当社は各研究センターを中心とする研究部門において既存分野の基盤技術強化、および新規分野の探索・開拓を積極的に行っております。中でも地球環境の保全と循環型社会の構築は、豊かな森林資源にその事業基盤を持つ製紙産業にとって何より重要な課題であり、商品開発を通して環境への配慮とより豊かな文化生活の両立を目指しております。
紙・パルプ事業では、印刷用紙、情報用紙が主な製品群となります。イメージング事業は、インクジェット用紙部門と写真用印画紙、写真用原紙、印刷製版材料などの写真感光材料部門から構成され、研究開発は電気・電子関連材料などイメージング技術を応用した分野に取り組んでおります。機能材事業では、高機能性不織布の開発とその不織布技術を用いた各種フィルターや二次電池用セパレータ等の機能性材料の研究を行っております。
2020年1月に研究開発本部を新設し、事業部傘下に組織されていた各研究部門を全社で統括し、全事業横断的に新製品開発、技術支援、人材最適化を機動的に行える環境を整えました。この体制下で、経営課題に基づく重点思考による研究テーマの策定や研究リソース配分の適正化など成果を上げております。また、未来志向の研究テーマ構築にも注力しております。
更に、開発の加速、収益への貢献を確実とするために開発実行体制を見直し、製造場所から離れていたつくばR&Dセンターは閉鎖し、主な研究テーマと関連のある高砂工場内に高砂R&Dセンターを新設しました。特に同センター内には、工場の湿式不織布製造をスケールダウンしたテスト機を設置し、高砂工場の主力製品および関連製品の研究開発を、一つの場所でスムーズに行うことができる環境を整え、開発の迅速化に資しております。
一方、つくばの研究テーマの内、京都工場に関わる一部テーマについては京都R&Dセンターに移しました。また、分析業務は、つくばと京都に並存していたものを京都R&Dセンター内に集約し、且つ、研究開発本部直轄の組織として戦略的に運用しております。
当社主力製品である紙に係る研究は、用途開発を中心に商品開発部が担当しており、また、同部では再生可能資源としての木材利用を促進すべく、紙用途以外でのパルプの有効活用について探索を進めております。
当連結会計年度の研究開発費は
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
拡販を進めている包装分野では、包装用コート紙「barricote(バリコート)」が大手菓子ブランドに優れたバリア性を評価いただき、脱プラ包材として新規採用されるなど多くのお客様にご評価いただいております。併せて、品揃えの拡充として、従来の晒クラフト紙よりも様々な印刷方式に対応した「晒クラフトコート」を開発し、様々な分野へサステナブル包材のご提案を進めております。
またグラフィック用途につきましても、需要減少が続く中、「特徴ある印刷用紙を市場に投入することでニッチな市場を開拓していく」ことを旨に、お客様の個別ニーズにも対応させていただいております。具体的には出版社向けに白紙光沢・印刷光沢に特徴をもたせた印刷用コート紙を開発し、新規採用されました。
当連結会計年度の紙・パルプ事業の研究開発費は
イメージング事業では、インクジェット用紙部門、写真感光材料部門の開発で蓄積したイメージング技術を活かして、既存部門だけでなく機能性フィルムなど成長分野での商品開発を進めております。
インクジェット用紙部門では、テキスタイル分野において昇華転写用デジタル捺染紙のラインナップを拡充して国内、北米およびアジア市場を中心に開拓を進めるとともに、耐久性を付与した新商品の開発に取り組んでおります。
写真感光材料部門では、新たにアルミCTPプレートセッターで出力できるサーマルレーザー製版フィルムを発売し、品揃えを強化して販売拡大に努めております。
また、電子工業向けの機能性フィルムでは半導体製造装置部品や情報端末部品加工用の感光性レジストフィルム、電子回路製造用工程フィルムなどの品揃えを強化するとともに高機能製品の開発を進め、販売拡大に努めています。その他、既に発売しております胚凍結保存デバイス、アルコール除菌液などの医療・ヘルスケア分野の新規製品開発に取り組んでいます。
当連結会計年度のイメージング事業での研究開発費は
機能材事業では、不織布製品の開発にリソースを集中して投入し、エアフィルター、二次電池・コンデンサ用セパレータ、水処理関連材料、耐熱材料、その他各種機能性材料の開発を進めております。
エアフィルターについては、依然高い空気質改善のニーズに応えるべく、メルトブロー不織布などの集塵部材そのものに抗菌、抗ウイルス、抗アレル物質などの機能を持たせた高性能集塵フィルターの開発を進めております。
二次電池・コンデンサ用セパレータについては、使用される電子機器の小型化及び高性能化に適応するための要素技術の開発と製品の改良を進めております。
水処理関連材料については、逆浸透(RO)膜基材の開発で獲得した技術を横展開し、膜分離活性汚泥法(MBR)膜基材、PPS繊維不織布、医療用膜基材等の開発を進めております。
耐熱材料については、建材用途を始めとする、不燃性・難燃性が求められる分野で使用可能なガラス繊維不織布、グラスウールボード、炭素繊維不織布等を開発しております。
また、今年度、高砂工場でメルトブロー不織布製造装置が稼働したことから、事業領域を拡大すべく、機能性メルトブロー不織布やメルトブロー不織布を使った川下製品の開発を開始しております。
子会社のKJ特殊紙㈱では、環境分野、医療衛生分野への展開を進めています。漆喰塗装用粘着シート基材を開発しました。住空間の空気清浄化をサポートします。
また、介護現場の作業環境を改善し、かつ、脱プラも達成した活性炭消臭紙を商品化しました。介護現場でオムツの取替え時に従来のビニール袋より優れた消臭機能を発揮しています。そして、脱プラテープとして、袋の口を封止するバッグシーリングテープ基材を商品化しました。脱プラと言うだけでなく手で切って開けやすさも好評です。
更には、生分解性の抗菌・抗ウイルス紙の開発にも取り組んでいます。今後も様々な分野でニッチ市場を開拓していきます。
当連結会計年度の機能材事業での研究開発費は
お知らせ