課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

(経営理念)

「わたしたちは、シキボウグループのものづくり技術・ものづくり文化で新しい価値を創造します。」-安心・安全・快適な暮らしと環境にやさしい社会の実現へ-という経営理念のもと、「繊維」「産業材」「不動産・サービス」の各事業分野において、他社には真似の出来ない独自の機能や技術力を活かした商品づくりを追求すると共に、顧客ニーズに沿った商品提案やサービスの向上に取り組んでおります。

 

(長期ビジョン)

当社グループは、上記の経営理念のもと、これまで培ってきたものづくり技術・文化によって、環境や社会課題の解決に貢献してまいりました。現在の当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響で働き方・生活・価値観が大きく変わり、その中でデジタル化が一段と加速するなど変化の激しい時代となっております。また、ESG、サステナビリティ、環境問題が一気に進み、脱炭素社会の進展など不確実で先が読みにくい状況が続くものと考えられます。

このような事業環境において、更なる成長を続けていくためには、当社グループの方向性、価値観、存在価値などを長期ビジョン(ありたい姿)に描き、そのありたい姿からバックキャスト思考で、その実現に向けた経営計画を策定することが不可欠であると考え、当社創立150年である2042年に向けた長期ビジョン「Mermaid 2042」を策定いたしました。

 

「Mermaid 2042」

 あなたにもっと寄り添い、愛されるシキボウグループへ

 ・従業員にもっと寄り添い、笑顔あふれる心豊かな人生の実現に貢献します

 ・お客様にもっと寄り添い、まだ見ぬ世界を当たり前にする技術で貢献します

 ・地球にもっと寄り添い、持続可能な社会に貢献します

 

(新中期経営計画の概要)

本中期経営計画においては、コロナ禍からの復活を目指すこと、長期ビジョンの実現に向けた成長のレベルをさらに加速させることとし、新たに創ること、新たに取り組むことに挑戦してまいります。新しい取組みや施策を従業員一人一人のアクション単位にまで分解し、全員参加で取り組んでまいります。それぞれが行動を起こし、成すべきことを成すことで計画達成につなげる意味を込めて、名称は「ACTION22-24」といたしました。

 

 

〈 全体イメージ 〉


 

〈 基本方針 〉

①経営基盤の強化

◆新中核事業と位置付ける化成品事業・複合材料事業のさらなる事業規模の拡大

◆新たな市場展開に向けた設備投資(化成品事業(主として食品分野)、リネンサプライ事業)

◆新規用途・新規市場開拓による顧客の増大

◆国内・海外のグローバルネットワークの連携強化による海外市場の開拓

◆資本効率を重視した既存事業の稼ぐ力の向上と事業ポートフォリオの見直し

◆さらなる財務基盤の強化

◆従業員の計画的育成による人的資本の充実

◆生産性・業務効率向上のためのデジタル投資

 

②次の革新的成長に向けた取組

◆新中核事業に続く新たな成長の芽の育成と研究開発の推進

◆グローバル展開、成長領域への展開を支えるための多様な人材の確保と育成

 

③サステナビリティ経営への取組

◆地球環境に配慮した製品や社会課題を解決する製品のさらなる開発と販売強化

◆カーボンニュートラル社会実現に寄与する設備投資

◆従業員のエンゲージメントの向上にむけた、やりがいや働きがいのある職場・制度づくり

 

本中期経営計画「ACTION22-24」では、新中核事業と位置付ける化成品事業を次のステージに成長させるため、主力の食品用増粘安定剤の販売拡大に向けた設備投資、新中核事業に続く新たな成長の芽の育成と研究開発を推進するなど企業価値向上に向けた積極的投資を実施いたします。加えて、事業管理指標ROICを導入し、資本効率を重視した既存事業の稼ぐ力の向上と事業ポートフォリオの見直しに注力し、経営基盤を強化いたします。また、多様な人材の確保と育成により人的資本の充実を図り、グローバル展開、成長領域への展開を進めてまいります。

また、サステナビリティ経営への取組みについては、持続可能な社会の実現に向け、長期ビジョン「Mermaid 2042」の策定にあたり、サステナビリティ経営への取組みについて議論してまいりました。当社グループの事業領域は多岐にわたっており、サステナビリティ経営の根幹を成すESG課題も多様かつ広範なことから、長期ビジョン策定段階より次代を担う各事業部門の若手従業員も参画したESG分科会において、ステークホルダーへの影響度と当社グループへの影響度を軸としたマテリアリティマップを作成し、当社グループが取り組むべきマテリアリティを特定いたしました。ESG分科会は、社外取締役を含む役員による長期ビジョン策定のための議論の場において、特定したマテリアリティについて答申いたしました。その後、社長執行役員が議長を務め、全執行役員により構成する経営会議において、マテリアリティについての議論を進めてまいりました。その結果として、優先的に取り組むべき6つのマテリアリティを特定いたしました。

 

〈当社グループのマテリアリティ(重要課題)〉


 

今後、各マテリアリティと重点活動項目について具体的な対処方針と目標を定め、それらを事業戦略に組み込みます。加えてシキボウグループにおけるサステナビリティ経営に向けた取組みを統括し、定期的に取締役会に報告、提案を行うための取締役会直轄の機関を設置し、サステナビリティ経営への取組みを推進してまいります。

本中期経営計画「ACTION22-24」の遂行により、最終年度2024年度の最終目標は、連結売上高420億円、営業利益25億円、経常利益22億円、親会社株主に帰属する当期純利益15億円を計画しております。

 

(2) 目標とする経営指標

シキボウグループは、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を目的として、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益を、財務の健全性の確保を目的として、D/Eレシオ、自己資本比率を、資本の効率性の向上を目的として、ROE、ROA及びROICを、それぞれ経営指標としております。

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題

わが国経済の見通しについては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響はあるものの、ワクチン接種が進んだことにより、ウィズコロナの下、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図っていくものと思われます。しかしながら資源価格の一段の高騰、中国のゼロコロナ政策、アメリカの金融政策引き締め、ロシアによるウクライナ侵攻の深刻化はエネルギー価格や原材料価格の高騰を招き、企業収益の圧迫は避けられないものと予想されます。

このような経営環境の中、当社グループでは、コロナ禍により一時凍結しておりました「CG final 18-20」で想定していた前提条件や事業環境が大きく変化したことから、本年度を起点とします新中期経営計画「ACTION22-24」を策定いたしました。本中期経営計画は、当社グループの方向性、価値観、存在価値などを長期ビジョン(ありたい姿)に描き、当社創立150年にあたる2042年に向けた長期ビジョン「Mermaid 2042」を策定し、その実現に向けた第一ステップとしての計画となります。

 

「繊維セグメント」は引き続き国内外の自社製造拠点を活用した「Made in shikibo」商品の開発・販売を推し進めてまいります。従来のサステナブル素材や衛生加工素材に加え、新たにフェムテック(※)素材にも重点をおき、他社との協業や連携による販路拡大やグローバルネットワークの強化による海外市場開拓にも注力し、事業拡大を図ります。

(※「フェムテック」とは、「Female(女性)」と「Technology(技術)」の二つの単語をを掛け合わせた造語で、女性が抱える健康の課題をテクノロジーで解決できる商品やサービスのことを指します。)

原糸販売事業は、国内外生産拠点の連携を強化することにより差別化糸の開発と販売を推し進めつつ、海外市場に販路を拡大してまいります。また、昨年、当社の完全子会社となった新内外綿㈱との協働により国内外の商圏拡大に努め、グループ全体の収益拡大を図ります。

輸出衣料事業、ユニフォーム事業及び生活資材事業は、当社グループ工場の開発力を背景にサステナブル及び衛生加工等の差別化素材の提案販売活動を強化し、既存販路での売上拡大に加えて新規販路構築に努めてまいります。また、ニット製品販売はベトナム協力会社への技術移管及び指導を強化することにより品質面の優位性と差別化を図ってまいります。加えて海外における新たな縫製拠点の開拓も進め、さらなるグローバル展開を推し進めます。メディカル分野はマスクを中心としたフルテクト®商材の拡充を進めつつ、デオマジック®の新規販路構築も目指してまいります。

 

「産業材セグメント」では、産業資材部門は、原材料価格の高騰や国内製紙会社の生産設備の停機により、厳しい環境が続くと予想されますが、段ボール製造用コルゲーターベルト、空気清浄装置等の新規開発商品の販売拡大に努めることで、引き続き主力のドライヤーカンバス事業及びフィルタークロス事業の国内トップポジションを堅持してまいります。また、今後は、販売活動を加速し、海外事業の商圏拡大に注力してまいります。

機能材料部門は、新中核事業に位置付けている化成品事業・複合材料事業について、長期ビジョン「Mermaid 2042」を見据えて、さらなる事業の拡大に向けた取組みを進めてまいります。化成品事業は、食品用増粘安定剤の生産能力増強を目的に設備投資を計画いたします。複数の多糖類を組み合わせた増粘用配合品などを製造するブレンド事業などで最新設備を導入し、今後ますます厳しくなると予想される顧客からの品質要求に対応すると共に、設備の自動化を進め、生産性向上に努めます。植物由来の増粘安定剤は安心・安全な食品添加物として需要拡大が見込まれる商材であり、新規商品の開発や新たな用途開発に取り組みます。複合材料事業は、航空機用途の需要が新型コロナウイルス感染症拡大の影響で大きく落ち込みましたが、中長期での市場拡大が見込まれる分野であり、引き続き設備の自動化や多能工化に傾注することで生産技術力・コスト競争力を高め、需要の取り込みを図ります。また、当社が持つ製造技術を活かし、省エネルギー化や軽量化が求められる輸送機器関連、インフラや一般産業関連等、様々な分野で研究開発を進め、市場開拓に取り組みます。

 

「不動産・サービスセグメント」では、アフターコロナを見据え安定的収益基盤の維持拡充を目指します。不動産賃貸事業、リネンサプライ事業、ゴルフ場事業、物流配送事業を安定的に運営するほか、リネンサプライ事業では、大阪・関西万博を見据えた事業拡大のための設備更新と増強に取り組んでまいります。

 

なお、2023年3月期の連結業績見通しにつきましては、当社の海外連結子会社である㈱マーメイドテキスタイルインダストリーインドネシアでの火災に伴う損失額について保険金の受け取りを含んで算出しております。売上高370億円(前期比3.7%増)、営業利益17億円(同25.4%増)、経常利益14億円(同34.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益15億円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益49百万円)を見込んでおります。

 

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