研究開発活動

5【研究開発活動】

当社グループは、主に橋梁工事の建設コスト縮減、品質向上、橋梁新製品開発および既設橋梁の維持管理、鋼構造物の生産技術、沿岸構造物の開発・実証に関連した研究開発活動を行っております。

当社グループにおける研究開発活動は、連結子会社である宮地エンジニアリング株式会社技術本部、計画本部および千葉工場技術研究所、ならびにエム・エム ブリッジ株式会社の生産・技術部、建設部が中心となり推進しております。当連結会計年度における研究開発費の総額は160百万円となっており、セグメントごとの研究開発活動の概要は以下のとおりです。

 

1.宮地エンジニアリング

 当連結会計年度における研究開発費は119百万円であり、主な研究開発の状況は以下のとおりであります。

(1)施工技術に関する研究

① 大規模更新に関する研究

高速道路各社において、大規模更新、大規模修繕に関する工事が相次いで発注されており、今後もこれに貢献できる、老朽化した橋梁や床版の架け替えを短期間で可能とする技術の研究・開発に取り組んでおります。

② 溶接技術に関する研究

 工場溶接および現場溶接の生産性向上を目的に、高能率溶接法の適用と完全溶込み溶接継手の狭開先化の研究に取り組んでおります。また、特に現場溶接作業者の高齢化や若年層の不足による現場溶接作業者の減少への対応として、小型可搬型溶接ロボットの適用拡大について研究を進めております。

③ 溶断技術に関する研究

 工場製作における厚板鋼材の切断はガス切断にて溶断しております。このガス切断工程の生産性向上とカーボンニュートラルへの対応として、切断速度のアップと溶断時のCO2排出量の大幅削減ができる水素ガス切断について検討し、適用開始しております。

 

(2)新材料・新素材に関する研究開発

  FRPの橋梁構造物への適用に関する研究

橋梁の計画的な維持管理の必要性から、今後市場の拡大が予測されるFRP検査路について、コスト削減のための構造の合理化や長支間化を実施しました。「FRP合成床版」の材料技術を生かした新たな商品として、歩道拡幅用床版や歩道橋用の取替床版、鉄道用の壁高欄、道路橋用の壁高欄型枠を実用化し、さらなる構造改善や常設足場などへの用途の拡大を図っております。また、首都高速道路株式会社と共同で開発した、地震などで生じた橋梁の段差を、道路啓開時に車両の通行を可能とする渡し板「F-Deck」は、他の道路管理者への拡販を図るとともに、緊急輸送時にも対応できる新たな商品「ダンパスデッキ」を阪神高速技術株式会社と共同で開発しました。さらに、西日本高速道路株式会社と共同開発したFRP伸縮装置は適用性に関する基礎試験、試験施工を終え、商品化のための検討をしております。

 

(3)構造・強度・検査に関する研究開発

① 鋼・コンクリート合成構造に関する技術検討

中小規模の架け替えのための合成床版橋「QS Bridge」および鋼・コンクリート合成床版「QS Slab」について、コスト削減のための構造・製作および施工に関する合理化検討と、費用対効果と市場性の観点から今後の研究の方向性の検討を継続して進めております。

② 腐食・防食に関する研究

腐食・防食に関する研究を琉球大学と共同で実施しており、腐食した高力ボルト摩擦接合継手の残存すべり耐力評価手法を実験および解析の結果から検証しております。また、鋼橋の防食性能向上のためのFRPパネルによる多機能防食デッキの適用拡大のため、実験橋による実験結果から耐風設計法に関して研究を行っております。

 

(4)新製品・新技術に関する研究開発

① 橋梁のモニタリングシステムの適用に関する検討

既設構造物の延命化技術としてモニタリングシステムを用いた構造物の健全性診断技術、補修・補強技術の開発、改良に取り組んでおります。また、施工時の安全性・品質確保へのモニタリングシステムの適用を進めており、OSMOS(光学ストランドモニタリングシステム)の無線型センサーLIRISを用いた遠隔モニタリングのNEXCO西日本における大規模更新工事などでの適用実績の拡大と、新たな適用方法の開発を進めております。

② 複合・合成構造の研究開発

従来のCFT(コンクリート充填鋼管)と比較して耐荷力・靭性の向上が期待できるRCFT(鉄筋コンクリート充填鋼管)、複合構造であるポータルラーメン橋の適用拡大等について検討を行っております。

③ 環境配慮型の新製品や新技術の研究開発

社会的要請であるカーボンニュートラルに資する環境配慮型のボルト関連製品や新製品を使用した新しい施工技術等の研究開発を行っております。

④ インフラDXへの取り組み

構造物の3次元モデルをツールとした設計や施工を行うBIM/CIMおよびドローンやレーザスキャナ、VR等を駆使したICT(情報通信技術)関連技術の導入や開発を推進するとともに、鋼構造物の製作工場および施工現場の生産性と安全性の向上を図り、働き方改革につなぐDX化の取り組みを行っております。

 

(5)施工工法等に関わる研究、取り組み

① PC業者、異種業者、補修業者との連携

既設RC床版の更新技術、特に取り替え用プレキャストPC床版に関する技術(製品、施工)をPC業者、異種業者と連携し、共同で研究することにより、現在高速道路会社で計画されている鋼道路橋の大規模改修事業に対応すべく、新工法等に取り組んでおります。また、今後本格化する補修・保全工事への対応に向け、補修業者と連携し、各種の課題に取り組んでおります。

② 送り出し工法の合理化に関する研究

当社グループで請け負う鋼桁架設工事は鉄道・道路を跨ぐ工事が多いことから、送り出し架設工法が多く採用され、限られた時間内で安全かつ急速に鋼桁を送り出すことが求められております。社会のニーズに応えるため、当社戦略機材である「ジャッキ装置付全輪駆動式高速台車」を活用することで、急速送り出し架設を実現しており、かつ送り出し架設の照査業務効率化と解析精度の向上を目的とした照査ソフトの改良にも取り組んでおります。今後もさらなる改善を行い、より安全な施工を目指してまいります。

③ 建築分野における大空間鉄骨建方の研究

当社グループの建築分野では大空間構造物である大屋根鉄骨建方工事を数多く手掛けています。今般、非対称な大屋根鉄骨ブロックの建方作業の効率化を図るため、遠隔操作で安全かつ迅速に吊上げ形状調整が可能となる玉掛装置を開発いたしました。安全性等の検証のため実物大試験を実施し、現在、難易度の高い大規模開閉ドーム鉄骨建方工事において、本装置を活用し、高所作業の効率化および安全性の向上に貢献しております。

また全長600mにも及ぶ長大な発電施設を、当社が保有する特殊機材を活用した「多機能式移動ステージ工法」により、作業の効率化を実現して施工技術の有効性を実証しております。さらに今後も難易度の高い鋼構造物の建方工事に前向きに挑戦すると共に、先端技術を取り入れて、一歩進んだ施工技術を提供できるよう研究開発を推進いたします。

④ 建築構造物およびコンクリート床版切断技術の研究

先に開発した、建築構造物の鉄骨コンクリート柱・壁および橋梁のコンクリート床版を大パネル形状で切断する完全無水式ワイヤーソーシステムを用いた「M-SRシステム」により、実橋梁のコンクリート床版を粉塵や廃水を出さずに高効率に大型パネル形状での切断撤去工事を実施し、その有効性を実証しております。さらに橋面上への影響を最少とした新工法のM-SRシステムについても、実証実験を終え高速道路床版更新時の床版撤去工事に適用すべく、更新工事に適用した効率的な急速施工の実現に向けて取り組んでおります。

⑤ 災害復旧に関する取り組み

近年、日本各地で大規模地震や異常気象に伴う豪雨などの自然災害が頻発しています。災害発生時にまず求められるのは啓開(応急復旧の前に支援ルートを確保するために道を切り開くこと)であり、大型工事車両・重機を必要としない、簡易的かつ軽量で施工性に優れる応急復旧橋およびFRP覆工板の開発を検討しております。今後も有事の際には、早期のインフラ復旧に貢献するように取り組んでまいります。

 

2.エム・エム ブリッジ

 当連結会計年度における研究開発費は41百万円であり、主な研究開発の状況は以下のとおりであります。

(1)施工技術・構造・材料・検査に関する研究開発

① 大規模更新・保全事業に関する研究

高速道路各社において需要が高まっている床版の取り替え、拡幅、架け替え工事を対象として、プレキャストPC床版の現場継手の開発を継続して進めております。

また、腐食・損傷した鋼部材の補修工法に関する研究を継続して実施しております。

② 橋梁の耐風設計に関する研究

従来は風洞試験により耐風性検討を行ってまいりましたが、風洞試験を補完する手法として期待される数値流体解析を橋梁に適用するための調査・研究を継続して実施しております。

③ モニタリングシステムの開発

点検・診断業務、保全工事で必要とされる変形や振動の計測を効率的に行うことを目的として、無線技術を活用したシンプルなモニタリングシステムの開発を行っています。

 

(2)新製品・新技術に関する研究開発

① 沿岸構造物・環境技術に関する研究・実証

環境技術に対する研究開発として、微弱電流が流れる浮桟橋で活発に生息するサンゴの生態に注目し、サンゴの移植・増殖技術の研究を継続して実施しております。

② 生産性、安全性向上に資するi-Construction技術に関する研究

国土交通省が推進するi-Constructionに関連して、ICT(情報通信技術)を活用した生産性、安全性向上に向けた要素技術の開発、試行、検証に取り組んでおります。

③ 耐震補強工事に関する研究

従来、建築・機械分野で用いられている慣性接続要素について、長大橋他の耐震補強工事に適用するための実用化研究を継続して実施しております。

 

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