(1)経営方針
当社グループでは当連結会計年度から、グループ全体の成長を推進させるため、各事業子会社を中心にそれぞれの事業展開をしており、各事業の専門性をより強めるとともに、意思決定の早期化を図っております。不動産事業に関しては株式会社グローベルスと株式会社ササキハウスにて、再生可能エネルギー事業に関しては株式会社日本エネライズにて、投資事業に関しては株式会社オータスにてそれぞれ事業を進めております。当連結会計年度は投資事業において、保有有価証券の一部の時価下落による評価差額(差損)の計上により売上高がマイナスとなりましたが、不動産事業及び再生可能エネルギー事業の着実な業績向上と、グループ全体でコストコントールを継続して行った結果、6期ぶりの営業黒字を達成することができました。しかしながら、いずれの業界においてもグループ各社を取り巻く環境は変化し続けており、継続的に業界の動向や国内外の政治・経済情勢への注視が必要であります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大や円安による国内外の経済への影響、並びにロシアへの経済制裁による金融や輸出入の規制など、外部環境において当社グループ業績に大きな影響を与える要因が多々あります。
当社グループでは、引続きグループ各社がそれぞれの課題やリスクに対して柔軟かつ適切に対応し、健全堅実な経営を行うことで、市場環境の変化にも負けない財務体質を維持し、グループ全体の企業価値向上を目指してまいります。
これらを踏まえて、2023年3月期にて通期業績予想を達成するために重点的に行う施策は次のとおりであります。
①当社における施策
ア.グループガバナンスの向上を図り、適正なグループ運営をしてまいります。
イ.「WE MAKE CHANGES」のスローガンを基に、あらゆるビジネスチャンスにチャレンジし、M&A等による新規事業への参入や、他社との業務提携等による協業を積極的に推進してまいります。
ウ.海外不動産事業におきましては、海外子会社(プロスペクト・アセット・マネージメント・インク)を通じて、米国ハワイ州における不動産開発事業に係る資金供給及び戸建分譲プロジェクトなどを行っております。The BLOCK 803 WAIMANUプロジェクト(販売用コンドミニアム開発)並びにKulalaniプロジェクト(戸建分譲)につきましては、世界的な新型コロナウイルス感染症の影響もありプロジェクト進捗が遅延しておりますが、子会社を通じた現地建設会社の管理の徹底、販売マーケット環境への柔軟な対応をはじめ、引続き所管部署が現地関係者と連携して適切なリスク管理を行い事業の進捗を図ってまいります。
②グループ会社における施策
ア.株式会社グローベルスでは引続き不動産開発を主軸事業に見据え、首都圏のみならず関西圏において引続き高品質の住宅を開発してまいります。なお、マンション・戸建ともに用地取得費や建築コストの高騰が続いており、採算を確保することが容易でない状況は依然として続いております。また、新型コロナウイルス感染症の再拡大により、営業活動の制約が発生する場合には、当該事業の業績に多大な影響を及ぼすことも想定されます。そのため、販売コストの削減や販売の長期化を未然に防ぐ目的として、個別分譲ではなく一棟売却による売上の拡充を図ってまいります。
また新たな資金調達方法として、不動産投資型クラウドファンディング「大家どっとこむ」を運営し、当連結会計年度においては合計31案件、合計11億41百万円を募集し、大多数の案件で早期期間にて満額成立いたしました。今後も引続き株式会社グローベルスが開発・所有する予定の物件に対して資金を募集し、事業の拡充と業績の拡大を目指してまいります。
イ.株式会社ササキハウスでは引続き自社の強みである高気密・高断熱の注文住宅の受注強化を図るとともに、山形のエリア特性を活かした商品開発や既存顧客への二次営業などにより収益力の向上を目指してまいります。
ウ.株式会社日本エネライズでは引続き国内の太陽光発電所の開発及び発電並びにその管理を主軸事業としてまいります。太陽光発電業界の先行きにつきましてはFIT価格の低下や大規模開発への抑制の動きなどを要因として、新規開発案件の仕入は縮小しつつありますが、そのような市場環境の中でも採算の見込める新規案件や、セカンダリー・マーケットからの案件の発掘に注力してまいります。バイオマス発電関連については、2022年2月に始まったロシアのウクライナへの侵攻をめぐる現下の国際情勢、また当社グループの事業ポートフォリオの再構築等を総合的に勘案した結果、2022年6月、RFP WPへの貸付債権を譲渡いたしました。ロシアにおける木質ペレット製造事業につきましては、国際情勢の影響等を勘案し、今後の事業方針について慎重に検討するとともに、事業パートナー等との協議も行い適切に対応してまいります。このような状況下でありますので、株式会社日本エネライズでは太陽光・バイオマスに続く分野として、風力や地熱など新たな再生可能エネルギー事業の開拓を推進してまいります。
エ.プロスペクト・アセット・マネージメント・インクでは、ハワイにおける不動産の調査・投資・管理が主な業務となっており、引続きハワイにおける既存プロジェクトの管理を徹底してまいります。
オ.株式会社オータスでは、当連結会計年度において多額の評価差額(差損)を売上高に計上したことにより、グループ業績へ多大な影響を及ぼしました。今後も国内の有価証券を中心に保有・売買を行ってまいりますが、投資対象の選定をより一層吟味し、リスクとのバランスを精査したうえで実行してまいります。
③グループ全体における施策
上述のとおり、それぞれの事業子会社が各事業を推進し、子会社ごとに収益性を高めてまいります。また当社においては、子会社間における連携の強化を促進し、グループ全体でシナジーが発揮できるよう適正な組織運営を図ってまいります。
今後につきましてはグループガバナンス体制の強化と並行して、多様な人材を活かし事業の収益性を効果的に向上できるよう、グループ一丸となって計画達成並びに企業価値向上に全力で取り組んでまいります。
④サステナビリティへの取組み
当社グループでは「サステナビリティ基本方針」を定め、3つの「企業活動における重要課題」を設定し、その課題解決に向けた取組を推進してまいります。また、当方針のもと、当社の代表取締役社長CEOを委員長とし、グループ各社も参加するサステナビリティ推進委員会を設置し、グループ全体の方針策定、推進体制の構築と整備、各施策のモニタリング、グループ全体の啓発活動を推進してまいります。具体的な取組み内容については、当社ホームページ(https://mirainovate.co.jp/esg/)をご参照ください。
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(事業上の課題)
①不動産事業
不動産事業におきましては、マンション分譲専業からの脱却、その他不動産商品の開発へのシフト、専門業者との協業、及び新たな開発手法の確立が課題でありましたが、株式会社グローベルスへ当社の不動産事業を移管したことにより、株式会社グローベルスではマンション、戸建、アパート等の開発・販売のほか、宅地の販売、不動産賃貸や不動産クラウドファンディングなど、不動産に係る多様な商品及びサービスを総合的に提供できるようになりました。今後は提供商品及びサービスのラインナップを拡充して収益拡大を図るとともに、新たな事業領域の開拓を積極的に進めてまいります。
また、株式会社日本エネライズがマンション管理業の免許を取得したことで、当社グループの開発物件の管理を受託することが可能となりました。これにより当社グループでは、仕入から開発、販売、管理までグループ一貫にて実行することが可能となりますので、競合物件との差別化を図るべく、マンション購入者に対して販売訴求を高めてまいります。
株式会社ササキハウスでは山形県内を主な事業領域として注文住宅の建築請負及びリフォーム工事等を行っておりますが、競合他社との受注競争、ウッドショック等による原材料費の高騰のほか、地域特有の建築事情に対する営業活動等が課題となっております。今後は新たな展示場の開設や既設の展示場の建替えを推進し、営業拠点の増加、時流に沿った建築プランや建物仕様の提案のほか、リフォームなど既存顧客への二次営業を積極的に進めてまいります。
②再生可能エネルギー事業
太陽光発電におきましては、発電所の新規案件の購入と出口を見据えた発電所の入替が課題でありましたが、当連結会計年度においては、2021年6月に成田神崎プロジェクトを売却するとともに和歌山岩出プロジェクトを取得いたしました。また同年7月には当社グループで最大規模となる岡山英田光プロジェクトの売電が開始いたしました。引続き株式会社日本エネライズでは、採算の見込める新規案件や、セカンダリー・マーケットからの案件の発掘に注力しながら、将来キャッシュ・フローを充分に見極めたうえで、適宜購入及び売却を進めるとともに、新領域の事業への参入も検討してまいります。
バイオマス発電関連におきましては、木質ペレットの年間の目標製造量には達しませんでしたが、年間通じて安定的に稼働したほか、長期供給契約に基づく出荷やスポット販売を含め複数の販売ルートを開拓することができました。しかしながら、2022年2月に始まったロシアのウクライナへの侵攻をめぐる現下の国際情勢、また当社グループの事業ポートフォリオの再構築等を総合的に勘案した結果、2022年6月、RFP WPへの貸付債権を譲渡いたしました。ロシアにおける木質ペレット製造事業につきましては、国際情勢の影響等を勘案し、今後の事業方針について慎重に検討するとともに、事業パートナー等との協議も行い適切に対応してまいります。
従いまして、株式会社日本エネライズでは太陽光・バイオマスに続く新たな再生可能エネルギー分野の開拓を積極的に進めてまいります。
③投資事業
投資事業におきましては、国内の有価証券の保有・売買が中心となりますが、市場の動向によっては収益もさることながら損失が発生する可能性もありますので、毎時変化する市場動向に最善の注意を払うほか、損失リスクに対する分散・保全策を適宜検討してまいります。
④新規事業
当社グループでは、新たな事業ポートフォリオの構築に向け、新規事業への参入を積極的に進めておりますが、その具体的な手法としては、当社グループの既存事業周辺領域ですでに事業展開している他社との協業や資本・業務提携のほか、M&A等があげられます。協業や資本・業務提携については当社グループとの具体的なシナジーの検証、M&Aについてはタイミングや売買価額のほか相手先の経営・財務状況等を総合的に勘案しながら進める必要がありますので、より慎重に、またその期を逸することがないよう注意を払って進めてまいります。
(財務上・経営上の課題)
①財務基盤の強化
当社グループの財務基盤の強化におきましては、持続的成長を実現する安定的なキャッシュ・フローの創出、及び財務バランスの健全性向上が課題でありました。当社グループでは安定的なキャッシュ・フローを創出するため、株式会社グローベルスが行っている自社所有不動産の賃貸や、株式会社日本エネライズが管理している太陽光発電による売電収入などで安定的な収益を確保しておりますので、引続き保有不動産の入居管理や発電設備のメンテナンスを徹底してまいります。
②資本効率の向上
当社グループの資本効率の向上におきましては、株主資本利益率(ROE)7.50%を目標とし、資本コストを意識した事業計画を立案し、効率的な経営を行うことが課題でありました。当連結会計年度はROE7.59%と目標を達成いたしましたが、特別利益にて計上した金額の割合が大きいため、本業の儲けである営業利益の増加を最優先課題として各事業の収益力を高めるとともに、引続き販売費及び一般管理費のコントロールを徹底してまいります。また、同時に不採算事業及び不採算セグメントの見直しも図ってまいります。
③コーポレートガバナンスの実効性向上
当社グループのコーポレートガバナンスの実効性向上におきましては、経営の透明性を確保し信頼性を向上すること、並びにグループガバナンスの強化が課題でありました。当社グループでは、監査等委員会による適正な経営監督、指名・報酬委員会による取締役の選任と報酬に係る第三者チェックのほか、内部統制システムの構築に関する基本方針の改定など、ガバナンス体制の改善・強化のための施策を継続的に講じております。また、取締役会全体に係る実効性評価を行い、現状及び今後の課題について十分な協議をし、その対応策を策定しております。引続きガバナンス体制の強化と並行して、多様な人材を活かし事業の収益性を効果的に向上してまいります。
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