(1) 経営成績等の状況及び経営者の視点による分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況及び経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。なお、個々の「重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定」については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成にあたって、重要な見積りや計画の策定は、過去の実績や現状を勘案して合理的に行なっておりますが、これらは不確実性を伴うため、実際の結果は異なる可能性があります。連結財務諸表の作成に用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりです。
(固定資産の減損処理)
当社グループは、固定資産について減損の兆候がある場合、減損損失の認識の判定は、当該資産グループの将来の事業計画に基づく割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することによって行なっております。判定の結果、割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回り、減損損失の認識が必要とされた場合、帳簿価額を回収可能価額(正味売却価額又は使用価値のいずれか高い方の金額)まで減額し、当該帳簿価額の減少額は減損損失として認識します。将来キャッシュ・フローの算定は一定の見積り・前提により行っておりますので、将来キャッシュ・フローが想定より減少した場合は、将来の連結財務諸表において、固定資産の減損損失が発生する可能性があります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、将来の課税所得について合理的な仮定に基づく見積りを行い、繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得に関する仮定について変動が生じた場合などは、将来の連結財務諸表の繰延税金資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。
② 経営成績に関する説明
当期は、新型コロナウイルス感染症の拡大に対する防疫と経済の両立が進展し、経済活動は一定程度の回復がみられました。一方、海上輸送コンテナや諸資材の不足、配送遅れなどによる物流の混乱は収束せず、ロシア・ウクライナの地政学的リスクの高まりからエネルギー価格や資材価格が高騰しました。
当社グループを取り巻く環境におきましては、外出やイベントの制限が緩和されたことなどから需要の回復がみられました。しかしながら、製品配送コストの上昇に加えて、原油・石炭・天然ガスなどの燃料価格急騰の影響を大きく受けることになりました。
このような状況下、当社グループは各事業の需要動向に合わせた生産体制の拡大・縮減を実施し生産性の向上を図るとともに、販売面では製品価格の改定や新製品の拡販に努めました。
最終年度となる「新中期経営計画」(2019年4月~2022年3月)につきましては、3つの重点戦略、
① 王子グループとのアライアンスによる強固な経営基盤の確立
② 既存事業の再構築と充実
③ 新たな収益の柱の育成による事業基盤の多様化
に精力的に取組み、基本方針である「新しいステージに立った事業基盤の強化と多様化」を進めました。
王子グループとのアライアンスでは、2021年10月に当社白河事業所のプレスボード事業を王子エフテックス㈱へ事業譲渡するなど、資本業務提携を通じて事業ポートフォリオの変革と経営基盤の強化を進めました。
当期の連結売上高は1,819億2千万円(前期比12.1%増)となりました。
損益面では、原燃料高騰の影響を受けたものの、 生産販売数量の回復や固定費削減などのコストダウンにより、 連結 営業損失は2億4千8百万円 (前期は連結 営業損失17億7千万円 )、連結 経常利益は19億6千4百万円 (前期は連結 経常損失6億3千6百万円 )となりました。親会社株主に帰属する当期純 利益は10億9千6百万円 となりました。
セグメントごとの経営成績は、次の通りとなりました。
(単位:百万円)
(注)調整額は主として内部取引に係るものです。
(紙・パルプ事業)
国内市場につきましては、コロナ禍の影響により大きく需要を減らした前年比で印刷用紙を中心に販売数量、金額ともに増加しました。輸出につきましては販売数量、金額ともに増加しました。また生産面では需要動向に合わせた生産体制を継続してまいりました。
市販パルプにつきましては、世界的な物流遅延・北米の豪雨被害等により市況価格が高騰し、販売数量、金額ともに増加しました。
欧州子会社につきましては、販売数量、金額ともに増加しました。
一方で、国内、欧州ともに原燃料価格が急騰し、コスト面で大きな影響を受けました。
以上の結果、紙・パルプ事業は増収減益となりました。
コロナ禍の先行きは依然として不透明ですが、紙需要は品種・用途によって回復度合いの差がはっきりしてきました。その中で下期には印刷用紙、情報用紙、白板紙全般について製品価格の改定を実施しましたが、足元ではウクライナ情勢の影響等により原燃料価格が想定を上回る水準で推移しております。
かかる状況下、自助努力として引き続き需要動向に合わせた生産体制最適化と在庫水準適正化の取り組み継続、また王子グループとの協業深化に加えて、パルプ、クラフト紙、機能板紙、脱プラスチックに寄与するバリアコート紙など紙素材としての品揃え拡大を強力に推進し、製品ポートフォリオの転換と早期の収益安定化を目指してまいります。
(イメージング事業)
新型コロナワクチン接種の進展等で感染状況が落ち着いた地域では旅行やイベントの行動制限が緩和され、国内および海外市場ともに画像出力用途を中心とする写真感光材料やインクジェット用紙の需要が回復しました。また、成長分野では業務用途のインクジェット用紙やエレクトロニクス関連製品の新規開拓が進み、増収増益となりました。
生産体制の継続的な見直しをおこなって既存事業の基盤を強化するとともに、世界各国の市場動向に柔軟に対応しながら成長分野での新規拡販を推進しつつ、国内外で収益力向上に取り組んでまいります。
(機能材事業)
水処理膜支持体、バッテリーセパレータなどは需要の増加により堅調に推移しました。また、化粧板原紙やテープ原紙の需要も引き続き旺盛で前年を上回ることができました。販売増の効果に加え、生産性向上によるコストダウン効果等もあり増収増益となりました。
引き続き、水処理膜支持体の新規ユーザー獲得やMBR(膜分離活性汚泥法)膜用への展開に加え、バッテリーセパレータ、耐熱不織布、テープ原紙、新たに立ち上げたメルトブロー不織布の拡販に注力してまいります。
また、当連結会計年度は「新中期経営計画」の最終年度にあたりますが、「新中期経営計画」の最終年度目標値との対比は、以下のとおりであります。
○ 経営数値目標
「新中期経営計画」の2022年3月期の目標値に対し、売上高は新型コロナウイルスの影響を受け、その回復途上にあることから販売数量が未達となり想定を下回っています。また、損益面は王子グループとのアライアンスによるシナジー効果やコストダウンの取り組み等で一部カバーしましたが、原燃料価格の急激な上昇により、営業利益・経常利益ともに想定を大きく下回っております。有利子負債は、棚卸資産の圧縮を進めたことなどにより、目標を上回る削減を進めることができました。
2022年3月期は原燃料価格高騰等の影響を大きく受けましたが、2023年3月期から始まる新たな中期経営計画の各諸施策の取り組みにより、収益改善に努めてまいります。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は販売価格によっております。
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。
流動資産は、現金及び預金等の減少はあったものの、受取手形、売掛金等の増加により、 前連結会計年度末に比べ66億6千7百万円増加しました。
固定資産は、株価上昇による退職給付に係る資産の増加はあったものの、減価償却の進行による有形固定資産の減少等により、 前連結会計年度末に比べ2億2千6百万円減少しました。
この結果、当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ64億4千万円増加し、2,158億7千9百万円となりました。
負債は、支払手形及び買掛金等の増加はあったものの、有利子負債の削減等により、当連結会計年度末における残高は、前連結会計年度末に比べ2億7千万円減少し、1,462億6千5百万円となりました。
有利子負債残高につきましては、「新中期経営計画」で2022年3月末の目標とした980億円に対し、923億円となり目標を達成しております。D/Eレシオも2022年3月末目標値通りの1.3倍を達成しております。
非支配株主持分を含む純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益計上、株価上昇による退職給付に係る調整累計額の増加等により、当連結会計年度末における残高は、前連結会計年度末に比べ67億1千1百万円増加し、696億1千3百万円となりました。
この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ2.2ポイント改善し、32.2%となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ 66億5千4百万円減少し 、 90億4千7百万円 となりました。
営業活動の結果得られた資金は、前連結会計年度に比べ113億1千6百万円減少し、16億9千8百万円となりました。収入の主な内訳は、減価償却費84億8千9百万円、仕入債務の増加60億8千3百万円であり、支出の主な内訳は、債権流動化実行額の減少などによる売上債権の増加125億5千1百万円であります。
投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ4億5千9百万円増加し、25億5千7百万円となりました。支出の主な内訳は、有形及び無形固定資産の取得による支出62億5千5百万円、収入の主な内訳は、投資有価証券の売却による収入27億5千9百万円であります。
財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ15億7千8百万円増加し、60億9千1百万円となりました。これは主にコマーシャル・ペーパーや借入金の返済によるものです。
当社グループの運転資金需要の主なものは、原燃料購入費用、製造諸費用、販売費及び一般管理費等であります。投資資金需要の主なものは、既存設備の改善や効率向上、省エネルギー対応などの性能向上、成長分野での事業拡大と多様な新規事業の確立に向けた設備投資などであります。
当社グループの運転資金及び設備資金については、自己資金、金融機関からの借入金、コマーシャル・ペーパーの発行等により充当することとしております。また、資金調達手段の多様化として売掛債権の流動化も実施しております。長期借入金の資金調達につきましては、金利動向等の市場環境を見ながら、シンジケート・ローンの活用など調達手段や調達時期を適宜判断して実行しております。
また、当社グループ内では、キャッシュ・マネジメント・システムを導入して資金の一元管理を行い、資金効率の向上を図っております。
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