当連結会計年度における当社グループ(当社及び当社の連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成に当たって、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定の設定を行っています。当該見積りは、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる各種の要因に関して仮定設定、情報収集を行い、見積金額を算出していますが、実際の結果は見積り自体に不確実性があるために、これらの見積りと異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しています。
また、連結財務諸表の作成にあたって採用している会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
(2) 経営成績等の概況及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績
当社グループを取り巻く経営環境については、国内情報サービス業の売上高規模は2021年においては14兆1,566億円(前年比9.7%増)と10年連続で成長を続けています(経済産業省「特定サービス産業動態統計調査(2022年2月公表)」)。その中で、SaaS(Software as a Serviceの略称。月額課金や年額課金の仕組みを取っているウェブサービス)の国内市場規模は、年平均成長率が約13%で拡大しており、2025年に向けてDX(デジタル・トランスフォーメーション)の取り組みが加速しており、カテゴリーを問わずパッケージソフトからSaaSへの移行ニーズがますます高まっています。加えて新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークが拡大し、IT投資に消極的であった中堅、中小企業においてもソフトウェア導入が進展しています。こうした流れから、SaaSの国内市場規模は2025年には約1兆4,607億円に拡大する見込みです(富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2021年版」)。また、スマートフォンの個人保有率は2020年において69.3%(前年比1.7ポイント増)と普及が進んでいます(総務省「令和2年通信利用動向調査(2021年6月18日公表)」)。更に、インターネット広告費の市場規模は、2019年に初めて2兆円を超えてテレビメディア広告費を抜き、2021年には2兆7,052億円(前年比21.4%増)と拡大しています(株式会社電通「2021年 日本の広告費(2022年2月24日公表)」)。
一方で、2020年3月ごろから拡大している新型コロナウイルス感染症は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に基づく人流抑制や、ワクチン接種の浸透により、一時的に感染者数は大きく減少しました。しかしながら、新たな変異株が流行するなどし、依然として予測が難しい経済状況が継続しています。
今後、withコロナ時代において、クラウドサービス導入や良質なメディアコンテンツなど、当社グループの提供サービスへのニーズは、より一層高まっていくものと認識しています。
このような環境の下、当連結会計年度における当社グループの事業は順調に拡大を続けており、売上高は16,063百万円(前年同期比16.3%増加)、EBITDAは1,904百万円(前年同期比107.5%増加)、営業利益は1,460百万円(前年同期は営業利益104百万円)となりました。また、当社子会社であるUBV Fund-Ⅰ 投資事業有限責任組合が投資有価証券売却益303百万円を計上したこと等により、経常利益は1,576百万円(前年同期は経常損失281百万円)となりました。なお、NewsPicks事業において、国内拠点である「NewsPicks GINZA」からの撤退を決定したことに伴い、減損損失289百万円並びに拠点撤退損失引当金繰入額210百万円を特別損失としてそれぞれ計上したこと及び法人税等を438百万円計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益は589百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失6,472百万円)となりました。
また、当第4四半期連結会計期間より、報告セグメント区分の変更を行っています。
これまでB2B向け事業について、「SPEEDA事業」と「その他B2B事業(2020年12月期までは「その他事業」と呼称)」に区分して業績開示をしてきましたが、「SaaS事業」セグメントとして統合して開示しています。
同様に、従来「NewsPicks事業」として開示していた、連結子会社である株式会社アルファドライブ、株式会社アルファドライブ高知、及び株式会社ニューズピックスにおいて法人向けに展開している「NewsPicks Enterprise」「NewsPicks Learning(法人版)」をAlphaDrive/NewsPicks(以下、「AD/NP」という。)として、これらも「SaaS事業」セグメントに含める形で開示しています。
さらに、報告セグメントに含まれない事業セグメントである「その他」に含まれていたSPEEDA EDGEも「SaaS事業」セグメントに含めています。
変更理由は以下のとおりです。
① SPEEDA事業とその他B2B事業は共通のコアアセットを活用したSaaS事業であり、また、今後クロスセルを含めたより一体的な事業経営をしていくため
② AD/NPはNewsPicksを活用したSaaSプロダクトによる法人ソリューション事業であること
③ AD/NPと同様に、SPEEDA・FORCAS・INITIALいずれもNewsPicksをサービス上、活用しており、AD/NPのみをNewsPicks事業に含めることが実態にそぐわないため
以上のことから、今後の当社の報告セグメントは、「SaaS事業」と「NewsPicks事業」の2セグメントとなります。
なお、当社は前連結会計年度においてQuartz事業より撤退しています。
各報告セグメントの業績は次の通りです。
なお、当社グループにおいては複数の事業を国内外で展開しており、コーポレート業務に係るコストが複雑化しています。そこで、報告セグメント別の経営成績を適切に反映させるため、グループ共通のコーポレート業務に係るコストを、各セグメントの事業実態に合った合理的な配賦基準に基づき配賦しています。
具体的には、当社グループのコーポレート業務に係るコストを以下の2つに分類し、Direct Costに関しては、費目ごとに事業実態に合った合理的な配賦基準に基づき配賦し、Indirect Costに関しては、各報告セグメントの売上高を基準として配賦しています。
・Direct Cost:提供サービスや事業に直接紐づくコスト
・Indirect Cost:提供サービスや事業に直接紐づかない連結グループ全体経営のために発生する全社費用(例:上場維持コスト、監査報酬、役員報酬など)
また、各報告セグメント別のEBITDAについては、適切に各報告セグメントの収益力を表示する観点から、経営上の業績評価となる指標であるDirect EBITDA及びセグメントEBITDAを表示しています。
セグメント利益又は損失、Direct EBITDA及びセグメントEBITDAは下記の通り算出しています。
・セグメント利益又は損失:Direct Costのみ配賦して算出した金額
・Direct EBITDA:セグメント利益又は損失に、減価償却費及びのれんの償却費を加えた金額(上記Indirect Costである全社費用配賦前の金額)
・セグメントEBITDA:Direct EBITDAに、Indirect Costである全社費用を配賦した金額
■ SaaS事業
SaaS事業では、顧客のアジャイル経営(顧客起点で、変化にスピーディーに適応する経営)の実現をサポートするSaaSプロダクトの提供を行っています。アジャイル経営の実現をサポートするには、顧客の事業戦略・顧客戦略・組織戦略をサポートする必要があると考えており、領域毎に提供しているプロダクトは以下の通りです。
事業戦略:SPEEDA・INITIAL・SPEEDA EDGE
顧客戦略:FORCAS・FORCAS Sales
組織戦略:AD/NPで提供しているNewsPicks Enterprise・Incubation Suite
なお、当社ではストック型収益の拡大を重要視していることから、ARR(Annual Recurring Revenueの略で、年間経常収益、サブスクリプションにより得られる今後1年の収益を表します。MRR(Monthly Recurring Revenue)月間経常収益の12倍の値です。)を最重要KPIとしています。
複数のプロダクトを提供している中でも、主力は創業プロダクトであるSPEEDAとなります。SPEEDAは、当連結会計年度においては、国内ではカスタマーサクセスチームを含めた営業組織の強化によって、新規受注が安定的に積み上げられ、また、既存顧客からのアップセルも進みました。中国を中心としたアジア地域においても、新型コロナウイルス感染症の影響は落ち着きを見せ、新規獲得が進みました。直近12ヶ月平均解約率については、1.0%と第3四半期連結会計期間末から0.2ポイント改善しており、期初に掲げた目標を達成することができました。また、当連結会計年度においては、SPEEDA EXPERT RESEARCHの立ち上げを重点投資領域に掲げ、マーケティングや営業職を中心とした人材採用を強化しています。SPEEDA EXPERT RESEARCHへの投資は順調に進んでおり、SPEEDA上から専門家に質問し、24時間以内に5人以上からテキスト回答が得られる新機能「Flash Opinion」も売上高の拡大に貢献しています。
SPEEDAからスピンアウトする形で2017年にリリースした、顧客戦略をサポートするFORCASに関しては、エンタープライズ企業での導入も進み、また、2020年にリリースしたFORCAS Salesにおいても、FORCASの顧客における導入が進み、高い成長率を維持しています。
組織戦略をサポートするAD/NPに関しては、NewsPicksを法人向けにカスタマイズした、人材開発と組織活性化を実現するプロダクトである「NewsPicks Enterprise」と、新規事業開発に必要なサポートを1つのプラットフォームにした、新規事業開発特化型の総合支援プロダクト「Incubation Suite」の新規顧客開拓が進み、高い成長率を実現しています。
これらのことから、SaaS事業の当連結会計年度末におけるARRは9,828百万円となり、前年同期比29.5%増と順調に拡大し、当連結会計年度におけるセグメント売上高は10,012百万円(前年同期比32.0%増加)となりました。利益の観点では、主力プロダクトであるSPEEDAが高い収益率を実現している一方で、FORCASやFORCAS Sales、NewsPicks Enterprise、Incubation Suiteといったプロダクトに関しては、高成長を目指すフェーズであるため、積極的な成長投資を行っており、現時点では赤字となっています。そのため、セグメント利益は2,178百万円(前年同期比0.8%減少)、Direct EBITDAは2,388百万円(前年同期比2.1%増加)、セグメントEBITDAは1,580百万円(前年同期比15.4%減少)となりました。
なお、前年同期との比較・分析は、変更後の新セグメントに基づいて記載しています(以下、NewsPicks事業についても同様です)。
NewsPicks事業においては、前第2四半期連結会計期間において年割契約の有料課金ユーザーが大幅に増加した反動によって、第2四半期連結会計期間に、個人の有料課金ユーザー数の伸び率が鈍化しました。しかしながら、反動の影響は一時的なものであったため、第3四半期連結会計期間以降は再度純増ペースに回復しています。広告売上においても、四半期毎に季節性はあるものの、ビジネスパーソンに信頼されるメディアとしての立ち位置が確立されつつあり、当連結会計年度では安定的に拡大しています。一方、当連結会計年度において、動画コンテンツや、NewsPicks Expertを含むコミュニティ強化に向けた開発投資、マーケティング投資を積極的に実行しました。
これらの結果、当連結会計年度末におけるARRは、2,583百万円(前期比2.6%増加)、当連結会計年度におけるセグメント売上高は6,106百万円(前年同期比15.5%増加)と増加しました。また、セグメント利益は846百万円(前年同期比4.9%増加)、Direct EBITDAは980百万円(前年同期比8.0%増加)、セグメントEBITDAは488百万円(前年同期比15.6%減少)となりました。
② 財政状態
資産合計は、前連結会計年度末と比較して4,371百万円増加し、20,286百万円となりました。これは主に、流動資産において現金及び預金が3,028百万円増加したこと、投資その他の資産において投資有価証券が1,386百万円増加したこと等によるものです。
負債合計は、前連結会計年度末と比較して1,519百万円増加し、10,316百万円となりました。これは主に、流動負債において、SaaS事業の事業規模拡大により前受収益が821百万円増加したこと、未払法人税等が240百万円増加したこと等によるものです。
純資産合計は、前連結会計年度末と比較して2,851百万円増加し、9,970百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益589百万円を計上したことにより利益剰余金が589百万円増加したこと、VC事業における外部投資家からの払込等により非支配株主持分が2,133百万円増加したこと等によるものです。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末と比べ3,100百万円増加し、10,613百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、2,696百万円の収入(前年同期は1,026百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益1,214百万円を計上したこと、SaaS事業の事業規模拡大等に伴い前受収益が815百万円増加したこと、減価償却費349百万円を計上したこと、減損損失289百万円を計上したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,066百万円の支出(前年同期は2,028百万円の支出)となりました。これは主に、VC事業における投資及び業務提携等を目的としたマイノリティ投資による投資有価証券の取得等による支出968百万円、無形固定資産の取得による支出396百万円、VC事業における投資有価証券の売却による収入356百万円等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、1,404百万円の収入(前年同期は613百万円の収入)となりました。これは主に、VC事業における組合員からの払込による収入1,735百万円、長期借入れによる収入800百万円、長期借入金の返済による支出990百万円等によるものです。
生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。
受注生産を行っていないため、受注実績に関する記載はしておりません。なお、NewsPicks事業における広告サービスにおいて受注はありますが、受注から役務提供までの期間が短いため、受注状況に関する記載を省略しています。
当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は、次のとおりです。
(注)1 セグメント間取引は相殺消去しています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3 前連結会計年度及び当連結会計年度の主な相手先別販売実績及び当該販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため、記載を省略しています。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況分析 (2) 経営成績等の概況及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ③キャッシュ・フロー」に記載しています。
当社グループにおける各事業はシステムを利用したプラットフォームサービスの提供を主としており、多額の設備投資などは必要とせず、主たる資金需要は人件費や広告宣伝費などの運転資金です。収益基盤の確立した既存ビジネスの獲得するキャッシュ・フローを原資に、新規に開始するビジネスの運転資金を賄うことを基本方針としていますが、成長投資資金の一部については、既存ビジネスによる獲得資金に加え、必要に応じて金融機関からの借入によって賄うこととしています。
この方針に従い、当連結会計年度においては、事業成長資金及び運転資金については、自己資金及び金融機関からの借入により充当しました。
今後の資金需要のうち、主なものは、運転資金のほか成長投資資金や本社移転に係る設備投資資金等です。これらの資金についても、基本方針に基づき主に自己資金により充当する予定ですが、必要に応じて金融機関からの借入を実施する等、必要な対応を行います。
当社グループの将来の財政状態及び経営成績に重要な影響を与えるリスク要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しています。
経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しています。
当社グループが今後業容を拡大し、より高品質なサービスを継続的に提供していくためには、経営者は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の課題に対処していく必要があると認識しています。それらの課題に対応するため、経営者は常に市場におけるニーズや事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、現在及び将来における事業環境を認識したうえで、当社グループの経営資源を最適に配分し、最適な解決策を実施していく方針です。
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