文中の将来に関する事項は、現時点において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営方針
◇ 新中長期経営計画/サステナビリティの推進
当社グループでは、グループ企業理念として「あしたを、つなぐ」を掲げております。この企業理念に基づき、2022年4月に当社グループが今後、持続的かつ高い利益成長を実現していくために、新たな中長期経営計画を策定いたしました。
全体コンセプト |
●野村不動産グループ 2030年ビジョン「まだ見ぬ、Life & Time Developerへ」の実現に向けて、
価値創造の考え方・手法を進化・変革
●高い利益成長、高い資産・資本効率を実現。高還元と高成長を両立
●「当社グループの持続的な成長」と「持続可能な社会への貢献」を一体と捉え、サステナビリティを推進
(当社グループ経営体系図)
「将来当社グループがどういった価値を社会やお客様に提供している企業グループになりたいのか」という目指す姿を明確にすべく、「野村不動産グループ 2030年ビジョン」を定めました。そして、そのビジョンのもと、価値創造の考え方・手法を、進化させ、また変革してまいります。
野村不動産グループ 2030年ビジョン |
価値創造の進化・変革 |
本計画では、「高い利益成長と高い資産・資本効率の実現」を目指し、「国内デベロップメント事業の更なる拡大」「サービス・マネジメント分野の高い利益成長」「海外事業の着実な成長」を成長に向けた重点戦略と位置付け、計画を推進してまいります。そして、本計画を通じた当社グループの成長の成果を、しっかりとステークホルダーの皆さまに還元してまいります。
また、当社グループは、世界共通の課題である気候変動や災害の激甚化、人々の価値観の多様化など、経営・事業環境における変化に正面から向き合い、当社グループにおける2050年のありたい姿としてサステナビリティポリシー「Earth Pride-地球をつなぐ-」を策定するとともに、2030年までに特に取り組むべき重点課題(マテリアリティ)を特定いたしました。
「当社グループの持続的な成長」と「持続可能な社会への貢献」を一体として捉え、事業を通じてサステナビリティを推進してまいります。
サステナビリティポリシー(2050年のありたい姿) |
2030年までの重点課題(マテリアリティ) |
(2) 経営環境
経営環境に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 外部環境
国内外における様々な社会課題、新型コロナウイルス感染症の影響による当社事業を取り巻く環境の変化、人々の住まいや働き方等に関する価値観・志向の変化等を踏まえ、特に注視する外部環境は以下のとおりです。
■ 全社
■ 各部門 <住宅部門> ・少子高齢化の進展による市場規模の変化 ・ライフスタイルの変化・住まいに対するニーズの多様化 ・サステナビリティ・カーボンニュートラルへの消費者意識の高まり ・地域活性化・建物老朽化・木密地域の解消など再開発や建替の社会ニーズ ・デジタル技術を活用した営業手法の一般化
<都市開発部門> ・顧客の価値観の変化、個の重視、コミュニティの重視、健康重視、時間価値重視 ・サステナビリティ・カーボンニュートラルへの消費者意識の高まり ・ワークスタイルへの従業員の意識の変化 ・Eコマース・販売チャネルの多様化による購買構造の変化 ・EC化の加速による、物流拠点ニーズの高まり
<資産運用部門> ・ESG投資の拡大 ・伝統的資産運用からオルタナティブ資産運用へ ・投資対象セクターの拡大(データセンター/インフラなど) ・不動産運用のグローバル化
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<仲介・CRE部門> ・中古不動産市場の継続的な拡大 ・相続・事業承継に伴う不動産ニーズの増加 ・一般事業法人のオフバランスニーズの増加 ・機関投資家のオルタナティブ投資ニーズの増加 ・大手間のサービス競争激化、IT系新興企業の台頭
<運営管理部門> ・デジタル技術の進化 ・暮らし方、働き方の変化、入居者属性の多様化 ・労働人口減少、少子高齢化 ・建物の高経年化、スマートビルの増加、既存ビルの老朽化 ・自然災害の多発によるレジリエンスの強化
<海外部門> ・アジア住宅市場の更なる成長 ・タウンシップ開発による社会課題解決への期待の高まり ・収益不動産市場の流動性拡大
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② 当社グループの競争優位性
長年にわたる豊富な事業実績を通じて培ってきた、当社グループの競争優位性は以下のとおりです。
◆ 幅広いアセットタイプでの開発実績・ノウハウ ◆ マーケットイン発想に基づく開発力 ◆ モノ・サービスに関する品質へのこだわり ◆ グループ連携・総合力 |
<競争優位性を発揮した商品・サービス等の事例>
(3) 経営戦略
外部環境の認識及び当社グループの競争優位性を踏まえ、高い株主還元と年平均事業利益成長率8%水準を達成するため、事業ポートフォリオ戦略と部門別の成長に向けた基本方針を策定しております。
① 事業ポートフォリオ戦略
各事業の特性を活かし、高い資産効率と利益安定性を両立する事業ポートフォリオを追求していきます。
② 成長に向けた部門別の基本方針
部門 |
成長に向けた基本方針 |
住宅 |
・住宅分譲事業における「プラウド」の更なる進化(4,000~5,000戸の安定供給) ・多様化するニーズへの対応 ・再開発・建替事業の取組強化 ・ノンアセット事業の収益化 |
都市開発 |
・環境変化を事業機会に繋げる価値創造の進化・変革 ・開発利益/含み益の実現化 ・戦略的な資産入れ替え |
資産運用 |
・「賃貸バリューチェーン」を活かしたコアビジネスであるREIT事業の着実な成長 ・REIT事業に続く成長エンジンとしての私募ファンド事業の強化 ・野村グループとの協業による商品開発 |
仲介・CRE |
・リテール事業における、好調な実需を捉えた安定収益基盤の拡大 ・ミドル事業における、野村グループや金融機関等との協業による各種ニーズの獲得 ・ホールセール事業における、顧客基盤に基づくCRE提案の推進・ファンドの 投資ニーズの獲得 |
運営管理 |
・顧客満足度の高い提案型管理の強化 ・管理領域とサービスメニューの拡大 ・デジタルテクノロジーを活用した高効率かつ高品質な管理サービスの提供 ・大規模修繕工事をはじめとする受注工事の拡大 |
海外 |
・国内で培ったノウハウの活用と、現地デベロッパーとの強固なパートナーシップを 通じた、海外における品質・サービスに対する期待への対応や新たな価値の提供 |
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
① 利益目標に関する指標
国内における事業に加え、現地パートナー企業との共同投資を基本とする海外における投資・開発事業の利益及び戦略投資(M&A)の成果を適切に反映させるため、利益目標に関する指標を「事業利益」(※)とし、段階的な成長を図るべく以下のとおり中長期的な指針を掲げております。
(※) 事業利益=営業利益+持分法投資損益+企業買収に伴い発生する無形固定資産の償却費
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2025年3月期 |
2028年3月期 |
2031年3月期 |
事業利益 |
1,150億円 |
1,400億円~ |
1,800億円~ |
② 財務・資本政策に関する指標
30%水準の自己資本比率を維持しながら、事業活動を通じた付加価値の創造により持続的な企業価値向上を図り、高い資本効率と安定的な株主還元を実現するため、財務・資本政策に関する指標を「ROA」・「ROE」・「総還元性向/配当性向」とし、以下のとおり中長期的な指針を掲げております。
|
2023年3月期~ 2025年3月期 |
2026年3月期~ 2028年3月期 |
2029年3月期~ 2031年3月期 |
ROA |
4.5%水準 |
5%水準 |
5%以上 |
ROE |
9%水準 |
10%水準 |
10%以上 |
総還元性向/配当性向 |
総還元性向 40~50% |
配当性向 40%水準 |
※ROA=事業利益/期中(平均)総資産
※ROE=親会社株主に帰属する当期純利益/期中(平均)自己資本
※総還元性向=(1株当たり配当額+1株当たり自社株買い金額)/1株当たり当期純利益
※配当性向=1株当たり配当額/1株当たり当期純利益
③ 気候変動関連の目標指標
当社は、2020年11月のSBT※認定取得に続き、2022年1月には事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力で調達することを目標とする国際イニシアチブ「RE100」に加盟いたしました。これに伴い、CO2排出量削減目標(2019年度比で、2030年度までに35%削減)のほか、以下の目標を新たに設定いたしました。
<再エネ目標>
・2050年迄にグループ再エネ100%
・2023年度迄に野村不動産国内賃貸資産で再エネ100%
※当社は、2019年度比で2030年度までにCO2排出量をScope1,2とScope3において、それぞれ35%削減することを目標に
国際的イニシアチブであるSBT(Science Based Targets)の認定を2020年に取得しております。
(5) 重点的に取り組む経営施策
◇ 着実な事業の推進と利益の積上げを図るための事業ポートフォリオの構築
コロナ禍で加速した人々のライフスタイルや価値観の多様化、日々の暮らしにおけるデジタル化の進展など、急速かつ劇的な変化が継続し、加えて金融緩和局面からの政策転換に伴う、欧米を中心とした世界的な金利上昇懸念や円安・インフレの進行、ウクライナ情勢を中心とした地政学リスクの高まり等、不確実さが増しております。こうした事業環境の変化が当社グループのビジネスに中長期的にどのような影響を与えるかを見極め、適切な施策を実行し、最適な事業ポートフォリオを追求していくことが重要な経営課題であると認識しております。各部門において、重点的に取り組む施策は以下のとおりです。
<住宅部門>
住宅分譲事業において、コロナ環境下以前より、住まい・生活に関する価値観の変化を受け、「プラウド」ブランドの理念・体系の再構築、戦略的な用地取得・商品企画の推進等に取り組んでおりましたが、コロナ環境下でより加速した顧客ニーズの多様化へ適応するとともに、サステナビリティ推進やデジタルテクノロジー活用への取組みも強化し、引き続き、良質な住まいの提供に努めてまいります。
<都市開発部門>
オフィス事業において、業種・企業別にアフターコロナのオフィスの在り方に関する価値観が多様化していくことを見据え、大規模オフィスやPMOの開発に加え、サービス付小規模オフィスの「H1O(エイチワンオー)」やサテライト型シェアオフィスの「H1T(エイチワンティー)」等、戦略的な商品展開を加速・推進してまいります。
<資産運用部門>
資産運用事業において、多様化する投資家ニーズを取り込むべく、商品ラインナップの拡充等により、資金調達マーケット・不動産マーケット環境の変化に柔軟に対応できる事業体制の構築を目指してまいります。
<仲介・CRE部門>
不動産の仲介・コンサルティング事業において、高度な専門性とデジタル領域での先進性を融合させ、法人・個人を問わず、多様化する顧客ニーズにワンストップで対応し、高品質かつ充実したサービスを提供してまいります。
<運営管理部門>
運営管理事業において、管理物件における感染防止・安全確保に向けた取り組みを継続するとともに、中長期的な課題である人材不足への対応として、デジタルテクノロジーを活用した高効率なサービスの提供に取り組んでまいります。
<海外部門>
量から質を求めるフェーズに移行するアジア諸国での開発事業を中心に、事業参画機会は着実に広がってきております。引き続き、現地のニーズを把握しながら、当社グループがこれまで国内で培ってきたノウハウや強みを活かした価値創造により、良質な商品・サービスの提供をグローバルに展開してまいります。
◇ 賃貸資産ポートフォリオの戦略的入替の継続
当社グループにおいては、中長期的な視点で、賃貸資産の戦略的な入れ替えを実施し、良質な賃貸資産ポートフォリオの構築に努めるとともに、適切な時期での売却により開発利益・含み益の実現化を図り、回収した資金を再度不動産開発事業に投資することで、高い資産効率と持続的な成長を実現させる方針としております。
当連結会計年度においては、当社グループのフラッグシップ商業施設「KAMEIDO CLOCK」や、グループ直営ホテルとして関西初となる「NOHGA HOTEL KIYOMIZU KYOTO」が竣工しております。また、「東芝福岡ビル」等の物件について固定資産から販売用不動産に振り替えております。
引き続き、2024年3月期に竣工予定のオフィスビル「野村不動産溜池山王ビル」、2025年3月期以降に竣工予定となる芝浦・日本橋等の大型複合開発プロジェクトを着実に推進するとともに、国内外の不動産市況の動向を踏まえた戦略的な売却を実践し、競争力のある賃貸資産ポートフォリオの構築に努めてまいります。
◇ 価値創造の進化・変革につながるDXの推進強化
当社グループが関係する様々な事業分野においては、お客様への商品・サービスの提供におけるデジタルテクノロジーの活用が必要不可欠となってきており、急速な技術革新や革新的な新規参入企業の出現による顧客ニーズの変化等への対応が遅れた場合には、当社グループの競争優位性が低下し、業績にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。
当社の「DX戦略委員会」においては、デジタル技術の活用によりビジネスモデルそのものを変革することで競争優位性を確立する『DX領域』の審議を強化しております。また、DX・イノベーション推進部にて、新領域事業の研究・開発、イノベーション創発、DX戦略等の企画・推進・支援等を行っております。今後も、加速度的に進化するテクノロジーとそれに伴う顧客ニーズの変化を的確に把握のうえ、各部門のDXに関する重点実行テーマを選定し、デジタル技術を活用した既存ビジネスモデルの深化を進めるとともに、業態変革・新規ビジネスモデルの創出に向けた取り組みを強化することにより、当社グループの競争優位性の向上に努めてまいります。
◇ 各事業を通じたサステナビリティの具体的な取り組みの推進
当社グループは、世界共通の課題である気候変動や災害の激甚化、人々の価値観の多様化など、経営・事業環境における変化に正面から向き合い、当社グループにおける2050年のありたい姿としてサステナビリティポリシー「Earth Pride-地球をつなぐ-」を策定いたしました。「当社グループの持続的な成長」と「持続可能な社会への貢献」を一体として捉え、事業を通じてサステナビリティを推進してまいります。
また、2050年のサステナビリティポリシーを実現するために、2030年までに特に取り組むべき重点課題(マテリアリティ)として、「ダイバーシティ&インクルージョン」、「人権」、「脱炭素」、「生物多様性」、「サーキュラーデザイン」の5つを特定いたしました。
また、重点課題の進捗を測るために、気候変動や人権・ダイバーシティなどに関して計測指標(KPI)を設定いたしました。
計測指標(KPI)の詳細については、当社サステナビリティサイトをご参照ください。
https://www.nomura-re-hd.co.jp/sustainability/sustainability_policy/
当社グループは、2050年のサステナビリティポリシーの実現に向けて、社内・社外の多種多様な組織や人の共創を推進力として新たな価値創造に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
◇ ウェルネス経営の推進
当社グループは、企業が事業を継続し持続的に成長していくためには、役職員の心身の健康と安全が不可欠であると認識しております。このため、当社グループ行動指針において、「活き活きと働く、ウェルネスの実現」を掲げ、従業員が心身ともに健康で、活き活きと仕事に取り組むことができるよう「ウェルネス経営」を推進しております。また、従業員やサプライヤーの安全衛生と健康の確保を重要な経営課題と位置づけるとともに、新たな価値を創造し続けるためには多様性がもたらすイノベーションが不可欠であると認識し、さまざまな視点・考え方を持った人材が、属性にかかわらず、個性や能力を十分に発揮できるよう、ダイバーシティ&インクルージョンの推進と公正で働きがいのある職場づくりに努めております。
◇ チャレンジングな組織風土の醸成のための本社移転
当社グループは、2022年4月に策定した新たな中長期経営計画、及び2030年をターゲットとする当社グループビジョン「まだ見ぬ、Life & Time Developerへ」のもと、高い利益成長と高い資産・資本効率を実現するためには、ビジネス領域の拡大と、その基盤となる組織としての成長を継続的に行う必要があると考えており、これを実現するために、野村不動産㈱をはじめとするグループ各社の本社※を、2025年2月に竣工を予定している大規模複合開発「芝浦プロジェクト」S棟に移転することを決定しております。
本社移転プロジェクトを通じて、グループ全体でこれまで以上にチャレンジングな組織風土を醸成すると共に、都心で空・海・緑を感じながら、自らその日の働きかたをデザインする新たな働きかた「TOKYO WORKation(トウキョウ ワーケーション)」を実現していきたいと考えています。
※グループ各社の移転対象範囲については検討中です。
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