文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当フジボウグループは、一世紀を超える歴史の中で培った技術と経験を生かし、つねに時代が求める新しい技術・製品を提供することで先端産業を支え、人・社会・地球環境にとってより豊かで持続可能な未来の創造に貢献し続けることを企業理念としております。IT関連の超精密加工用研磨材を主とした研磨材事業、医薬および機能化学合成製品等の中間体の受託生産を柱とした化学工業品事業、インナーウェアを中心とする製品に重点を置いた生活衣料事業などに積極的に経営資源を投入し、安定した収益体質の構築を目指しております。
また、健全な企業経営・会計慣行を維持し、透明性の高いキャッシュ・フロー経営を実践しております。
当フジボウグループは、持続的成長と中長期的な企業価値向上を目的として、利益目標(営業利益、当期純利益)およびROEを、また財務体質の強化を図るため自己資本比率を、それぞれ経営指標としております。
フジボウグループは、持株会社である富士紡ホールディングス株式会社と事業子会社から構成され、超精密加工用研磨材・機能性不織布を扱う研磨材事業、ファインケミカル中間体の受託製造を行う化学工業品事業、紡績・テキスタイル・アパレルを中心とする生活衣料事業、車両・自動車部品等の輸出やプラスチック成形の技術開発などのその他の事業を展開しています。
研磨材事業は、半導体デバイス(CMP)用途、シリコンウエハー用途、ハードディスク用途、液晶ガラス用途など、様々なITデバイスをその製造工程でポリシングする超精密加工用研磨材を主要製品としており、世界中のITデバイス関連企業に販売しております。最先端プロセス、次世代プロセスのITデバイス製造に対応可能な研磨材の開発を、最新の研究機器・検査機器・製造設備で、ユーザーと共同で進めております。当連結会計年度は、主力の超精密加工用研磨材のうち、シリコンウエハー用途および半導体デバイス用途(CMP)等は、旺盛な半導体需要に世界的な半導体不足が拍車をかけ、5G通信用、自動車、各種センサー用およびパソコン、スマートフォン、データセンタ―用の半導体向けの需要が拡大しました。ハードディスク用途は一部ユーザーからの受注が減少しましたが、液晶ガラス用途については、TV用大型パネル向けの需要が牽引し、堅調に推移しました。
化学工業品事業は、長年培った有機合成のノウハウを活かし、大手化学メーカーからの医薬原料、農薬、電材、機能性化学品など有機合成品の中間体の受託製造を行っております。国内有数の化学工業品受託工場を保有し、多種多様な反応に対応できる生産設備で、優れた品質管理と確実な納期対応、高レベルの環境対応、徹底した安全管理のもと、高品質と多品種・小ロットのスピード生産体制で顧客のニーズに応えております。当連結会計年度は、機能性材料、医薬中間体および農薬中間体などの受託製造は、コロナ影響の一巡による国内需要の回復に加え、サプライチェーンの見直しや中国における環境規制の影響による化学工業品生産の日本国内回帰の傾向が続いており、安定生産を継続することができました。また、売上は順調に推移しましたが、原材料費の高騰や減価償却費の上昇により、利益が圧迫されました。
生活衣料事業は、アンダーウエアを中心とする繊維製品および原糸や染色加工など高機能繊維素材の製造・加工・販売を行っております。繊維製品では、原糸紡績から製品縫製までグループ内で一貫して携わる体制で産み出す高品質を武器に、「B.V.D.」、「アサメリー」、「エアメリー」など浸透度の高いブランドで、メンズ・レディース、ハイエンドからローエンドまで幅広く展開する製品を、様々な販売チャネルで消費者に提供しております。繊維素材では、長年培ってきた紡績・加工技術を駆使して開発した高機能素材を、ファッション衣料用途から産業資材用途まで、ユーザーニーズに合わせて提供しております。当連結会計年度は、コロナ禍による消費活動の制限に加え、国内市場の消費マインドの冷え込みの影響も続き、実店舗における衣料品の販売は総じて苦戦するなど、厳しい状況が続きました。そのため、顧客の購買動向に応じたより収益性の高い製品への絞り込みを行うことで、採算が改善しました。一方、インターネットなどの新規チャネル販売は、巣ごもり消費という新しい消費スタイルが生まれ定着しつつあり、堅調に推移しました。
その他の事業は、デジタルカメラ・医療機器・自動車用部品の射出成形や金型の設計・制作を行う化成品事業、中米カリブ海地域へ向けて自動車や各種電気・工業製品等の輸出を行う貿易事業などで構成されています。化成品事業では、デジタルカメラや医療機器、自動車に欠かせない高精度のプラスチック射出成形技術で、また、自動車用部品を中心に幅広いサイズの成形機に対応できる金型の設計・制作・メンテナンスで、激しいユーザーニーズの変化に対応しております。当連結会計年度は、化成品部門は、デジタルカメラ用部品および医療機器用部品については、コロナ禍以降落ち込んでいた需要が徐々に回復してきました。金型部門は、不振が長引く自動車業界の影響を受け、受注が減少しました。貿易部門は、収益性、安全性の高い取引に対象を絞り、体質改善を進めました。
中期経営計画『増強21-25』では、未来のありたい姿から導出した2025年像と現状の延長線上の2025年像とのギャップを埋めるべく、中期的に取り組む施策を着実に実施し、事業ポートフォリオの積極的な見直しと持続可能で儲かるビジネスへの転換を図ることにより、“圧倒的なニッチナンバーワン企業” を目指します。計画期間5年間の前半3年を「高収益体質への転換と種まき」ステージ、後半2年を「非連続的成長の実現」ステージと位置づけ、収益機会の増加と提供価値の強化を施策の両輪として、『稼ぐ力』を強化いたします。同時にデジタルトランスフォーメーション(DX)の継続・深化にも取り組み、各事業の成長基盤を連続的・非連続的に「増強」していきます。さらに、社会の要請であるサステナブルな社会を創るための施策を次々と提案、実行してまいります。
計画期間の前半3年間では、環境変化に応じた事業ポートフォリオの見直し、持続可能で儲かるビジネスへの転換を段階的に進めています。主力事業として成長を続ける研磨材事業では、今後も加速していくことが予測される半導体需要に応えるため、最新の研磨評価設備を導入し、研磨材開発のスピードアップと評価精度向上を実現させ、多様かつ高度な顧客ニーズに応える生産体制の構築にも取り組みます。化学工業品事業では、更なる事業規模拡大のため、生産能力拡大に向けて様々な取り組みを促進します。生活衣料事業では、顧客の購買動向に応じたより収益性の高い製品への絞り込みとネット販売の強化を図り、ECサイトと実店舗販売を連携させ、新たな顧客開拓に取り組みます。その他の事業では、化成品事業を新規商材拡大と金型部門の強化で、重点3事業に続く第4の柱事業として育成すべく事業基盤整備を進めています。
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