業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営成績等の状況の概要

(1) 業績

当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中で、各種行動制限の緩和により経済活動の正常化に向けて緩やかな持ち直しの動きがみられましたが、新たな変異株により感染が再拡大したことに加え、世界的な半導体の供給不足やウクライナ情勢の緊迫化、資源価格の高騰と急速な円安の進行による物価の上昇等により、依然として先行き不透明な状況下で推移いたしました。

当社グループが属する情報サービス産業におきましては、IoT(※1)、IoE(※2)、人工知能(AI)等の先端技術を活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速による情報システム需要に加え、新型コロナウイルス感染症対策に伴う、テレワーク導入企業の増加によるITインフラ整備・強化、非接触対応等への優先的なソフトウェア投資が継続し、IT投資需要は底堅く推移いたしました。一方で、IT技術者不足は常態化しており、人材確保が継続的な課題となっております。

このような状況下において、当社グループは、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を講じつつ、2022年9月期が2期目となる中期経営計画「PCI-VISION 2023」を推進する中、時流を勘案した選択と集中を目的としたグループ内再編を実施し、2021年10月1日付にて株式会社インフィニテックを、株式会社プリバテックを存続会社として吸収合併いたしました。2022年7月には、サステナビリティへの取り組みを一層強化し、当社グループの持続的成長を実現するため、新たにサステナビリティ委員会を設置いたしました。

また、長期化する新型コロナウイルス感染症の影響による経済・社会の不可逆的なビジネスモデル・産業構造の変化及び生活者変化を捉え、社会全体の急速なデジタル化・DX化の需要を取り込み、戦略的かつ積極的な受注活動に注力してまいりました。一方で、一部事業において、急速な円安による為替の影響及び世界的な電子部品の供給不足により、生産計画に影響を受けました。

 

以上の結果、当連結会計年度における売上高は25,170百万円(前連結会計年度比18.5%増)、営業利益は1,445百万円(前連結会計年度比23.0%増)、経常利益は1,549百万円(前連結会計年度比28.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、当社が保有する有価証券のうち簿価に比べて実質価額が著しく低下したものについて投資有価証券評価損を特別損失として計上したため、643百万円(前連結会計年度比4.0%減)となりました。

なお、会計方針の変更として、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。

 

セグメント別の概況は、次のとおりであります。

 

(ITソリューション事業)

ITソリューション事業につきましては、売上高は20,523百万円(前連結会計年度比22.4%増)となり、セグメント利益は991百万円(前連結会計年度比22.4%増)となりました。

エンベデッドソリューション分野においては、部品価格の上昇及び急速な円安が利益の押し下げ要因となった一方で、ビジネスソリューションの企業向け分野において、前連結会計年度に発生した不採算案件の終息により利益及び利益率が増加・改善いたしました。

以下では、ITソリューション事業における概況と売上高を主要区分別に示します。

 

 

① エンベデッドソリューション

自動車関連案件が好調に推移した他、カメラ・センサー系開発案件、制御装置案件が増大いたしました。また、前連結会計年度に新たに連結子会社となった株式会社ソードが展開する医療向け組込みパソコン、コントローラー及び周辺機器の開発、設計、製造が収益に寄与いたしましたが、世界的な電子部品の供給不足及び部品価格の高騰により、一部の生産計画に大きな影響を受けました。

以上の結果、売上高は12,428百万円(前連結会計年度比39.6%増)となりました。

 

② ビジネスソリューション

企業向け分野においては、企業のDXの推進加速を背景に、システムのクラウド化案件が増加いたしました。加えて、ソフトウェア開発における産業・流通向け案件が堅調に推移し、社会インフラ構築案件が好調に推移いたしました。また、前連結会計年度に新たに連結子会社となった株式会社ソードが展開するキッティング業務等の請負案件が収益に寄与いたしました。

以上の結果、前連結会計年度に新型コロナウイルス感染症の長期化の影響を受けた文教関連事業を撤退したことによる売上減少分を吸収し、売上高は8,095百万円(前連結会計年度比3.0%増)となりました。

 

(IoT/IoEソリューション事業)

IoT/IoEソリューション事業につきましては、売上高は2,417百万円(前連結会計年度比2.5%減)となり、セグメント利益は242百万円(前連結会計年度比20.5%増)となりました。

重機・建機向けIoT開発が堅調に推移したことに加え、セキュリティ案件が増加いたしましたが、低採算事業を戦略的に縮小したことに加え、利益率の高い通信事業が好調に推移した前年同期には至らず、売上高は減少いたしました。一方で、低採算事業の縮小により利益及び利益率は改善いたしました。

 

(半導体トータルソリューション事業)

半導体トータルソリューション事業につきましては、売上高は2,325百万円(前連結会計年度比13.0%増)となり、セグメント利益は225百万円(前連結会計年度比53.9%増)となりました。

LSI設計・評価・テスト案件の好調に加え、既存顧客の世界的な半導体供給不足を背景とした生産ライン強化に伴い基板案件の引き合いが増加し、収益に大きく寄与いたしました。また、グループ間及び協業企業との連携による案件の継続受注等、総じて好調に推移いたしました。

その他、新技術の開発及び自社製品の実用化に向けて継続的な研究開発投資を実行いたしました。

 

(注)上記に用いられている用語の説明は以下のとおりであります。

 

(※1)IoT:(Internet of Things)

コンピュータ等の情報・通信機器だけでなく、様々な「モノ」に通信機能を持たせ、インターネットに接続、相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測等を行うこと。

(※2)IoE:(Internet of Everything)

IoTよりも広い概念であり、ヒト・モノ・プロセス・データ等がインターネットにつながり、相互に通信が可能となる技術や状態、仕組みのこと。

 

 

(2) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ680百万円減少し、2,617百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により得られた資金は736百万円(前連結会計年度は948百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益1,175百万円、減価償却費197百万円、のれん償却額192百万円、投資有価証券評価損310百万円があった一方で、棚卸資産の増加470百万円、未払消費税等の減少129百万円、法人税等の支払額542百万円があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により使用した資金は193百万円(前連結会計年度は3,364百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出108百万円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により使用した資金は1,227百万円(前連結会計年度は848百万円の収入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出868百万円、配当金の支払額310百万円があったことによるものであります。

 

生産、受注及び販売の実績

(1) 生産実績

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年10月1日

至 2022年9月30日)

生産高

前年同期比

ITソリューション事業

4,409,328

千円

75.0

合計

4,409,328

 

75.0

 

 

(注) 金額は、製造原価によっております。

 

(2) 受注実績

当社グループの事業は、受注から売上計上までの所要日数が短く、期中の受注高と販売実績とがほぼ対応するため、記載を省略しております。

 

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年10月1日

至 2022年9月30日)

販売高

前年同期比

ITソリューション事業

20,494,072

千円

22.3

IoT/IoEソリューション事業

2,350,872

 

△3.2

 

半導体トータルソリューション事業

2,325,115

 

13.4

 

報告セグメント計

25,170,060

 

18.5

 

調整額

 

△100.0

 

合計

25,170,060

 

18.5

 

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.前連結会計年度及び当連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。

 

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりましては、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき、合理的に判断して行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

なお、会計上の見積りに対する新型コロナウイルス感染症の影響に関しては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 追加情報(新型コロナウイルス感染症の影響について)」に記載しております。

 

(2) 財政状態の分析

(資産)

当連結会計年度における総資産は、16,915百万円(前連結会計年度は17,391百万円)となり、475百万円減少しました。

流動資産は11,205百万円(前連結会計年度は11,198百万円)となり、7百万円増加しました。その主な要因は、売掛金の増加410百万円、棚卸資産の増加336百万円の一方で、現金及び預金の減少680百万円によるものであります。

固定資産は5,709百万円(前連結会計年度は6,193百万円)となり、483百万円減少しました。

有形固定資産は952百万円(前連結会計年度は946百万円)となり、5百万円の増加、無形固定資産は2,261百万円(前連結会計年度は2,493百万円)となり、231百万円の減少、投資その他の資産は2,495百万円(前連結会計年度は2,753百万円)となり、257百万円減少しました。有形固定資産の増加の主な要因は、建物附属設備の増加30百万円であります。無形固定資産の減少の主な要因は、のれんの減少148百万円であります。投資その他の資産の減少の主な要因は、投資有価証券の減少279百万円であります。

 

 

(負債)

当連結会計年度における負債は、8,541百万円(前連結会計年度は9,441百万円)となり、900百万円減少しました。

流動負債は6,509百万円(前連結会計年度は6,505百万円)となり、3百万円増加しました。その主な要因は、買掛金の増加360百万円の一方で、電子記録債務の減少168百万円、未払消費税等の減少136百万円によるものであります。

固定負債は2,031百万円(前連結会計年度は2,935百万円)となり、903百万円減少しました。その主な要因は、長期借入金の減少872百万円によるものであります。

 

(純資産)

当連結会計年度における純資産は、8,374百万円(前連結会計年度は7,950百万円)となり、424百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益643百万円の計上や配当金の支払311百万円等により利益剰余金が340百万円増加したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は45.9%(前連結会計年度末は42.8%)となりました。

 

(3) 経営成績の分析

(売上高)

売上高は、25,170百万円(前連結会計年度比18.5%増)となりました。このうち、エンベデッドソリューション事業は、自動車関連及び建機重機向けソフトウェア開発が好調に推移したことに加え、2021年1月に連結子会社化し、前年度第3四半期から損益計算書が連結対象となった株式会社ソードの業績が通期で寄与し、大幅に増収となりました。また、ビジネスソリューション事業は、社会インフラ構築案件、公共事業者向け案件が堅調に推移したことに加え、文教関連事業の戦略的撤退による売上減少分も吸収し、増収となりました。IoT/IoEソリューション事業は、ハードウェア分野における前期大口案件の反動減や、通信事業の減収により、微減となりました。半導体トータルソリューション事業は、急速なデジタル化やEV化、自動運転の本格化により、車載用半導体などの市場の活況が継続し、引き続き好調に推移しました。

 

(売上原価)

売上原価は、18,829百万円(前連結会計年度比21.1%増)となりました。主な要因は、上記株式会社ソードの製商品原価の増加等によるものでありますが、部品価格の高騰や急激な円安も一部影響しました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

販売費及び一般管理費は、4,895百万円(前連結会計年度比8.3%増)となりました。主な要因は、上記株式会社ソードの人件費、研究開発費等の増加、及びのれん償却費の増加によるものであります。

この結果、営業利益は1,445百万円(前連結会計年度比23.0%増)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

営業外収益は119百万円(前連結会計年度比35.8%増)、営業外費用は14百万円(前連結会計年度比71.9%減)となりました。

営業外収益の主な内訳は、受取利息及び配当金42百万円や為替差益40百万円であります。また、営業外費用の主な内訳は、支払利息9百万円や投資事業組合運用損3百万円であります。

この結果、経常利益は1,549百万円(前連結会計年度比28.2%増)となりました。

 

 

(特別利益、特別損失、税金等調整前当期純利益)

特別利益は計上なし(前連結会計年度比10百万円減)、特別損失は373百万円(前連結会計年度比366百万円増)となりました。

特別損失の主な内訳は投資有価証券評価損310百万円、減損損失53百万円であります。

この結果、税金等調整前当期純利益は1,175百万円(前連結会計年度比3.0%減)となりました。

 

(法人税等、親会社株主に帰属する当期純利益)

法人税等合計は、357百万円(前連結会計年度比28.2%減)となりました。

また、非支配株主に帰属する当期純利益は174百万円(前連結会計年度比297.9%増)となりました。

この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は643百万円(前連結会計年度比4.0%減)となりました。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。

 

当社グループの資金需要は主に運転資金需要と投資資金需要の2つがあります。

運転資金需要のうち主なものは、ビジネスパートナー獲得のための費用の他、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、IoT関連などを含む各種の事業開発投資に加えて、最先端技術の獲得、顧客基盤の強化、あるいは事業成長の加速に資するM&Aの検討を継続的に行っております。

これら資金需要につきましては、基本的には営業活動によるキャッシュ・フローを源泉とする自己資金にて対応する考えでおりますが、必要に応じて、後述の強固な財務基盤を背景にした多様な資金調達(金融機関からの借入、各種社債の発行等)にて対応する所存です。

なお、当社グループの2022年9月末時点における、銀行借入等を通じた有利子負債が1,931百万円であるのに対し、現金及び現金同等物は2,617百万円と有利子負債を上回る水準となっており、強固な財務基盤を実現しております。

手許の運転資金につきましては、当社及び連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネージメント・サービス)を導入することにより、各社における余剰資金を当社へ集中し一元管理を行うことで、十分な流動性を確保するとともに、資金効率の最適化を図っております。

 

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

 

2019年9月

2020年9月

2021年9月

2022年9月

自己資本比率(%)

43.0

40.4

42.8

45.9

時価ベースの自己資本比率
(%)

74.6

80.5

63.7

55.0

キャッシュ・フロー対

有利子負債比率(年)

8.5

2.8

3.0

2.6

インタレスト・

カバレッジ・レシオ(倍)

24.2

94.7

41.9

82.9

 

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

(注2)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

(注3)キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を利用しております。

(注4)有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。

 

 

(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。事業環境、事業内容、事業運営体制等、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、内部監査体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。

 

(6) 経営戦略の現状と見通し

経営戦略の現状と見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

(7) 経営者の問題認識と今後の方針について

当社グループは、「我々は、お客様の満足を通じて全社員の幸せを追求し、そして社会の発展に貢献します」を経営理念として掲げております。この経営理念のもと、当社グループが今後さらなる成長と発展を遂げるためには、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載した課題に適切に対処していくことが必要であると認識しております。

 

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