などにより9,107百万円の収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローにつきましては、主として固定資産の取得による支出により、3,928百万円の支出となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローにつきましては、長期借入金の返済や配当金の支払などにより、1,456百万円の支出となりました。

この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べて3,743百万円増加の8,315百万円となりました。

なお、キャッシュ・フロー関連指標の推移は次のとおりであります。

 

キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2019年3月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

自己資本比率

62.7%

64.8%

66.8%

69.2%

時価ベースの自己資本比率

57.7%

63.3%

82.1%

67.7%

キャッシュ・フロー対有利子
負債比率

0.5

0.2

0.2

0.2

インタレスト・カバレッジ・
レシオ

360.8

403.8

466.1

796.8

 

(注) 自己資本比率:自己資本/総資産

 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

 キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

 インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

2 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

3 営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

ア.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

研磨材事業

12,797

10.1

化学工業品事業

15,091

10.4

生活衣料事業

3,090

△6.2

その他

2,040

49.8

合計

33,020

10.3

 

(注) 1 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については消去しておりません。

2 上記金額は有償受給取引における原材料等の仕入価格を含めた販売価格によるものであります。

 

イ.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

研磨材事業

16,815

21.1

2,873

40.6

化学工業品事業

15,770

14.6

4,057

19.6

その他

1,456

188.5

540

41.7

合計

34,042

20.9

7,472

28.4

 

(注) 1 セグメント間の取引については消去しておりません。

2 上記金額は有償受給取引における原材料等の仕入価格を含めた販売価格によるものであります。

 

ウ.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

研磨材事業

15,137

15.0

化学工業品事業

11,407

△16.5

生活衣料事業

6,988

△1.1

その他

2,383

△21.4

合計

35,916

△2.8

 

(注) 1 セグメント間の取引については消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。なお、三井化学㈱の前連結会計年度の販売高は、重要性が乏しいため記載を省略しております。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

住友商事ケミカル㈱

4,814

13.0

5,497

15.3

三井化学㈱

4,307

12.0

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

ア.財政状態
(資産)

流動資産は前連結会計年度末に比べて4,111百万円増加の22,544百万円となりました。これは現金及び預金や棚卸資産が増加したことなどによります。

固定資産は前連結会計年度末に比べて1,368百万円減少の35,987百万円となりました。これは、研磨材事業における品質向上およびBCP(事業継続計画)対応ならびに化学工業品事業における生産設備の更新等の設備投資を行ったものの、減価償却により有形固定資産が減少したことなどによります。

資産合計は前連結会計年度末に比べて2,742百万円増加の58,531百万円となりました。

セグメント別では、研磨材事業は417百万円減少の20,232百万円、化学工業品事業は74百万円減少の12,466百万円、生活衣料事業は1,165百万円減少の5,573百万円、その他の事業は57百万円増加の3,570百万円、各報告セグメントに配分していない全社資産などの調整額は4,343百万円増加の16,688百万円となりました。

 

(負債)

流動負債は前連結会計年度末に比べて406百万円減少の11,476百万円となりました。これは支払手形及び買掛金が1,212百万円増加しましたが、設備関係支払手形が1,868百万円、未払法人税等が192百万円減少したことなどによります。

固定負債は前連結会計年度末に比べて65百万円減少の6,557百万円となりました。これは、長期借入金が104百万円減少したことなどによります。

負債合計は前連結会計年度末に比べて471百万円減少の18,034百万円となりました。
 

(純資産)

株主資本は剰余金の配当により1,260百万円減少しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益が4,455百万円計上されたことなどにより、3,217百万円増加しました。

その他の包括利益累計額は、その他有価証券評価差額金の減少などにより、3百万円減少しました。

純資産合計は前連結会計年度末に比べて3,214百万円増加し、40,497百万円となりました。

 

イ.経営成績

当連結会計年度の売上高は前年同期比1,015百万円(2.8%)減収の35,916百万円、営業利益は591百万円(11.2%)増益の5,877百万円となりました。

研磨材事業では、旺盛な半導体需要に世界的な半導体不足が拍車をかけて需要が拡大し、シリコンウエハー用途および半導体デバイス用途で大幅に拡大しました。

化学工業品事業では、機能性材料および農薬中間体を中心に安定生産を継続できましたが、原材料費の高騰や前期までの大幅な設備投資による減価償却費の上昇により、微減益となりました。

生活衣料事業では、コロナ禍により、実店舗における衣料品の販売は、総じて厳しい環境が続いておりますが、顧客の購買動向に応じて、より収益性の高い製品への絞り込みを行うことで、採算が改善しました。一方で、インターネットなどの新規チャネル販売は、堅調に推移しました。原糸、布加工等の汎用および特化素材は、製販体制の再構築を図り、利益が改善しました。

その他の事業では、化成品部門は、デジタルカメラ用および医療機器用部品が、共に堅調に推移しましたが、金型部門は、自動車市場悪化の影響を受けました。貿易部門は、収益性、安全性の高い取引に対象を絞り、体質改善を進めました。

 

セグメント別の売上高・営業利益については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。

営業外収益は固定資産賃貸料が増加したことなどにより前年同期比45百万円(12.7%)増加の398百万円、営業外費用は為替差損が増加したことなどにより、前年同期比41百万円(22.1%)増加の229百万円となりました。この結果、経常利益は前年同期比594百万円(10.9%)増益の6,045百万円となりました。

特別利益は固定資産売却益2百万円などを計上し、3百万円となりました。特別損失は固定資産処分損107百万円や減損損失14百万円などを計上し、132百万円となりました。

これから法人税等を差し引いた結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比139百万円(3.2%)増益の4,455百万円となりました。

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、IT業界の景気状況や競合他社の状況、法的規制などがあります。詳細については「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

当社グループは、2021年度から2025年度を計画期間とする中期経営計画『増強21-25』を策定し、2021年4月よりこれを実行しています。中期経営計画『増強21-25』では、2025年度の連結業績目標を売上高600億円、営業利益100億円、営業利益率16.7%、ROE10%以上、ROIC10%以上、自己資本比率65%以上としております。

 

2022年3月期実績

2025年3月期目標

売上高(百万円)

35,916

60,000

営業利益(百万円)

5,877

10,000

営業利益率(%)

16.4

16.7

ROE(%)

11.5

10.0

ROIC(%)

10.6

10.0

自己資本比率(%)

69.2

65.0

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

営業活動によるキャッシュ・フローは、9,107百万円の収入となりました(前年同期比2,315百万円収入増)。法人税等の支払1,878百万円などがありましたが、税金等調整前当期純利益が5,917百万円、減価償却費が3,368百万円計上されたことなどによります。

投資活動によるキャッシュ・フローは3,928百万円の支出となりました(前年同期比1,889百万円支出減)。これは主として研磨材事業における品質向上およびBCP(事業継続計画)対応ならびに化学工業品事業における生産設備の更新等に係るものです。

財務活動によるキャッシュ・フローは1,456百万円の支出となりました(前年同期比144百万円支出増)。これは、配当金1,256百万円の支払や、借入金200百万円の返済などによります。

資本の財源及び資金の流動性につきましては、主として営業活動によるキャッシュ・フロー及び銀行等金融機関からの借入により資金を調達しております。また、複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結し、流動性を補完しております。当社グループの運転資金需要の主なものは、商品・原材料の仕入、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資資金需要の主なものは、設備投資、M&A等であります。なお、重要な設備投資の予定につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設等」に記載のとおりであります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、特に以下の事項は経営成績等に重要な影響を及ぼすと考えております。その他の重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

ア.固定資産の減損処理

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

イ.繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

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