当事業年度におけるわが国経済は、長期化する新型コロナウイルス感染症の影響により断続的に社会活動・経済活動が制限を受けており、ワクチンの感染・重症化の予防効果により一部回復の兆しが見えるものの、先行きは依然として不透明な状況となっています。
当社が事業展開している医療機関におきましても、昨年に引き続き新型コロナウイルス感染症の防止策が医療従事者の大きな負荷となり、経営環境についても病床使用率の低下、医業収益の減少、補助金を活用した収益確保等にみられるように、流動的な状況におかれています。
そのような環境で、2021年9月に発足したデジタル庁では、準公共分野のデジタル化として、個人の健康に関するデータの活用を可能とする環境の実現が施策として示され、医療情報の医療機関等への共有やレセプト情報の活用、オンライン診療の推進が掲げられています。また、2021年10月からはマイナンバーカード等によるオンライン資格確認の本格運用が開始され、2023年1月には電子処方箋の運用が予定されるなど、医療分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は継続しています。電子カルテシステム等のソリューションやクラウド技術、AI、データ利活用などのテクノロジーは、社会的課題である社会保障費の抑制や医療サービスの地域格差解消、2022年度診療報酬改定の基本方針の重点課題に設定された医師をはじめとした医療従事者の働き方改革の支援等において、一層重要性が高まっております。
このような状況の下、当社ではWeb型電子カルテシステム「PlusUsカルテ」を中心として、電子カルテシステムの導入ニーズの高い中小規模病院への拡販、複数の医療機関を展開する医療法人へのプライベートクラウド(※1)型システムの導入、既存顧客のリプレイス需要と新規顧客のパブリッククラウド(※2)需要の取り込みに注力するとともに、大手ベンダー等との協業による案件やオンライン資格確認等の医療DX関連のシステムの導入を進めてまいりました。また、開発・技術部門では、顧客のニーズに沿ったシステム機能の充実と信頼性の向上という方針を継続し、システムの機能強化とバージョンアップを促進するとともに、AIを活用した音声認識機能をはじめとした新たなテクノロジーの研究、顧客医療機関に対するサポート体制の強化、顧客満足度の向上に努めてまいりました。
以上の結果、当事業年度の業績は、売上高4,489,245千円(前期比11.6%増)となり、各種利益は導入件数の増加に伴う保守を含めた売上の伸長により、営業利益589,529千円(前期比32.3%増)、経常利益630,657千円(前期比29.1%増)、当期純利益422,546千円(前期比26.2%増)となり、いずれも過去最高の業績を計上することができました。
(※1)プライベートクラウドとは、医療機関内に構築したクラウド環境で、同一医療法人内の複数施設から専
用回線を通じてサーバーにアクセスし、アプリケーションを使用すること
(※2)パブリッククラウドとは、データセンターを利用したクラウドで、医療機関内にサーバーを設置せずに
アプリケーションを使用すること
なお、財政状態につきましては、後記の「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容 a.財政状態の分析」をご参照ください。
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末より118,563千円減少し、1,824,106千円となりました。
なお、当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動により得られた資金は、284,297千円(前事業年度は429,041千円の収入)となりました。主な要因は、売上債権の増加348,917千円、法人税等の支払額164,683千円などの資金減少があったものの、税引前当期純利益の計上621,982千円、たな卸資産の減少187,324千円などの資金増加によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動により使用した資金は、1,006千円(前事業年度は400,127千円の支出)となりました。主な要因は、定期預金の払戻による収入881,991千円、投資不動産の賃貸による収入52,688千円などの資金増加があったものの、定期預金の預入による支出942,062千円などの資金減少によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動により使用した資金は、401,854千円(前事業年度は100,121千円の支出)となりました。主な要因は、長期借入金の返済による支出327,540千円、配当金の支払71,398千円などの資金減少によるものであります。
当事業年度の生産実績を示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は当期総製造費用によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当事業年度の受注実績を種類別に示すと、次のとおりであります。
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当事業年度の販売実績を種類別に示すと、次のとおりであります。
(注) 1.当事業年度の保守サービス等には、損益計算書上の売上高区分の「商品売上高」42,776千円が含まれております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、本文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
(資産)
当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べ、流動資産が105,796千円増加し、固定資産が31,569千円減少した結果、74,227千円増加し、5,763,490千円となりました。流動資産の増加は、主に現金及び預金が58,492千円、仕掛品が187,171千円減少したものの、売掛金が318,502千円増加したことによるものです。一方、固定資産の減少は、主に無形固定資産が6,630千円増加したものの、投資その他の資産が32,372千円減少したことによるものです。
(負債)
当事業年度末の負債は、前事業年度末に比べ、流動負債が45,134千円増加し、固定負債が332,416千円減少した結果、287,282千円減少し、3,142,583千円となりました。流動負債の増加は、主に支払手形が30,268千円、買掛金が39,548千円それぞれ減少したものの、未払法人税等が52,704千円、未払消費税等が70,215千円それぞれ増加したことによるものです。また、固定負債の減少は、主に長期借入金が323,165千円減少したことによるものです。
(純資産)
当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ、361,509千円増加し2,620,907千円となりました。その主な要因は、譲渡制限付株式報酬としての新株発行により資本金が5,236千円、資本剰余金が5,236千円それぞれ増加したことに加え、当期純利益の計上422,546千円、配当による利益剰余金の減少71,509千円によるものです。なお、自己資本比率は45.5%となりました。
b. 経営成績の分析
(売上高)
売上高は、新型コロナウイルス感染症拡大による一部医療機関の入館規制等の影響による導入の遅延も依然としてあったものの、導入件数の増加に伴う保守を含めた売上の伸長の結果、前事業年度に比べ466,044千円増加し4,489,245千円(前期比11.6%増)となりました。種類別の内訳では、システムソフトウェアが9.6%増加の2,170,906千円となり、ハードウェアが23.2%増加の1,041,118千円、保守サービス等が6.7%増加の1,277,220千円となりました。
(売上総利益)
売上総利益は、売上高の増加466,044千円から売上原価の増加258,006千円を差し引き、前事業年度に比べ208,037千円増加し1,451,916千円(前期比16.7%増)となりました。システム売上原価の内訳では、当期製造費用において材料費及び外注費の金額及び構成比が低下したものの、導入案件の増加を見込んだ人員増加により労務費の金額及び構成比が上昇しました。
(営業利益、経常利益)
営業利益は、販売費及び一般管理費が64,229千円増加したものの、売上総利益が208,037千円増加し、前事業年度に比べ143,808千円増加し589,529千円(前期比32.3%増)となりました。さらに営業外損益の41,127千円(益)が加わり、経常利益は、前期比29.1%増加の630,657千円となりました。
(当期純利益)
税引前当期純利益は、特別損失として固定資産売却損8,674千円を計上したものの、経常利益の増加により、前事業年度に比べ132,354千円増加し621,982千円(前期比27.0%増)となりました。当期純利益は、法人税、住民税及び事業税が61,411千円増加したものの、法人税等調整額が16,795千円減少したことにより、26.2%増加の422,546千円となりました。
c. 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社は、事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる事項及び投資家の投資判断、あるいは当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項について、リスク発生の可能性を認識した上で、その発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。
なお、詳細につきましては、本書「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
d. 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について
当社は、経営資源を総合医療情報システムの開発、販売、導入指導に集中させ、その基幹システムであるWeb型電子カルテシステムの市場拡大に取り組んでまいりました。近年、医療機関をとりまく環境は大きく変わろうとしており、より質の高い医療サービス、システムが求められております。中でも、医療分野のICT化は国の掲げる政策であり、ICTの普及による医療の効率化、医療費の削減が喫緊の課題となっております。このような環境下、当社では、ICT化の代表的な指標である医療機関における電子カルテシステムの稼働施設数のアップを推進してまいります。このような導入推進とともに、システムの機能強化、次世代システムの開発に取り組むことが、当社の更なる成長の基盤となる見通しです。
なお、詳細につきましては、本書「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の当事業年度のキャッシュ・フローの状況は、本書「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社の資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。
当社の資金需要は、主に運転資金、設備資金需要ですが、今後の事業展開を考慮しますと、研究開発資金需要が増えることが想定されます。運転資金、設備資金については、自己資金で賄うことを原則としておりますが、場合により銀行借入による資金調達も選択肢の一つとしております。また研究開発資金については、有価証券発行による資金調達も視野に入れ、総合的にその調達先を判断する方針であります。
なお、当事業年度につきましては、運転資金の支出はすべて営業キャッシュ・フローにより賄っております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たっては、会計方針の選択・適用、資産・負債、収益・費用の金額など開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
なお、当社の採用する重要な会計方針及び新型コロナウイルス感染症の影響に伴う会計上の見積りの仮定については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計方針)及び(追加情報)」に記載のとおりであります。
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