課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

 当社グループは、『日東紡グループは「健康・快適な生活文化を創造する」企業集団として社会的存在価値を高め、豊かな社会の実現に貢献し続けます。』との経営理念に基づいて、時代の要請に即応し、社会の役に立つ新しい価値を創造し提供し続けることで、株主・投資家・行政・地域社会等すべてのステークホルダーと共に喜びを分かち合い、企業価値を高めていくことを目指しております。

 

(2) 中長期的な経営戦略

 2021年2月、長期ビジョン101の2nd.ステージであると同時に、2030年にありたい姿『Big VISION 2030』の実現に向けた長期戦略の1st.ステージと位置付ける『新中期経営計画(2021~2023年度)』を策定しました。

 『新中期経営計画』を着実に遂行し、持続的な社会の実現に向けた「環境・エネルギー」「デジタル化社会」「健康・安心・安全」に貢献する製品やサービスを提供することにより、全てのステークホルダーから「日東紡でよかった」と思われる企業グループを目指してまいります。

 

日東紡グループが目指す姿『Big VISION 2030』

 日東紡グループが変化の速い環境下で生き残りを図ると同時に、次の100年も持続的な成長を目指すには、中長期的な社会・経済の環境変化を踏まえて社会的課題に取り組んでいく必要があります。社会のベストパートナーとなるために、2030年に日東紡グループのありたい姿『Big VISION 2030』を再定義し、その長期戦略実行のファーストステージとなる『新中期経営計画(2021~2023年度)』では、「成長戦略の実践」「経営基盤の強化」「環境課題への取組み強化」「変革を起こす人財の育成」の4つの重点施策に取り組んでいます。

 

2030年にありたい姿『Big VISION 2030』

持続可能な社会実現のために、

 「環境・エネルギー」「デジタル化社会」「健康・安心・安全」に貢献する

 グローバル・ニッチ№1を創造し続ける企業グループ

 

 

 

日東紡の目指すグルーバル・ニッチ№1

市場の声を“聴き・捉え・フットワークよく対応する“「高感度№1企業」、そして

 独自の技術を磨き鍛えマーケット・ニーズにマッチした商品を提供する

 「高付加価値商品№1企業」を目指します。

 

 

 

グラスファイバー

・ 超スマート社会を支える電子材料分野では、技術・商品力に磨きをかけ、超極細・超極薄・スペシャルガラス分野にて世界№1企業になる

・ 複合材・産業資材分野では、提案力・対応力(スピード)・品質にてお客様の価値創造に貢献、お客様満足度№1企業となる

ライフサイエンス

・ 抗血清から試薬製造・販売を行うグローバル垂直統合事業で、免疫系血漿たんぱく診断薬分野における世界№1企業になる

繊維

・ 接着技術を活用した高機能資材の分野で世界№1企業になる

 

 

新中期経営計画の概要

<成長戦略の実践>

スペシャルガラスによる収益拡大、体外診断薬分野の販路拡大、新規商品の開発力強化、顧客価値を高めるソリューション営業力の強化

<経営基盤の強化>

景気変動に負けない筋肉質経営、事業ポートフォリオの最適化、不採算事業の見直し、IT/DX導入による技術開発・生産技術の変革

<環境課題への取組み強化>

CO2排出量の削減、リサイクル・リユースの推進、環境配慮型新商品の開発

<変革を起こす人財の育成>

イノベーション人財の育成、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、働き方改革と業務改革(デジタル・ITの活用)、従業員エンゲージメントの向上

 

 

(3) 目標とする経営指標

財務目標

 

2023年度

売上高

1,000億円

営業利益

140億円

ROE

10%

自己資本比率

55%

 

 

環境目標

 当社グループでは、「環境に関する全社方針」を定め環境目標に取り組んでおります。

 また、一元的に環境課題を把握し、課題解決への取組みを推進するため、代表執行役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設けております。2021年度は委員会を4回開催し、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)への賛同表明やCO2排出量削減を含む気候変動対策等について検討しました。また、委員会開催の都度、取締役会に報告しており、取締役会でもサステナビリティをテーマに議論を重ねております。

<CO2排出量削減>

 2050年度 目標:カーボンニュートラル実現

 2030年度 目標:CO2排出量削減 ▲30%(2013年度比)

<廃棄ガラス削減>

2030年度 目標:廃棄ガラス量の実質ゼロ達成

 

 

(4) 経営環境

当社グループは2021年4月に新中期経営計画をスタートさせ、持続可能な社会実現に向け、「環境・エネルギー」「デジタル化社会」「健康・安心・安全」に貢献するグローバル・ニッチ No.1を創造し続ける企業グループを目指しています。

当連結会計年度におけるわが国経済は、オミクロン株の流行により予断を許さない状況にありながらも、緩やかな回復が続きました。世界経済は回復基調にあるものの、原燃料価格の高騰や物流網の混乱などが顕在化し、先行き不透明な状況は継続しました。

中期経営計画初年度である2022年3月期は、台湾に高付加価値製品であるスペシャルガラスの新工場を立ち上げたほか、原繊材事業(グラスファイバー複合材)・繊維事業において事業構造改革等を遂行するなど、成長戦略の実践と経営基盤の強化のための施策などに取り組みました。

 

 セグメントごとの事業環境は以下のとおりです。

 

グラスファイバー事業 [原繊材事業、機能材事業、設備材事業]

 当社は、1938年に日本で初めてグラスファイバーの工業化に成功して以来、業界のリーディングカンパニーとして、グラスファイバーの可能性を追求してまいりました。グラスファイバーを製造する原繊工程と、グラスファイバー加工工程の双方を備え、組成開発、原繊製造、クロス加工、複合材料開発に至る一貫した生産・開発体制を保有しております。当社独自の技術を活用した商品群を展開し、高付加価値品分野でのリーダーとして地位を築いております。

 

原繊材事業

 原繊材事業においては、電子材料用途で、世界で最も細い水準にある極細ヤーンや、低誘電特性あるいは低熱膨張特性を備えた特殊な機能を持つスペシャルガラス・ヤーンを製造できる独自技術を保有しております。また、複合材用途においては、独自技術によりグラスファイバーの断面を通常の円形でなく長円形にすることで成型品の反り・ねじれを抑えるフラット・ファイバーを展開しています。

 当社はこれらの独自技術により高い競争力を有しておりますが、今後、国内外の企業の技術的キャッチアップも想定されるため、研究開発体制の一層の強化と高付加価値製品の製造能力向上を行ってまいります。

当連結会計年度においては、強化プラスチック用途の複合材の堅調な販売が続きましたが、国内大型溶融炉の定期修繕などの一過性要因に加え、下期は原燃料価格の高騰などが収益にマイナスに影響しました。 

 

機能材事業

 機能材事業では電子材料用途のガラスクロスを展開しています。ガラスクロスは絶縁性・耐熱性・寸法安定性に優れ、電子基板の基材として利用されており、当社の極薄ガラスクロスはその薄さと均一な繊維分布により、電子機器の小型・高機能化に寄与しています。また、当社独自の組成によるスペシャルガラス・クロスは、高速大容量通信に求められる低誘電率、低誘電正接、低熱膨張等の特性を持ち、データセンターや携帯基地局の高周波部材、サーバーやスマートフォンなどの半導体パッケージ基板に使用されています。

当連結会計年度においては、高速大容量通信に資する電子材料向けスペシャルガラス・クロスの伸長が収益に貢献しました。

 

設備材事業

 設備材事業では産業資材用途グラスファイバー製品とグラスウール製品を展開しています。産業資材用途グラスファイバーは、当社の技術力が評価され大型建造物用の膜材から自動車用の制振材まで幅広い用途で採用されております。取引先が多岐にわたるため個別業界の市況変動が分散され安定的な収益計上が見込める一方で、他素材との競合もあり競争環境は厳しい状況にあります。

 グラスウールは、その高い断熱性能により住宅・ビルなどの断熱材として使用されて省エネルギーに貢献するとともに、空き瓶や使用済みの窓ガラス等のリサイクルガラスを原料としているため資源の再利用にも貢献しています。当社グループはグラスウールを1949年に日本で初めて製造を開始し、現在も断熱材のパイオニアとして独自技術を保有しております。グラスウールの細繊維化を進めて断熱性能を向上させることで、環境負荷の低減に貢献しています。また、ノンホルムアルデヒドのグラスウールを開発し、安全・快適な生活の実現に寄与しています。

当連結会計年度においては、住宅向け断熱材の販売は回復基調が続いたものの、設備・建設資材向けガラスクロスの販売は低調に推移したほか、下期に原燃料価格の高騰による影響を受けました。

 

ライフサイエンス事業

 ライフサイエンス事業では体外診断用医薬品、スペシャリティケミカルス製品及び清涼飲料水の製造販売を行っています。

 体外診断用医薬品事業は、原料から最終製品をグループ内で一貫製造することにより高品質と安定供給を両立させ、特に免疫系の診断薬に強みを保有しています。国内市場では、高齢化の進展や医療費抑制に向けた治療から未病へのシフト等により診断薬の高機能化が求められています。また、海外市場において、先進国では高付加価値医療(高感度の免疫系試薬や感染症、遺伝子検査等)の需要増加、新興国では社会保険制度の整備に伴う診断機会の増加があり体外診断用医薬品の需要が拡大しております。当社グループは、国内において100種類以上の検査項目に対応した診断薬を販売しており、炎症マーカーや骨粗鬆マーカー等で大きな販売シェアを確保しております。

 スペシャリティケミカルス事業では、機能性ポリマーの製造販売を行っております。販売先の業種・分野はトイレタリー、製紙、金属、電子材料、ジェネリック医薬品と多岐にわたっており、競合の参入が難しい独自性の高い製品の研究開発・製造販売に取り組んでおります。

 清涼飲料水事業では、プライベートブランドのOEM生産を通じて個々のブランドホルダーのニーズにお応えすべく少量多品種製造を特徴としております。新型コロナウイルス感染拡大前の水準に需要が回復することは厳しいですが、通販市場の拡大など消費者行動の変化が見込まれます。

 当連結会計年度においては、体外診断用医薬品事業、スペシャリティケミカルス事業ともに国内外の販売が伸長しました。清涼飲料水事業においては、飲料生産受託の数量が緩やかな回復傾向にあります。

 

繊維事業

 繊維事業では芯地や多層構造糸等、衣料の副資材や原糸の製造販売を行っています。芯地製品は、高級レディース向け市場で大きなシェアを持ち、薄物芯地の接着技術に独自性を有しています。

当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による衣料品に対する消費マインドの変化はありましたが、人々の外出機会の増加に伴い販売は増加しました。また、構造改革では接着芯地等の開発・製造・販売を一体運営する子会社、日東紡アドバンテックス株式会社を軸に、収益改善を進めました。

 

(5) 対処すべき課題

中期経営計画の課題

『新中期経営計画(2021~2023年度)』の初年度となる当事業年度は、高速大容量通信の普及による需要拡大を見据え、台湾に高付加価値製品であるスペシャルガラスの新工場を立ち上げたほか、原繊材事業(グラスファイバー複合材)・繊維事業において事業構造改革を遂行するなど、成長戦略の実践と経営基盤の強化のための施策などに取り組みました。

 また、紛争・災害・感染症等によるサプライチェーンの分断に伴う事業経営の様々なリスクに対する強靭性を高めることがますます重要であり、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、気候変動対応や変革を起こす人材の育成に取り組みました。

 

 当社グループの取り組みは以下のとおりです。

 

ポスト・コロナへの対応

 今般の新型コロナウイルス感染拡大は、人々の行動様式や社会構造に大きな変動をもたらし、感染拡大が収束した後も変革が加速していくものと思われます。

 在宅勤務・テレワークの浸透や移動の制限は、次世代高速通信規格である5Gの進展を加速させ、通信インフラやPC・スマートフォン等のデバイスの一層の高度化・高速化が進行することが予測され、日東紡グループの独自製品であるスペシャルガラスは高速大容量通信に資する電子材料用基材であり、今後とも需要の拡大が見込まれます。

 また、「治療から未病へ」という病気に罹る前に予防・診断を強化する流れに対しても、日東紡グループが提供する体外診断用医薬品がその一助となります。

 日東紡グループの経営理念である『健康・快適な生活文化を創造する企業集団として、豊かな社会の実現に貢献する』を実践し、企業としての社会的責任を果たすべく事業継続に取り組んでまいります。

 

グラスファイバー事業 [原繊材事業、機能材事業、設備材事業]

 拡大が見込まれるスペシャルガラスの需要に応えるべく、新溶融炉の稼働による供給能力の増強を着実に実行するとともに、日本・台湾におけるスペシャルガラス・ヤーンの製造設備の増強計画を推し進め、各拠点における原繊工程、加工工程の最適な生産体制を構築してまいります。需要が拡大するスペシャルガラスの増産、拡販および高付加価値品のプロダクトミックス改善により、収益性の向上を図ります。

原繊材セグメントにおいては、複合材の構造改革効果の最大化、NEガラス・ヤーンの外販増加による収益向上を目指します。

機能材セグメントにおいては、ハイエンドのネットワーク機器向けの需要拡大期に入ること、および半導体パッケージ向けの需要がさらに拡大すると予想され、スペシャルガラス・クロスの本格的な需要増加の着実な取り込みを目指します。

設備材セグメントにおいては、住宅省エネ基準の強化を背景に、高付加価値断熱材の拡販や、コストダウンによる収益向上などを目指します。

 

ライフサイエンス事業

 体外診断薬事業においては、垂直統合ビジネスの強化を推進し、強みである免疫系診断薬の売上増を目指します。また、2022年秋に米国拠点の新建屋立ち上げを予定しており、より安定した原料供給と、グローバル・バリューチェーン体制の強化を推進してまいります。飲料事業においては、販売が新型コロナウイルス感染拡大前の水準に回復することは難しいですが、通販を強化することでお客様の変化に対応し、収益性の向上に努めます。

 

繊維事業

 収益性の改善を喫緊の課題と捉え、事業構造改革を進めるとともに、芯地事業において、衣料品のみならず生活資材・産業資材への展開を加速させ、収益性の改善を目指します。

 

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