当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
2022年7月期におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染者の減少に伴う行動制限の緩和や海外からの新規入国者の拡大に向けた実証実験の開始等、徐々に正常化に向けた動きがみられております。
当社の属する不動産業界におきましても、東京都におけるオフィスの平均空室率は東京オリンピックを見据えた需要拡大により、2020年2月に1.49%となっておりましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大以降、平均空室率は徐々に拡大し、2021年10月には平均空室率は6.47%となる一方、建築価額の高騰に伴いオフィス向け不動産価額は高止まりする等の不安定要素も見受けられます。他方で、リモートワークの拡大、住宅ローン金利が歴史的な低水準にあることを背景に、居住用物件の不動産価格指数(国土交通省)はコロナ禍前の2020年2月の113.6から、2022年2月に128.2と上昇傾向にあり、需要は根強い状況にあります。
こ のような事業環境のもと、当社では「中期経営計画(2022年7月期-2024年7月期)」に基づき、経営基盤の強化、企業価値の向上及び不動産テック企業としての地位の確立を目指し、事業を推進してまいりました。
当社は2022年2月16日開示の「棚卸資産の評価減の計上に関するお知らせ」のとおり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による市場減少の大きな影響を受けたインバウンド需要向け大型開発物件の売却を行い、28億36百万円の損失が発生いたしました。その結果、当事業年度におきましては、 売上高182億2百万円 ( 前年同期比4.5%減 )、 営業損失32億32百万円 (前年同期は営業 利益12億23百万円 )、 経常損失39億57百万円 (前年同期は経常 利益2億81百万円 )、 当期純損失46億88百万円 (前年同期は当期純 利益6億9百万円 )となりました。
なお、2022年3月17日開示の「繰延税金資産の取崩しに関するお知らせ」のとおり、将来の課税所得を見積もることができないため、保守的に繰延税金資産の全額を取崩し、法人税等調整額として5億21百万円を計上しております。
以上により、当事業年度末における財政状態については、総資産 188億23百万円 ( 前年同期比43.9%減 )、負債 187億57百万円 ( 前年同期比35.1%減 )、純資産 65百万円 ( 前年同期比98.6%減 )となり、自己資本比率は 0.3% となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
売上高は170億75百万円(前年同期比1.6%増)、セグメント損失24億41百万円(前年同期はセグメント利益20億36百万円)となりました。
当事業セグメントにおいては、経営計画に基づき不動産価格の方向感を見定めながら、仕入面においては当社の目利き力やノウハウを最大限活用し、駅近物件等の希少性の高い販売用不動産の選定に注力しております。販売面においては、当社の主力商品「LEGALAND」が堅調な売上を計上するとともに、報酬制度・業務委託費の見直し等により経費削減に取り組んだものの、インバウンド需要向け大型開発物件による多額の損失が発生したことから、前年同期と比較して増収減益となりました。
売上高は11億20百万円(前年同期比15.5%減)、セグメント利益1億72百万円(前年同期比42.2%減)となりました。
当事業セグメントは、当社の安定的な収益基盤の指標となるセグメントであり、当社保有の収益不動産及び販売に至るまでの所有不動産からの賃貸収入を収益の柱としております。当事業年度におきましても引き続き安定的な稼働率を維持しているものの、長期的な収益との引き合いの状況を考慮して販売用不動産を売却したための物件数の減少、及び新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるインバウンドの減少から民泊需要が減少したことにより、前年同期と比較して減収減益となりました。
今後においては、市場の状況に注視しながら物件の選定及び保有不動産の稼働維持・向上を図ってまいります 。
売上高は7百万円(前年同期比99.2%減)、セグメント損失7百万円(前年同期はセグメント利益61百万円)となりました。
前事業年度まで介護事業及び不動産コンサルティング事業における任意売却を中心とした不動産仲介を行っておりましたが、前事業年度末に売上高の大半を占める介護事業を事業譲渡したことにより、前年同期と比較して減収減益となりました。
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末と比較して7億1百万円減少し、4億96百万円となりました。
営業活動の結果、増加した資金は62億63百万円(前事業年度は75億5百万円の増加)となりました。主な増加要因は、「棚卸資産の減少額」107億25百万円であります。主な減少要因は、「税引前当期純損失」41億45百万円及び「前受金の減少額」4億34百万円並びに「利息の支払額」6億29百万円であります。
投資活動の結果、増加した資金は20億4百万円(前事業年度は5億16百万円の増加)となりました。主な増加要因は、「有形固定資産の売却による収入」19億29百万円であります。主な減少要因は、「定期預金の預入による支出」1億19百万円であります。
財務活動の結果、減少した資金は89億69百万円(前事業年度は84億63百万円の減少)となりました。主な減少要因は、「長期借入金の返済による支出」159億40百万円であります。主な増加要因は、「短期借入金の増加額」28億26百万円及び「長期借入れによる収入」41億99百万円であります。
当社が営む事業では、生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載しておりません。
当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
なお、前事業年度における信和不動産株式会社、RAS合同会社及び当事業年度におけるAP JNRP2特定目的会社、積水ハウス株式会社については、総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の分析
① 売上高の分析
当事業年度における売上高は、182億2百万円(前年同期比4.5%減)の減収となりました。当事業年度に売却処分を行った大型開発物件が当初想定していた売却価格に至らなかったこともあり、その他の不動産販売の実行による売上の補填を行ったものの、売上計画における大型開発物件の比率が高く、前年同期と比較して減収となりました。
以上の結果、事業セグメント別の売上高は、不動産ソリューション事業170億75百万円(前年同期比1.6%増)、不動産賃貸事業11億20百万円(前年同期比15.5%減)、その他事業7百万円(前年同期比99.2%減)となりました。
② 費用・利益の分析
当事業年度の売上原価は、不動産ソリューション事業においてインバウンド需要向け大型開発物件の損失28億36百万円が発生したため、売上高全体に対して売上原価が増加しており、売上原価195億5百万円(前年同期比28.2%増)、売上総損失は13億2百万円(前年同期は売上総利益38億47百万円)となりました。販売費及び一般管理費は、報酬制度・業務委託費の見直し等により経費削減に取り組んだことにより、19億30百万円(前年同期比26.5%減)となりました。この結果、営業損失は32億32百万円(前年同期は営業利益12億23百万円)となりました。
営業外収益は、補助金収入の減少などにより13百万円(前年同期比44.0%減)となりました。営業外費用は、支払利息等の金融費用の減少により7億38百万円(前年同期比23.5%減)となりました。以上の結果、経常損失は39億57百万円(前年同期は経常利益2億81百万円)となっております。なお、将来の課税所得を見積もることができないため、保守的に繰延税金資産の全額を取崩し、法人税等調整額として5億21百万円を計上したことにより、法人税等負担額は5億42百万円(前年同期比65.3%増)、当期純損失は46億88百万円(前年同期は当期純利益6億9百万円)となりました。
(2) 財政状態の分析
① 資産
当事業年度末における総資産は188億23百万円となり、前事業年度末に比べ147億40百万円減少しました。
流動資産は180億43百万円となり、前事業年度末に比べ92億92百万円減少しました。これは主として、「現金及び預金」の7億74百万円減少及び「販売用不動産」の63億80百万円減少並びに開発用不動産完成等に伴う「仕掛販売用不動産」の15億51百万円減少によるものであります。
固定資産は7億80百万円となり、前事業年度末に比べ54億48百万円減少しました。これは主として、保有目的変更等に伴う「土地」の25億8百万円減少、「建物」の24億67百万円減少及び税効果会計における一時差異の取崩しに伴う「繰延税金資産」の5億20百万円減少によるものであります。
② 負債
負債は187億57百万円となり、前事業年度末に比べ101億51百万円減少しました。
流動負債は118億22百万円となり、前事業年度末に比べ55億98百万円減少しました。これは主として、「短期借入金」の28億26百万円増加及び売却に伴う販売用不動産減少による借入金返済のため、「1年内返済予定の長期借入金」の72億76百万円減少、販売用不動産の引渡に伴う「前受金」の4億34百万円減少並びに「未払法人税等」の4億89百万円減少によるものであります。
固定負債は69億35百万円となり、前事業年度末に比べ45億52百万円減少しました。これは主として、「1年内返済予定の長期借入金」への振替や売却に伴う返済等により「長期借入金」が44億64百万円減少したことによるものであります。
③ 純資産
純資産は65百万円となり、前事業年度末に比べ45億89百万円減少しました。これは主として、「当期純損失」46億88百万円の計上及び剰余金の配当21百万円により減少したものであります。自己資本比率は、前事業年度末の13.9%から0.3%と減少する結果となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当事業年度のキャッシュ・フローの状況及び増減要因につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
現金及び現金同等物は、前事業年度に比べ7億1百万円減少(前年同期比58.5%減)し4億96百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローについては住居系不動産取引の堅調推移等による販売実績の積み重ねによりプラスとなりました。
投資活動によるキャッシュ・フローについては、有形固定資産の売却を行った結果プラスとなりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは物件売却による短期借入金の減少および長期借入金の返済を行った結果マイナスとなりました。
今後も利益の蓄積と株主資本の充実及び徹底した在庫コントロールにより、更なる営業活動によるキャッシュ・フローの改善を図ってまいります。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社の資金需要のうち主なものは販売用不動産の仕入、建築工事費、賃貸用不動産の取得資金であり、その調達手段は主として金融機関からの短期借入金、長期借入金を基本としております。
事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、上記の財源としては現預金に加え、長期・短期の借入金を活用しております。
また、当事業年度末における借入金、社債及びリース債務を含む有利子負債の残高は175億99百万円となっております。また現金及び現金同等物の残高は4億96百万円となっております。なお、全社部門の運転資金につきましては、原則自己資金を充当しております。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因
当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、会計上の見積りを行ううえでの新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の感染拡大の影響については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(6) 経営戦略の現状と見通し
2022年7月期については新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発端とする大型開発物件の損失及び開発ボリュームのコントロール等の影響により業績を大きく落とすことになりましたが、2023年7月期については財務基盤の強化を進め、開発用地の取得を加速させることで業績回復を達成してまいります。
当社は2022年8月29日公表の「資本業務提携契約の締結、第三者割当による普通株式及び種類株式の発行、定款の一部変更、主要株主及び主要株主である筆頭株主並びにその他の関係会社の異動に関するお知らせ」のとおり、株式会社キーストーン・パートナース(以下「キーストーン・パートナース」)との間で資本業務提携契約を締結しております。これにより、キーストーン・パートナースが管理・運営するファンドが匿名組合出資を行っている合同会社エメラルドが100%出資する株式会社エルティーに対し、第三者割当増資の方法により総額約10億円の普通株式の発行及び総額20億円のA種種類株式を発行(以下「本第三者割当増資」)し、総額約30億円の資金調達を行っております。
本第三者割当増資による調達資金については主に不動産ソリューション事業における不動産開発資金として充当し、特に堅調な販売実績を上げている「LEGALAND」を中心とした物件開発を加速させることで、早期に業績を回復させてまいります。また、資本業務提携契約に定める、キーストーン・パートナースとの不動産アセットに対する共同投資、デッドサービスの提供による金融取引の安定化等により収益性の高い事業基盤の確立を進めると共に、不動産DX各種サービスの事業化によって更なる当社独自の強みを創造してまいります。
上記の方針で事業を進め、2023年7月期については、売上高199億43百万円(前年同期比9.6%増)、営業利益10億13百万円(前年同期は営業損失32億32百万円)、経常利益3億30百万円(前年同期は経常損失39億57百万円)、当期純利益2億79百万円(前年同期は当期純損失46億88百万円)を見込んでおります。
(7) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、安定的かつ継続的な成長を重視し、財務活動等を含んだ企業の総合的な収益力を示す経常利益を指標とし、企業価値の継続的向上を目指してまいります。当事業年度の経常利益は業績目標の経常損失14億76百万円に対して経常損失39億57百万円(前年同期は経常利益2億81百万円)となり、業績目標を下回りました。
また、財務基盤強化の観点から、自己資本比率も重要な経営指標として位置づけており、早期に20%以上に向上させていく方針です。当事業年度末の自己資本比率は、インバウンド需要向け大型開発物件の損失により当期純損失46億88百万円を計上したことにより、2022年7月期末自己資本比率目標の10.4%に対して0.3%(前年同期比13.6ポイント減少)となり、目標を下回りました。
なお、2022年9月30日の第三者割当増資の実行により、純資産及び自己資本比率は改善していますが、財務基盤の安定を図るため、収益の原資となる販売用不動産の取得については、厳選したうえでの取得に努めることで総資産の過度な増加を抑制するとともに、着実な利益確保により安定的に自己資本を高めていく所存であります。
各指標の推移は次のとおりであります。
(8) 経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
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